日本のIT業界で活躍する中国人技術者が年々増加しています。しかし、就労ビザの取得には複雑な要件と手続きが必要です。
本記事では中国人エンジニアが日本で働くために必要な就労ビザの申請から取得までのポイントを、実務経験に基づいてくわしく解説します。
これから日本での就労を目指す、中国人エンジニアの方へ参考となれば幸いです。
※下記の記事のは英語版になります。(Read this article in English, please click bottom↓)
- 技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するための要件と申請手順について
- 就労ビザ申請が不許可になりやすいポイントと対策について
- ITエンジニアのキャリアアップと永住権取得に向けたステップについて
1.日本で働く中国人IT技術者の現状と課題

日本のIT業界において、中国人技術者の存在感は年々高まっています。
現在、日本における中国人の在留者数は約82万人に達し、在留外国人数は断トツのトップとなっています。この数字は年々増加傾向にあり、日本のIT産業においても重要な人材として注目されています。
IT業界における中国人技術者の需要と役割
日本のIT業界では深刻な人材不足を背景に、高度な技術を持つ中国人エンジニアへの需要が高まっています。
特にシステム開発・保守の分野では、Webアプリケーション開発やモバイルアプリケーション開発、インフラストラクチャー設計において中国人技術者の活躍が目立ちます。
データサイエンスやAI開発の分野でも、機械学習モデルの構築やビッグデータ分析において重要な役割を果たしています。
またクラウドコンピューティングの分野では、クラウドアーキテクチャ設計やマイクロサービス開発など、最先端の技術領域で高い専門性を発揮しています。
在留資格の種類と選択のポイント
IT技術者が取得できる在留資格の中で最も一般的なのが「技術・人文知識・国際業務」です。この在留資格では、IT関連の学歴または実務経験が必要とされ、最長5年の在留期間が認められます。
より高度な専門性を持つ技術者向けには「高度専門職」という在留資格も用意されています。
これはポイント制による評価で付与され、より長期の在留期間が可能になるほか、配偶者の就労制限も緩和されるなどの優遇措置があります。
在留資格の選択に際しては、自身のキャリアプランや家族状況を考慮しながら、最適なものを選択することが重要です。
参考:出入国在留管理庁:「技術・人文知識・国際業務」 「高度専門職」(高度人材ポイント制)
2.就労ビザ申請に必要な5つの重要ポイント

就労ビザの取得を成功させるためには、複数の重要な要素を満たす必要があります。
以下では、申請成功の鍵となる5つの重要ポイントについてくわしく解説していきます。これらの要件を適切に満たすことで、申請の成功率を大きく向上させることができます。
技術・人文知識・国際業務の資格要件
技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するためには、まず学歴要件として情報工学やコンピュータサイエンスなどの関連学部の卒業が求められます。
学歴要件を満たさない場合…10年以上の実務経験が必要となります。技術面では、実践的なプログラミング言語の経験やシステム開発・設計の知識が不可欠です。
また日本企業での就労を想定しているため、通常はJLPTのN2レベル以上の日本語能力が推奨されています。これらの要件は、実務能力と理論的知識の両面から審査されます。
必要書類と準備のチェックリスト
就労ビザの申請には、申請者側と企業側双方からの書類提出が必要です。
申請者側の提出書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- パスポートのコピー
- 証明写真
- 履歴書
- 学位証明書または職務経歴証明書
一方、企業側からは雇用契約書、会社の登記簿謄本、事業内容を説明する資料、給与支払証明書などの提出が求められます。
これらの書類は、申請者の資格と受入れ企業の適格性を証明する重要な資料となります。
給与条件と雇用契約の注意点
給与条件については日本人従業員と同等以上の水準を確保することが求められており、一般的な目安として年収350万円以上が推奨されています。
雇用契約書には職務内容を明確に記載するとともに、残業手当等の待遇や福利厚生の詳細まで漏れなく記載する必要があります。
これらの条件は、外国人技術者の適切な処遇を確保するとともに、不当な労働条件での雇用を防止する役割を果たしています。
会社の受け入れ体制と実務経験
企業には、安定した経営状態と適切な就労環境の整備が求められます。特に技術指導体制の確立は重要で、外国人技術者の育成・サポート体制が整っていることを示す必要があります。
実務経験の証明においては具体的なプロジェクト実績、使用した技術の詳細、そして担当した役割と責任を明確に示すことが重要です。
これらの情報は、技術者としての専門性と実務能力を評価する上で重要な判断材料となります。
在留期間と更新申請の時期
初回の在留期間は通常1年または3年が付与され、高度人材は最長5年まで認められます。
在留期間の更新申請は期限の2ヶ月前から可能となり、この時期に合わせて必要書類の準備や実績資料の整理を進める必要があります。
更新時には、在留期間中の活動実績や今後の活動計画なども重要な審査対象となります。計画的な準備と適切なタイミングでの申請が、円滑な在留期間の更新につながります。
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以下の記事では、日本就労ビザの取得について、詳しく解説しています。
3.申請が不許可になるリスクと対策

就労ビザの申請において、いくつかの重要なリスク要因が存在します。リスクを事前に理解し、適切な対策を講じることで、申請の成功率を高めることができます。
特に初回の申請では、以下に示す要因に細心の注意を払う必要があります。
よくある不許可の理由と具体例
就労ビザ申請が不許可となる主な理由として以下のものが挙げられます。
- 申請書類の不備 記入漏れや誤記、また必要書類の不足は、たとえ他の条件を満たしていても不許可につながる可能性がある。
- 専門性の不足 IT関連の学歴や経験が不十分な場合、あるいは予定されている職務内容が技術者としての専門性に欠けると判断された場合は、申請が認められない可能性が高くなる。
- 給与条件に関する問題 同じ職場で働く日本人従業員との給与格差が大きい場合や、最低賃金基準を下回る条件での雇用は、不許可の理由となることが多い。
事前対策と申請書類の重要ポイント
申請の成功率を高めるためには、事前の十分な準備が不可欠です。申請前に専門家への相談を行い、自身の条件が要件を満たしているかどうかの確認を受けることもおすすめです。
提出書類については、複数の目で確認を行い、漏れや誤りがないようにチェックする必要があります。書類作成においては、特に専門性の具体的な記載に注力することが重要です。
プロジェクトでの実績や使用技術について、具体的かつ詳細に説明することで、技術者としての専門性をアピールできます。
また学歴や職歴の整合性にも注意を払い、経歴に空白期間や矛盾がないよう、慎重に確認する必要があります。
4.就労ビザ取得後の注意点と継続要件

就労ビザの取得はゴールではなく、その後も適切な管理と手続きが必要となります。在留資格を継続的に維持するためには、法令順守と定期的な更新手続きが不可欠です。
またキャリアの変更や転職を考える際にも、在留資格への影響を慎重に検討する必要があります。
在留資格の継続と更新手続き
就労ビザ取得後の行動
- 在留カードの常時携帯が義務付けられている
- 住所変更があった場合は、14日以内に届け出る必要がある
就労状況について…定期的な報告が求められ、特に雇用条件や職務内容に大きな変更があった場合は、速やかな届出が必要となる。
更新時…在留期間中の活動実績を示す書類や、今後の就労計画に関する資料など、複数の書類を準備する必要がある。
上記の手続きを怠ると次回の更新時に問題が生じる可能性があるため、計画的な対応が重要です。
転職時の在留資格への影響
同じIT業界内での転職の場合、基本的には在留資格の変更は必要ありませんが14日以内に所属機関の変更届出を行う必要があります。
ただし、異業種への転職を考える場合は、新たな職種が現在の在留資格で認められる活動に該当するかどうかを慎重に確認する必要があります。
必要に応じて在留資格の変更申請が必要となる場合もあるため、転職を検討する際は事前に入国管理局や専門家に相談することをおすすめします。
5.IT技術者のキャリアアップとビザの関係

IT技術者として日本での長期的なキャリアを築くためには、在留資格の管理とキャリアアップを並行して進めることが重要です。
特に永住権の取得を視野に入れる場合は、計画的なキャリア形成が求められます。
永住権取得への道筋
永住権の取得には、原則として10年以上の在留実績が必要とされます。
また素行要件として法令順守の実績や、安定した収入による生計維持能力の証明も求められます。ただし高度人材として認定された場合は、在留期間の要件が大幅に短縮される可能性があります。
この場合、学歴や職歴、年収などがポイント制で評価され一定のポイントを超えることで優遇措置が適用されます。
特に、最新技術の習得や高度な専門資格の取得は、追加ポイントとして評価される要素となります。
スキルアップによる在留資格の安定化
技術者としての価値を高め在留資格を安定的に維持するためには、継続的なスキルアップが不可欠です。
具体的なスキルアップ計画 | ||
IT関連の資格取得 | 新しい技術の習得 | 実践的プロジェクト経験の蓄積 |
キャリアパスとしては技術領域でのさらなる専門性の深化を目指すか、またはマネジメント職への移行を検討するか、個々の適性や目標に応じて選択することができます。
さらに十分な経験と実績を積んだ後は、起業という選択肢も視野に入れることができます。
キャリア選択は在留資格の安定性にも直接的な影響を与えるため、長期的な視点での計画が重要となります。
6.日本の就労ビザを取得して活躍する中国人エンジニアは多い

就労ビザの取得は、中国人ITエンジニアの日本でのキャリアにおける重要な第一歩です。
申請時の要件を満たすことはもちろん、取得後の継続的なスキルアップと適切な在留資格の管理が成功への鍵となります。
本記事で解説した5つのポイントを押さえ長期的なキャリアプランを立てることで、日本でのIT技術者としての活躍の場を広げることができるでしょう。