日本で働きたい外国人エンジニアにとって、就労ビザの取得は重要な関門です。
しかし、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格申請において、不交付という壁に直面するエンジニアの声も聞かれます。
本記事ではビザ申請が通らない主な理由と、確実に取得するための実践的な対策についてくわしく解説します。
※この記事の英語版をお読みになりたい方は、こちらになります。(Read this article in English, please click here!)
- 技術ビザが不交付となる3つの主要因とその具体的な内容について
- 高度人材ポイント制の活用方法や実務経験の提示などの具体的な対策について
- 給与条件や必要書類の準備など、企業と連携して行うべきアプローチについて
1.エンジニアのビザ申請が不交付となる3つの主要因

外国人エンジニアが日本で働くためには、多くの場合で「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザを取得することになるでしょう。
この就労ビザを取得する際、申請不交付の問題に直面する方も少なからずいるのです。
以下では、エンジニアの就労ビザ申請が不交付となる主な理由である「技術要件」「企業要件」「申請書類の一般的な不備」の3つを解説します。
技術要件に該当しない
「技術・人文知識・国際業務」における「技術要件」は日本で技術者として働くための最も重要な基準のひとつです。
就労ビザを取得するにはまず「在留資格認定証明書」の交付が必要となりますが、要件を満たせない場合、取得できない可能性があります。
技術要件には、「学歴」「実務経験」「資格」のいずれかを証明する必要があります。
- 【学歴要件】
特定の技術分野に関連する学位が必要となる。エンジニアの場合、機械工学、電気工学、化学工学など。本国または日本の大学・短大・大学院を卒業(学士や短期大学士以上の学位を取得)日本の専門学校を卒業している(専門士の称号を取得) - 【実務経験の要件】
学歴要件を満たさない場合、該当の技術分野で10年以上の実務経験が必要となる。この実務経験には、システム管理やソフトウェア開発などが含まれる。正社員または契約社員としての勤務実績が必要。 - 【資格の要件】
学歴や実務経験の要件を満たさない場合、技術関連の「法務大臣が定めた情報処理に関する資格」を保有していること。日本国内および海外の資格が含まれる。
企業要件に不足がある
就労ビザ申請が不交付となる主な理由の2つ目は「企業要件」の不足です。
企業要件とは…企業が外国人労働者を雇用するにあたり、十分な資格を備えていることを証明するための条件。
- 【専門と業務内容の不一致】
雇用する外国人の専門分野と企業で行う業務内容が一致しない場合。企業は採用した外国人のスキルと業務内容が適切に一致するよう、整合性を確保する。 - 【学歴・職歴との不一致】
申請する在留資格が求める技術・知識に適合しない業務内容も、就労ビザ不交付の原因となる。例えば、教育学部を卒業した外国人をエンジニアとして雇用するケースでは、専門分野が一致していないとみなされる。 - 【在留状況の問題】
外国人労働者の在留状況が不適切な場合、就労ビザ申請が不交付となることがある。過去に資格外活動の上限を超えて働かせていた場合や、失踪など。 - 【企業の経営状態】
雇用する企業の経営状態も重要となる。事業の安定性や継続性を示すことが必要。大幅な赤字決算で事業の安定性が疑わしい場合など、不交付となるリスクが高まる。
申請書類の一般的な不備
就労ビザ申請が不交付となる3つめの要因として「申請書類の一般的な不備」が挙げられます。
- 【書類の誤字・脱字】
申請書類に誤字や脱字があると、信頼性を損なう。特にパスポート番号や名前のスペルが間違っている場合など、審査が厳しくなる可能性がある。また記載内容に矛盾がある場合も同様。 - 【証明書類の不足】
卒業証明書、職務経歴書、雇用契約書などの各種証明書類が不足、または期限切れや不完全である場合など。必要な書類を事前に確認し、正確かつ期限内に準備することが求められる。 - 【書類の正確性の確認】
提出書類の記載内容に誤りや整合性の欠如がある場合。職務経歴書や業務内容説明書に不整合がある場合も同様。
2.具体的な改善アクション – 申請者ができる対策

外国人エンジニアが就労ビザの不交付通知を受け取った場合でも、適切な対策を講じることで、再申請の成功率を高めることが可能です。
以下では、申請者が取るべき具体的な対策について紹介します。
技術力の具体的な証明方法
技術力を具体的に証明するには、学歴や職歴に基づく専門性の明示が必要です。
例として履修科目と業務内容の関連性を示す成績証明書を用意するなどがあります。
大学卒業者の場合、業務内容との関連性が緩やかに認められることがありますが、専門学校卒業者は専攻内容と業務内容の明確な整合性が求められるため注意が必要です。
実務経験の効果的な提示
実務経験は職務内容によって異なりますが、エンジニアの場合は10年以上の経験が必要です。
実務経験を効果的に提示するには、「勤務期間」「職務内容」「在職企業」を押さえた在職証明書を準備します。
加えて、給与明細や推薦状などの補足資料を提出することで信頼性が向上します。全ての書類が整合性を持つことが鍵となります。
高度人材ポイント制の活用
高度人材ポイント制は、外国人が日本で就労ビザを取得しやすくするための制度です。
学歴、職歴、年収などを基にポイントが付与され、合計70点以上を獲得した場合、「高度人材」として認定されます。認定されることで、在留期間の延長や永住許可要件の緩和など、さまざまな優遇措置が与えられます。
高度人材ポイント制は3つの類型に分かれ、エンジニアの場合、「高度専門・技術活動(高度専門職1号ロ)」です。修士号の取得や関連職歴の保有などが高得点となります。
また、日本語能力試験の合格や特定のIT資格の取得もポイント加算対象です。根拠となる資料を明確に提出し、不備がないようにする必要があります。
3.企業側との効果的な調整方法

就労ビザ申請が不交付となった場合、企業との調整を密に行うことで再申請の成功率を上げることが可能です。
以下では、企業と連携して申請内容を見直し、改善するための具体的なアプローチについて解説します。
給与条件の確認と調整
就労ビザの審査において、給与条件は非常に重要な要素です。申請者が日本人労働者と同等以上の待遇を受けられるかが確認されます。
そのため、企業は雇用契約書や給与支払い証明書を用意し、申請者の給与が日本人と同等以上であることの明確な証明が必要です。
給与に加えて、福利厚生が日本人従業員と同等であることも審査基準に影響します。
必要書類の準備
就労ビザ申請の成功には、必要書類を正確に準備することが不可欠です。
- 企業が用意する書類
雇用契約書、会社の登記事項証明書など
外国語で記載された書類には、日本語訳を添付することが義務付けられています。
企業と協力し、これらの書類を迅速かつ正確に準備することが、審査を円滑に進めるために重要です。
再申請期間中の対応
就労ビザ申請が不交付となった場合でも、再申請が可能なケースは少なくありません。
この際には、不交付理由を正確に把握することが最優先です。入管からの通知や出頭要請に応じ、具体的な不交付理由や改善点について説明を受けましょう。
再申請への企業側の準備と動き
再申請に向けては指摘された不備を修正し、改善点を反映させた新たな書類を準備して提出します。
再申請時には、以前の申請内容に比べてどの点が改善されたのかを明確に示すことが大切です。
必要に応じて専門家の支援を受けるなどして、正確性をさらに向上させることも視野にいれましょう。
4.再申請の具体的な進め方とスケジュール

就労ビザ申請が不交付となった場合でも、計画的に再申請を進めることで成功の可能性を高められます。
以下では、再申請に必要な準備や対応、効率的なスケジュール管理の方法について解説します。
申請書類の準備計画
再申請の第一歩は、申請書類の徹底的な見直しです。不交付理由を詳細に分析し、不足している書類や不備があった内容を明確にします。そのうえで必要な追加資料や証明書類を準備します。
不交付の原因として書類内容の不備や情報の不足が挙げられることが多いため、再申請では特に正確さが求められます。
また、追加資料の準備には時間がかかることもあるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。
審査期間と対応
再申請後の審査期間は、通常の申請よりも長引く可能性があります。これは、入国管理局が提出された書類をより厳密に確認するためです。
追加書類や情報提供を求められる場合に備え、迅速に対応できる体制を整えておくことが重要です。
また、再申請時には不交付理由が明確になっている分、審査基準が厳しくなる傾向があります。そのため必要に応じて行政書士や就労ビザ申請の専門家のアドバイスを受け、説得力のある申請内容を準備しましょう。
コストと時間の管理
再申請には、時間とコストの両方がかかります。書類作成や翻訳費用、専門家への依頼費用など、申請に必要な経費を事前に把握し、予算計画を立てることが重要です。
また再申請の各ステップにかかる時間を見積もり、全体のスケジュールを詳細に計画することで、効率的な手続きを進められるようにしましょう。
■合わせて読みたい
以下の記事では、日本就労ビザの取得について、詳しく解説しています。
5.ビザ取得成功へのロードマップ

再申請で就労ビザ取得を成功させるためには、過去の成功事例や専門家の活用を参考にしながら、長期的な対策を講じることが重要です。
以下に、具体的な方法を紹介します。
具体的な成功事例
再申請で成功した事例を振り返ると、不交付理由を徹底的に分析し、改善策を反映させたケースが多く見られました。
■最初の申請で業務内容の説明不足が原因で不交付となった
業務内容を具体的かつ詳細に記載した資料を追加提出することで許可が下りた事例がある。
また給与条件を日本人と同等以上に調整し、職務内容を明確化したことで成功したケースもあります。事例を参考に、改善ポイントを反映させた申請を心がけましょう。
専門家の活用方法
就労ビザ申請の成功率を上げるためには、専門家の力を借りることが非常に効果的です。
行政書士やビザコンサルタントは、最新の審査基準や必要書類について詳しく、書類作成や不備の修正において大きなサポートを提供します。
また専門家の知識を活用することで、申請プロセス全体の効率化が図れるだけでなく、アピールポイントを明確に伝えられます。
長期的な対策
就労ビザをスムーズに取得するには、長期的な計画と準備が必要です。申請者自身には技術力や職務経験を証明するための資格取得やスキルアップを継続することが求められます。
一方、企業も外国人材が働きやすい環境を整えることが重要とされています。社内での教育プログラムやサポート体制の強化が、申請の信頼性を高める要因となります。
また過去の申請結果を蓄積し、次回以降の手続きに活用することで、手続きの効率化や成功率の向上が期待できます。
6.日本でのビザがおりない理由を明確にして再取得へ

就労ビザの取得は決して簡単なプロセスではありませんが、適切な準備と対策により、確実に成功へと導くことができます。
技術要件の充実、企業との綿密な連携、そして専門家の支援を効果的に活用することで、再申請でも高い確率で許可を得ることが可能です。
本記事の知識を活かし、計画的なビザ申請を進めていきましょう。