日本で働く外国人エンジニアにとって、生活費の把握は安定した生活を送るための重要な要素です。
特に、給与相場や都市による生活費の違い、在留資格に関連する特有の支出など、考慮すべき点は多岐にわたります。
この記事では、外国籍エンジニアが知っておくべき生活費の詳細と、効率的な資金管理のポイントを徹底解説します。
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- 外国籍エンジニアの平均的な給与相場と、都市別の具体的な生活費について
- 在留資格関連費用や海外送金手数料など、外国人特有の追加支出について
- 家賃や食費の効率的な節約方法と、日本での長期的な資産形成について
1.外国人エンジニアの日本での給与相場を徹底解説

日本での就職や転職を考える外国人エンジニアにとって、給与相場を理解することは極めて重要です。特に在留資格の取得要件にも関わってくる重要な要素となります。
給与相場を知ることで、より効果的な転職活動や給与交渉が可能になります。
業種別・経験年数別の年収データ
ITエンジニアの給与は、業種や経験年数によって大きな差が生じます。
金融・保険業界では年収1,000万円以上も可能な一方、情報通信業では800万円から1,000万円程度だと言われています。なお、一般企業では年収400万円から600万円が標準的な範囲となっているようです。
経験年数別に見ると、3年未満では350万円~450万円、3~5年では450万円~600万円、5年以上では600万円以上という傾向が見られます。
特に「600万円の壁」と呼ばれる給与の節目は、多くのエンジニアにとって目標となっています。
参考:doda:ITエンジニア平均年収 経済産業省:IT産業の給与実態
外国人エンジニア特有の待遇と手当
外国人エンジニアの場合、基本給与に加えて特別な待遇や手当が付くことが一般的です。
■外国人エンジニアへの補助の例
- 住宅手当として月額2万円~5万円
- 日本語学習支援として月額1万円~3万円相当が支給
- ビザ取得サポート
- 帰国旅費補助 など
日本の法律では、外国人エンジニアの給与は日本人と同等以上である必要があり、これは在留資格取得の要件の1つとなっています。
特に稀少なスキルを持つエンジニアの場合は、年収1,000万円以上の提示や、住居費全額補助、家族の帯同支援など、さらに充実した待遇を期待できます。
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2.日本の都市別生活費比較

日本での生活費は都市によって大きく異なり、特に住居費を中心に各都市特有の経済事情により必要な生活費に大きな差が生じています。
この違いを理解することは、移住先を選ぶ際の重要な判断材料となります。
東京23区の平均生活費と内訳
東京23区での1人暮らしの場合、月々の総支出は18~24万円程度が必要と言われます。
この中で最も大きな割合を占めるのが家賃で、都心部の渋谷、新宿、港区では10万円以上、比較的手頃な城東エリアでも6万円~8万円程度が相場です。
その他、光熱費が1.5万円前後、食費が4万円~5万円、交通費が1.5万円前後となっており、地域や生活スタイルによって変動します。
参考:マイナビ:PREMIUM 総務省統計局:家計調査・単身世帯
地方都市での生活費の特徴
大阪や名古屋などの地方大都市では、東京と比べて全体的に15~20%ほど生活費を抑えることが可能です。
月々の総支出は14~20万円程度で、家賃は大阪市内で5万円~7万円ほど、名古屋市内で4.5~6.5万円程度が一般的です。
光熱費は1.3万円前後、食費は3.5万~4.5万円、交通費は1万円前後と、東京より全体的に抑えめな金額となっています。
住居費の地域差と選び方
住居費は生活費の中で最も大きな割合を占め、地域による差も顕著です。
通勤時間との兼ね合いで選択する場合、都心から30分圏内なら家賃を20%程度、45分圏内なら35%程度削減できる可能性があります。
また築年数による違いも大きく、新築と比べると築10年で10%ほど安価になると言われます。
初期費用については、東京23区では家賃の4~5ヶ月分、大阪・名古屋では3~4ヶ月分、地方都市では2~3ヶ月分が目安となります。
特に家賃に関しては、駅からの距離や建物の築年数を柔軟に検討することで、大幅なコスト削減が可能です。
参考:UR:東京郊外の家賃相場 賃貸スタイル:賃貸物件の築年数
3.月々の基本的な生活費の内訳

エンジニアとして日本で生活を始める際には、基本的な生活費についてくわしく理解しておくことが重要です。
ここでは、主要な支出項目ごとの具体的な金額と、それらの特徴について解説していきます。
家賃・光熱費の相場
都心部でのワンルームマンションの家賃は、場所や築年数によって変動します。
築5年以内など築浅の物件では8~12万円ほど、築10年以上で場所によっては5~7万円が一般的な相場となっています。
光熱費については、電気代が季節によって変動が大きく、夏季・冬季はエアコンの使用により7,000~1万円、春・秋季は4,000~6,000円程度です。
ガス代は3,000~5,000円、水道代は2,000~3,000円が平均的な金額です。さらに、インターネット利用料として4,000~5,000円程度を見込む必要があります。
参考:東京1R:ワンルーム築年別家賃相場 総務省統計局:家計調査・単身世帯
食費・日用品の予算目安
食費は生活スタイルによって大きく異なります。自炊中心の生活の場合、月額3万円から4万円程度で管理できるでしょう。
この内訳として、食材費が2.5~3万円、外食費が5,000~1万円程度が目安となります。外食中心の生活を送る場合は、月額5~6万円程度になるかもしれません。1回の外食につき1,000円前後を見込む必要があります。
日用品については、生活用品が3,000~5,000円、衣類・雑貨が5,000~1万円、医薬品・化粧品が3,000~5,000円程度が一般的な支出となります。
ただし日用品の支出は男女差なども大きいため、あくまで目安と考えましょう。
参考:三菱UFJニコス:1人暮らしの食費 おトクメガホン:日用品費
交通費の計算方法
通勤定期券の費用は、利用距離によって変動します。都内近距離(10kmまで)の場合は月額5,000~6,000円程度、中距離(10~20km)では1万円程度が目安となります。(JR東日本の場合)
タクシーを利用する場合は、東京23区が1.096kmまで500円、以降は255mまでを増すごとに 100円が加算される仕組みとなっています。
効率的な交通費の管理のためには、定期券と交通系ICカードを上手く併用し、可能な場合は自転車通勤も検討することをおすすめします。
参考:JR東日本:定期運賃表 東京都個人タクシー協会:運賃料金表
4.外国人特有の追加支出を解説

日本で生活する外国人エンジニアには、日本人には発生しない特有の支出が存在します。これらの費用を事前に把握し、適切な予算計画を立てることで、安定した生活基盤を築くことができます。
またこれらの費用の多くは、雇用企業からのサポートを受けられる可能性もあるため、入社時の待遇確認の際に確認することをお勧めします。
在留資格更新にかかる費用
在留資格に関連する費用は定期的に発生する重要な支出です。
- 在留資格更新申請料…4,000円(2025年4月より6,000円、オンライン申請の場合、5,500円)
- 在留資格を変更する際…4,000円(2025年4月より6,000円、オンライン申請の場合、5,500円) など
各種必要書類の翻訳費用については依頼する業者によりますが、戸籍謄本の翻訳が5,000円程度、卒業証明書の翻訳が3,000円程度など、1通あたり3,000円から1万円程度の費用が必要です。
行政書士に手続きを依頼する場合、5~10万円以上の費用がかるケースもあります。
海外送金や両替の手数料
海外送金に関しては従来の銀行送金では1回あたり3,000円~程度の手数料が発生します。各金融機関によって手数料は変わるため確認するようにしましょう。
近年では、Wiseなどの送金サービスを利用することで、送金額の0.6%~程度の手数料で済むケースも増えています。PayPalを利用する場合は送金額の3~4%程度の手数料が一般的です。
両替については銀行、空港など場所によって大きく手数料が異なり、また取り扱う通貨によっても変わるためあらかじめ調べておくことが重要です。
参考:ゆうちょ銀行:国際送金 Wise PayPal SMBC:外貨両替比較
医療保険と年金の仕組み
国民健康保険の加入時の手続き自体は無料ですが、月々の保険料は収入に応じて変動し、一般的な場合で1~3万円程度、40歳未満の場合は年収の7%から8%程度となります。これにより医療費の自己負担は30%に抑えられます。
年金については、国民年金の保険料が2024年度で月額16,520円、厚生年金は給与の約9%(会社負担を含めると約18%)となっています。
なお6ヶ月以上の加入期間がある場合、帰国時に脱退一時金として約5万円から約150万円を請求することが可能です。これら保険や年金に関する費用は、将来の安定した生活のために重要な支出となります。
参考:厚生労働省:外国人への国民健康保険 日本年金機構:外国人の国民年金 脱退一時金の制度
5.賢い節約術とお金の管理方法

日本での生活をより効率的に管理し充実した生活を送るためには、適切な節約術と資産管理の知識が不可欠です。
ここでは、実践的な節約方法と将来を見据えた資産形成の基礎知識について説明します。
家賃を抑えるコツと注意点
賢い物件選びは生活費全体を大きく左右する重要な要素です。
立地に関して柔軟に考えることで、大きな節約効果が得られます。主要駅から数駅離れた物件を選択することや、徒歩10~15分以上の物件を探すことでさらに家賃は抑えられる場合があるでしょう。
また築年数についても柔軟に考えることがポイントです。日本では一般的に築年数が古ければ、家賃は下がる傾向にあります。リノベーション済みの物件を選び、新築同様の住み心地を得ることも可能です。
契約時期についても、繁忙期を避け6月から8月などの比較的空室の多い時期を選ぶことで、より良い条件での契約が期待できます。
参考:UR:家賃を抑えるには?
食費を節約するテクニック
効率的な食費管理は、日々の生活に大きな影響を与える重要な要素です。
スーパーマーケットでは、タイムセールを活用したり、場合によってはまとめ買いを行うことで節約効果が期待できます。
食事の準備に関しては、週に2回程度まとめて調理を行い、適切な冷凍保存を活用することで、時間と費用の両方を効率的に管理することができます。
外食費の抑制については、ディナーより安価な場合が多いランチタイムを活用する、クーポンやポイントを積極的に利用するなど工夫をしてみましょう。
また職場に社食がある場合は、積極的に活用することでさらなる節約が可能です。
貯金と資産形成の基礎知識
長期的な経済的安定のために、計画的な貯金と資産形成は非常に重要です。
基本的な貯金戦略として、給与の10~20%程度を目標に定期的な貯金を行い、3ヶ月から6ヶ月分の生活費を緊急資金として確保しておくことが推奨されます。
資産形成については、iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用することで、毎月最大23,000円までの掛け金に対して税制優遇を受けることができます。
また、つみたてNISAを利用することで、年間40万円までの投資額について20年間の非課税期間が設定され、長期的な資産形成に有効です。
企業の福利厚生制度として提供される財形貯蓄や持株会なども、効果的な資産形成の手段として活用することができます。これらの制度を組み合わせることで、より安定した経済基盤を築くことが可能となります。
6.日本の生活費相場を知り外国人エンジニアとして働く

日本での生活費は、都市や生活スタイルによって大きく異なりますが、適切な情報と計画があれば効率的な管理が可能です。
特に外国人エンジニアの場合、在留資格関連の費用など特有の支出も考慮する必要があります。
この記事で紹介した節約術や資産管理の知識を活用し、充実した日本での生活を実現してください。