VPoE(Vice President of Engineering)とは、エンジニアリング組織のマネジメント責任者を指す役職です。
企業のDX推進やエンジニア組織の大規模化に伴い、技術戦略を担うCTOだけでは対応しきれない「人と組織」の課題を解決する専門職として注目されています。
年収1,000万円超も珍しくないこのポジションは、エンジニアのキャリアにおける新たな選択肢として重要性を増しています。
この記事では、VPoEの定義やCTOとの違い、役割、年収相場、なり方、必要スキルまで包括的に解説します。
- VPoEの役割とCTOとの明確な違い(技術戦略 vs 組織マネジメント)について
- 年収1,000万円超を実現するキャリアパスと市場価値について
- VPoEになるために今日から始められる5つの実践ステップについて
1. VPoEとは?エンジニア組織のマネジメント責任者

VPoEの正式名称や基本的な定義、そしてこの役職が生まれた背景について解説します。
VPoEの正式名称と基本的な役割
VPoEは「Vice President of Engineering」の略称で、エンジニアリング部門のマネジメント責任者です。
技術的な意思決定よりも、エンジニアの採用・育成・評価、チーム編成、開発環境の整備、他部署との連携といった組織運営全般を統括します。
欧米のテック企業で生まれた役職ですが、日本でもメルカリ、LINEヤフー、ラクスルなど成長企業を中心に導入が進んでいます。
VPoEが必要とされる背景
組織が30名、50名、100名と拡大すると、一人のCTOが技術戦略と組織管理の両方を担うことが困難になります。
誰がどのプロジェクトに適しているか、どのようなチーム編成が最適か、エンジニアのモチベーションをいかに維持するかといった「人」に関する課題への専門的対応が必要です。
総務省の「情報通信白書」によれば、日本企業のDX推進が加速し、IT人材不足も深刻化しています。
優秀なエンジニアの採用競争は激化しており、魅力的な組織を作り、人材を採用・育成・定着させる組織マネジメントの専門性が企業の競争力を左右します。
(出典: 総務省「情報通信白書」)
VPoEの主な責任領域
VPoEの責任領域は、エンジニアリング組織全体のパフォーマンス最大化です。
<主要責任領域>
- エンジニアの採用・育成・評価(採用戦略立案、キャリアパス整備、評価制度運用)
- チーム編成と組織設計(最適配置、スケーリング戦略)
- 開発環境・労働環境整備(ツール選定、生産性向上、組織文化醸成)
- 他部署との連携サポート(プロダクト・ビジネス・人事部門との調整)
- 経営層への報告と提言(組織状況報告、技術投資提案)
(出典: 厚生労働省「IT分野の職業能力開発体系」)
2. VPoEとCTOの違い
CTO vs VPoE
何を作るか
誰が・どう作るか
中長期・経営
現場・日常
先読み力
採用力
混同されがちなVPoEとCTOですが、責任範囲や役割には明確な違いがあります。
責任範囲の違い:技術戦略 vs 組織マネジメント
CTO(最高技術責任者)は、企業全体の技術戦略を統括し、どのような技術を採用するか、システムアーキテクチャをどう設計するかといった「What(何を作るか)」の意思決定を担います。
VPoEは「Who(誰が作るか)」「How(どう作るか)」の最適化に特化します。
優秀なエンジニアをいかに採用・育成・評価するか、どのようなチーム編成が最も効率的か、エンジニアが最高のパフォーマンスを発揮できる環境をいかに整えるか。これらの「人と組織」がVPoEの中心です。
CTOとVPoEは相互補完的な「車の両輪」です。CTOが描く技術戦略を、VPoEが組織として実現します。
視点とスキルセットの違い
CTOは全社的な技術戦略や中長期ロードマップといったマクロな視点で判断します。VPoEは個々のエンジニアの成長、日々の組織運営といったミクロな視点を重視します。
CTOには高度な技術力、アーキテクト能力、技術トレンドの先読み力、経営視点での技術判断が必須です。
VPoEにはピープルマネジメント力、採用力、組織設計力、コミュニケーション能力、データに基づく問題解決能力が重要で、技術的バックグラウンドは必要ですがCTOほどの深い専門性は求められません。
CTOは主に経営層やプロダクト部門と戦略的対話を行います。VPoEは人事、総務、営業など幅広い部署と日常的に調整し、組織の「ハブ」として機能します。
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3. VPoEと混同しやすい他の役職との違い

VPoE以外にも類似した役職が存在します。それぞれの違いを明確にしましょう。
エンジニアリングマネージャー(EM)との違い
EMは1〜3チーム、5〜15名程度のエンジニアを直接マネジメントする役職で、日々のタスク管理、1on1、プロジェクト進捗管理を担当します。
VPoEはエンジニア組織全体を統括する責任者で、複数のEMを束ねる上位職です。
組織全体の採用戦略、評価制度設計、組織構造決定といった戦略的で全社的な意思決定を行い、経営層(CxO)に近いエグゼクティブポジションとして機能します。
VPoP(Vice President of Product)との違い
VPoP(プロダクトマネジメント責任者)は「What to build(何を作るべきか)」の意思決定を担います。
VPoEは「How to build(どう作るか)」の実現に特化します。VPoPが定義したプロダクトビジョンを、エンジニアリング組織としていかに効率的に、高品質で実現するかが焦点です。
テックリードとの違い
テックリードは特定のプロジェクトや技術領域で技術的判断のリーダーシップを発揮し、「プレイングマネージャー」として現場で手を動かします。VPoEは「マネジメント専任」として組織設計や人材戦略に専念します。
4. VPoEの具体的な仕事内容
VPoE 6つのミッション
VPoEは日々どのような業務を行っているのか、6つの主要業務を詳しく解説します。
エンジニアの採用活動
事業計画に基づく採用計画策定、採用要件定義、面接フロー構築、面接官トレーニング、候補者体験向上を担当します。
技術ブログ運営、勉強会開催、SNS発信、リファラル採用推進といった採用広報も重要な役割です。
エンジニアの育成とキャリア支援
1on1、メンター制度、研修プログラム、技術書購入・カンファレンス参加支援など、継続的な成長環境を整えます。
スペシャリストとマネージャーの複線型キャリアパスを設計し、昇進・昇格基準を明確化します。
評価制度の設計と運用
技術力、マネジメント力、影響力などの評価軸を設定し、グレード定義を明文化します。
OKRやMBOを導入し、評価面談を実施します。建設的なフィードバック文化を醸成します。
チーム編成と組織設計
プロジェクトに応じた最適チーム構成とスキルバランス調整を行います。職能型、事業部型など、事業フェーズに応じた組織構造を設計します。
組織拡大時のスケーリング戦略を立案し、30名、50名、100名の壁を乗り越える施策を実行します。
開発環境・労働環境の整備
開発ツール選定、CI/CD整備、生産性測定と改善を行います。技術的負債への対応方針を定め、CTOと連携します。
リモート/ハイブリッドワーク環境構築、心理的安全性の高い組織文化醸成、満足度調査と改善を担当します。
他部署との連携とステークホルダーマネジメント
プロダクト・ビジネス・人事部門など他部署との橋渡しを行います。
定期的に組織状況を経営層に報告し、技術投資の提案や予算交渉を行います。組織リスクを早期発見し、エスカレーションします。
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5. VPoEの年収相場とマネジメント経験の市場価値

VPoEの年収は一般エンジニアと比較してどの程度なのか、データを基に解説します。
VPoEの平均年収は1,000万円〜1,500万円
企業規模別の年収目安は以下の通りです。
<企業規模別年収レンジ>
- スタートアップ(50名未満): 800万円〜1,200万円
- ミドルベンチャー(50〜300名): 1,000万円〜1,500万円
- 大手IT企業(300名以上): 1,200万円〜2,000万円
- メガベンチャー・外資系: 1,500万円〜3,000万円
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、システムエンジニア・プログラマーの平均年収は約550万円です。
VPoEは一般的なエンジニアの2〜3倍以上の水準となります。また、dodaの調査では、ITエンジニア全体の平均年収は462万円とされており、VPoEのようなマネジメント職は一般エンジニアと比較して大幅に高い年収が期待できます。
転職市場の調査では、マネジメント経験の有無による提示年収差が約67万円というデータもあり、組織マネジメント能力が市場で高く評価されていることがわかります。
(出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 doda「ITエンジニアの平均年収」 転職ドラフト「2025年版 激動のITエンジニア転職市場を徹底分析」)
年収を左右する主要因
<年収決定要因>
- 管轄するエンジニア人数(10〜30名: 900万円〜、30〜50名: 1,200万円〜、50名以上: 1,500万円〜)
- 企業の成長フェーズ(シード〜アーリー: ストックオプション中心、上場企業: 安定高額報酬)
- 事業の収益性(BtoB SaaS、金融、広告などは高年収傾向)
- マネジメント経験年数(3年未満: 800万円〜、3〜5年: 1,000万円〜、5年以上: 1,500万円〜)
- 技術スタックの希少性(AI/機械学習、ブロックチェーンなど)
VPoEの市場価値が高い理由は、組織構築力の希少性、技術とビジネス両面の理解による経営貢献、そして採用難易度の高さです。
6. VPoEになるための3つのキャリアパス
VPoE BLUEPRINT
3 PATHS TO VPoE
VPoEを目指すには複数のルートがあります。それぞれの特徴を理解しましょう。
パターン①:社内でのキャリアアップ
典型的なステップは、エンジニア(1〜3年)→ シニアエンジニア/テックリード(3〜5年)→ エンジニアリングマネージャー(2〜4年)→ VPoEです。
社内昇進のメリットは、既存の信頼関係、組織文化や事業への深い理解、段階的な成長、低リスクです。
成功のポイントは、早期のマネジメント志向表明、小規模チームリーダー経験、採用活動への積極関与、経営層との信頼関係構築です。
パターン②:転職によるキャリアチェンジ
EM経験3年以上が転職の目安です。IT業界特化型転職エージェントを活用し、マネジメント実績を棚卸しします。
「何名のチームを率いたか」「採用成功率の改善度」「離職率の低減度」といった定量的な成果を示すことが重要です。
パターン③:起業・創業メンバーとして参画
創業期スタートアップに創業メンバーとしてVPoEで参画する道もあります。
CxOレベルの経営参画、ゼロから組織を作る経験、ストックオプションによるアップサイドが魅力です。高リスク・高リターンですが、組織を10名から100名へスケールさせる経験は他では得難いキャリア資産となります。
7. VPoEに求められる5つの必須スキル

VPoEとして成功するために必要なスキルセットを具体的に解説します。
①エンジニアとしての技術的バックグラウンド
実務経験5年以上が目安で、システムアーキテクチャ設計の理解、複数技術スタック経験、技術トレンド学習が期待されます。
CTOほどの深い専門性は不要ですが、技術の本質理解とエンジニアとの技術的会話能力が必要です。
技術的バックグラウンドはエンジニアからの信頼獲得の基盤となり、CTOとのコミュニケーション、採用時の候補者見極め、技術的意思決定サポートに不可欠です。
(出典: 厚生労働省「IT分野の職業能力開発体系」)
②ピープルマネジメント力
定期的な1on1実施、建設的フィードバック提供、キャリア相談対応が求められます。個々のモチベーション源泉を理解し、適したアプローチでエンゲージメントを高めます。
離職防止、心理的安全性確保も重要です。ジュニアからシニアまで異なるスキルレベルをマネジメントし、多様なバックグラウンドを尊重する包摂的組織文化を作ります。
③採用力と組織設計力
採用要件定義、候補者見極め、オファー条件設計、採用ブランディング能力が求められます。
組織設計では最適チーム構成判断、職能型と事業部型の選択、スケーリング戦略立案が必要です。権限委譲とガバナンスのバランスを取り、裁量と方向性を両立させる仕組みを設計します。
④コミュニケーション能力とリーダーシップ
経営戦略を技術戦略に翻訳する能力、データに基づく説明・提案力、予算交渉力が経営層との関係で求められます。
非エンジニアへの技術説明、部門間利害調整、プロジェクト推進のファシリテーション能力が他部署との関係で必要です。
リーダーシップとして、ビジョン策定と浸透、意思決定力、変革推進力、模範行動が求められます。
⑤問題解決能力とデータ分析力
エンゲージメント、離職率、採用成功率、開発生産性といった組織健全性指標を設定・モニタリングします。
問題の根本原因を分析し、本質的解決策を立案します。KPI設定、各種データ分析、生産性指標(デプロイ頻度、リードタイム、障害復旧時間など)測定を行い、データドリブンな意思決定を実現します。
8. VPoEを導入している主要企業の事例
実際にVPoEを設置している企業の事例から、導入の効果を学びましょう。
株式会社メルカリ

急速な事業拡大で数百名規模のエンジニア組織となり、国内外に拠点を展開する中で、技術戦略と組織運営の分離が必要になりました。
VPoEは数百名規模の組織統括、グローバル採用推進、エンジニアリング文化醸成、開発生産性向上施策を担っています。
LINEヤフー株式会社

複数の大規模サービスを運営し、数千名規模のエンジニア組織を持ちます。
VPoEはサービス横断的な技術組織の標準化、事業部を跨いだキャリアパス設計、評価制度の統一と公平性確保を実現しています。
ラクスル株式会社

シリーズC以降の急成長期にVPoEを設置し、採用戦略強化、開発プロセス標準化を推進しました。
技術ブログ発信、イベント開催により採用数が増加し、チーム編成最適化により開発スピードが向上し、1on1実施やキャリアパス明確化によりエンジニア定着率も改善しています。
9. VPoEを目指すために今日からできること
FUTURE ACTIONREADY FOR VPoE
今日から始める5つの行動
VPoEを目指すために、今すぐ始められる具体的なアクションを紹介します。
①マネジメント経験を積極的に積む
2〜3名の小規模チームリーダーやプロジェクトリーダーを志願し、責任範囲を段階的に拡大します。ジュニアエンジニアのメンター役を引き受け、人の成長支援スキルを磨きます。
『1on1ミーティング』(本間浩輔著)や『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』(アンドリュー・S・グローブ著)で体系的知識を得て、実践を通じて傾聴力とコーチングスキルを向上させます。
②採用活動に積極的に関わる
技術面接やカルチャーフィット面接の面接官を志願し、候補者見極め、人物像把握、自社魅力伝達といった採用スキルを実践で習得します。
自身のネットワークから優秀なエンジニアを紹介し、リファラル採用に貢献します。技術ブログ執筆、勉強会登壇、SNS発信など採用広報活動に参加します。
③他部署との連携経験を増やす
プロダクトマネージャーとの要件定義に参加し、ビジネス要求を技術仕様に落とし込むプロセスを経験します。
非エンジニア部門に技術内容をわかりやすく説明する機会を作ります。部門横断プロジェクトに参加し、組織全体の視点を獲得します。
④経営視点を養う
経営・マネジメント関連書籍を読み、MBA取得やビジネススクール、オンライン講座で学習します。『エッセンシャル思考』『OKR』『THE MODEL』などで現代のビジネス思考法を学びます。
損益計算書、貸借対照表の基礎知識を身につけ、ROI、LTV、CACといった指標を理解します。事業目標を技術施策に翻訳する能力を磨きます。
⑤転職市場での自身の価値を把握する
定期的にキャリアアドバイザーと面談し、現在の市場価値を客観的に把握します。VPoEやEMの求人票を定期的にチェックし、企業が求めるスキルや経験の傾向を分析します。
自身のギャップを明確にし、優先的に伸ばすべきスキルを判断します。VPoEやEMのコミュニティに参加し、実際に活躍している人と交流してロールモデルを見つけます。
10. まとめ:VPoEは組織成長の鍵を握るキャリア
VPoEはエンジニアリング組織のマネジメント責任者として「人と組織」に特化した役職です。
技術戦略を担うCTOとは明確に役割が異なり、エンジニアの採用・育成・評価、チーム編成、開発環境整備、他部署連携を通じて組織全体のパフォーマンスを最大化します。
年収1,000万円超も珍しくなく、エンジニア不足時代において希少性の高いキャリアパスとして市場価値が高まっています。
マネジメント経験を積み、採用活動に関わり、他部署との連携を増やすことが、VPoEへの第一歩です。エンジニア組織の成長に不可欠な存在として、今後さらに需要が高まることが予想されます。
今日から始められるアクションで、着実にキャリアを築いていきましょう。