韓国のIT資格を持つエンジニアには、日本での就労ビザ取得において特別な優遇制度があります。学歴や職歴の要件が緩和され、より柔軟なキャリアパスを描くことが可能です。
本記事ではビザ取得の要件から申請手順、就職活動のポイントまで、実務的な情報をくわしく解説します。
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- 韓国IT資格による就労ビザ取得の特例制度と具体的な要件について
- ビザ申請から取得までの具体的な手順と必要書類について
- 日本での就職活動から入社後の注意点まで実践的なポイントについて
1.韓国人ITエンジニアが日本で働くために知っておくべきビザの基礎知識

日本でITエンジニアとして働くためには、適切な就労ビザの取得が不可欠です。
特に韓国人ITエンジニアにとってビザ取得の基本的な知識を理解することは、スムーズな就職活動と安定した就労のために重要な第一歩となります。
技術・人文知識・国際業務ビザとは
技術・人文知識・国際業務ビザは、ITエンジニアとして日本で働くための代表的な就労ビザです。このビザは最長5年の在留期間が認められ、高度な専門性や技術を持つ外国人材に付与される在留資格です。
技術・人文知識・国際業務ビザの取得により、日本国内でITエンジニアとしての就労活動が可能となり、一定の条件下で転職することも認められています。
参考:出入国在留管理庁:在留資格「技術・人文知識・国際業務」
就労ビザ取得に必要な基本要件
就労ビザの取得には、学歴・職歴に関する要件を満たす必要があります。
一般的には、4年制大学のIT関連学部の卒業、または2年以上のIT関連課程のある専門学校の卒業、あるいは実務経験10年以上が求められます。
ただし韓国産業人力公団認定のIT資格保持者に対しては、これらの要件が緩和される特例があります。
さらに日本企業からの内定獲得や、日本人と同等以上の報酬、十分な業務量の確保、企業の経営基盤の安定性なども重要な要件となります。
条件を総合的に満たすことで、就労ビザの申請が可能となり、日本での IT エンジニアとしてのキャリアをスタートすることができます。
2.韓国のIT資格で取得できる日本の就労ビザ

韓国のIT資格保持者は、日本での就労ビザ取得において特別な優遇を受けることができます。
この制度により、通常必要とされる学歴や職歴の要件が緩和され、より柔軟なキャリアパスを実現することが可能です。
認定されている韓国のIT資格の種類と特徴
韓国産業人力公団(HRD Korea)が認定するIT資格は、日本の就労ビザ取得において重要な価値を持ちます。
具体的には、情報処理技師(エンジニア・インフォメーション・プロセシング)と情報処理産業技師(インダストリアル・エンジニア・インフォメーション・プロセシング)の2種類が認められています。
上記の資格は韓国語で試験が実施され、それぞれ上級と中級レベルに位置付けられています。
IT資格による学歴・職歴要件の免除について
認定されている韓国のIT資格を保持している場合、4年制大学卒業要件、専門学校卒業要件、実務経験年数要件が免除されます。
これにより学歴に関係なくビザ申請が可能となり、職歴がなくても新卒での日本就職やキャリアチェンジがスムーズに行えます。
ただし基本要件は依然として満たす必要があります。以下の条件に合致することで、より確実なビザ取得が可能です。
- 従事する業務がIT関連であること
- 資格と業務内容の関連性が求められること
- 十分な業務量が確保されていること
- 日本人と同等以上の給与水準であること
■合わせて読みたい
以下の記事では、日本就労ビザの取得について、詳しく解説しています。
3.就労ビザ申請に必要な重要条件

就労ビザの申請には、複数の重要な条件を満たす必要があります。
これらの条件は申請者本人の資格や能力だけでなく、雇用する企業側の体制や環境も含まれており、総合的な審査が行われます。
以下では、具体的な条件についてくわしく説明します。
IT資格と業務内容の関連性について
就労ビザ取得のためには、保持しているIT資格と実際の業務内容との明確な関連性が必要です。
システム開発・プログラミング、ネットワーク管理・構築、データベース設計・管理、システム運用・保守などのIT専門業務が認められます。
通訳・翻訳業務のみ、一般事務作業、営業職、接客業務などは、たとえIT関連企業での仕事であっても、IT資格を活かした業務とは認められません。
給与条件と待遇について
給与条件は就労ビザ取得の重要な判断基準となります。日本人と同等以上の給与水準が求められ、これは地域や業界の標準的な給与体系に準拠する必要があります。
また経験やスキルに応じた適切な評価に基づく給与設定が重要です。
■給与の計算、判断について
- 基本給が基準となる
- 通勤手当、住宅手当、扶養手当などの諸手当は含まれない。
企業に求められる条件
企業側には安定した財務状況と適切な就労環境の整備が求められます。
具体的には、決算が黒字であることが望ましく、債務超過でないことが重要です。また、労働法規の遵守や適切な雇用管理体制の整備も必要です。
・新設企業の場合の条件 | ・赤字企業の場合の条件 |
具体的な事業計画書 | 改善計画書 |
資金力の証明 など | 再建可能性の証明 など |
4.就労ビザ申請の具体的な手順と必要書類

就労ビザの申請は、複数のステップを経て行われる重要な手続きです。申請から取得までの過程では、適切な準備と正確な手続きの実施が求められます。
ここでは具体的な申請手順と必要書類について説明していきます。
申請から取得までのタイムライン
就労ビザの申請から取得までは、通常3~6ヶ月程度の期間が必要です。まず企業からの内定取得に1~2ヶ月、その後必要書類の準備に2~3週間を要します。
在留資格認定証明書の申請から取得までは1~3ヶ月かかり、その後在外公館でのビザ申請に約1週間必要です。ただしこの期間は申請時期や地域によって変動する可能性があります。
必要書類の準備と注意点
申請には申請者側と企業側双方の書類が必要です。書類は日本語または英語での提出が必要で、その他の言語の場合は翻訳の添付が必要です。
- 申請者側
パスポートのコピー、証明写真、履歴書、IT資格証明書が基本となる。 - 企業側
雇用契約書、会社の登記簿謄本、決算報告書、事業内容説明書、雇用理由書、給与支払証明書の提出が求められる。
申請時によくある質問と回答
Q:申請は本人のみ可能ですか?
A:申請は企業または代理人による代行が可能です。
Q:在留期間はどれくらいですか?
A:在留期間は最長5年まで取得可能で、要件を満たせば更新も可能です。
Q:申請後に行うことはありますか?
A:申請した後の審査期間中は、入国管理局からの追加書類の要求に迅速に対応することが重要です。
Q:申請書類についての注意事項はありますか?
A:IT資格証明書には日本語または英語の翻訳が必要で、雇用契約書は「停止条件付き契約」の形式が推奨されます。
5.韓国人ITエンジニアの日本での就職活動のポイント

日本でのIT業界への就職は、適切な準備と戦略的なアプローチが成功への鍵となります。
特に韓国人ITエンジニアの場合、言語や文化の違いを考慮しながら、効果的な就職活動を展開することが重要です。
企業選びで確認すべきこと
企業選びでは、外国人雇用の実績と体制を重点的に確認することが重要です。
確認しておきたいポイント…企業の外国人材受け入れ体制を示す重要な指標となる
過去の外国人採用実績、在籍している外国人社員数、定着率など
ビザサポート体制(専門部署の有無や行政書士との連携状況、手続きのサポート範囲など)
確認しておきたいポイント…長期的なキャリア形成の観点から
勤務時間や休暇制度、福利厚生、キャリア開発支援制度などの就労環境など
内定から入社までの流れ
内定獲得後の具体的な流れ
- 内定条件の最終確認と契約内容の確認、入社時期の決定
- ビザ申請手続き(必要書類の収集、在留資格認定証明書の申請、ビザ申請と取得)
並行して日本での生活基盤を整えるため、住居の確保、銀行口座開設、保険加入などの渡航準備を進める必要があります。
就労開始後の注意点
就労開始時には、さまざまな手続きや管理が必要になります。以下の要素を適切に管理することで、日本での安定した就労生活を実現することができます。
行政手続き | 在留資格に関する管理 |
住民登録、マイナンバーの取得、国民健康保険の加入 など | 在留カードの携帯義務や在留期間の管理、資格外活動の確認 など |
職場での具体的なポイント
- 報告・連絡・相談の徹底や日本語での業務コミュニケーション、職場マナーの理解が求められるためあらかじめ把握しておく。
- 長期的なキャリア形成のために、スキルアップ計画の作成や資格取得の検討、在留期間の更新時期の把握と準備も重要な課題となることを理解する。
6.韓国人エンジニアが日本のビザ取得を目指すためには

韓国のIT資格を活かして日本で働くためには、適切な準備と手続きが重要です。
就労ビザの取得要件を満たし、企業選びから入社後の生活まで計画的に進めることで、スムーズな日本での就労が実現できます。
本記事で解説した内容を参考に、自身のキャリアプランを立てていくことをおすすめします。