外国人の日本での賃貸契約には独特の商習慣や複雑な手続きが存在し、多くの方が戸惑いを感じています。しかし、適切な知識と準備があれば、スムーズに契約を進めることは十分可能です。
この記事では賃貸契約の重要ポイントから入居後のルール、トラブル対処法まで、外国人が安心して物件を借りるために必要な情報をくわしく解説します。
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- 外国人が日本で物件を借りる際の必要書類と手続きについて
- 敷金・礼金など日本特有の賃貸システムと対応方法について
- トラブルを防ぐための重要なルールと利用可能な支援制度について
1.外国人の賃貸契約における現状と課題

日本の賃貸市場において、外国人の住宅需要は年々増加傾向にあります。
特に就労ビザや留学ビザでの長期滞在者が増加する中、賃貸契約におけるさまざまな課題が浮き彫りになってきています。
これらの課題に対する理解と適切な対応が、スムーズな賃貸契約の鍵となっています。
増加する外国人居住者と不動産市場の変化
近年、日本における外国人居住者数は着実に増加を続けており、それに伴って賃貸住宅市場も大きな変化を迎えています。
特に東京や横浜、大阪、神戸などの大都市圏では、外国人向けの住宅ニーズが急速に高まっており、不動産市場もこの変化に対応を迫られています。
多くの不動産会社が外国語対応サービスを開始し、外国人専門の部署を設置するなど、市場環境は確実に整備されつつあります。
外国人が直面する賃貸契約の主な障壁
外国人が日本で住居を借りる際には、主に言語とコミュニケーション、日本独特の商習慣、入居審査における課題という3つの大きな障壁に直面します。
言語とコミュニケーションの課題
契約書や重要事項説明書が日本語のみである点や、不動産会社や家主とのコミュニケーションの困難さは、特に地方都市において問題となっている。
日本独自の商習慣への課題
敷金・礼金システムの理解や連帯保証人制度への対応、更新料や仲介手数料などの追加費用の存在は、多くの外国人にとって理解が難しい点となっている。
入居審査における課題
在留資格や在留期間の確認、収入証明や職業に関する審査、「外国人可」物件の限定的な供給。
上記の課題は、特に日本に来たばかりの外国人にとって大きな不安要素となっていますが、近年では保証会社の活用や多言語対応の進展など、これらの障壁を軽減するための取り組みも進んでいます。
2.賃貸物件を探す際の重要ポイント

賃貸物件探しでは、まず適切なサポートを得られる不動産会社を見つけることが重要です。
また、物件選びにおいては、単に条件に合う物件を探すだけでなく、外国人であることによる特有の考慮事項にも注意を払う必要があります。
外国人対応可能な不動産会社の見つけ方
不動産会社選びは賃貸契約成功の重要な第一歩です。
大都市圏 | 地方都市 |
・外国語対応専門の不動産ポータルサイトの活用 ・英語表記のある不動産会社のウェブサイトの確認 ・国際的な不動産フランチャイズチェーンの利用などが効果的 | ・勤務先の企業や学校を通じた紹介 ・地域の国際交流協会への相談 ・在日外国人コミュニティからの情報収集が有効な手段となる |
特に地方都市では外国語対応可能な不動産会社が限られているため、上記のネットワークを活用することが重要です。
物件検索時の効果的なアプローチ方法
実際の物件探しでは、オンラインでの検索と実地での確認を効果的に組み合わせることが重要です。
オンライン検索
「外国人可」「Foreigners Welcome」等の表示がある物件を優先的にチェックし、英語での物件情報が充実しているポータルサイトを活用することが効果的。バーチャルツアーや動画内覧が可能な物件があれば、事前に詳細な確認ができる。
物件選び
通勤・通学のアクセス利便性、近隣の生活インフラ(スーパー、病院、外国食材店等)の確認、外国人コミュニティの存在、建物のセキュリティ設備や管理体制などを総合的に判断する。
特に注目すべき点
「外国人可」の表示がない物件でも、日本語でのコミュニケーションが可能な場合や、会社が契約者となる場合は、交渉の余地が広がる可能性がある。
■合わせて読みたい
以下の記事では、東京賃貸マニュアルについて、解説しています。
3.契約時に必要な準備と対応

賃貸契約を進める際には、必要書類の準備から保証人の手配まで、さまざまな準備が必要となります。
特に外国人の場合は、日本人と比べて追加で必要となる書類や手続きがあるため、事前に十分な準備を整えることが重要です。
必要書類と身元保証の手配方法
賃貸契約時には、基本的な必要書類などとしていくつか用意する必要があります。
- 在留カード(両面コピー)
- パスポート
- 収入証明書または源泉徴収票
- 在職証明書または学生証
- 印鑑(サイン可能な場合もあり)など
書類は入居審査の重要な判断材料となるため、漏れのないように準備することが重要です。
また身元保証については、日本人の身元保証人を立てる場合、会社の上司や知人などに依頼することが一般的です。その際は、保証人の在職証明書や収入証明書などの資格証明も必要となります。
会社による法人契約の場合は、会社の登記簿謄本などの書類が求められます。
参考:国土交通省:外国人入居審査必要書類 民間賃貸への円滑な入居
保証会社の利用と選び方のコツ
近年は、日本人の身元保証人の代わりに保証会社を利用するケースが増えています。
■保証会社を選ぶ際に確認したいポイント
外国人対応実績、多言語対応の有無、保証委託料の金額(通常、賃料の50%~100%)、緊急時のサポート体制、更新時の手続きや費用 など
保証会社を利用することで身元保証人が不要になるだけでなく、24時間の緊急対応サービスや賃貸トラブル時の窓口対応、家主とのコミュニケーションサポートなど、さまざざまなメリットを得ることができます。
契約前には、保証内容や費用について詳細な説明を受け、特に年間の更新料や特約事項などについて、十分に理解しておくことが重要です。
4.日本特有の賃貸契約システムの理解

日本の賃貸契約システムは世界的に見ても特徴的な制度やルールが多く存在します。これらのシステムを正しく理解することは、予期せぬトラブルを防ぎ、円滑な賃貸生活を送るために不可欠です。
敷金・礼金システムの詳細解説
日本の賃貸契約において、初期費用は非常に重要な要素です。
- 敷金…退去時に返金される保証金として機能するが、実際の返金時には清掃費や修繕費が差し引かれる場合がある
- 礼金…契約時に支払う返金されない費用で、通常家賃1~2ヶ月分が相場となる
- 仲介手数料…不動産会社への報酬(通常、家賃1ヶ月分+消費税)
- 火災保険…加入が必須の場合が多い
これらの費用は不要なケースもありますが、多くの賃貸契約において必要となることがほとんどでしょう。事前に詳細を確認し、十分な資金準備をしておくことが重要です。
更新料と契約更新の仕組み
日本の賃貸契約では、一般的に2年ごとに契約更新が必要となります。
更新時 | 更新の時期 |
・家賃の0~1ヶ月分程度の更新料が発生するのが一般的 ・賃料改定の可能性もあるため、注意が必要 | ・期限切れの1~2ヶ月前に通知され、この時期に合わせて更新手続きと必要書類の準備を行う |
契約形態によっても更新の仕組みは異なります。
- 普通借家契約 更新料が発生する一般的な契約形態となる
- 定期借家契約 契約期間満了で終了し、継続する場合は新たな契約が必要となる
5.入居後の重要なルールとマナー

日本の賃貸物件での生活には、独特のルールやマナーが存在します。これらは文化的な背景に基づいているため、外国人居住者にとっては新しい習慣となることも多いでしょう。
しかしこれらのルールやマナーを理解し、実践することで、近隣住民との良好な関係を築き、快適な生活を送ることができます。
日本の住居における基本的なルール
日本の賃貸物件における基本的なルールを知っておきましょう。周囲への配慮やルールを守ることが大切になります。
基本的なルールまとめ
玄関での靴は脱ぐ…単なる習慣ではなく、室内の清潔さを保つための重要な文化的慣習ととらえる
深夜の騒音に注意…特に夜10時以降など、夜間は生活音にも配慮が必要
ゴミの分別と収集日の厳守…各地域によって分別方法や収集日が異なるため、管理会社から提供される案内をよく確認する
共用部分の使用…エレベーターやごみ置き場、駐輪場など、それぞれ定められたルールに従う
住居の管理…定期的な換気と清掃、水回りの適切な使用と管理が必要。壁や床への釘打ちなどは制限されている場合が多く、ペットの飼育に関しても事前に規定を確認する
近隣住民とのコミュニケーション方法
日本の集合住宅では、近隣住民との良好な関係構築が重要です。入居時には、直近の隣室を中心に挨拶回りを行うことが推奨されます。
その際には簡単な自己紹介と今後の付き合いへの協力依頼を行い、必要に応じて管理人さんへの挨拶も忘れずに行います。
日常的なコミュニケーションとしては、廊下や階段での挨拶を欠かさず行うことが基本となります。
また管理組合からなどの通知には重要な情報が含まれていることが多いため、定期的に確認する習慣をつけることが大切です。
6.トラブル防止と解決方法

賃貸生活において、トラブルを完全に避けることは難しいかもしれません。
しかし適切な予防策と対処法を知っておくことで、多くの問題を未然に防ぎ、また発生した場合でも円滑に解決することができます。
特に外国人居住者の場合、文化的な違いや言語の壁による誤解が生じやすいため、より慎重な対応が求められます。
よくある問題とその対処法
賃貸契約に関連するトラブルとしては、契約内容の誤解や解釈の違いが最も一般的です。
特に重要なのは、契約書の細かい条項まで理解しておくことです。更新手続きの遅延や忘れは、契約の自動終了や追加費用の発生につながる可能性があるため、更新時期は必ず記録しておきましょう。
退去時の原状回復に関する認識の違いも頻繁に発生するトラブルです。入居時に部屋の状態を写真で記録し、退去時の修繕費用について事前に理解しておくことが重要です。
解約時の手続きや費用についても契約時に確認しておくことで、予期せぬ出費を避けることができます。
■日常生活でのトラブル例と注意点
- 特に深夜の足音や家具の移動音、テレビやステレオの音量には注意
- ゴミ出しルールの違反も深刻な問題となることがあるため、各地域のゴミ分別ルールをしっかりと理解し、収集日時を守る
- 共用施設の使用方法の誤解や、住居の設備使用に関する問題も発生しやすい事例となっている
上記のようなトラブルを防ぐためには入居時に管理会社から提供される説明書や使用規則をよく読み、不明な点があれば積極的に質問することが推奨されます。
言語の壁を克服するためのリソース
言語の問題による誤解や行き違いを防ぐため、さまざまな多言語サポートを活用することができます。
多くの不動産会社では通訳サービスを提供しており、重要な契約内容の説明や交渉時に利用することができます。
各地域の行政機関も外国人相談窓口を設置しており、住居に関する相談を母国語で行うことが可能です。国際交流協会のサポートも、地域での生活に関する様々な情報や助言を得られる貴重なリソースとなっています。
また、最近では多言語対応のアプリや翻訳ツールの精度も向上しており、日常的なコミュニケーションの補助として活用できます。
トラブルが発生した際の対応手順
- 管理会社や不動産会社に相談する
- 必要に応じて通訳サービスを要請し、コミュニケーションを円滑に進める
- 法的なアドバイスが必要な場合は、外国人向け法律相談サービスを利用することも検討する
トラブルに関する記録や証拠の保管を心がけることで、問題解決をスムーズに進めることができます。特に重要なのは、問題が小さいうちに対応することです。
小さな誤解や行き違いが、放置することで大きなトラブルに発展するケースが多いため、早期発見・早期対応を心がけましょう。
7.外国人向け支援制度の活用方法

近年、外国人居住者の増加に伴い、様々な支援制度や相談窓口が整備されています。これらの制度を適切に活用することで、より安心して日本での賃貸生活を送ることができます。
支援制度は地域によって異なる場合がありますので、居住地域の制度を確認することが重要です。
行政による支援サービス
自治体による外国人居住者向けの支援サービスは年々充実してきています。
住宅相談窓口では、多言語での対応が可能となっており、賃貸契約に関する基本的な疑問から複雑な手続きまで、幅広い相談に対応しています。
特に注目すべきは、賃貸契約時の通訳派遣サービスです。これにより、重要事項説明や契約内容の確認を、より正確に理解することが可能となります。
また多くの自治体では住宅情報を多言語で提供しており、物件探しの初期段階から活用することができます。
居住支援制度の案内と申請サポートも行っており、住宅確保要配慮者向けの支援制度を利用できる場合もあります。
■公的保証制度
自治体による家賃債務保証制度は民間の保証会社を利用するよりも費用面で有利な場合があります。また公的機関による入居保証制度は、保証人の確保が困難な場合の有効な選択肢となります。住宅支援給付金制度や留学生向け住宅補助制度なども、条件を満たす場合は積極的に活用することをおすすめします。
参考:出入国在留管理庁:住居 厚生労働省:あんしん賃貸支援 国土交通省:家賃債務保証の情報
多言語対応の相談窓口一覧
外国人居住者が利用できる相談窓口は、目的や状況に応じて使い分けることができます。
国際交流協会の生活相談窓口 | 外国人在留支援センター(FRESC) | 各都道府県の外国人生活支援センター | 不動産関連の業界団体による相談窓口 |
住居に関する相談だけでなく、生活全般についての相談も可能 | 住居に関する相談にも対応しており、専門的なアドバイスを受けることができる | 地域特有の住宅事情や制度について詳しい情報を得ることができる | 専門的な知識に基づいたアドバイスを提供 |
■相談窓口を効果的に活用するための準備
- 各窓口の対応言語を事前に確認し、必要に応じて通訳の手配を依頼する
- 相談時に必要な書類を準備しておき、より具体的なアドバイスを受けられるようにする
- 相談内容は事前に整理しておくと、限られた時間を有効に活用できる
- 予約システムを導入している場合、その利用方法も確認しておく
参考:TIPS:国際交流協会一覧(東京都) 法務省:FRESC 厚生労働省:都道府県一覧
8.日本での賃貸契約は外国人対応可能な業者やサポートを活用する

日本での賃貸契約は外国人にとって複雑に感じられるかもしれませんが、正しい知識と適切な準備があれば、決して困難なものではありません。
各種支援制度や相談窓口も充実してきており、必要なサポートを受けることができます。
この記事で解説した内容を参考に、安心して日本での新生活をスタートさせてください。
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