エンジニアのカジュアル面談を実施している企業は数多く存在しています。
レバテックキャリアの調査では、転職活動中のエンジニアの3人に1人がカジュアル面談を希望しているとのことです。
実際にカジュアル面談とはどのようなもので、どのような準備をしておけばよいのでしょうか?
本記事では、エンジニアのカジュアル面談を有意義なものに導くための具体的なポイントと、実践的なアドバイスについてくわしく解説します。
※この記事の英語版をお読みになりたい方は、こちらになります。(Read this article in English, please click here!)
- エンジニアカジュアル面談の目的と基本的な進め方について
- 技術面・待遇面の質問の具体的な方法とNG例について
- ミスマッチを防ぐための事前準備と当日の対応策について
1.そもそもカジュアル面談とは?知っておくべき基礎知識

そもそもカジュアル面談とはどんなものなのでしょうか。
まずは基礎的なポイントから知っていきましょう。
カジュアル面談の定義と目的
カジュアル面談は正式な採用選考の前段階で行われる、企業と求職者の双方向のコミュニケーションの場です。
「カジュアル」という言葉が示す通り、より柔軟でオープンな対話を通じて、まずはお互いの考えや適性を把握する場となります。
■企業側の目的
- 面談者の現在の状況や、今後の考えを伺う
- 面談者の技術力や経験値の概要を把握し、自社とのマッチ度を見る
- 面談者に自社のことを知ってもらい、興味をもってもらう
■求職者側の目的
- 企業の技術スタックや開発環境を確認する
- 組織文化や働き方について理解を深める
- キャリア成長の可能性を探りながら、転職後のミスマッチを防ぐ
このように、カジュアル面談は企業側・求職者側、どちらにとっても重要な機会となっています。
なぜ、エンジニアはカジュアル面談を重視しているのか
近年エンジニア採用市場においてカジュアル面談の重要性が高まっています。
1つめの理由は採用のミスマッチ防止です。正式選考前に相互理解を深めることで、採用後のミスマッチリスクを大幅に減らすことができます。
また企業文化や技術環境の詳細な確認が可能となり、双方にとって時間と労力を効率的に使うことが可能となります。
2つめはエンジニア採用市場の変化も重要な要因です。スカウトサービスやダイレクトリクルーティングの普及に伴い、優秀なエンジニアの獲得競争が激化しており、少しでも自社に興味をもってもらうために実施しています。
3つめはリモートワークの普及です。地理的制約が減少したことで、より多くの候補者とのオンラインで接点を持つことが可能になりました。
2.エンジニアにおけるカジュアル面談のメリット

エンジニアがカジュアル面談を活用することで得られるメリットは多岐にわたります。
どんなメリットがあるのかを知ることもカジュアル面談を成功させるために必要です。
市場価値の把握が可能になる
現在の技術スキルが市場でどのように評価されているのかを知り、求められている技術スキルのトレンドを把握することができます。
また、自身のキャリアパスの選択肢を広げることができます。
技術的な知見を広げられる
他社の技術スタックや開発手法を学び、業界の最新トレンドや動向を把握することができます。
また異なる環境での課題解決方法を知ることで、自身の技術力向上にもつながります。
キャリアプランを具体化できる
さまざまな企業の状況を比較検討しながら自身の強みと弱みを明確化し、今後の学習課題を発見することができます。
リスクの少ない情報収集が可能
正式な選考プロセスに入る前の情報収集として、気軽な雰囲気で質問や相談ができ、複数の選択肢を検討することができます。
3.エンジニアのカジュアル面談を有意義なものにする7つのポイント

せっかくカジュアル面談を行うのであれば、有意義な時間にしたいところです。ここでは、エンジニアのカジュアル面談を成功させるためのポイントについて解説します。
事前準備:企業研究と自己分析を徹底する
エンジニアのカジュアル面談を成功に導く第一歩は、入念な事前準備です。企業研究においては特に技術的な側面に注目する必要があります。
【事前に調査しておきたい点】
- 企業の技術スタック
- 開発環境、
- 主要プロダクトやサービスの技術的特徴
企業が公開しているテックブログや技術記事にも目を通しておくことで、より深い理解が得られます。
自己分析においては現在の技術スキルの棚卸しを行い、これまでの開発経験を整理することが大切です。
これから伸ばしたい技術分野を明確にし、キャリアにおける短期・長期目標を設定することで、面談での議論をより具体的なものにすることができます。
質問リストの作成:技術面と文化面をカバー
効果的な質問リストは、技術面と文化面の両方をバランスよくカバーする必要があります。
技術面での確認ポイント | 文化面での確認ポイント |
開発プロセス | チーム内でのコミュニケーション方法 |
ワークフロー | 技術的な意思決定の進め方 |
コードレビューの方針 | 学習・成長支援の制度 |
技術的負債への対応方法 | リモートワークの可否 など |
新技術導入の意思決定プロセス など |
上記のポイントをおさえた質問をすることで、企業の技術文化と自身の価値観との適合性を確認することができます。
目的の明確化:面談で得たい情報を整理する
エンジニアのカジュアル面談に臨む際は、自身が何を知りたいのかを明確にしておくことが重要です。
優先順位を設定し、必ず確認したい事項・できれば聞きたい事項・時間があれば触れたい話題を整理しておきます。
情報収集の焦点として、技術環境に関する詳細・、具体的な職務内容などを明確にしておくことで、限られた時間を効果的に活用することができるでしょう。
コミュニケーション戦略:効果的な質問と回答の方法
効果的なコミュニケーションのために、質問の仕方を工夫することが重要です。オープンエンド形式の質問を活用し、具体例を交えた質問をすることで、より深い理解が得られます。
また質問の背景説明を含めることで、相手により正確な情報を提供してもらうことができます。
回答の際は具体的な経験や実績を交えた説明を心がけ、技術的な文脈を意識した回答を行います。また、自身の考えや価値観を明確に提示することで、より建設的な対話が可能となります。
正直な姿勢:転職への本気度を伝える
カジュアルとはいえ、誠実なコミュニケーションが重要です。
■転職検討状況についてを適切に共有する
- 現在の転職活動の状況や
- 転職を考えている理由
- 希望する転職時期 など
またキャリアにおける展望や技術的な挑戦への意欲・組織への貢献意識なども明確に伝えることで、より深い相互理解が得られます。
フォローアップ:面談後のアクション
面談後の適切なフォローアップは、良好な関係構築において重要です。
■面談したその日に対応したいこと
- お礼メールの送信
- 追加質問の整理(あれば)
- 面談内容の振り返り
中長期的なアクションとしては、提供された情報の詳細確認・必要に応じた追加情報の請求・次のステップに関する検討と準備を行うことが効果的です。
▼併せて読みたい
下記の記事は、外国人エンジニアのための日本の就職面接ガイドになります。カジュアル面談でも使える準備に必要な情報を解説しています。ぜひ参考にしてください。
4.エンジニアのカジュアル面談でよく聞かれる質問と回答例

実際のエンジニアのカジュアル面談でよく聞かれる質問をまとめました。回答例もあわせて解説しているので、ぜひ自身のカジュアル面談の際に役立ててください。
技術スキルに関する質問への対応方法
技術スキルに関する質問は、エンジニアのカジュアル面談では最も重要な部分です。
質問例
「得意な言語・フレームワークは何ですか?」
回答例
「主にPythonとReactを使用しており、特にPythonは5年の実務経験があり、機械学習プロジェクトでのバックエンド開発やAPI設計を担当してきました」
◎ポイント
単なる技術名の列挙ではなく、具体的な経験と共に説明することが効果的です。
質問例
「具体的なプロジェクト経験を教えてください」
回答例
「直近2年間は、ECサイトのパフォーマンス改善プロジェクトをリードし、レスポンス時間を40%削減することができました」
◎ポイント
具体的な成果を含めた回答が効果的です。
さらに自己学習や個人プロジェクトの経験も積極的に活用し、技術的な課題への取り組み姿勢を示すことが効果的です。
キャリアビジョンを説明する際のポイント
キャリアビジョンの説明では、単なる将来の希望を述べるだけでなく、具体的な計画と現実的な目標を示すことが重要です。
【POINT】短期目標と長期目標を明確に区分し、説明することが効果的です。
- 短期目標(1-2年)としては「フルスタックエンジニアとしての基礎を固め、チーム内での技術的な提案ができるレベルを目指します」などと具体的に述べることが大切です。
- 長期目標(3-5年)では「技術リードとしてチームの生産性向上に貢献し、後進の育成にも携わりたい」といった形で説明します。
これからの目標を示すことも大切
「現在はバックエンド開発が中心ですが、フロントエンド技術も学習中で、より広い視野でシステム設計に関われるようになりたい」というように、現状と目標を話しましょう。
さらに志望企業との関連付けも効果的です。「貴社の進めているマイクロサービス化プロジェクトに興味があり、この分野でのスキルアップを図りたい」というように、自身のキャリアプランを結びつけて説明することで、より説得力のある回答となります。
給与や待遇に関する質問の適切な聞き方
給与や待遇に関する質問は慎重に行う必要がありますが、適切な聞き方をすることでカジュアル面談でも問題なく質問することができます。
重要なのは背景説明を含めた質問をすることです。例えば、「キャリアプランを考える上で、待遇面での可能性についても理解を深めたい」というように、質問の意図を明確にします。
段階的かつ多角的な視点のアプローチでより聞きやすく
「評価制度や昇給の仕組みについて教えていただけますか?」というように制度や仕組みについて質問し、その後で「技術スキルや経験に応じた待遇の目安があれば教えていただけますか?」と具体的な条件について尋ねます。
また、「技術力向上に応じたキャリアパスや待遇の変化について」「勤務形態や働き方の柔軟性について」「福利厚生や技術研修などの学習支援制度について」といった形で、待遇に関連するさまざまな側面から質問することで、より総合的な情報を得ることができます。
5.エンジニアのカジュアル面談での注意点とアドバイス

カジュアル面談においての注意点と、面談で失敗しないためのアドバイスについて解説します。より充実したカジュアル面談のために注意点はしっかりチェックしておきましょう。
エンジニアのカジュアル面談で避けるべき質問と話題を確認しておく
カジュアル面談では、特に慎重に扱うべき質問や話題があります。たとえ好奇心からであっても控えめにしないとカジュアル面接であってもうまくいかない可能性が高いでしょう。
企業の機密情報に関する直接的な質問はNG!! |
非公開の売上データ |
具体的な報酬制度の詳細 |
未発表のプロダクト情報 など |
その他に気を付けたい不適切な質問など
- 他社との直接的な比較
- 競合他社に関する詳細な質問
- 現職の悪口や批判
建設的な質問を心がけること
マイナスな質問はやはり印象が悪いため、建設的な質問・プラスに働くような質問をこころがけましょう。
例えば「開発チームの規模感や組織構造について」「技術選定の意思決定プロセスについて」「エンジニアの評価指標について」といった質問であれば、企業の特徴や文化を理解する上で有益な情報を得ることができます。
エンジニア カジュアル面談時の適切な態度とマナーを再確認する
カジュアル面談であっても、基本的なビジネスマナーは重要です。
■時間に関する配慮
オンライン面談の場合は5分前には接続準備を完了し、予定時間は厳守します。途中退出が必要な場合は必ず事前に通知することが望ましいでしょう。
■コミュニケーション面
相手の話を遮ることなく、メモを取る際は一言断るなどの基本的な配慮が必要です。質問の意図を正確に理解するよう努め、分からないことがあれば素直に確認することが大切です。
オンライン面談でこそ気を抜かない
オンライン面談の場合は、安定したネット環境の確保・適切な背景設定・カメラ・マイクのテスト・画面共有の準備など、技術的な面での配慮も欠かせません。
これらの準備は、スムーズなコミュニケーションを実現する上で重要な要素となります。
参考:doda Web面接(オンライン面接)の手順を徹底解説
ミスマッチを防ぐための確認はしっかりと
ミスマッチ防止のためには、まず事前の期待値調整が重要です。面談の目的を明確に伝え、技術的な質問の有無を確認し、面談担当者の役職を確認しておきましょう。
情報の適切な開示も重要です。現在の転職活動状況・技術スキルの正直な自己評価・転職時期に関する具体的な予定などは、可能な範囲で共有することが望ましいでしょう。
このような情報共有により、より具体的で現実的な議論が可能となります。
ミスマッチを感じても前向きな姿勢はキープする
もしミスマッチを感じた場合でも、建設的な質問を継続し、情報収集の機会として活用することが重要です。丁寧な面談終了と謝意の表明も忘れずに行います。
またどの段階でミスマッチを感じたか・事前に確認できた情報はなかったか・質問の仕方を改善できる点はあったかなど、今後の面談に活かせる学びは何かといった点について振り返ることが有効です。
6.カジュアル面談を活用してエンジニアとしてのキャリアを広げよう
カジュアル面談は、エンジニアが理想的な転職先を見つけるための重要な機会です。
事前準備を丁寧に行い、技術面と文化面の両方から企業を理解することで、より良い判断が可能になります。
また、プロフェッショナルとしての姿勢を保ちながら率直なコミュニケーションを心がけることで、互いにとって有意義な情報交換の場となるでしょう。