ソフトウェアエンジニアは、経験を積むにつれて大きな収入アップが期待できる職種です。しかし企業規模や地域、保有スキルによって給与水準には差が出てくる場合があります。
本記事では未経験からスタートする際の給与相場から具体的な年収アップ戦略、そして将来の収入見通しまで、徹底的に解説していきます。
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- 初級エンジニアの企業規模・経験年数別の具体的な給与相場について
- 年収アップに効果的なスキル・資格と具体的な金額への影響について
- 未経験から高年収を実現した具体的な成功事例と実践的な戦略について
1.日本の初級ソフトウェアエンジニアの給与相場

IT業界での需要の高まりを受け、初級ソフトウェアエンジニアの給与水準は年々上昇傾向にあります。経験やスキルレベル、企業規模によって大きく異なる場合のある給与体系についてくわしく見ていきましょう。
未経験からのスタート時の平均給与
未経験からソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートする場合、企業規模によって初年度の給与水準に大きな差が見られます。もちろん企業ごとに違いがあるため、一概には言えませんが参考にしてみましょう。
大手IT企業…300~350万円程度、充実した研修制度と手厚い福利厚生が一般的となっています。
中堅IT企業…250~300万円程度、基本給は控えめですが残業代が別途支給されるケースが多くなっています。
ベンチャー企業…220~280万円程度で、成果給や業績連動賞与の割合が高く、ストックオプションなどが付与されることもあります。
未経験者の場合は研修期間が設けられることが一般的で、この間は基本給のみとなるケースが多くなっています。しかしプログラミングスクール修了者や関連する資格保持者は、初任給に上乗せされるケースも見られます。
経験1~3年目の給与範囲
実務経験を積み始めると、給与は大きく変動します。一般的な例を確認しておきましょう。
- 1年目:280~350万円程度で、基本的な開発スキルの習得期間としてチーム開発への参画を始める時期となる。
- 2年目:300~400万円程度まで上昇し、独力での開発業務が可能になり、小規模プロジェクトのリード経験も積み始める。
- 3年目:350万円から450万円程度となり、専門分野を確立しチームリーダー補佐レベルの役割を担うようになる。
1~3年目の年収上昇は主に担当プロジェクトの規模と責任範囲・習得した技術スキルの市場価値・そして所属企業の評価制度と昇給制度によって決定されます。特に習得技術の種類や深さが給与に大きく影響する傾向にあります。
参考:求人ボックス給料ナビ
企業規模別の給与比較
従業員1,000人以上の大手企業では、初年度から300万円台後半の給与水準を設定していることが多いでしょう。年数やスキルに合わせた昇給と基本給の3~5ヶ月分の賞与、充実した福利厚生も一般的です。
中堅・ベンチャー企業では、初年度300万円前後からスタートし、スキルや技術に応じた昇給と基本給の2-4ヶ月分の賞与が一般的です。
【注目すべきポイント】
- 大手企業…新卒採用時から充実した研修制度と明確なキャリアパスが用意されており、着実な収入増加が期待できることが一般的です。
- 中小企業やベンチャー企業…早期からの実践機会や責任ある立場での業務経験を得られ、スキルの向上次第で急速な年収アップも可能となっているケースが多くみられます。
参考:求人ボックス給料ナビ 中小企業庁・中小企業小規模事業者の定義
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以下の記事では、日本で働くソフトウェアエンジニアの給与について、平均年収、市場動向を詳しく解説しています。
2.給与に影響を与える要因

初級ソフトウェアエンジニアの給与はさまざまな要因によって変動します。
キャリアプランを考える上で、これらの要因を理解することが重要なポイントとなるのです。
保有スキルと資格の影響
技術スキルと資格は、給与に直接的な影響を与える重要な要素です。
技術スキルの例
プログラミング言語の習得 Java・Python・JavaScriptなど |
フレームワークの専門知識 Spring Framework・React/Vue.jsなど |
クラウド技術の習得 AWS・Azureの知識 |
資格面
- 基本情報技術者
- 応用情報技術者
- AWS認定ソリューションアーキテクト
特に複数の技術スキルや資格を組み合わせて保有している場合、単純な足し算以上の相乗効果が期待できます。
参考:プロ検(プログラミング言語) FRAME Qiita AWS認定資格 Azure資格 基本情報技術者試験 IPA応用情報技術者
勤務地による給与差
勤務地は給与水準に大きな影響を与える要因の1つです。東京・大阪・名古屋などの都市部では、地方と比較して基本給が20~30%高くなっていることが一般的です。地方中核都市では都市部の80~90%程度の基本給となります。
その他の地方では都市部の70~85%程度の基本給となりますが、何らかの福利厚生で補完されるケースもあります。
近年はリモートワークの普及により、地方在住でも都市部の給与水準で働ける機会が増えています。この傾向は地域による給与格差を徐々に縮小させる要因となっています。
業界・業種による違い
エンジニアの給与は、所属する業界や業種によっても大きく異なります。
IT専業企業 | 金融・保険業界 | 製造業 | Web系企業 |
・スキル評価が重視される ・技術手当が設定されていることも多い | ・初任給が他よりも高い傾向 ・業績賞与の充実 | ・安定した昇給制度がある場合が多い | ・成果報酬型の給与体系が多く採用されている |
特に注目すべき点として、同じエンジニアでも金融系システム開発とWeb系開発では、求められるスキルセット・責任範囲が異なる点です。
またそれに応じて給与体系も大きく変わってきます。業界特有の専門知識やドメイン知識を獲得することで、さらなる給与アップが期待できるでしょう。
3.未経験からの年収アップ戦略

未経験からソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートする場合、計画的なスキルアップと戦略的なキャリア展開が重要です。ここでは具体的な年収アップの方法を解説します。
効果的なスキルアップ方法
年収アップを実現するためには、市場価値の高いスキルを効率的に習得することが重要です。
まず基礎的なプログラミングスキルとして、HTML/CSS/JavaScriptやJavaもしくはPython、SQLの基礎を習得することが必須となります。
加えて、Git/GitHubなどの開発ツールの使用方法・開発環境の構築・テスト手法などの理解も重要です。
さらにコミュニケーション能力・ドキュメンテーション・プレゼンテーションといったビジネススキルも、評価の重要な要素となります。
スキルアップの具体的な方法
- オンライン学習プラットフォームの活用…UdemyやProgate、ドットインストールなどが効果的
- 実践的なスキル向上…社内研修プログラムへの参加、ハッカソンでの経験、社内研修プログラムへの参加、個人開発プロジェクトの実施
上記の学習と並行して、基本情報技術者試験やAWS認定資格などの取得を目指すことで、知識を体系的に整理することができます。
参考:Udemy™公式サイト progate ドットインストール
転職による収入アップのタイミング
転職は年収アップの有効な手段ですが、そのタイミングは慎重に選ぶ必要があります。1年目は基礎スキルの習得期間として位置づけられ、この時期の転職は推奨されません。
2年目になるとスキル習得が進み、小規模プロジェクトの経験も積めることから市場価値を確認する良い時期となります。3年目以降は、専門性が確立し、プロジェクト完遂の実績も持つことができ、年収交渉において有利な立場となります。
転職を成功させるためには、具体的な成果の蓄積と市場価値の高いスキルの習得が重要です。またポートフォリオの整備や業界動向の把握も、交渉を有利に進めるための重要な要素となります。
給与交渉のためのポイント
給与交渉は年収アップの重要な機会です。効果的な交渉のためには、まず自身の市場価値を正確に把握することが必要です。同業他社の給与水準を調査し自身のスキルセットを棚卸しした上で、具体的な成果を数値化して提示できるように準備します。
また担当してきたプロジェクトの規模・新たに習得した技術・取得した資格などを、交渉材料として整理しておくことも重要です。
交渉の際は市場相場に基づいた具体的な数字を提示し、その根拠となる成果を示すことが効果的です。また段階的な昇給プランを提案することで、より現実的な交渉が可能となります。
さらに今後の貢献可能性や新規技術への挑戦・チーム育成への関与など、付加価値となる要素も積極的にアピールすることが重要です。特に未経験からスタートした場合は、学習意欲や成長スピードを示せる具体例を準備しておくことで、より説得力のある交渉が可能となります。
4.初級エンジニアの将来的な収入見通し

初級エンジニアからキャリアをスタートした場合、どのような収入の将来像が描けるのでしょうか。キャリアパスや専門性によって異なる収入見通しをくわしく解説します。
キャリアパスと年収の関係
エンジニアのキャリアパスは大きく分けて技術専門職路線とプロジェクトマネジメント路線があります。プロジェクトマネジメント路線の方がやや年収が高い傾向があるとされますが、スキルや資格によって当然ながら違いがあります。
役割の変化(一般的なもの)1~3へとステップアップしていくことで給与・年収の増加を見込めます。
技術専門職
- プログラマー
- テックリード
- アーキテクト
プロジェクトマネジメント路線
- メンバー
- サブリーダー
- プロジェクトマネージャー
専門性を高めた場合の収入例
特定の分野で専門性を高めることで、標準的なキャリアパス以上の収入が期待できます。例えばクラウドアーキテクトの場合、5年目で600万円~の年収が見込めるケースがあります。この場合AWS/Azure認定資格の取得が重要となります。
セキュリティスペシャリストでは、5年目で550万円~の収入を得られる場合も多いでしょう。この際は情報セキュリティスペシャリストなどの資格が重要です。
AIエンジニアの場合は、5年目で600万円~程度まで到達可能で、機械学習や深層学習のスキルが必須となります。
マネジメント職への転向と収入
マネジメント職へのキャリアチェンジは、より高い収入を目指す選択肢の1つです。
チームリーダー(例:5~7年目など)以上の役職の場合、基本年収にマネジメント手当・役職手当が加わる場合があります。プロジェクトマネージャー・部門マネージャー(10年目以降)など。
マネジメント職の収入は、部下の人数による手当増加・プロジェクト規模による報酬上昇・組織貢献度による評価・業績連動型賞与の割合増加などにより、さらなる上昇が期待できます。
いずれのキャリアパスを選択する場合も、継続的なスキルアップと実績の積み重ねが着実な収入アップにつながります。特に技術の進化が速いIT業界では、新しい技術への適応力と専門性の深化が、将来的な収入に大きく影響します。
5.給与アップを実現した実例紹介

実際に給与アップを達成したエンジニアの具体例を見ていくことで、効果的な戦略と実践的なアプローチを学ぶことができます。ここでは3つの特徴的な成功事例を紹介します。
未経験から1年で年収400万円を実現したAさんの例
Aさん(28歳)は、営業職からエンジニアへの転身を決意し、戦略的なアプローチで短期間での年収アップを実現しました。
準備段階ではプログラミングスクールでJava技術を習得し、基本情報技術者試験に合格。さらにGitHubでポートフォリオを作成するなど、入社前から計画的に準備を進めました。
入社後は残業を活用した技術習得に励み、社内勉強会への積極参加や先輩エンジニアへの質問を習慣化することで、急速にスキルを向上させました。
その結果、転職時の初年収300万円から、残業代と資格手当・半期評価での昇給・プロジェクトボーナスを加え、最終的に年収400万円を達成しました。
転職により年収150万円アップを達成したBさんの例
Bさん(32歳)は、戦略的な転職により大幅な年収アップを実現しました。転職前の準備として、クラウド技術の習得に注力し、AWS認定資格を取得。同時にフロントエンド技術の強化と英語力の向上(TOEIC 750点)にも取り組みました。
転職活動では複数のエージェントを活用し、職務経歴書を丁寧に作成。面接では具体的な成果をアピールすることで、転職前の年収450万円から、転職後は基本給650万円に各種手当50万円を加えた年収700万円を実現しました。
資格取得で年収アップを実現したCさんの例
Cさん(30歳)は、計画的な資格取得戦略により、着実な年収アップを達成しました。
- 1年目…基本情報技術者とAWS認定クラウドプラクティショナー
- 2年目…応用情報技術者とAWS認定ソリューションアーキテクト
- 3年目…データベーススペシャリストとセキュリティ関連資格を取得する
上記のような明確な計画を立てて実行しました。その結果、入社時300万円だった年収は1年目に資格手当て、2年目には資格手当て増額・昇給、3年目には資格手当て増額・昇給、役割変更により450万円まで上昇しました。
3つの事例からみる共通のポイント
- 明確な目標設定
- 計画的な行動
- 市場価値の高いスキルへの集中投資
- 成果の可視化と効果的なアピール
- 継続的な自己投資
上記5つの重要性が挙げられます。
各事例は異なるアプローチですが、いずれも計画的なスキルアップと戦略的なキャリア展開が成功のポイントとなります。
6.初級ソフトウェアエンジニアの給与アップには積み重ねが大切

初級ソフトウェアエンジニアとしてのキャリアは、計画的なスキルアップと戦略的な行動により、着実な収入アップが期待できます。技術の進化が続くIT業界では、継続的な学習と実績の積み重ねが不可欠です。
自身の適性や目標に合わせてキャリアパスを選択し市場価値を高めていくことで、より大きな収入アップの可能性が広がるでしょう。