日本で働きたい外国籍の方へ。就労ビザの取得から日本での生活基盤構築、そして長期的なキャリア形成まで、外国籍の方が日本で働くために必要な情報を10ステップで解説します。
日本特有の雇用慣行や文化的違いを乗り越え、充実した職業生活を送るためのポイントをこの記事で確認しましょう。
- 在留資格(就労ビザ)の種類と自分に最適なビザの選び方、具体的手順について
- 日本企業での就職活動の進め方と面接対策、求人情報の探し方について
- 住居探し、銀行口座開設、健康保険加入など日本での生活基盤とキャリアプランについて
1.日本で働く外国籍人材の現状

日本における外国籍労働者の数は年々増加しており、2023年度には遂に200万人を突破しました。
少子高齢化による労働力不足を背景に、日本政府は外国籍人材の受け入れ拡大に積極的な姿勢を示しています。
アジア諸国からの外国籍人材が多く採用も増加
国籍別に見ると、ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、ネパールからの労働者が多く、特にアジア諸国からの人材が中心となっています。
業種別では、製造業、サービス業、IT業界での需要が高まっており、高度なスキルを持つIT人材や、特定技能制度による介護、外食、宿泊業などの分野での採用も増加傾向にあります。
日本で働くことの魅力は多い
外国籍の方にとって日本で働く魅力は多岐にわたります。
安全・安心な生活環境 | ・世界でも上位レベルの治安の良さ ・清潔で整備された公共施設・交通機関 ・充実した医療システム |
キャリア形成のチャンス | ・技術や専門知識を習得できる環境 ・日本企業特有の品質管理や業務プロセスの経験 ・グローバル展開する日本企業でのキャリアパス |
安定した雇用と待遇 | ・法律で保護された労働環境 ・健康保険や年金などの社会保障制度 ・日本人と同等の給与水準(就労ビザでは法的に義務付け) |
2.日本で外国籍人材が働くための資格要件

就労ビザとは?在留資格との違い
外国籍の方が日本で合法的に働くためには、適切な資格が必要です。
この資格について「就労ビザ」や「在留資格」という言葉をよく耳にしますが、これらは厳密には異なる概念です。
在留資格とは、法律上「日本での在留と一定の活動を認める資格」のことを指します。全29種類の在留資格があり、それぞれ認められる活動内容が定められています。
「就労ビザ」は法律上の正式な用語ではなく、在留資格のうち「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」が認められている資格を指す通称です。
つまり、就労ビザとは「働くことができる在留資格」のことを意味します。
ビザ(査証)と在留資格は以下のように区別されます。
- ビザ(査証):外国籍の方が日本に入国する際に必要な入国許可の証明書であり、日本大使館・領事館で発給される
- 在留資格:日本に滞在して活動するための資格であり、入国審査時または入国後に付与される
就労可能な主な在留資格16種類の概要
日本で外国籍の方が合法的に働くために取得できる在留資格(いわゆる就労ビザ)は全部で16種類あります。
それぞれに認められる活動内容や在留期間が異なるため、自分の職種や状況に合った在留資格を選ぶことが重要です。
主要な就労ビザ(一般的によく利用される資格)
技術・人文知識・国際業務(技人国)
- 対象:技術者やオフィスワーカーとして企業で働く外国籍の方
- 特徴:就労ビザの代表格で最も広く利用されている
- 条件:大学や専門学校での専攻と業務内容の関連性が必要
- 在留期間:5年、3年、1年または3カ月
特定技能
- 特定技能1号:人手不足の特定産業分野(12分野)で働く外国籍人材向け
- 特定技能2号:より熟練した技能を要する業務(介護を除く11分野)
- 在留期間:1号は最大5年まで、2号は更新制限なし
技能実習
- 目的:技術を学んで母国に技能移転するための制度
- 対象:建設、食品製造、機械・金属関係など様々な職種
- 在留期間:最長5年(1号→2号→3号と進む)
介護
- 対象:介護福祉士の資格を持つ外国籍人材
- 特徴:訪問系サービスも可能で、就労期間に制限なし
- 在留期間:5年、3年、1年または3カ月
企業内転勤
- 対象:海外拠点から日本拠点へ転勤する外国籍社員
- 業務内容:技術・人文知識・国際業務と同様の業務
- 在留期間:5年、3年、1年または3カ月
経営・管理
- 対象:日本で会社を設立・経営、管理職として働く外国籍人材
- 業種制限:適法な事業であれば業種に制限なし
- 在留期間:5年、3年、1年、6カ月、4カ月または3カ月
最適な就労ビザの選び方
自分に最適な就労ビザを選ぶことは、日本での就労を成功させる重要な第一歩です。以下のポイントを考慮して、自分の状況に合った在留資格を見極めましょう。
<自分の状況を分析する>
学歴・専攻:大学や専門学校での専攻分野
職歴:これまでの職務経験と専門性
希望職種:日本でどのような仕事をしたいか
滞在予定期間:短期か長期か、永住の可能性はあるか
日本語能力:ビジネスレベルの日本語力があるか
<状況別の推奨ビザ>
大学・専門学校卒業者 → 技術・人文知識・国際業務
専門的スキルや経験が少ない場合 → 特定技能1号
日本企業の海外拠点からの転勤 → 企業内転勤
起業や会社経営を目指す場合 → 経営・管理
高度な専門性を持つ場合 → 高度専門職
3.就労ビザ取得のための10ステップ

日本で働くための就労ビザを取得するプロセスは、複数のステップに分かれており、正確に手続きを進めることが重要です。
ここでは、就労ビザ取得のための10のステップを順を追って解説します。これらのステップを着実に進めることで、スムーズなビザ取得が可能になります。
ステップ1:自分の資格や経験に合う在留資格を特定する
就労ビザ取得の第一歩は、自分のバックグラウンドと希望する職種に最適な在留資格を特定することです。以下のポイントに従って、自己分析を行いましょう。
自己分析のためのチェックポイント
- 学歴:大学や専門学校での専攻分野は何か
- 職歴:これまでにどのような業務経験があるか(年数と具体的な業務内容)
- 保有資格:関連する専門資格や技能証明があるか
- 日本語能力:どのレベルの日本語スキルを持っているか(JLPT等の資格)
- 特定分野での専門性:特に高い専門性や実績があるか
これらの情報を整理したら、出入国在留管理庁のウェブサイトなどで各在留資格の要件を確認し、自分の状況と照らし合わせましょう。
ステップ2:必要書類を準備する
就労ビザの申請に必要な書類を準備することは、時間と手間がかかるプロセスです。早めに準備を始め、漏れがないように注意しましょう。
ステップ3:求人を見つけ、内定を獲得する
就労ビザを取得するためには、日本企業からの内定が必要です。外国籍の方向けの求人探しから内定獲得までのポイントを押さえましょう。
求人情報の探し方
- 外国籍向け専門求人サイト:Daijob、Careercross、JapanCareer など
- グローバル採用を行う企業の採用ページ:大手企業や外資系企業は英語の採用ページがある場合が多い
- 人材紹介会社・エージェント:Pasona Global、Robert Walters、Michael Pageなど
- LinkedInなどの国際的なプラットフォーム
- 就職フェア:外国籍留学生向け就職イベントやオンラインジョブフェア
効果的な就職活動のコツ
- 日本語能力試験(JLPT)の資格を取得し、日本語力を証明する
- 日本式の履歴書・職務経歴書を丁寧に作成する
- 外国籍人材採用に積極的な業界や企業を重点的に探す(IT、外資系、貿易関連など)
- 自国の言語や文化知識など、外国籍人材だからこそのスキルや強みをアピールする
ステップ4:在留資格認定証明書の申請(企業と連携)
内定を獲得したら、次のステップは「在留資格認定証明書」の申請です。
この証明書は、外国籍の方が日本に入国・在留するための資格があることを証明するもので、ビザ申請をスムーズに進めるために重要です。
ステップ5:在留資格認定証明書の受け取り
申請から1~3ヶ月程度の審査期間を経て、在留資格認定証明書の交付結果が出ます。このステップでは、証明書の受け取りと確認のポイントを解説します。
■受け取りの流れ
- 審査完了後、出入国在留管理局から代理人(企業)に結果通知が届く
- 許可の場合は、代理人が出入国在留管理局に行き、在留資格認定証明書を受け取る
- 代理人(企業)が本人に証明書を国際郵便で送付する
- 本人が証明書を受け取り、内容を確認する
■証明書受け取り後の確認事項
- 記載内容(氏名、生年月日、国籍、在留資格の種類、在留期間等)に誤りがないか
- 証明書の有効期限を確認(作成日から3ヶ月以内に日本に入国する必要がある)
- 証明書に破損や汚損がないか確認(ビザ申請に支障をきたす可能性がある)
- 顔写真や公印が正しく貼付・押印されているか
ステップ6:本国の日本大使館・領事館でビザを申請する
在留資格認定証明書を受け取ったら、次は本国の日本大使館または領事館で実際にビザ(査証)を申請します。
このステップは、日本に入国するための最終的な許可を得る重要なプロセスです。
ビザ申請の流れ
- 自国の日本大使館・領事館を特定する(外務省ウェブサイトで検索可能)
- 大使館・領事館のウェブサイトで申請手続きの最新情報を確認する
- 必要書類を準備する
- 予約が必要な場合は予約を取る(国によって異なる)
- 大使館・領事館に本人が出向いて申請する
- 申請手数料を支払う
- ビザ発給を待つ(通常5業務日程度)
- ビザを受け取る
ステップ7:ビザを受け取り、日本に入国する
ビザの発給が完了したら、いよいよ日本への渡航準備です。このステップでは、ビザ受け取りから日本入国までの流れを解説します。
◎ビザ受け取り後のチェックリスト
□ビザの記載内容(氏名、生年月日、発行日、有効期限、在留資格の種類など)に誤りがないか
□パスポートへの貼付状態が適切か(剥がれやすくなっていないか)
□申請した在留資格と発給されたビザの種類が一致しているか
□在留期間が予定通りか
◎日本入国の準備
- 航空券の予約(在留資格認定証明書の有効期限内に入国する必要がある)
- 必要な持参物:パスポート、在留カード、現金、クレジットカード等
- 入国後の住所情報(寮、ホテル、アパートなど)
- 緊急連絡先リスト(企業担当者、在日知人など)
ステップ8:在留カードを受け取る
日本に入国すると、「在留カード」という身分証明書が発行されます。これは日本での滞在中、最も重要な公的身分証明書となり、様々な手続きに必要となるものです。
在留カードとは
- 中長期在留者(3ヶ月を超えて日本に滞在する外国籍の方)に交付される身分証明書
- 在留資格や在留期間、就労制限の有無などが記載されている
- パスポートと共に身分を証明する公的書類として機能
- 16歳以上は常時携帯義務がある(違反すると罰則の対象)
ステップ9:必要な行政手続きを行う
日本に入国し在留カードを受け取ったら、さまざまな行政手続きが必要になります。
これらの手続きは日本での生活基盤を整えるために重要で、法律で定められた期限内に行う必要があります。
手続きの優先順位と期限
- 住民登録(住居地を定めた日から14日以内・必須)
- 国民健康保険加入(住民登録と同時に可能・必須)
- 年金加入(住民登録から14日以内・必須)
- 銀行口座開設(給与受け取りのため・推奨)
- 携帯電話契約(連絡手段として・任意)
- マイナンバー通知(住民登録後、後日郵送・自動)
各手続きには必要書類や期限があるため、漏れなく実施することが重要です。特に住民登録と健康保険加入は法律で義務付けられていますので、期限内に必ず完了させましょう。
ステップ10:就労を開始し、在留資格の更新計画を立てる
必要な行政手続きを完了したら、いよいよ就労の開始です。同時に、在留期間満了に向けた更新計画も早めに立てておくことが重要です。
就労開始時の注意点
- 雇用契約書の内容と実際の労働条件が一致しているか確認する
- 在留資格で認められた活動の範囲内での就労を厳守する
- 就労開始後の各種手続き(雇用保険など)について会社と確認する
在留期間の管理
- 在留カードの有効期限(=在留期間満了日)を確認し、スマートフォンのカレンダーなどに登録
- 更新申請は在留期間満了の3ヶ月前から可能なので、4ヶ月前頃からの準備を計画
- 会社の人事担当者にも更新時期を伝え、サポート体制を確認しておく
- 在留期間更新には「継続して就労していること」が重要なため、勤務実績を蓄積する
4.主要な就労ビザの詳細解説

日本で働くための就労ビザにはさまざまな種類がありますが、ここでは特に外国籍人材として日本で働く際に重要となる代表的な4種類の就労ビザについて、その特徴や申請条件、メリットなどをくわしく解説します。
技術・人文知識・国際業務ビザの特徴と申請条件
技術・人文知識・国際業務ビザ(通称「技人国」または「ギジンコク」ビザ)は、日本の就労ビザの中で最も広く利用されている代表的な在留資格です。
外国籍人材が日本企業で専門的な技術者やオフィスワーカーとして働く際に必要となります。
外国籍のITエンジニアにとって最も一般的なビザとしても認識されています。
技人国ビザ3つの分野と対象となる業務
- 技術分野
対象:理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術を要する業務
典型的な職種:ITエンジニア、プログラマー、システム開発者など
- 人文知識分野
対象:法律学、経済学、社会学等、その他人文科学の分野に関する知識を要する業務
典型的な職種:経営コンサルタント、会計士、マーケティング担当など
- 国際業務分野
対象:外国の文化に基づく思考・感受性を必要とする業務や外国語の能力を活かした業務
典型的な職種:通訳、翻訳、語学教師、海外マーケティング担当など
特定技能ビザの概要と最新動向
特定技能ビザは、深刻な人手不足に対応するため2019年4月に新設された在留資格です。
技能実習制度とは異なり、「労働者」としての位置づけが明確で、即戦力となる外国籍人材の受入れを目的としています。
近年では制度の拡充が進み、対象分野の拡大や特定技能2号への道筋が整備されるなど、注目すべき動向が見られます。
特定技能ビザの基本構造
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、それぞれ対象分野や在留条件が異なります。
特定技能1号
- 対象レベル:相当程度の知識または経験を必要とする技能レベル
- 在留期間:1年、6カ月、4カ月の更新制(通算5年まで)
- 対象分野:現在12分野で受入可能(追加4分野が決定済み)
- 家族帯同:原則として認められない
特定技能2号
- 対象レベル:熟練した技能を要するレベル
- 在留期間:3年、1年、6カ月の更新制(更新回数の制限なし)
- 対象分野:以前は2分野のみだったが、介護を除く11分野に拡大
- 家族帯同:配偶者・子どもの帯同が可能
高度専門職ビザのメリットと取得方法
日本で長期的なキャリアを形成していく上で、多くの外国籍の方が将来的な目標として見据えるのが「高度専門職」ビザです。
高度専門職ビザを取得すれば、さまざまな優遇措置を受けることができ、より柔軟に活動ができるようになります。
<高度専門職ビザの特徴とメリット>
- 永住権(永住許可)の特徴
- 在留期間に制限がない(更新不要)
- 在留活動に制限がなく、職種や業種を自由に選べる
- 複合的な活動許可(例:大学教授をしながら企業の技術顧問も兼任できる)
- 親や家事使用人の帯同が可能(条件あり)
- 永住許可申請要件の緩和(通常10年→高度人材は1〜3年)
- 高度専門職ポイント制
- 「高度専門職1号」で70点以上:3年の在留で永住申請可能
- 「高度専門職1号」で80点以上:1年の在留で永住申請可能
- 学歴、職歴、年収、年齢、資格などでポイントを加算
- 日本語能力や日本の大学卒業でも加点
経営・管理ビザで起業するための条件
経営・管理ビザは、外国籍の方が日本で会社を設立・経営したり、企業の管理職として働いたりするための在留資格です。
自分のビジネスアイデアを日本で実現したい起業家にとって、このビザは重要な選択肢となります。
経営・管理ビザの基本概要
- 目的:外国籍人材による日本での企業経営や管理業務の遂行を可能にする
- 対象者:会社設立者、経営者、管理職として就職する外国籍の方
- 在留期間:5年、3年、1年、6カ月、4カ月または3カ月
- 業種制限:法令上適正に営まれる事業であれば、業種に制限なし
- 家族帯同:配偶者と子どもの帯同が可能
申請のための主要条件
- 事業所の確保
実体のある事業所(オフィス、店舗など)が必要
バーチャルオフィスは原則として認められない
賃貸契約書または所有権を証明する書類が必要
- 事業規模要件
以下のいずれかを満たすことが基本条件
資本金500万円以上の会社
日本人常勤従業員2名以上を雇用
業種や事業計画によっては条件緩和の可能性あり
- 事業計画の妥当性
具体的で実現可能な事業計画書の作成が必須
収支計画が現実的であること(最低でも2〜3年分)
市場分析や競合調査に基づいた計画であること
5.日本での就職活動のコツ

日本での就職活動は、外国籍の方にとって独特のルールやマナーがあり、母国での就職活動とは異なる点が多くあります。
適切な求人情報の探し方から、効果的な履歴書・職務経歴書の作成方法など、日本企業に就職するための実践的なコツを解説します。
外国籍人材向け求人情報の探し方
日本で就職するための第一歩は、自分に合った求人情報を効率的に探すことです。外国籍の方向けの求人情報はさまざまな媒体で提供されており、それぞれ特徴が異なります。
外国籍人材専門の求人サイト | それぞれのサイトごとの特徴や求人の傾向を確認して、自身に適した求人を選択する |
外国籍人材に強い人材紹介会社・エージェント | 外資系・日系グローバル企業の専門職や管理職をはじめとした、ミドル~ハイクラス求人も扱う場合がある |
政府機関・公的サポート | 東京、大阪、名古屋などの主要都市に設置され、無料職業紹介を実施する など |
効果的な履歴書・職務経歴書の書き方
日本企業への応募では、履歴書と職務経歴書が採用担当者の第一印象を左右する重要な書類です。
外国籍の方が日本式の書類を作成する際は、母国との違いを理解し、日本の採用慣行に合わせた内容にすることが大切です。
日本式履歴書の特徴と作成ポイント
基本フォーマット
- JIS規格の履歴書フォーマットを使用(コンビニやネットで入手可能)
- A4サイズ、手書きまたはパソコン入力(企業の指定に従う)
- 証明写真(3cm×4cm)を必ず貼付(スーツ着用、正面向き、背景無地)
- 黒のボールペンか万年筆で丁寧に記入(手書きの場合)
記入内容のポイント
- 氏名:日本語表記と英語(パスポート表記)の両方を記載
- 住所:日本の住所を正確に記載(郵便番号も忘れずに)
- 学歴・職歴:最終学歴から逆順に記載するのが一般的
- 在留資格:現在の在留資格と期限を明記
職務経歴書の作成ポイント
基本構成
- A4用紙1〜3枚程度にまとめる
- 氏名と連絡先を最初に記載
- 職務経歴の概要(キャリアサマリー)を冒頭に配置
- 職務経験を時系列または逆時系列で詳細に記載
- スキルや資格の一覧を含める
効果的な書き方
- 具体的な実績や成果を数字で示す(「売上20%向上」「顧客満足度95%達成」など)
- 担当業務を箇条書きで簡潔に記述
- 日本企業で役立つスキルや経験を強調
6.日本で働く上での言語と文化の壁

日本で働く外国籍の方が直面する最大の課題の1つが、言語と文化の壁です。
日本語は世界的に見ても習得が難しい言語の1つとされており、また日本の企業文化や働き方には独特の特徴があります。これらの壁を乗り越えることは、日本でのキャリア成功に不可欠です。
必要な日本語レベル(業種・職種別)
日本で働く場合、どの程度の日本語能力が必要かは業種や職場環境によって大きく異なります。
また日本語力を高めることは、就職の選択肢を広げるだけでなく、職場での評価やキャリアアップにも直結します。
<業種・職種別に必要な日本語レベル>
IT・エンジニア職
- 必要レベル:N3〜N2
- 特徴:比較的英語環境が整っている企業も多い
- ポイント:技術用語や開発文書の理解、基本的なコミュニケーション能力
サービス業・営業職
- 必要レベル:N2〜N1
- 特徴:顧客対応が主な業務のため高い日本語力が求められる
- ポイント:敬語や接客用語の習得、交渉力、説得力のある日本語
事務・管理職
- 必要レベル:N2〜N1
- 特徴:社内文書作成や会議参加など言語依存度が高い
- ポイント:ビジネス文書作成能力、会議での発言力
日本の企業文化と働き方の特徴
日本の企業文化と働き方には、外国籍の方にとって新鮮で時に戸惑う特徴が多くあります。これらを事前に理解しておくことで、日本の職場への適応がスムーズになります。
日本企業文化の基本的特徴
- 集団主義と調和の重視
- 個人の成果よりもチームとしての成功を重視
- 「和」を乱す行動や過度な自己主張は避けられる傾向
- 意思決定は合意形成(コンセンサス)に基づく場合が多い
- チームのために自己犠牲をいとわない姿勢が評価される など
- 階層構造と年功序列
- 年齢や勤続年数に基づく序列意識
- 上司と部下の関係が明確
- 敬語の使い分けによる上下関係の表現
- 若手社員の意見よりも経験者の判断が優先される傾向
- 長期的視点と雇用安定
- 短期的な成果よりも長期的な成長を評価
- 社員教育やOJT(On the Job Training)の重視
ビジネスマナーの基本と職場でのコミュニケーション
日本の職場では、ビジネスマナーとコミュニケーションのルールが非常に重視されます。これらを正しく理解し実践することで、職場での信頼を得て、スムーズな人間関係を構築できます。
日本のビジネスマナーの基本
- 挨拶とお辞儀
- 朝の「おはようございます」、日中の「お疲れ様です」、帰りの「お先に失礼します」
- お辞儀の基本:会釈(15度)、敬礼(30度)、最敬礼(45度)
- 先輩・上司には自分から積極的に挨拶する
- 来客には「いらっしゃいませ」「お待ちしておりました」と迎える など
- 名刺交換
- 両手で名刺を差し出し、相手の名刺も両手で受け取る
- 自分の役職・名前を名乗りながら渡す
- 受け取った名刺は大切に扱い、会議中はテーブルに並べておく
- 名刺入れを使用し、ポケットから直接出さない
7.日本での生活基盤を整える

日本で働くためには、就労ビザの取得だけでなく、生活基盤をしっかりと整えることが重要です。
住居、銀行口座、保険、税金などの基本的な生活インフラを適切に準備することで、日本での生活をスムーズにスタートでき、仕事に集中することができます。
住居の見つけ方と契約時の注意点
日本の住居は主にアパート(木造・軽量鉄骨)、マンション(鉄筋コンクリート)、シェアハウスがあります。
探し方は不動産会社訪問、外国籍人材対応サイト、会社のサポート活用が一般的です。契約時は敷金(家賃1~2ヶ月分)、礼金(返還されない)、仲介手数料など初期費用が高額なので注意が必要です。
また外国籍の方は保証人の問題があるため、保証会社の利用が一般的となっています。
銀行口座開設と携帯電話契約のプロセス
銀行口座は主要都市銀行(三菱UFJ等)かゆうちょ銀行から選び、在留カード、パスポート、印鑑、在職証明書などを持参して支店で申し込みます。ただし外国籍の方は在留期間6ヶ月以上が口座開設に必要な条件の場合が多いです。
携帯電話は大手キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)か格安SIM(楽天等)から選択します。契約には在留カード、パスポート、銀行口座情報が必要です。外国籍の方向けにはプリペイドSIMやeSIMという選択肢もあります。
どちらも来日後できるだけ早く手続きすることをおすすめします。
健康保険・年金・税金の基礎知識
日本在留が3ヶ月超の外国籍の方は健康保険加入が義務です。会社員は社会保険(給与の約5%、会社も同額負担)、自営業者は国民健康保険に加入します。
医療費の自己負担は30%です。年金も同様に会社員は厚生年金(給与約9%)、自営業は国民年金(月約16,000円)に加入義務があります。短期滞在者向けに「脱退一時金」制度があります。
税金は所得税(5~45%)と住民税(約10%)が主で、183日以上の居住者は全世界所得に課税されます。二重課税防止のため租税条約による控除制度もあります。
8.在留資格の更新と長期的なキャリアプラン

日本での就労を継続するためには、在留資格の適切な管理と更新が不可欠です。また、長期的なキャリア形成を考える場合は、永住権取得や在留資格の変更なども視野に入れる必要があります。
在留期間更新の手続きと必要書類
在留資格は永続的なものではなく、付与された在留期間が満了すれば更新が必要です。更新手続きを適切に行うことで、日本での就労を継続することができます。
在留期間更新の基本
- 更新申請のタイミング
- 在留期間満了日の3ヶ月前から申請可能
- 更新期限(満了日)の2週間〜1ヶ月前までに申請することを推奨
- 期限切れ後の申請は原則不可(特別な理由がある場合を除く)
- 更新審査中に期限が切れても、結果通知まで最大2ヶ月間は在留可能
- 申請場所
- 住居地を管轄する地方出入国在留管理局または出張所
- 一部の出張所では取り扱っていない在留資格もあるため事前確認が必要
- 東京、大阪などの主要都市では予約制の場合もある
- 審査期間
- 通常2週間〜1ヶ月程度
- 繁忙期(3〜4月)は混雑するため時間がかかる場合も
- 書類不備がある場合は追加で時間がかかる
- オンラインによる申請状況確認が可能な場合も
永住権取得への道筋と条件
日本で長期的なキャリアを形成していく上で、多くの外国籍の方が将来的な目標として見据えるのが「永住権」(正式には「永住許可」)の取得です。
永住権を取得すれば、在留期間の制限なく日本に滞在でき、より安定した生活とキャリアを築くことができます。
永住権の特徴とメリット
- 永住権(永住許可)の特徴
- 在留期間に制限がない(更新不要)
- 在留活動に制限がなく、職種や業種を自由に選べる
- 在留カードの更新(7年ごと)は必要
- 再入国許可の有効期間が最長5年
- 日本国籍は付与されない(選挙権・被選挙権なし)
- 永住権取得のメリット
- 在留期間更新の手続きが不要になる
- 転職や起業の自由度が高まる
- 住宅ローンなどの長期融資を受けやすくなる
- 家族の呼び寄せがしやすくなる
- 将来の安定性と計画性が向上する
転職時の在留資格に関する注意点
転職時は在留資格の活動範囲内での職種変更が基本です。技術・人文知識・国際業務ビザなら同種業務への転職は比較的容易ですが、職種が大きく変わる場合は在留資格変更申請が必要です。
退職後は14日以内に出入国在留管理局へ届出を行い、新しい就職先が決まったら再度届出が必要です。
3ヶ月以上の無活動期間があると在留資格取消の対象となるため、次の就職先が決まってから退職するのが理想的です。頻繁な転職は更新時に不利になる可能性があるため注意しましょう。
9.外国籍の方が日本で働く際のよくある質問

日本で働くことを検討している外国籍の方々からは、就労ビザや日本での勤務に関するさまざまな疑問が寄せられます。
ここでは、最も頻繁に尋ねられる質問とその回答をまとめました。
ビザの申請期間、日本語能力、副業の可能性など、実務的で具体的な情報を提供します。
就労ビザの申請から取得までどのくらいの期間がかかりますか?
就労ビザの申請から取得までの期間は、申請の種類、時期、提出書類の完全性などさまざまな要因によって変動しますが、一般的な目安は以下です。
海外から新規に就労ビザを取得する場合
- 在留資格認定証明書の取得(日本の受入企業が代行)
- 標準処理期間:約1〜3ヶ月
- 繁忙期(3〜4月、9〜10月):最大4ヶ月程度
- 閑散期(6〜7月、12〜1月):1〜2ヶ月程度
- 在外公館(大使館・領事館)でのビザ申請
- 標準処理期間:申請翌日から5営業日程度
- 国や地域によって異なる場合あり
- 審査状況によっては追加の書類提出を求められ、さらに日数がかかることも
- 合計期間
- 申請準備から入国までの全プロセス:約2〜4ヶ月
- 最短ケース:約1.5ヶ月(書類準備が完璧で閑散期の場合)
- 最長ケース:約5ヶ月(繁忙期で追加審査がある場合)
日本語能力が十分でない場合でも働くことはできますか?
日本で働くにあたり、日本語能力は重要な要素ですが、日本語が流暢でなくても働ける可能性は十分にあります。日本語レベルに応じた就職戦略と、業界・職種の選択が鍵となります。
日本語レベル別の就労可能性
- 上級レベル(JLPT N1/N2相当)
- ほぼすべての職種で就労可能
- 日系企業の一般職でも採用される可能性が高い
- 顧客対応や営業職など日本語コミュニケーションが重要な職種にも応募可能
- キャリアアップや昇進の機会も広がる
- 中級レベル(JLPT N3相当)
- IT業界(プログラマー、エンジニア)
- 製造業(エンジニア、技術者)
- 研究職(特に理系分野)
- 外資系企業の日本支社
- 英語教師(英語ネイティブの場合)
- 多言語サポートが必要な職場(カスタマーサービス等)など
- 初級レベル(JLPT N4/N5相当)
- 英語を社内公用語とする企業(楽天、メルカリなど)
- グローバル展開するスタートアップ企業
- 外資系IT企業の技術職
- 高度な専門技術を持つエンジニア職
- 研究機関(英語環境)
- 母国語を活かせる翻訳・通訳、インバウンド観光関連 など
就労ビザで副業やアルバイトはできますか?
就労ビザで副業やアルバイトができるかどうかは、在留資格の種類や副業の内容によって異なります。基本的なルールと注意点を解説します。
就労ビザでの副業に関する基本原則
- 在留資格の活動範囲内の副業
- 現在持っている在留資格で認められた活動範囲内であれば、基本的に副業可能 例:「技術・人文知識・国際業務」のビザを持つITエンジニアが、別の会社でも同様のエンジニア業務を行う場合 など
- ただし、複数の就労先がある場合は、出入国在留管理局への「就労先に関する届出」が必要
- 在留資格の活動範囲外の副業
- 異なる種類の仕事をする場合は「資格外活動許可」が必要 例:「技術・人文知識・国際業務」のビザを持つ会社員が、週末にレストランでアルバイトをする場合など
- 資格外活動は週28時間以内という制限がある
- 風俗営業など一部の業種では働けない
10.外国籍の方が日本で働くためには「準備と知識」が鍵となる

日本で働くことは、外国籍の方にとって多くの挑戦がありますが、適切な準備と知識があれば実現可能です。
在留資格の理解と管理、日本の企業文化への適応、そして生活基盤の確立。これらのステップを着実に進めることで、日本での長期的なキャリア構築への道が開けます。
ぜひこの記事を参考にして日本での就労を実現してください。