日本での就労を目指すITエンジニアにとって、就労ビザの取得は避けては通れない重要なステップです。
特に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、多くのITエンジニアが取得を目指す代表的な就労ビザです。
本記事では、申請から取得後の注意点まで、実務で本当に必要な情報を徹底解説します。
※下記の記事のは英語版になります。(Read this article in English, please click bottom↓)
- ITエンジニアに最適な就労ビザの種類と、その取得に必要な具体的な要件について
- 申請から取得までの具体的な手順と、申請書類作成時の実践的なポイントについて
- 就労ビザ取得後の在留資格維持に必要な注意点と、転職時の具体的な対応方法について
1.日本の就労ビザの基礎知識

日本で外国人エンジニアが働くための在留資格について、基本的な知識から申請手順までくわしく解説します。特に技術・人文知識・国際業務の在留資格を中心に、実務で役立つ情報をお届けします。
就労ビザと在留資格の関係性
一般的に「就労ビザ」と呼ばれるものの正式な定義について説明します。実際には、「就労可能な在留資格」を指す通称として使用されています。
在留資格…日本での滞在と特定の活動を認める資格
ビザ(査証)…入国の際に必要となる許可証
両者は密接に関連していますが、それぞれ異なる役割を持っています。在留資格は日本での活動内容や期間を定める重要な資格であり、取得後は定められた活動範囲内での就労が認められます。
入国から就労開始までには、まずビザを取得し入国時に在留カードが発行され、その後在留資格に基づいた活動が可能となります。
ITエンジニアに関係する主な就労ビザの種類
ITエンジニアが取得できる就労ビザの中で、最も一般的なのが「技術・人文知識・国際業務」の在留資格です。
この資格では、システム開発やプログラミング、インフラ構築などの専門的な業務に従事することができ、最長5年の在留期間が認められています。
また海外企業の日本支社で働く場合には「企業内転勤」の在留資格が適用され、1年以上の実務経験を持つ方が対象となります。
より高度な専門性を持つエンジニアには「高度専門職」という在留資格も用意されており、ITスキルや学歴、年収などによるポイント制で評価され、より柔軟な活動が認められる優遇措置があります。
2.技術・人文知識・国際業務ビザの詳細

ITエンジニアにとって最も関係の深い技術・人文知識・国際業務の在留資格について、取得要件から実務上の注意点までくわしく解説していきます。
この資格は専門的な知識やスキルを活かした就労を認めるもので、多くのITエンジニアが取得を目指しています。
取得に必要な学歴・職歴の条件
技術・人文知識・国際業務の在留資格取得には、学歴要件または職歴要件を満たす必要があります。
学歴要件
日本の大学でIT関連の学部・学科を卒業していること、または海外の大学でコンピュータサイエンスなどIT関連の学位を取得していることが求められます。また日本または海外の専門学校でIT関連の課程を2年以上修了していることでも要件を満たすことができます。
学歴要件を満たさない場合でも、IT関連業務で10年以上の実務経験があれば職歴要件として認められます。
この実務経験には、プログラミング、システム開発、インフラ構築などの具体的な職務経験が含まれる必要があります。
許可される業務の範囲と制限事項
技術・人文知識・国際業務の在留資格で認められる業務は、専門的な技術や知識を要する業務に限定されています。
具体的な業務の内容 | ||
ソフトウェアの開発・設計 | システムアーキテクチャの設計 | データベースの設計・管理 |
ネットワークの構築・運用 | AI・機械学習の研究開発 | プロジェクトマネジメント |
一方で、単純な事務作業やデータ入力、基礎的なヘルプデスク業務、パソコンの基本的な設定作業など、専門知識を必要としない定型的な作業は認められません。
業務内容が在留資格の範囲を超えると在留資格の取り消しにつながる可能性があるため、注意が必要です。
在留期間と更新手続き
在留期間 | 在留期間の更新 | 更新回数 |
5年、3年、1年、3ヶ月 | 期限の3ヶ月前から申請が可能 | 制限なし |
技術・人文知識・国際業務の在留資格では、最長5年から最短3ヶ月まで、段階的な在留期間が設定されています。
具体的には5年、3年、1年、3ヶ月の4段階があります。在留期間の更新は期限の3ヶ月前から申請が可能で、更新回数に制限はありません。
ただし更新時には継続的な就労実績と納税記録が重要な審査対象となります。
また3ヶ月以上職務に従事していない場合は在留資格が取り消される可能性があるため、注意が必要です。
転職する際は事前に地方出入国在留管理局への届出が必要で、副業などの資格外活動を行う場合は別途許可を取る必要があります。
3.就労ビザ申請の具体的な手順

就労ビザの申請プロセスは複雑で、多くの書類や手続きが必要となります。
ここでは、スムーズな申請のために必要な手順と注意点についてくわしく説明します。申請から取得までの流れを理解することで、余裕を持った準備が可能となります。
必要書類の準備と注意点
就労ビザの申請には、申請者本人と雇用企業の双方から多くの書類提出が求められます。申請時に不備がないよう慎重に準備する必要があります。
申請者本人…パスポートの原本、規定サイズの証明写真、指定様式の履歴書、学位証明書または卒業証明書、該当する場合は職務経歴書、さらに日本語能力を証明する書類(JLPT等の証明書)
雇用企業…雇用契約書のコピー、会社の登記簿謄本、職務内容を詳細に説明する書類、給与支払証明書、企業の決算報告書、新設企業の場合は事業計画書など
参考:就労資格証明書交付申請
申請から取得までの所要期間
就労ビザの取得までには、一定の時間が必要です。まず、在留資格認定証明書の取得には通常1〜3ヶ月程度かかります。特に2〜3月の繁忙期は、さらに時間を要する可能性があります。
書類に不備がある場合は、追加での時間が必要となることもあります。
在留資格認定証明書を取得した後、査証(ビザ)の取得には通常5営業日程度を要します。この手続きは在外公館で行う必要があり、国によっては追加の書類提出を求められる場合もあります。
したがって、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。
申請費用の詳細
申請にかかる費用は、必須の費用と追加で発生する可能性のある費用に分かれます。
必須の費用
- 在留資格認定証明書交付申請…無料
- 査証申請手数料…国によって異なる
- 在留カード…無料
- 在留資格変更許可申請手数料…4,000円
- 各種証明書の翻訳費用…1枚3,000円程度
- 申請書類の認証手数料…文書により異なる
行政書士に依頼する場合は10〜30万円程度の手数料が発生する可能性があります。
これらの費用は原則として申請者本人の負担となりますが、ITエンジニアの場合、優秀な人材確保のため企業が負担するケースも多く見られます。
4.就労ビザ申請でよくあるトラブルと対策

就労ビザの申請過程では、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
ここでは、特にITエンジニアに関連する典型的なトラブルとその対策について解説します。事前に注意点を把握することで、スムーズな申請手続きが可能となります。
申請が不許可になるケース
ITエンジニアの就労ビザ申請で不許可となる主な理由として、まず専門性の不足が挙げられます。
申請が不許可となるリスクが高いケース
- 職務内容が技術的スキルを必要としない業務中心である場合
- 学歴・職歴と業務内容の関連性が低い場合
- プログラミングやシステム開発以外の業務が主である場合 など
企業側の問題として…給与水準が同職種の日本人と比べて低い場合・会社の経営状態が不安定な場合・雇用条件が不明確あるいは不適切な場合 など
上記ような問題を事前に把握し、適切な対応を取ることが重要です。
申請書類作成時の注意点
申請書類の作成には細心の注意を払う必要があります。以下の書類は、申請の成否を左右する重要な要素となります。
履歴書や職務経歴書では、ITスキルや技術経験を具体的に記載し、プロジェクト実績や使用技術を明確に説明することが求められます。特に学歴と職務の関連性を明確に示すことが重要です。
雇用契約関連の書類では、職務内容を詳細に記載し、給与・待遇を明確に提示する必要があります。さらに労働条件が法令を遵守していることを示すことも重要です。
スムーズな申請のためのチェックリスト
スムーズな申請のためには、申請者側と企業側の双方で綿密な準備が必要です。
申請者のチェックリスト
☑学位証明書や成績証明書
☑実務経験の証明書類
☑技術スキルの証明となる資格証明書等
☑パスポートの有効期限の確認
企業側では、事業実態の証明書類、雇用条件の適切性、給与水準の妥当性、社会保険への加入状況などを確認する必要があります。
申請プロセスにおいては、必要書類の完全性チェック、記入内容の整合性確認、提出期限の確認、追加書類の有無確認などを徹底することが重要です。
5.就労ビザ取得後の注意点

就労ビザを取得した後も、在留資格を維持するためにはさまざまな注意点があります。
ここでは在留資格の範囲内での就労を継続するために必要な知識と、注意すべきポイントについてくわしく解説します。
在留資格の範囲内で働くための確認事項
就労ビザ取得後は、申請時に認められた職務内容の範囲内での就労が求められます。
ITエンジニアの場合、システム開発やプログラミングなどの専門的な業務に従事することが認められていますが、単純作業やヘルプデスク業務のみを行うことは原則として認められません。
また雇用契約書に記載された労働条件を遵守し、適切な残業時間管理を行うことも重要です。これらの条件に違反した場合、在留資格の取り消しにつながる可能性があるため、常に注意を払う必要があります。
転職時の手続きと注意点
転職を考える場合は、特に慎重な対応が必要です。順を追って確認しましょう。
- 転職前に在留資格の変更や就労資格証明書の取得が必要となる場合がある
- 新しい職場での業務内容が現在の在留資格の範囲内であることを確認し、必要な場合は在留資格の変更申請を行う
また転職に際しては、前の職場での離職証明書の取得や、新しい職場での雇用契約書の準備など、必要な書類を漏れなく準備することが重要です。
在留期間更新時の重要ポイント
在留期間の更新時には、これまでの就労実績や今後の就労計画が重要な審査対象となります。
更新申請は在留期限の3ヶ月前から可能で、必要書類の準備や審査期間を考慮すると早めの対応が推奨されます。
更新時に確認される点
- 適切な給与水準が維持されていること
- 社会保険に加入していること
- 確定申告を適切に行っていること など
また在留期間中の活動実績が申請時の計画に沿っていたかどうかも重要な判断材料となります。
参考:在留期間更新許可申請
6.就労ビザを取得しITエンジニアとして日本で活躍する

就労ビザの取得は複雑な手続きを要しますが、準備を怠らなければ決して越えられない壁ではありません。
ここまでで解説した申請のポイントと注意事項を押さえることで、スムーズな取得が可能です。
特にITエンジニアは需要が高く、多くの企業がサポートを提供しています。ぜひ本記事を参考に、着実な準備を進めていってください。