日本のIT業界では深刻な人材不足が続いており、経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると2030年には約79万人のIT人材が不足すると予測されています。
そのためソフトウェアエンジニアは今後も需要の高い職種であり続けると考えられます。
本記事では、日本でソフトウェアエンジニアになるために必要な知識やスキル、具体的なステップをくわしく解説します。
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- ソフトウェアエンジニアになるための具体的な7つのステップと習得すべきスキルについて
- 日本のIT業界の現状と将来性、キャリアパスの展望について
- 外国人エンジニアに必要な就労ビザの取得方法と企業選びのポイントについて
1.日本のソフトウェアエンジニア市場の現状

テクノロジーの進化とDXの加速により、日本のIT人材市場は大きな転換期を迎えています。特にソフトウェアエンジニアの需要は急増しており、人材不足が深刻化する一方でキャリアの選択肢は広がりつつあります。
深刻な人材不足と高まる需要
日本のソフトウェアエンジニア市場は、かつてない人材不足に直面しています。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されています。
この深刻な状況はDXの加速による需要増加や、既存システムの保守・運用需要の継続的な発生が主な要因となっています。さらに少子高齢化による労働人口の減少やIT教育体制の遅れも、人材不足に拍車をかけています。
外国人エンジニアの採用増加傾向
人材不足を補うため、多くの日本企業が外国人エンジニアの採用に積極的になっています。
厚生労働省の調査によると、2023年10月時点において8.5万人となり前年比では12.4%増と大きく増え、直近10年間で約3倍となりました(この傾向は今後も継続されると予測されています。
この背景には、グローバル展開を視野に入れた人材の多様化への取り組みや、英語を社内公用語とする企業の増加があります。また高度人材ポイント制による在留資格優遇制度の導入も、
外国人IT人材の採用を後押ししています。
平均年収と将来性
ソフトウェアエンジニアの市場価値は着実に上昇しています。一例ですが下記に例を挙げてみましょう。
ソフトウェアエンジニアの給与モデル
- 新卒初任給…月給22~25万円(年収300-400万円)程度
- 経験3~5年…年収400~600万円
- 5年以上の経験者…600~800万円以上
- 上級エンジニア・アーキテクト…年収800-1,200万円以上に達することも珍しくない
市場の将来性を示す要因として、クラウドコンピューティングの普及、AI・機械学習分野の急成長、IoTデバイスの増加によるソフトウェア需要の拡大、さらにセキュリティ関連の需要増加が挙げられます。
特にクラウドインフラストラクチャ、データサイエンス、モバイルアプリケーション開発、サイバーセキュリティの分野では需要が著しく高まっています。
■ソフトウェアエンジニアの給与事情について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください
2.ソフトウェアエンジニアになるための7つのステップ

ソフトウェアエンジニアへの道のりは、計画的な学習と実践の積み重ねが重要です。
ここでは未経験者が確実にエンジニアとしてのキャリアを築くための、具体的な7つのステップについて解説します。
ステップ1:基礎的なプログラミング言語の習得
プログラミングの基礎を身につけることは、エンジニアになるための第一歩です。
Python | 初心者に優しく幅広い用途に対応できる |
JavaScript | Web開発に不可欠 |
Java | 企業システムで広く使用されている |
HTML/CSS | Webフロントエンド開発の基礎となる |
上記のものなどから学習を始めることがおすすめです。
これらの言語はオンライン学習プラットフォーム・プログラミングスクール・技術書などを通じて効率的に学ぶことができます。
参考:Python japan MDN Web Docs(JavaScript) Java MDN Web Docs(HTML/CSS)
ステップ2:実践的な開発スキルの獲得
プログラミング言語の基礎を学んだ後は、実践的なスキルを身につけることが重要です。
実際の開発経験を積むためには
- 個人プロジェクトの開発
- オープンソースプロジェクトへの貢献、
- ハッカソンやコーディングコンテストへの参加
またチーム開発の経験を積むことで、実務により近い形での技術習得が可能になります。
ステップ3:ポートフォリオの作成
自身の技術力を証明するポートフォリオの作成は、就職活動において重要な要素となります。
自身の技術力や問題解決能力を効果的にアピールする |
GitHubでのコード管理・個人開発したアプリケーション・技術ブログの執筆など |
また各プロジェクトについて、技術選定の理由や開発プロセスを丁寧に解説することで、より説得力のあるポートフォリオとなります。
参考:GitHub Japan
ステップ4:資格取得の検討
業界で認知度の高い資格取得は、技術力の証明となります。
国家資格
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
ベンダー資格
- AWS認定資格
- Oracle認定資格
目標とする職種や分野に応じて適切な資格を選択し、取得を目指すことをおすすめします。
参考:基本情報技術者試験 応用情報技術者試験 AWS認定資格 オラクル認定資格
ステップ5:インターンシップや実務経験の獲得
実際の開発現場での経験を積むことは、エンジニアとしての成長に大きく貢献します。
長期インターンシップへの参加、アルバイトでの開発補助、企業の研修プログラムへの参加などさまざまな形で実務経験を積むことができます。
これらの経験を通じて、実際の開発現場での働き方や必要なスキルを理解することができます。
ステップ6:就職活動の準備と実施
効果的な就職活動のためには、十分な準備が必要です。
履歴書・職務経歴書の作成、技術面接対策、企業研究、ポートフォリオの更新と改善など、計画的に準備を進めることが重要です。また自身の強みや志望動機を明確にし、面接でしっかりとアピールできるよう準備しましょう。
ステップ7:継続的なスキルアップ計画
技術の進化は非常に速く、継続的な学習が必要不可欠です。
新技術のキャッチアップ、技術カンファレンスへの参加、オンライン学習の継続、技術コミュニティへの参加など、さまざまな方法で自身のスキルを磨き続けることが重要です。
3.必須となる技術スキルと知識

現代のソフトウェアエンジニアには、幅広い技術スキルと深い専門知識が求められます。
基本的なプログラミング言語の習得から、実践的な開発ツールの使用まで、習得すべき重要なスキルセットを見ていきましょう。
コアとなるプログラミング言語
現代のソフトウェアエンジニアには、複数のプログラミング言語の習得が求められます。
バックエンド開発…企業システムの標準言語であるJavaやSpring Framework、データ処理と機械学習に強いPython、Webアプリケーション開発で使用されるPHPなどが重要です。
フロントエンド開発…JavaScript/TypeScriptを用いたReactやVue.jsなどのフレームワークの理解、さらにHTML5/CSS3の基礎的なWeb技術の習得が必須となっています。
参考:Spring Framework PHP React Vue.js
開発ツールとフレームワーク
効率的な開発を行うために、さまざまなツールとフレームワークの理解が必要です。特に重要なのが、Git/GitHubなどのバージョン管理システムです。これらは、チーム開発におけるコード管理の基盤となります。
またVSCodeやIntelliJ IDEAなどの統合開発環境の使用や、JenkinsなどのCI/CDツールの活用も重要です。
インフラストラクチャ面では、AWS、Google Cloud、Azureなどのクラウドサービスの理解や、MySQLやPostgreSQLなどのデータベース技術の習得が求められます。
参考:ITキャリアGit/GitHub VSCode(Visual Studio Code) JETBRAINS(IntelliJ IDEA) MySQL PostgreSQL
基本的なコンピュータサイエンスの知識
ソフトウェア開発の基盤となる理論的知識も重要です。アルゴリズムとデータ構造の理解は、効率的なプログラムを書くための基礎となります。
またオブジェクト指向設計やデザインパターン、SOLID原則などのソフトウェア設計原則の理解も必要です。システム設計においては、マイクロサービスやRESTful API設計の知識、さらにセキュリティに関する理解も求められます。
4.非技術系スキルの重要性

技術力だけでなく、コミュニケーション能力やプロジェクトマネジメントスキルなど、非技術系のスキルも現代のエンジニアには不可欠です。これらのソフトスキルが実際の開発現場でどのように活かされるのかを解説します。
コミュニケーション能力の必要性
ソフトウェア開発において、コミュニケーション能力は技術力と同様に重要です。チーム内での技術的な議論への参加、進捗報告の実施、問題点の共有など、日常的なコミュニケーションが必要不可欠です。
またクライアントとの関係においては、要件のヒアリング能力や技術的内容の分かりやすい説明、提案力が求められます。効果的な文書作成能力やプレゼンテーションスキルも、エンジニアとして成長するために重要なスキルとなります。
チーム作業とプロジェクト管理
現代のソフトウェア開発は、チームでの協働が基本となります。
協調性 | プロジェクト管理能力 |
他のメンバーへの支援 知識の共有 建設的な意見交換など | タスク管理 スケジュール調整 リスク管理 |
他特にアジャイル開発においてはスクラムの理解と実践、デイリースタンドアップへの参加、スプリントレビューでの成果報告など、チームの一員としての役割を果たすことが求められます。
ビジネス理解力の重要性
技術力だけでなく、ビジネスの視点を持つことも重要です。顧客のビジネスモデルや業界知識の理解、市場動向の把握、競合分析などが必要となります。
また開発効率の追求やリソースの最適化、投資対効果の考慮など、コスト意識を持つことも求められます。さらに要件の本質的理解や優先順位の判断、効果的な解決策の提案など、問題解決能力も重要なスキルとなります。
5.採用企業が重視するポイント

企業がエンジニア採用時に注目する要素は、純粋な技術力だけではありません。実践的なスキル、チームワーク力、成長への意欲など、採用担当者が重視する様々な観点について詳しく説明します。
技術力の評価基準
企業の技術力評価は、コーディング能力を中心に多面的に行われます。
重視・評価の対象となる能力
- アルゴリズムの実装力
- コードの品質と可読性
- 保守性を考慮した実装能力
- 技術的課題への対応力
- デバッグスキル
- パフォーマンス最適化の能力
実践的なスキル…実務での成果物や個人プロジェクト、オープンソースへの貢献、フルスタック開発能力や新技術へのキャッチアップ能力、開発ツールチェーンの理解度なども、企業が注目する要素となっています。
職場での適応能力
チームの一員として働く上で適応能力は非常に重要です。日本語でのコミュニケーション能力、技術的な説明能力、チーム内での情報共有能力が求められます。
またチーム開発への参加姿勢やコードレビューへの取り組み、ナレッジ共有への積極性も評価されます。基本的なビジネスマナーとして、時間管理の徹底や報告・連絡・相談の実践、日本の職場における礼儀作法の理解も必要不可欠です。
成長意欲と学習能力
継続的な成長への意欲は、企業が重視する重要な要素です。技術書籍の学習やオンライン講座の受講、技術カンファレンスへの参加など、自己啓発への取り組みが評価されます。
また明確なキャリアビジョンを持ち、計画的なスキルアップを目指す姿勢や専門性の追求も重要です。さらに自発的な改善提案や新しい技術の導入提案、プロジェクトへの積極的な参加など、主体性のある行動も高く評価されます。
6.就職・転職活動の具体的な進め方

エンジニアとしての就職・転職を成功させるためには、戦略的なアプローチが必要です。
効果的な履歴書作成から面接対策まで、実践的なアドバイスと具体的な準備方法をご紹介します。
効果的な履歴書とポートフォリオの作成
採用担当者の目を引く効果的な履歴書作成が重要です。保有資格や技術スタックの詳細、過去の実績と成果を明確に記載することが求められます。
特に具体的な数値での実績や問題解決事例、技術的な貢献について詳しく記述することで、自身の強みを効果的にアピールできます。
また、GitHubプロフィールでは、コード品質やプロジェクトの説明、コミット履歴を通じて実践的なスキルを示すことができます。
技術ブログの執筆や問題解決プロセスの共有、技術的な知見の発信も、自身の専門性をアピールする有効な手段となります。
面接対策と技術面接の準備
面接では、自身の強みや技術的バックグラウンド、キャリアビジョンについて明確に説明できる準備が必要です。
企業研究を徹底し、技術スタックの適合性や成長機会について具体的に語れるようにしましょう。
技術面接では、アルゴリズム問題やシステム設計の演習、コーディングテストへの対策が重要です。
また過去のプロジェクト説明や技術選定の理由付け、トラブルシューティング事例なども、具体的に説明できるよう準備しておくことをお勧めします。
■日本での面接を成功させるポイントについては、以下の記事も参考にしてください!
7.就労ビザの取得が必要となる

外国人エンジニアが日本で働くためには、適切な就労ビザの取得が不可欠です。ビザ取得の条件や申請プロセス、そして企業選びの際に確認すべきビザサポート体制について詳しく解説します。
就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」を取得する条件
ITエンジニアとして日本で働くためには、就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」の取得が必要です。
基本的な要件
- 大学・専門学校でIT関連の学科を卒業していること
- 情報処理関連の資格を保持していること
- 日本人と同等以上の給与水準が保証されていることも重要な条件となる
技術要件の証明方法としては、IT関連の学位や専攻科目の証明書、成績証明書などの学歴による証明が一般的です。また情報処理技術者試験やベンダー認定資格などのIT関連資格による証明も有効です。
実務経験による代替が認められる場合もありますが、その場合は具体的な業務内容や期間を明確に示す必要があります。
参考:出入国在留管理庁 在留資格「技術・人文知識・国際業務」
就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」の取得方法
ビザ取得の手続きは必要書類の準備から始まります。
在留資格認定証明書交付申請書、パスポートのコピー、証明写真、履歴書などの個人の書類に加え、企業側からは雇用契約書、会社の登記簿謄本、事業内容説明書、給与支払証明書などの提出が必要です。
申請プロセスは、まず在留資格認定証明書の取得から始まります。入国管理局への申請後、審査期間として1~3ヶ月程度を要します。
認定証明書が交付されたら在外公館でのビザ申請手続きに移ります。全ての書類が適切に準備されていれば、比較的スムーズにビザを取得することができます。
就労ビザの取得サポートありの会社を選ぶ
就労ビザの取得をスムーズに進めるため、ビザサポート体制が整っている企業を選ぶこともおすすめです。
多くの企業では、申請手続きの代行として、必要書類の準備支援や申請書類の作成補助、入国管理局との交渉などをサポートしています。
また住居探しや銀行口座開設、各種手続きの案内など、生活面でのサポートも提供している企業が増えています。
サポート体制を評価する際に確認したいポイント
- 経験豊富な担当者の有無
- 外国語対応の可否
- 過去の支援実績など
また在留期間更新時のサポートや家族の呼び寄せ支援、長期的なキャリア支援など、フォローアップ体制も重要な選択基準となります。
日本ではじめて就労する場合には
サポート体制が充実している企業を選ぶことで、スムーズな日本での就労開始が可能となります。
手続きはやや複雑ですが、適切なサポートを受けることで、確実にビザを取得し、日本でのエンジニアとしてのキャリアをスタートすることができます。
ビザ取得後も在留期間の更新や資格の変更などさまざまな手続きが必要となるため、長期的なサポート体制がある企業を選ぶことをおすすめします。
参考:在留期間更新許可申請 在留資格の変更(入管法第20条)
8.日本でソフトウェアエンジニアとしてのキャリアを構築する

ソフトウェアエンジニアは、デジタル化が進む現代社会において不可欠な職種です。技術力の向上はもちろんのこと、コミュニケーション能力や問題解決力など、総合的なスキルを身につけることが重要です。
計画的な学習と実践を重ね、自身の強みを活かしたキャリア構築を目指しましょう。適切な準備と努力により、必ず道は開かれることでしょう。