日本でIT技術者として活躍しながら、配偶者ビザの取得を考えている方へ。
この記事では、ビザ申請に必要な基礎知識から具体的な手続き、さらには取得後のキャリアプランまで、実践的な情報をお届けします。
ビザ申請の準備から審査のポイント、そして将来の永住権取得まで、段階的に解説していきます。
※この記事の英語版をお読みになりたい方は、こちらになります。(Read this article in English, please click here!)
- 配偶者ビザの申請に必要な書類と、エンジニアとして準備すべき追加資料について
- 配偶者ビザ取得後の転職や契約形態の変更における注意点と対策について
- 永住権取得に向けた具体的なステップと、IT業界でのキャリア展開の可能性について
1. 配偶者ビザとは:エンジニアが知っておくべき基礎知識

配偶者ビザ(正式名称:在留資格「日本人の配偶者等」)は、日本人と国際結婚した外国人が、日本で生活するために必要な在留資格です。
対象となるのは、母国と日本の両方で法的に婚姻手続きを完了した方です。このビザは、エンジニアを含む外国人が、日本で配偶者と安定した生活基盤を築く上で非常に有利に働きます。
日本国内での国際結婚が増加する一方で、偽装結婚も問題となっています。そのため配偶者ビザを申請する際には慎重に準備をすることが大切です。
日本での生活を希望する外国人にとって非常に重要な在留資格であり、取得できれば日本でのキャリア展開の可能性を大きく広げられます。
配偶者ビザの特徴とメリット
配偶者ビザの特徴のひとつは就労制限がなくなることです。
通常必要となる「資格外活動許可」を取得せずとも、正社員やアルバイトなど、さまざまな雇用形態で自由に働けるようになります。
また学業に自由に専念できるようになることも特徴です。
就労ビザの場合、大学などに通うにはビザの変更手続きが必要ですが、配偶者ビザであればその手続きは不要です。キャリアアップのための学習なども容易になります。
■特筆すべき配偶者ビザのメリット
永住権と帰化の申請要件が緩和される。経済面でも日本人とほぼ同様の扱いになるので、起業やフリーランスとしての独立も可能となる。
2.申請の手順と必要書類

配偶者ビザの審査は書類審査のみで行われるので、必要書類をしっかりと準備することが重要です。場合によっては、追加の書類提出が求められるので迅速に対応しましょう。
基本的な必要書類の準備
配偶者ビザの申請において必要になる書類は以下の通りです。
詳細は出入国管理庁のホームページに記載されているため、よく確認の上で提出する必要があります。
共通書類
- 在留資格認定証明書交付申請書(※1):1通
- 質問書(※2):1通
- 身元保証書(※3):1通
- 返信用封筒(434円分の切手貼付):1通
※1〜3については、出入国在留管理庁のホームページにフォーマットがあります。
また外国人配偶者、日本人配偶者それぞれについての書類が必要となります。
その他、住居関連の書類、配偶者との関係性を示す書類なども提出します。用意しなければならない書類が多岐にわたりますが、しっかりとそろえることが円滑な審査への近道です。
- 住居関連の書類
・賃貸借契約書:同居予定の不動産のもの(不動産を所有している場合は登記事項証明書)
・不動産の写真:同居予定の物件のもの - その他の書類
・スナップ写真:2~3葉(旅行、結婚式など夫婦関係が分かるもの)
・メールやメッセージアプリでのやり取り(交際の証明として)
参考:出入国在留管理庁:外国人(申請人)が日本人の配偶者(夫又は妻)である場合)
エンジニア特有の準備書類
配偶者ビザの申請において、エンジニア特有の準備書類はありません。
しかし、特に経済面での安定性を明確に示すことが重要です。
一般的な就労ビザの申請と同様に、これまでエンジニアとして培ってきたキャリアや経済状況を客観的に説明できる書類を、不足なく準備することが大切です。
日本でエンジニアとして働く場合、多くの方が「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得します。
このビザの申請では、学歴証明書や履歴書(職務経歴書)、関連資格の合格証明書などが重要な書類になります。
申請手続きの流れ
具体的な申請手続きの流れを解説していきます。
- 結婚手続きの完了
配偶者ビザを申請する前に、母国と日本の双方で結婚手続きを完了させる必要がある。結婚証明書は母国の大使館や領事館など、公的機関から発行されたものでなければならない。 - 必要書類の準備
上述した必要書類を準備しましょう。 - 入国管理局への申請
配偶者ビザの申請先は日本人配偶者の居住地を管轄する入管となる。申請後の審査は、通常では1〜3か月ほどの期間を要す。この間に追加の書類提出を求められた場合は迅速な対応が重要となる。 - 審査結果の通知
審査が完了すると、結果が郵送される。許可された場合は指定の必要書類を持参して入管に行き、新しい在留カードを受け取る。
不許可の場合…入管に対して異議申し立てはできない。再度配偶者ビザの取得を希望する場合、再申請することになる。不許可理由は開示されるため、適切な対応が可能。
■合わせて読みたい
以下の記事では、日本就労ビザの取得について、詳しく解説しています。
3. 配偶者ビザでのキャリア展開

配偶者ビザは就労に関する制限がないため、多様な働き方を実現し、柔軟なキャリア形成も可能です。
しかし転職や雇用形態の変更など、収入に影響を与える可能性のある行動には注意が必要です。
場合によっては、ビザの新規申請や更新が不許可になる恐れがあるので、慎重な計画が求められます。
転職に関する注意点
転職の際に収入が変動することがありますが、配偶者ビザの申請・更新時には、収入の安定性を入管に示すことが非常に重要です。
特に転職によって収入が大幅に減少した場合、ビザの申請や更新が不許可になるリスクが高まります。
また転職直後は、課税証明書に新しい職場からの収入が反映されていないことが多いので、審査に悪影響を与える可能性があります。
そのため新規申請や更新の直前に転職した場合、以下のような補完書類を用意しましょう。
・給与明細書 | ・雇用契約書 | ・労働条件通知書 |
・内定通知書 | ・源泉徴収票 など |
これらの書類を提出することで転職後の収入状況を明示し、ビザの取得・維持に関する審査を円滑に進められます。
参考:ビザ部:配偶者ビザと転職
契約形態別の注意点
配偶者ビザの大きな特徴は、働き方の自由度が高いことです。
正社員として安定した収入を得ることはもちろん、パートタイムやフリーランスとして自分のペースで仕事に取り組むことも可能です。さらに、自分で会社を立ち上げて経営者になる道も開かれています。
ただし配偶者ビザを維持するためには、収入の安定性や経済基盤の確保が重要になります。配偶者ビザは更新の必要があり、その際には世帯収入も審査の対象になるためです。
- パートタイムやフリーランスを選択する場合
配偶者の収入と合わせた世帯収入で、安定した生活が送れることを入管に示す必要がある。契約形態を変更した際は、新しい職場での収入の安定性を証明するために、給与明細や雇用契約書などの収入証明書類を準備する。 - 申請者が就労しない場合
配偶者の収入のみで生活維持できることを証明する必要がある。
4.エンジニアの配偶者ビザ 申請審査のポイントと対策

配偶者ビザの審査では、結婚の信ぴょう性や経済的基盤の有無が審査のポイントになります。正確な情報に基づく必要書類を、不足なく準備することが対策です。
審査で重視される要素
配偶者ビザの審査では、「結婚の信ぴょう性」と「経済的基盤」が特に重視されます。
結婚の信ぴょう性
夫婦が本当に共同生活を送っているかどうかが問われます。
具体的には、共同名義の賃貸契約書や公共料金の領収書、旅行写真など同居を示す証拠が必要です。また結婚に至るまでの経緯、夫婦間のコミュニケーション方法(言語は何か)、双方の家族が結婚を認識していることなどが審査されます。
経済的基盤
日本で結婚生活を送るための、安定した収入があることを示さなければなりません。
収入の証明方法…住民税の課税・納税証明書など
扶養家族がいる場合、人数に応じた収入がないと不許可の原因になるため注意が必要です。夫婦2人の場合の具体的な金額としては、年収200〜300万円ほどが目安になると言われています。
夫婦共に無職または収入が不安定な場合は、生活費の出所を明確にする必要があり、親族からの支援があればその証明書が求められます。
過去の納税状況も審査対象となり、未納や滞納があると不許可のリスクが高まります。直近の収入の安定性を示す、給与明細や銀行口座残高証明書などの提出が必要な場合があります。
IT業界特有の対応策
IT業界に特有の対応策は特になく、一般的な配偶者ビザ申請時と同様の対策を講じることになります。正確な情報に基づいた書類をしっかりとそろえて、書類間で矛盾がないようにすることが重要です。
また、就労ビザから配偶者ビザへの変更を希望する場合は、現在のビザ有効期限内に申請する必要があり、申請承認までは現在のビザ条件を満たさなければなりません。
よくある質問への対策
質問書は偽装結婚を見破るとともに、国際結婚をした夫婦が日本国内で、安定した生活が送れるかを見極めるために設けられています。よって、質問内容も結婚の真実性や経済状況を確かめるための内容が中心です。
【具体的な質問例とその対応】
- 結婚の経緯は?…結婚に至る経緯を時系列に沿って説明する必要がある。
- 普段のコミュニケーションの様子は?…使用する言語などについての説明が求められる。
- お互いの家族構成は?…双方の両親や兄弟姉妹、居住地など矛盾が生じないようにする。
- 同居状況は?…日常生活の様子や状況を説明する。
- 経済的安定性は?…世帯としての収入やその証明などを確実に伝える。
- 過去の婚姻歴は?…離婚回数が多いなどの場合は特に説明が求められる。
5.配偶者ビザ取得後の生活設計

配偶者ビザは更新の必要があるため、まずは在留資格を維持できるように計画を立てることが重要です。
ビザの維持ができるようになったら、次に永住権取得に向けて準備をしましょう。永住権を得られれば、日本でのキャリア継続・展開について長期的な視点でプランを描けるようになります。
更新手続きの計画
配偶者ビザの更新は、在留期限満了日の3か月前から居住地を管轄する入管で申請可能です。入院などの特別な事情があれば、それ以前の申請も認められます。
更新後の在留期間は、6か月・1年・3年・5年のいずれかです。初回更新では通常1年が認められ、その後に配偶者ビザの更新を重ねて3年、5年の許可を目指すことになります。
特に、長期の在留期間を得るには、婚姻生活の安定性や収入の状況が重要です。
2タイプの更新、審査がある
更新の審査は「単純更新」と「事情説明が必要な更新」の2つのタイプに分かれます。
- 単純更新の審査 比較的簡単で、生活状況に大きな変化がない場合に該当し、通常では2週間から1か月ほどで結果が出る。
- 事情説明が必要な更新 離婚や再婚、転職による収入の減少など、生活状況に大きな変化があった場合など。審査が厳しくなるので、通常の更新書類に加えて事情説明の書類の提出がないと、不許可のリスクが高まる。
不許可になると出国しなければならないので、しっかりとした書類を準備できるよう、十分な時間的余裕をもって手続きしましょう。
永住権取得への準備
日本でキャリアの継続・発展を希望している方にとって、永住権の取得は大きなメリットをもたらします。
永住権取得のメリット
- 在留期間の制限がなくなるため、ビザの更新手続きが不要になる。
- 社会的信用の向上。住宅ローンや銀行融資の審査も通りやすくなるので、マイホーム購入や起業など、人生設計の選択肢が広がる。
- 配偶者と離婚・死別した場合でも、在留資格を失うリスクがなくなるため、日本での生活基盤を維持できる。
永住権と配偶者ビザの関連性
通常、永住権の申請には日本国内での10年以上の継続的な居住が必要ですが、配偶者ビザを取得している場合、この居住期間に関する要件が緩和されます。
「3年以上の実体を伴った婚姻生活」と「日本での1年以上の継続的な居住」の条件を満たせば、永住権の申請が可能です。
永住権取得の第1歩として、配偶者ビザの更新時に3年の在留資格を目指すことになります。そのためには、安定した婚姻生活および世帯収入の維持、公的義務の履行が重要です。
長期的なキャリア設計
日本のIT業界は成長市場でありながら、深刻な人材不足に直面しています。そのため外国人エンジニアの需要が高い傾向にあるのです。
こうした状況から配偶者ビザや永住権の取得は、日本での長期的なキャリアプランを描く上で大きなアドバンテージになります。
2025年には約43万人の人材が不足するといわれます。この状況はITエンジニアにとって長期的なキャリア設計をしやすい環境にあるでしょう。
特にシステム保守、DX事業、AI、クラウド、セキュリティ分野の需要はますます高まると予測されています。
配偶者ビザや永住権を取得していれば就労制限がないため、働き方も自由に選択可能です。高度な国家資格などを取得できれば、キャリアアップに加え、収入安定にもつながるでしょう。
6.配偶者ビザを知り日本での生活を確かなものにする

配偶者ビザの取得は、日本でのIT技術者としてのキャリアを大きく広げる機会となります。申請時の丁寧な準備と、取得後の計画的なキャリア展開が重要です。
永住権の取得も視野に入れながら、安定した生活基盤を築き、日本のIT業界で活躍していくための第一歩として、このガイドを活用してください。