データエンジニアは、企業のデジタル化が加速する中で最も需要の高い職種の1つとなっています。平均年収は558.3万円と一般的なITエンジニアと同程度です。
本記事ではデータエンジニアの具体的な給与相場から、年収アップを実現するために必要なスキル、キャリアプランまでをくわしく解説します。
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- データエンジニアの年齢・経験年数・企業規模別の具体的な給与相場について
- 年収アップに直結する技術スキルと資格の種類、影響額について
- 転職・フリーランス・副業など、収入増加のための具体的な戦略について
1.データエンジニアの役割

データエンジニアは、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)において中核を担う職種です。
主な役割は、ビッグデータの収集・管理・分析基盤の構築と運用にあり、データドリブンな意思決定を支える重要な存在として注目を集めています。
データエンジニアの業務は、大きく3つの領域に分かれています。
- データ基盤の設計と構築…データベースやデータウェアハウスの設計・ETL(抽出・変換・ロード)プロセスの構築・データパイプラインの開発と管理・クラウドインフラストラクチャの構築と運用を行う。
- データ品質の管理…データクレンジングとバリデーション・データの整合性チェック・マスターデータの管理・データセキュリティの確保。
- 分析環境の整備…BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの導入と管理・データサイエンティストの分析環境整備・リアルタイムデータ処理システムの構築・パフォーマンスの最適化を行う。
さまざまなスキルが求められるデータエンジニア
データエンジニアには、技術的スキルからビジネス理解まで、幅広い能力が求められます。
テクニカルスキル | クラウド技術 | データ処理技術 | ソフトスキル |
プログラミング言語の習得(Python、Java、Scalaなど) | クラウドプラットフォームの知識AWS、GCP、Azureなど) | 分散処理フレームワーク(HadoopやSparkなど) | プロジェクトマネジメント能力 |
SQLやNoSQLデータベースの深い理解 | コンテナ技術(Docker、Kubernetes) | ストリーム処理Apache Kafkaなど) | コミュニケーション力 |
シェルスクリプトによる自動化 | サーバーレスアーキテクチャの理解 | 各種ETLツールの活用能力 | 問題解決能力 |
分析関連スキル | ビジネス要件の理解力 |
多岐にわたるスキルが求められる背景には、データエンジニアがデータサイエンティストやビジネス部門との架け橋となる必要があるためです。
技術的な専門性を持ちながら、ビジネス課題の解決に貢献できる人材として、その重要性は今後さらに高まっていくと予想されています。
2.データエンジニアの給与相場

データエンジニアの給与水準は、一般的なITエンジニアと同程度となっています。全国の平均年収は458万円のため、全国平均からするとかなり高水準といえるでしょう。
厚生労働省の調査によるとデータエンジニアの全国平均年収は558.3万円です。これは業務用システム系エンジニア(557.6万円)やエンジニア(組込み、IoT)(557.6万円)と比較しても、ほぼ同じ報酬水準であるといえます。
データエンジニアの高給与の背景には、ビッグデータ活用の需要増加・専門性の高いスキルセットの必要性・人材の需給バランスの偏り・DX推進に伴う重要性の高まりといった要因があります。
参考:国税庁 令和4年分民間給与実態統計調査、厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag
データエンジニアの平均年収
年齢層別の平均年収を見ると、経験とスキルの蓄積に応じて段階的に上昇していく傾向が顕著です。
20~24歳…327万円程度からスタートし、これは未経験からのキャリアスタートや基礎的なスキル習得段階を反映しています。
25~29歳…420万円程度まで上昇し、この時期は基本的な実務経験の獲得と専門性の確立期となります。
30代…30~34歳で493万円、35~39歳で570万円と、プロジェクトリーダー層への成長や専門スキルの深化に伴って収入も増加します。
40代…一層の上昇が見られ、40~44歳で641万円、45~49歳で695万円となり、上級エンジニアやプロジェクト統括クラスとしての評価が反映されます。
55~59歳…ピークとなる718万円に達し、この年齢層では最高水準の専門性と技術経営層としての役割が期待されます。
企業規模別の給与比較
企業規模によって給与水準には明確な差異が存在します。
10~99人の小規模企業では平均492万円となっており、主にベンチャー企業が中心で、企業の成長に応じた報酬上昇の可能性があります。
100~999人の中規模企業では529万円と、より安定した給与体系と充実した福利厚生が特徴です。
1000人以上の大規模企業では610万円まで上昇し、体系的な昇給制度や充実した教育研修制度が整備されています。
参考:求人ボックス給料ナビ
地域による給与格差
地域によって給与水準には一定の差異が見られます。関東圏の平均年収は570万円ほどです。
特に東京都では616.7万円と最高水準を記録しおり、IT企業の集中する地域であることが要因として挙げられます。
近畿圏では560万円と関東圏に近い水準を維持しており、大阪府を中心とした経済圏での需要の高さを反映しています。また愛知県・福岡県なども同様です。
その他の地域では低めの水準となっていますが、これは生活費との相対的なバランスも考慮する必要があります。
大都市圏では給与水準が高く、案件も豊富である一方で、競争も激しくなっています。地方都市では相対的に給与水準は低めですが、生活費の優位性やワークライフバランスの確保といった別の魅力があります。
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3.データエンジニアに求められるスキルと給与の関係

データエンジニアの給与は、保有するスキルセットと密接な関係があります。
特に技術スタックの広さと深さ・実務経験・専門資格の有無が、年収に大きな影響を与えています。市場で評価される技術力を身につけることで、より高い報酬を得ることが可能となります。
必須テクニカルスキル
データベース関連スキルは、給与に直接的な影響を与える重要な要素です。
SQLやNoSQLデータベースの実践的な活用経験は、年収にプラスの影響をもたらします。特にRDBMSの設計・運用経験や、NoSQLの実践的な活用経験は、高い評価につながります。
データモデリングスキルも年収向上に寄与し、論理/物理設計の実績やパフォーマンスチューニングの能力が重視されます。
プログラミング言語の面では、Pythonがデータ処理の標準言語として確立されており、機械学習ライブラリの活用能力と合わせて年収上昇要因となります。
Java/Scalaについては、大規模システム開発や分散処理フレームワークでの活用能力が評価され、年収増加につながります。
クラウド技術においては、AWS/GCP/Azureといった主要プラットフォームの深い理解と経験が、年収上昇をもたらします。
特にクラウドインフラ設計やマイクロサービス構築の経験が重要です。また、DockerやKubernetesといったコンテナ技術の習得も同様です。
給与アップにつながる専門資格
市場価値を高める専門資格の取得は、着実な年収アップの手段となります。
クラウド関連
- AWS認定データアナリティクスの取得…データ分析基盤の設計力とAWSサービスの最適活用能力が評価される。
- Google Cloud Professional Data Engineer認定…GCPでのデータ処理や機械学習基盤の構築能力が重視される。
データベース関連
- データベーススペシャリスト…DB設計・運用の専門性や高度な最適化能力が評価される。
- Oracle認定資格…特にエンタープライズ系システムでの評価が高くなる。
その他の資格
- 統計検定…データ分析の基礎力を証明する
- プロジェクトマネジメント資格…チームリード能力の証明
参考:AWS 認定 Google Cloud 認定資格 IPA データベーススペシャリスト試験
オラクル認定資格 JSSC 統計検定 PMP®資格
即戦力として評価される実務経験
プロジェクト規模による評価では大規模データ基盤構築の経験が特に重視され、ペタバイト級のデータ処理や複数チームでの連携経験も年収上昇要因となります。
クラウド移行プロジェクトの経験・レガシーシステムの近代化・マイグレーション設計、実装の実績も評価につながります。
専門領域での実績としては、リアルタイムデータ処理やストリーミング基盤構築の経験・機械学習基盤開発やMLOps環境の構築経験が年収向上に関係してくるでしょう。
業界特化経験では、特に金融領域でのフィンテック開発経験・セキュリティ要件対応の実績・製造業でのIoTデータ処理基盤構築・生産管理システム連携の経験が年収アップにつながります。
4.データエンジニアの年収アップ方法

データエンジニアとして年収を向上させるためには、戦略的なキャリアプランニングが不可欠です。
市場価値を高めながら適切なタイミングでキャリアの選択肢を広げることで、着実な収入増加を実現できます。
以下では、具体的な年収アップの方法について解説していきます。
スキルアップによる収入増加戦略
効果的なスキルアップを実現するには、技術スタックの拡充が重要です。
特に注目すべき領域(最新技術)
- クラウドネイティブ技術、
- コンテナオーケストレーション、
- サーバーレスアーキテクチャなど
企業のクラウド移行やシステム近代化の需要が高まっており、習得することで市場価値を大きく向上させることができます。
データ分析技術の強化
- 機械学習基盤の構築能力
- ビッグデータ処理技術
- リアルタイムアナリティクスなど
上記分野で専門性を高めることでより高度な案件への参画機会が増え、結果として収入増加につながります。
特定領域でのエキスパート化
- データセキュリティ
- パフォーマンスチューニング
- データガバナンスなど
専門分野で深い知見を持つことで、高い市場価値を確立することができます。さらに、金融工学・製造業のDX・医療情報システムなど、特定の業界知識を組み合わせることで、より付加価値の高い人材となることが可能です。
転職による年収アップの可能性
転職市場での優位性を確保するためには、実績の可視化が重要です。
自身の技術力と経験を効果的にアピールする | 市場価値を着実に向上させる |
・技術ブログの執筆 | ・先端技術案件の経験 |
・ポートフォリオの整備 | ・大規模プロジェクトの実績 |
・業界コミュニティへの貢献 | ・リーダー経験の蓄積 |
企業選択においては、成長企業への転職が効果的です。
特にスタートアップ企業・テック企業・DX推進企業などは、高い給与水準を提示する傾向にあります。
また外資系企業やグローバルプロジェクトに携わる機会のある企業は、より高い報酬を期待できる選択肢となります。
フリーランス案件での収入拡大
フリーランスとして活動する場合、案件選択の最適化が収入を大きく左右します。
◎高単価が期待できる案件を獲得することが重要
- 金融系システム開発
- 大手企業のDXプロジェクト
- クリティカルシステムの構築 など
時間管理を適切に行うことで、複数の案件を並行して受注することも可能となり、収入の最大化につながります。
フリーランスのデータエンジニアとして安定するために
クライアントとの直接取引を通じて中間マージンを削減し、長期的な信頼関係を構築することで安定的な収入を確保することができます。
また専門性に応じた適切な単価設定・付加価値の明確化・市場相場の把握なども重要な要素となります。
さらに長期案件と短期案件を組み合わせたポートフォリオ戦略も効果的です。
またエージェントとの関係強化や業界コネクションの拡大を通じて、質の高い案件を継続的に獲得できる体制を整えることが重要です。
5.今後のデータエンジニアの市場価値と給与動向

データエンジニアの市場価値は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速と企業のデータ活用ニーズの高まりを背景に、今後も上昇が見込まれています。
特に日本市場においては、DX推進の本格化に伴い、データエンジニアの重要性は一層増していくと予測されています。
日本企業のデータ活用ニーズ
産業界…デジタル化が加速する中、製造業ではスマートファクトリー化やIoTデータの活用、予測保全システムの導入が進んでいます。
これらの取り組みには、高度なデータ処理基盤の構築が不可欠であり、それを担うデータエンジニアへの需要は急速に拡大しています。
金融業界…フィンテックの発展に伴い、リアルタイム取引分析や不正検知システムの高度化が進められています。
これらのシステムの構築・運用には、高度な技術力を持つデータエンジニアが必要とされ、専門性の高い人材への需要が特に顕著となっています。
データ活用の高度化も進んでおり、リアルタイム処理需要の増加や大規模データウェアハウスの構築、データレイク構築といったプロジェクトが増加しています。
さらにAI/ML基盤の整備において、機械学習パイプラインの構築・モデル運用の自動化・データ品質管理といった専門的なスキルを持つエンジニアの需要も高まっています。
将来的な給与水準の予測
ビッグデータエンジニアリングサービスの市場規模は2029 年までに、1,622 億米ドルに達すると予測されています。
そのなかでもアジア太平洋地域が大きなシェアを占めるされており、日本でもデータエンジニアの重要性がさらに認識され、市場が拡大していくことが期待されます。データエンジニアの給与も高水準となることが予測されます。
中長期的な予測では市場の成熟化に伴い、専門性の細分化やグローバル水準への整備が進むと考えられています。またリモートワークの定着により、地域による給与格差が縮小する可能性も指摘されています。
給与構造も変化し、成果連動型報酬・ストックオプションの普及・スキル連動型報酬の導入が進むと予想されています。
参考:ビッグデータエンジニアリングサービスの市場規模と市場規模株式分析 – 成長傾向と成長傾向予測 (2024 ~ 2029 年)
給与水準は今後も上がることが予測されている
データエンジニアの給与水準は今後も上昇傾向が続くと予測されます。特に高度な専門性や先端技術への対応力を持つ人材は、より大きな年収上昇が期待できる状況となっています。
ただし、技術革新のスピードが速いため、継続的なスキルアップと市場動向への適応が必要不可欠です。
6.年収アップを実現するためのキャリアプラン

データエンジニアとして着実に年収アップを実現するには、経験年数に応じた戦略的なキャリアプランニングが不可欠です。
市場価値を最大化しながら、適切なタイミングでキャリアステップを踏んでいくことで、持続的な収入増加を実現できます。
経験年数別のキャリアステップ
■未経験~3年目までの期間
技術基盤の確立に注力する重要な時期です。データベース設計の基礎やプログラミング言語の習得・クラウドサービスの実践的な活用能力を身につけることが優先課題です。
同時に自身の得意分野を見出し、市場ニーズを把握しながら、専門性の方向性を決定していくことも重要です。
■3年目~5年目にかけて
これまで確立した基礎技術をもとに、特定領域での深い知見を築く時期です。プロジェクトリーダーとしての経験を積み、チーム運営スキルを磨くことでより高い職責へのステップアップが可能となります。また社内での役割拡大や外部での知名度向上、技術コミュニティへの積極的な参加を通じて、キャリアの幅を広げていくことが推奨されます。
■5年目~10年目
上級エンジニアとしての成長期間です。アーキテクト職への移行を視野に入れ、技術戦略の立案や後進の育成にも携わることで、より高い市場価値を確立することができます。業界での発信力を強化し、独自の専門領域を確立することで、企業間ネットワークの構築にもつながります。
給与交渉のポイント
効果的な給与交渉を行うためには市場価値の可視化が重要です。
- 自身のスキルマップを整理し、実績を数値化する。
- 市場相場を適切に調査して交渉の基盤を作る。
- 具体的な交渉材料として、プロジェクトでの成果、技術的貢献、組織への影響力などを明確に示す。
交渉のタイミングも成功の鍵を握ります。プロジェクトの成功直後・組織改編時・予算策定期などが好機となります。
より説得力のある提案が可能となる交渉のポイント…具体的な数値目標を示し、キャリアパスの提示と価値提供の明確化を行う。
専門性を活かした副業の検討
副業による収入増加を図る場合、技術コンサルティングは有効な選択肢となります。
アーキテクチャ設計支援・技術戦略アドバイス・プロジェクトレビューなど、専門性を活かした高付加価値サービスの提供が可能です。
また技術講師・オンライン教材作成・メンタリングといった教育・研修事業も、安定した副収入源となり得ます。
収入を最大化するためには、本業とのバランスを考慮した時間の最適活用が重要です。
効率的な案件選択とスケジュール管理を行いながら、独自の知見提供やソリューション開発、知的財産の活用といった付加価値の創出を目指します。
副業を行う際の注意点
副業を行う際には、コンプライアンスへの配慮が不可欠です。
適切なリスク管理を行う必要がある
- 副業規定の確認
- 利益相反の回避
- 時間管理の徹底
またワークライフバランスやスキル維持・向上、メンタルヘルスケアにも十分な注意を払い、持続可能な働き方を確立することが重要です。
7.日本のデータエンジニアのニーズは今後も高まる

データエンジニアは今後も需要の高まりが予想される職種です。技術革新のスピードが速いIT業界において、継続的なスキルアップと市場動向の把握が重要となります。
本記事で紹介した具体的な戦略とキャリアプランを参考に、着実なステップアップを目指していきましょう。高度な専門性を持つデータエンジニアには、更なる年収アップの可能性が開かれています。