DevOpsエンジニアの需要は年々高まっており、給与水準も上昇傾向にあります。
本記事では、DevOpsエンジニアの具体的な給与相場から、収入アップに効果的なスキル・資格・キャリアパスまでを徹底解説します。市場価値を高めたいエンジニアの方々に向けて、実践的な情報をお届けします。
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- DevOpsエンジニアの給与相場と変動要因について
- 給与アップに直結するスキル・資格と収入増加額の目安について
- 将来性を踏まえたキャリアパスの選択肢と報酬の展望について
1.DevOpsエンジニアの役割と給与相場

DevOpsエンジニアの具体的な仕事内容と給与相場からまずは確認していきましょう。
DevOpsエンジニアは重要な職種であり、いくつかの役割を持っています。
DevOpsエンジニアの仕事内容
DevOpsエンジニアは、開発(Development)と運用(Operations)の橋渡し役として、システム開発のライフサイクル全体に関わる重要な職種です。
- CI/CD(継続的インテグレーション/デリバリー)の実現…自動化パイプラインの構築と管理が主要な業務となります。具体的にはコードのビルド・テスト・デプロイの自動化を行い、品質管理プロセスの効率化を推進します。また継続的なシステム改善の実施として、パフォーマンス監視と最適化、セキュリティ対策の実装も担当します。
- インフラストラクチャの管理…AWS・GCP・Azureなどのクラウドプラットフォームを活用したクラウドインフラの設計と構築を行います。さらに、DockerやKubernetesといったコンテナ技術の運用も重要な責務です。インフラのコード化(IaC)の推進では、TerraformやCloudFormationなどを使用した構成管理を行い、環境の再現性と一貫性を確保します。
- システム全体の監視とトラブルシューティング…パフォーマンスメトリクスの収集と分析、ログ管理と異常検知の自動化を通じて、システムの健全性を維持します。また、インシデント発生時の対応と問題解決、再発防止策の立案と実装も行います。
チーム間のコラボレーション促進も重要
開発チームと運用チームの連携を促進し、コミュニケーションの円滑化とナレッジの共有・標準化を図ります。さらに、ワークフローの最適化やツール選定、ベストプラクティスの確立を通じて、プロジェクト全体の効率化にも貢献します。
インフラエンジニアとの違い
DevOpsエンジニアとインフラエンジニアは同じように思われがちですが、明確な違いがあります。主に責任範囲とアプローチの方法の違いがあげられます。
インフラエンジニアがインフラ環境の構築・保守を主体とし、システムの安定運用に重点を置くのに対し、DevOpsエンジニアは開発から運用まで全体を統括し、継続的な改善と自動化に注力します。
求められるスキルセット
インフラエンジニア | DevOpsエンジニア |
・サーバー、ネットワーク、ストレージの専門知識 | ・開発手法やツールの幅広い知識 |
・システム運用の実務経験 | ・自動化技術とプログラミングスキル |
・ビジネス視点でのプロセス改善能力 |
業務アプローチにおいても明確な違いがあります。インフラエンジニアが個別のインフラ課題に対する専門的な対応と安定性・信頼性の確保を重視するのに対し、DevOpsエンジニアは開発・運用の統合的な効率化、継続的なデリバリーの実現、そしてチーム間の連携促進を重視します。
DevOpsエンジニアの給与相場
DevOpsエンジニアの給与は、経験年数やスキルレベルによって大きく変動します。
年収の幅が大きく500~1,500万円以上の場合もあります。日本のDevOpsエンジニアの給与平均は678万円となっています。(参考:indeed 給与調査)
経験年数別のシュミレーション例
経験年数 | 年収の目安 | スキルレベル |
未経験~3年未満 | 年収350~500万円程度 | 学習期間 |
3年~5年の経験者 | 年収450~700万円 | 基本的なDevOps業務を独立して遂行できる |
5年~10年の経験者 | 年収600~900万円 | ロジェクトリーダーとしての役割も担当 |
10年以上のベテラン | 年収800~1,200万円以上 | チームマネジメントや技術戦略の立案 |
これらの給与水準は企業規模・業界・地域などによって変動します。
ただしリモートワークの普及によって地域格差は縮小傾向が進んでいくと考えられています。
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以下の記事では、日本で働くソフトウェアエンジニアの給与について、平均年収、市場動向を詳しく解説しています。
2.給与に影響を与える要因

給与に関わってくる要因は1つだけではなく、複数のものが関係しています。
自身のスキルや資格はもちろん、企業規模などがありますがそれぞれをくわしく確認してみましょう。
必須スキルと給与の関係性
DevOpsエンジニアの給与は、保有するスキルセットによって大きく変動します。以下の技術などは給与アップが見込めるものとして期待できるでしょう。
クラウドプラットフォーム技術
- AWS、GCP、Azureの実務経験
- マルチクラウド環境の設計・運用経験
コンテナ技術
- DockerやKubernetesの実務経験
- コンテナオーケストレーション設計経験
自動化・IaCスキル
- TerraformやAnsibleなどの実務経験
- 大規模環境での自動化実績
ソフトスキルも年収に関係している
ソフトスキルも給与に大きな影響を与えます。プロジェクトマネジメント能力として、チームリーダー経験・大規模プロジェクト管理経験で年収の増加が期待できます。
また社内外との折衝経験・グローバルチームでの就業経験も重視されることが多いでしょう。
資格保有による年収の違い
業界認定資格の保有は、DevOpsエンジニアの市場価値を客観的に示す重要な指標となります。
- AWS認定資格…AWS Certified DevOps Engineer Professional・AWS認定ソリューションアーキテクト
- Google Cloud資格…Professional Cloud DevOps Engineer・Professional Cloud Architect
- Azure資格…Azure DevOps Engineer Expert・Azure Solutions Architect Expert
参考:AWS認定資格 Google Cloud 認定資格 Azure資格
企業規模・業界による給与格差
企業規模によって給与水準は大きく異なります。
- 従業員1000名以上の大手企業での平均年収は610万円程度です。ただし福利厚生が充実し、昇給・賞与が安定しています。
- 従業員100-999名の中堅企業では平均年収は529万円程度、比較的大きな裁量権が与えられ、スキル評価による昇給が早い傾向にあります。
- 従業員100名未満のスタートアップでは年収492万円程度ですが、ストックオプションなどの追加報酬が期待できます。
業界別の特徴
IT・通信業界 | 基本給が比較的高めで技術スキルの評価が明確 |
金融・保険業界 | 高水準の基本給と確実なボーナス制度 |
EC・小売業界 | 成果報酬型の傾向が強く、デジタル戦略を重視する |
製造業 | 安定した給与体系で長期的なキャリア形成が可能 |
上記の要因は互いに関連しており、複数を組み合わせることで、より大きな給与アップが期待できます。
特に専門性の高いスキルと業界経験を組み合わせることで、市場価値を大きく向上させることができます。
3.DevOpsエンジニアの給与アップ方法

DevOpsエンジニアの給与をアップするためには具体的にどのような方法があるのでしょうか。4つのポイントを解説します。
転職による収入アップ
転職を通じた給与アップを実現するためには、自身の市場価値を高める実績作りが重要です。
大規模システムでの導入実績やコスト削減・効率化の数値実績・自動化による工数削減の具体例など、明確な成果を示すことができます。
またクラウドネイティブ環境での経験やマイクロサービスアーキテクチャの知見、セキュリティ設計の実績などは、転職市場での重要な差別化要因となります。
転職時の「交渉」も大切なポイント
転職時の交渉においては、同業他社の給与水準データ・保有スキルの市場価値・過去の実績と成果物を具体的に提示することが効果的です。
さらにキャリアビジョンの明確化や組織への貢献プラン、技術習得のロードマップを示すことで、将来的な成長可能性をアピールすることができます。
社内でのキャリアアップ戦略
社内での評価を高めるためにはプロジェクトでの具体的な成果創出が重要です
- デプロイ時間の短縮化
- 運用コストの削減
- システム安定性の向上など
また社内勉強会の主催や技術文書の整備、後進の育成支援といった組織への貢献も評価につながります。技術専門職としての地位を確立するには、技術戦略の立案・アーキテクチャ設計への参画・新技術導入の推進などが重要となります。
役職アップを目指す場合…プロジェクト管理経験の蓄積やチームリーダーとしての実績作り、予算管理への関与など、マネジメントスキルの強化が必要です。
給与交渉のポイント
効果的な給与交渉のためには以下を確認することが重要です。
成果を可視化する
- KPIの達成状況
- プロジェクトの成功事例、
- 具体的な数値実績など
自身の市場価値を証明する
- 業界標準の給与データ
- 取得した資格・認定
- 新規スキルの習得状況を示す
交渉時には希望金額の根拠提示・段階的な昇給プラン・評価指標の設定など、具体的な提案を行うことが効果的です。
また報酬以外の待遇改善・裁量権の拡大・研修機会の確保といった代替案も用意しておくことが望ましいでしょう。
効果的な資格を取得する
市場価値を高めるための重要かつ効果的な資格について
- クラウド関連資格…AWS Certified DevOps Engineer Professional、Google Cloud Professional DevOps Engineer、Microsoft Azure DevOps Engineer Expertなどが重要です。
- プロジェクトマネジメント資格…PMP(Project Management Professional)やPRINCE2 Practitioner、Scrum Master認定も有効です。
参考:AWS認定資格、Google Cloud 認定資格、PMP®資格、PRINCE2®プラクティショナー、Registered Scrum Master® Training
資格取得のためのロードマップ
1~3年目でクラウドプラットフォームの基礎資格・Linuxの基本資格・アジャイル開発の基礎認定を取得する。3年目以降にDevOps専門資格・セキュリティ関連の上位資格・アーキテクト系資格の取得を目指す。という流れが推奨されます。
参考:Google Cloud 認定資格、Linux技術者認定 LinuC(リナック)、アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験、DevOps Institute認定資格、CISSPとは、IPA システムアーキテクト試験
4.将来性と給与の展望

DevOpsエンジニアは市場の成長が続いていることもあり、将来性の高い職業と言えるでしょう。
今後の展望について給与面も考慮しながら解説します。
DevOps市場の成長予測
DevOps市場は着実な成長を続けており、国内市場においても今後も伸び続けると予測されています。多くの企業でDevOpsを取り入れまた、実践率も年々上昇しています。
成長を牽引する主な要因としてクラウドネイティブ化の加速・デジタルトランスフォーメーションの推進・システムの自動化・効率化ニーズの高まりが挙げられます。
企業のDX推進において、レガシーシステムのモダナイゼーション・マイクロサービス化の進展・クラウドファースト戦略の採用が需要を押し上げています。
特に金融業界のシステム刷新・製造業のスマートファクトリー化・小売業のオムニチャネル展開など、業界別の需要も拡大傾向にあります。
参考:IDC
今後期待される給与水準
DevOpsエンジニアの給与水準は、市場の成長に伴いさらなる上昇が見込まれます。
給与上昇の背景には、AIとの統合技術・セキュリティ対策の重要性増大・プラットフォーム技術の進化といった技術の高度化があります。
また経験者の需要増加や専門性の高い人材の希少価値上昇、グローバル競争の激化による人材不足の深刻化も給与上昇を後押ししています。
キャリアパスと収入の関係
DevOpsエンジニアのキャリアパスは、主に3つに分かれます。それぞれ1~3へとキャリアをステップアップするごとに給与(収入)の増加が見込めるでしょう。
テクニカルリーダー路線
- DevOpsエンジニア
- シニアDevOpsエンジニア
- テクニカルアーキテクト
マネジメント路線
- チームリーダー
- プロジェクトマネージャー
- 技術統括マネージャー
専門コンサルタント路線
- DevOpsコンサルタント
- シニアコンサルタント
- プリンシパルコンサルタント
キャリアパスは相互に排他的ではなく、経験とスキルに応じて柔軟に選択・変更することが可能です。
特に技術の進化が速いDevOps領域では、継続的な学習と適応力が長期的なキャリア成功の鍵となります。
5.DevOpsエンジニアに関するよくある質問

ここではDevOpsエンジニアに関わるよくある質問をまとめています。
これまでの解説と併せてDevOpsエンジニアへの理解を深めるために参考にしてみましょう。
DevOpsエンジニアとは?
DevOpsエンジニアは、開発(Development)と運用(Operations)の架け橋となる専門職です。
主要な業務内容としては、CI/CDパイプラインの構築・管理、インフラの自動化推進、システムの監視・運用の効率化、そしてチーム間のコラボレーション促進が挙げられます。
業務を通じてシステム全体の最適化、継続的な改善・効率化、セキュリティとパフォーマンスの両立を実現することが求められています。
給与アップに効果的な資格とは?
DevOpsエンジニアのキャリアアップに特に効果的な資格として、まずクラウドプラットフォーム認定資格が挙げられます。キャリアの幅を広げる資格としては、プロジェクトマネジメント系の資格が重要です。
資格取得にあたっては、段階的なアプローチが推奨されます。これらの資格は単なる認定以上の価値があり、資格取得の過程で得られる体系的な知識と実践的なスキルは、実務での問題解決能力を高め、結果として更なる給与アップにつながる可能性があります。
6.市場拡大を受けDevOpsエンジニアの需要は高まる

DevOpsエンジニアは、技術の進化とデジタル化の加速により、今後さらなる需要の拡大が見込まれる職種です。
給与面でもスキルや経験に応じて年収1,000万円以上も十分に視野に入れることができるでしょう。
継続的な学習・実績の積み重ね・戦略的なキャリア構築を通じて、着実な収入アップを実現することが可能です。