日本で働く外国籍エンジニアにとって、転職は大きなチャンスでありながらも在留資格（ビザ）に関する不安も伴います。
特に「技術・人文知識・国際業務」ビザを持つエンジニアが転職する際には、適切な手続きと計画が必要です。
この記事では、在留資格を維持しながら転職を成功させるための具体的な手順とアドバイスを紹介します。
- 外国籍エンジニアが転職する際に必要な在留資格関連の手続きと提出書類のリストについて
- 在留期限や職種変更の有無に応じた3つの転職パターン別の対応方法について
- 日本企業の面接で高評価を得るための技術アピール方法と文化適応力の示し方について
1．外国籍エンジニアが日本で転職する際のメリットとリスク
外国籍エンジニアとして日本で働いている方が転職を検討する際には、様々なメリットとリスクを慎重に検討する必要があります。
単なる職場環境や給与の改善だけでなく、在留資格（ビザ）への影響も含めて総合的に判断しましょう。
メリット：年収アップと技術力向上のチャンスが広がる
日本のIT業界では転職によって平均10〜30%の年収アップが期待できます。
特に日本語能力が高く専門性のある技術を持つエンジニアは市場価値が高く、スタートアップから大手企業への転職では福利厚生の充実も期待できます。
また、異なる企業文化や開発環境に触れることで技術スタックが広がり、新しいプロジェクトを通じて市場価値の高いスキルを習得できます。
さらに、複数の企業での就業経験は将来的な永住権申請にもプラスに評価されることがあり、転職を機にマネジメント職やスペシャリスト職など、キャリアの方向性を選択できるメリットもあります。
リスク：在留資格（ビザ）に関する注意点が存在する
転職には外国籍エンジニア特有のリスクも存在します。
転職時には14日以内に入国管理局への届出が義務付けられており、転職先企業のカテゴリーによって必要書類や審査の難易度が変わります。
手続きの遅延や不備があると将来的なビザ更新に悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
さらに、新しい職場環境への適応も課題となり、企業によって外国籍社員へのサポート体制に差があることも考慮する必要があります。
注意が必要なケース
- 退職後に次の就職先が決まっていない場合（在留資格の維持に影響する可能性がある）
- 在留期限が迫っている時期の転職（更新手続きに影響するリスクがある）
- 職種が大きく変わる場合（在留資格の変更申請が必要になることもある）
成功事例：平均年収20%アップした外国籍エンジニアの共通点
転職に成功し年収アップや職場環境の改善を実現した外国籍エンジニアには共通点があります。
転職を成功させるには、メリットを最大化しつつ、リスクを最小限に抑える戦略的なアプローチが重要です。
年収アップに成功した外国籍エンジニアの共通点
- 在留期限の1年以上前から転職活動を開始
- 必要な手続きや書類について前もって確認してスケジュールを立てた
- 専門家のサポートを活用
- 業務時間外でも自己学習を継続して市場価値の高いスキルを習得
- 日本語能力の向上に努めてN2以上の日本語能力を持つ
さらに、業界イベントやミートアップに積極的に参加し、SNSやテック系コミュニティでの人脈形成を行い、同じ境遇の外国籍エンジニアとの情報交換を定期的に行っています。
2．転職前に確認すべき在留資格（ビザ）の基礎知識
外国籍エンジニアが日本で転職を成功させるには、在留資格（ビザ）に関する正確な知識が不可欠です。
特に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で働いている方は、転職時の手続きについて理解しておく必要があります。
「技術・人文知識・国際業務」ビザで働く外国籍エンジニアの転職ポイント
「技術・人文知識・国際業務」は多くの外国籍ITエンジニアが保有している在留資格です。
この資格では専門的・技術的分野での就労が認められており、エンジニアリング、プログラミング、システム設計などの業務が対象となります。
ただし、単純労働とみなされる作業は含まれないため注意が必要です。
転職時には、新しい職場での業務内容が在留資格の活動範囲内かどうか、自身の学歴・職歴と新しい職務との関連性、転職先企業の規模や安定性（カテゴリー区分）などを確認することが重要です。
在留期間は最長5年で、一般的には1年、3年、5年のいずれかの期間が付与されます。初回は短い期間のことが多く、更新時に長期間が認められることが多いのが特徴です。
在留期限と転職タイミングの関係性を理解する
転職のタイミングと在留期限の関係は非常に重要です。在留期限の1年以上前であれば余裕を持った転職活動が可能で、6ヶ月〜1年前なら慎重に進めれば問題ありません。
しかし、在留期限の6ヶ月未満での転職は更新と転職を同時に行う必要があり、特に注意が必要です。
在留期限と転職活動の具体的な関わり
- 在留期限に余裕がある場合（1年以上前）…通常の転職活動と届出のみでOK
- 在留期限が6ヶ月未満の場合…更新申請と並行して転職準備を進める必要がある
- 在留期限直前の場合…先に更新を済ませてから転職活動を検討するのが賢明
また、退職後すぐに次の就職先が決まっていることが理想的で、3ヶ月以上の空白期間がある場合は次回の在留資格更新時に説明が必要になることもあります。
空白期間が長いほど次回の在留期間が短くなる可能性もあるため注意しましょう。
転職による職種変更が在留資格に与える影響
同じ「技術・人文知識・国際業務」の在留資格内でも、職種の変更は在留資格に影響を与える可能性があります。
バックエンドエンジニアからフロントエンドエンジニアへの転職など、同じ技術分野内の場合は基本的に在留資格への影響は少なく、届出は必要ですが資格変更申請は通常不要です。
変更申請が必要になるケースには注意する
エンジニアからマーケティング職やコンサルタントへの転職など、「技術」から「人文知識・国際業務」への変更となる場合は在留資格の変更申請が必要になるケースが多くなります。
転職に伴う職種変更の確認には、現在の在留カードに記載された「就労資格」の確認や、転職先企業の人事担当者・行政書士への相談、不明な場合は入国管理局の相談窓口の利用がおすすめです。
3．転職活動中に必ず行うべき３つの手続き
外国籍エンジニアが転職する際には、必ず行わなければならない法的手続きがあります。
これらを怠ると将来的なビザ更新や永住権申請に悪影響を及ぼす可能性があるため、しっかりと理解し、期限内に対応することが重要です。
退職時の届出：14日以内に行う義務がある手続き
退職時には入国管理局への届出が法律で義務付けられており、多くの外国籍の方が見落としがちな重要な手続きです。
退職日から14日以内に行う法的義務があり、届け出ない場合は罰則の対象となる可能性があります。転職先が決まっているかどうかで提出する書類が異なります。
提出する書類について
- 退職と転職が同時の場合（A型） 「契約終了・新規契約締結届出書」を提出
- 退職のみで転職先未定の場合（B型） 「契約終了届出書」を提出
- B型届出後に転職先が決まった場合（C型） 「新規契約締結届出書」を提出
届出方法は、オンライン（電子届出システム）、郵送、窓口持参の3種類から選べます。
過去に届出を怠っていた場合でも、気づいた時点ですぐに届出を行うことが重要です。過去の未届出の状況を正直に説明し、今後は適切に手続きを行う意思を示すことで、問題を最小限に抑えることができます。
転職先決定時の在留資格確認：就労資格証明書の取得
転職先が決まったら、新しい職場での業務内容が現在の在留資格で許可されている活動範囲内かどうかを確認することが重要です。その際に役立つのが「就労資格証明書」です。
これは特定の会社で特定の業務に従事することが可能かどうかを証明する書類で、在留資格の範囲内で働けることを公的に証明できます。取得は任意ですが、取得しておくと安心感が高まります。
この証明書を持つことで、転職先企業に在留資格上の問題がないことを示せ、将来的なトラブルを未然に防止できるほか、在留資格の更新時にもスムーズな手続きが期待できます。
特に職種や業務内容に変更がある場合は、この証明書を取得しておくことで、安心して新しい職場でのキャリアをスタートさせることができます。
転職先企業のカテゴリー確認：審査の難易度に影響する重要ポイント
転職先企業のカテゴリー（規模や実績）によって、ビザ更新時の審査難易度や必要書類が大きく異なります。
転職先企業のカテゴリー区分
- カテゴリー1 上場企業など（審査が比較的容易）
- カテゴリー2 一定規模以上の非上場企業（中程度の審査）
- カテゴリー3 中小企業（より詳細な審査あり）
- カテゴリー4 小規模企業（最も厳格な審査）
カテゴリーの確認は、企業のIR情報や有価証券報告書での上場状況確認、企業サイトや求人情報からの企業規模調査、転職エージェントや人事担当者への直接確認などで行えます。
カテゴリー1・2の企業への転職なら基本的な書類のみで対応可能ですが、カテゴリー3では企業の安定性を示す追加書類が必要になり、カテゴリー4では業務内容の詳細説明や企業財務状況などの詳細書類も求められます。
転職先がカテゴリー3や4の場合は、より多くの書類準備や詳細な業務説明が必要になることを念頭に置き、早めの準備を心がけましょう。
4．転職パターン別：必要な手続きと書類リスト
外国籍エンジニアの転職は、在留期限の残り期間と職種変更の有無によって、必要な手続きが大きく異なります。
ここでは、典型的な3つのパターンに分けて、それぞれ必要な手続きと提出書類をくわしく解説します。
パターン①：在留期限に余裕があり職種も変わらない場合の手続き
パターン①は、在留期限に6ヶ月以上の余裕があり、かつ職種が大きく変わらない場合のケースです。最も手続きがシンプルで、多くの外国籍エンジニアに当てはまるパターンです。
パターン①の必要な手続き
退職・転職の届出（14日以内）と、任意で就労資格証明書の申請です。提出書類は、契約機関に関する届出書（A型：退職と転職が同時の場合）と在留カードの写しです。
就労資格証明書を申請する場合は、就労資格証明書交付申請書、雇用契約書または労働条件通知書のコピー、会社の登記簿謄本（カテゴリー3・4の場合）、職務内容説明書（職種が若干異なる場合）などが必要になります。
手続きの流れ
退職前に必要書類を準備し、退職後14日以内に契約機関届出書を提出します。
その後新しい職場での就業を開始し、必要に応じて就労資格証明書を申請します。このパターンでは比較的手続きが簡単ですが、在留資格の活動範囲内であることを確認するために、就労資格証明書の申請をおすすめします。
パターン②：在留期限が迫っている場合の更新と転職の同時進行
在留期限まで残り6ヶ月未満の場合は、転職と在留期間更新の手続きを同時に行う必要があります。この場合は特に計画的な進行が重要です。
パターン②の必要な手続き
退職・転職の届出（14日以内）と在留期間更新許可申請が必要です。
在留期間更新申請の基本的な必要書類としては、在留期間更新許可申請書、転職前の会社が発行した源泉徴収票のコピー、退職証明書、住民税の「課税証明書」と「納税証明書」（特にカテゴリー3・4の場合は必須）が挙げられます。
転職先企業のカテゴリーによって追加書類が必要になります。カテゴリー1（上場企業）の場合は四季報のコピーまたは上場証明書類、カテゴリー2・3の場合は前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表（受付印のあるコピー）が必要です。
カテゴリー3・4の場合はさらに、会社の全部事項証明書、事業内容がわかる資料、直近の決算報告書、雇用契約書または労働条件通知書のコピーが必要になります。
審査をスムーズにするために
雇用理由書、業務内容が在留資格の活動範囲内であることを説明する文書、学歴と職務の関連性を説明する文書なども準備しておくと良いでしょう。
在留期限が迫っている状況での転職は、書類準備と申請のタイミングが特に重要です。可能であれば専門家（行政書士など）のサポートを受けることをおすすめします。
パターン③：職種が前の会社と違う場合の在留資格変更申請
職種が大きく変わる転職の場合（例：エンジニアからコンサルタントやマーケターへの転職）は、在留資格の変更申請が必要になることがあります。このケースは最も複雑な手続きとなります。
パターン③の必要な手続き
必要な手続きは、退職・転職の届出（14日以内）と在留資格変更許可申請です。
在留資格変更申請の必要書類としては、在留資格変更許可申請書、パターン②と同様の書類一式に加えて、新しい職務内容の詳細説明書と学歴・職歴と新しい職務との関連性を説明する資料が必要になります。
「技術」から「人文知識・国際業務」への変更の具体例としては、プログラマーからマーケティング担当への転職や、技術コンサルからビジネスコンサルへの転職が挙げられます。
また、「技術」から「経営・管理」への変更の例としては、エンジニアから会社経営者や役員への転身、技術リーダーから管理職への転換などがあります。
審査について
審査では、学歴や職歴が新しい職種と関連していることを明確に示し、専門的な知識やスキルを要する業務であることを強調することが重要です。
また、単純労働ではないことを具体的に説明し、転職先企業における外国籍人材の必要性を説明することも求められます。
職種変更を伴う転職の場合は、事前に入国管理局の相談窓口や行政書士に相談し、申請の見通しを立てることが極めて重要です。審査期間も長くなる傾向があるため、余裕を持ったスケジュール設定が必要です。
5．外国籍エンジニアの転職面接で評価されるポイント
外国籍エンジニアが日本企業の転職面接で成功するためには、技術スキルだけでなく、コミュニケーション能力や文化適応力も重要な評価ポイントとなります。
ここでは、面接で高評価を得るための具体的なポイントを解説します。
日本語力以外で高評価を得るコミュニケーション術
日本語が完璧でなくても、効果的なコミュニケーション戦略によって面接官に好印象を与えることができます。
非言語コミュニケーションとして、背筋を伸ばし適切なアイコンタクトを心がけること、笑顔を意識して話を聞く際は相槌やうなずきを適度に入れること、清潔感があり企業文化に合った服装を選ぶことが重要です。
言語の壁は、準備と対策によって大きく克服できます。技術的な内容をどう伝えるかを事前にシミュレーションしておくことが重要です。
面接でのコミュニケーションポイント
わかりやすい伝え方として、複雑な表現より簡潔な言葉を選ぶこと、特に技術的な説明の際は図や表などの視覚資料を活用すること、必要に応じて英語の専門用語を使うことが効果的です。
ITの専門用語は英語の方が通じることも多いでしょう。
質問への対応スキル
理解できなかった場合は「〜という理解で合っていますか？」と確認する聞き返しのテクニックの活用、キーワードをメモして回答の整理に役立てること、表面的な質問の背後にある懸念点を理解することが大切です。
技術スキルの効果的なアピール方法：ポートフォリオ作成のコツ
技術スキルは外国籍エンジニアの最大の武器です。技術力のアピールでは、単に「できる」と言うよりも、具体的なエピソードや成果を交えて説明することが効果的です。
効果的なポートフォリオ作成
GitHub/GitLabの充実（コード品質や開発習慣が見えるように整備）、実績の可視化（担当プロジェクトの成果を数値化）、言語・技術スタックの明確化（経験年数と習熟度を正直に示す）が重要です。
技術スキルの説明方法
STAR法（状況、課題、行動、結果の順で説明）の活用、「なぜその技術を選んだか」の意思決定プロセスの説明、新技術への適応力や自己学習の習慣のアピールが効果的です。
日本企業向けのアピールポイント
ドキュメント作成能力（日本企業では重視される傾向がある）、チーム開発の経験（コードレビューや設計レビューの経験）、保守性・可読性への意識（「きれいなコード」への意識）をアピールすると良いでしょう。
面接官が密かに見ている「文化適応力」をアピールする方法
外国籍エンジニアの採用において、技術力と同等に重視されるのが「文化適応力」です。
文化適応力は短期間で身につくものではありませんが、日本での生活や職場経験の中で学んだことを具体的に伝えることで、面接官に安心感を与えることができます。
日本の職場文化理解
ホウレンソウ（報告・連絡・相談）の理解、時間厳守の姿勢、チームワークの重視をアピールすることが重要です。
長期コミットメントの姿勢
日本での長期的なキャリアビジョン、前職での勤続年数のアピール、日本語学習への姿勢を示すことが効果的です。
異文化理解の具体例
日本文化への関心、前職での異文化環境での成功体験、コミュニケーションスタイルの適応力をアピールしましょう。
6．成功後の手続きと新しい職場での成功戦略
転職が決まった後も、外国籍エンジニアには行うべき重要な手続きがあります。また、新しい職場で早期に成功するための戦略も重要です。ここでは、転職後のスムーズな適応と長期的なキャリア構築のポイントを解説します。
転職後14日以内に必ず行うべき届出手続き
新しい職場での勤務が始まったら、まず法的に必要な届出手続きを確実に行いましょう。
転職先企業に就職した日から14日以内に契約機関に関する届出を行う義務があります。
| 提出方法は3種類から選べる | ・オンライン（電子届出システム、24時間365日対応） ・郵送（届出書と在留カードの写しを同封し、封筒に「届出書在中」と赤ペンで記載） ・窓口持参（最寄りの入国管理局） |
| 転職のパターンによって提出書類が異なる | ・退職と同時に転職した場合は「契約終了・新規契約締結届出書」 ・一旦退職後に転職した場合は「新規契約締結届出書」を提出 |
届出を忘れていた場合でも、気づいた時点ですぐに届出を行い、理由書を添えて経緯を説明し、今後は期限内に届出を行う意思を示すことが重要です。
この届出は非常に重要であり、怠ると罰則の対象になる可能性があります。転職直後は業務に慣れるのに忙しい時期ですが、必ず期限内に手続きを完了させましょう。
新しい職場での最初の3ヶ月：信頼構築のための行動指針
転職後の最初の3ヶ月は「試用期間」とも呼ばれ、相互評価の重要な期間です。
この期間に構築した信頼関係は、その後のキャリア発展の土台となります。「郷に入っては郷に従え」の精神で、まずは企業文化に適応することに注力しましょう。
| 最初の1ヶ月 | ・観察と適応の時期と考える ・明文化されていないルールや習慣を理解し、報告の頻度や方法などのコミュニケーションパターンを観察する ・わからないことはすぐに質問する姿勢を見せ、説明を受けた内容は必ずメモして復習する |
| 2ヶ月目 | ・完璧を目指すより、まず動かすことを優先し、小さな成果を積み重ねる ・上司や同僚に定期的に評価を求めてフィードバックを積極的に収集し、「〜はどうでしょうか」と控えめに技術的な提案を始める ・ランチや休憩時間を活用してチームメンバーとの関係構築にも努めると良い |
| 3ヶ月目 | ・価値の証明の時期ととらえる ・得意分野や貢献できる領域を明確にして自分の役割を確立する ・与えられた仕事だけでなく改善点を見つけて行動する主体性を発揮する ・最初の3ヶ月を振り返り、次の3ヶ月の目標を上司と共有する ・業務用語や専門用語の習得を継続し日本語力の向上にも努める |
長期的キャリアプラン：永住権取得を視野に入れたステップアップ戦略
外国籍エンジニアが日本でのキャリアを長期的に考える場合、永住権取得は大きな目標の1つとなります。
永住権取得には通常10年以上の日本在住が必要ですが、高度人材は早期取得が可能です。また安定した収入と納税実績、犯罪歴がないこと、日本語能力の証明（N2レベル以上が望ましい）も重要な要件です。
| 高度人材ポイント制の活用 | ・学歴・職歴・年収などでポイントが加算され、70点以上で「高度専門職」の在留資格が取得できる ・高度専門職1号なら5年後、高度専門職2号なら最短1年で永住申請が可能になる |
| キャリアステップアップのために | ・特定分野のエキスパートとしての地位確立 ・JLPT N1取得を目指す日本語能力向上 ・2〜3年ごとのスキルと市場価値の再評価 ・業界団体やコミュニティ活動への参加によるネットワーク構築 ・技術ブログやセミナー講師などの日本社会への貢献活動 |
7．外国籍エンジニアの転職を支援する厳選リソース
外国籍エンジニアが転職を成功させるためには、適切なサポートやリソースを活用することが重要です。
ここでは、転職活動や在留手続きを効果的に進めるための厳選リソースについて解説します。
外国籍エンジニア特化型の転職エージェントの選び方
外国籍エンジニアに特化した転職エージェントは、一般的なエージェントと比べて提供されるサービスの質や内容が大きく異なります。
エージェントとの効果的な付き合い方
1社に依存せず複数のエージェントを並行利用して情報を比較すること、譲れない条件と妥協可能な条件を明確に伝えること、週1回程度は状況確認の連絡を取ること、面接後の企業からの評価を共有してもらうことが大切です。
転職活動開始時には市場価値の確認と求人情報の収集、面接対策時には日本企業特有の面接対策のアドバイス、条件交渉時には適切な年収や条件の交渉サポート、ビザ手続き時には必要書類や手続きの案内など、各段階でエージェントを効果的に活用しましょう。
在留手続きをサポートする行政書士事務所の選び方
在留資格に関する手続きは複雑で専門知識が必要です。
在留資格に関する手続きは一度失敗すると取り返しがつかないことがあるため、特に重要な転職の場合は専門家のサポートを検討しましょう。
行政書士に依頼すべき状況
職種変更を伴う転職で在留資格変更の可能性がある場合、在留期限が迫っていて更新と転職の同時進行が必要な場合、カテゴリー3・4の企業への転職で書類準備が複雑な場合、過去にビザ更新や変更で不許可経験がありリスク対策が必要な場合などが挙げられます。
依頼の際は、初回相談の有料・無料を確認し、依頼前に見積もりを取って料金内容を確認することが大切です。また、必要書類のリストを事前に教えてもらい、スケジュールと進捗の共有方法を確認しておくと安心です。
コミュニティとネットワーキング：同じ境遇のエンジニアとつながる方法
外国籍エンジニアにとって、同じ境遇の仲間とのネットワークは情報収集や精神的サポートとして非常に重要です。
ネットワーキングは一朝一夕に構築できるものではありませんが、技術コミュニティへの継続的な参加を通じて徐々に信頼関係を築いていくことが大切です。
効果的なネットワーキング
ネットワークからは、公募前の非公開求人情報、転職先候補の社内文化や実態に関する情報、市場で価値が高まっている技術の情報、先輩エンジニアからのアドバイスや指導など、様々な価値を得ることができます。
8．転職を成功させた外国籍エンジニアの体験談
実際に日本での転職を成功させた外国籍エンジニアたちの経験談から、成功のヒントと実践的なアドバイスを紹介します。
これらの成功事例から見えてくるのは、準備の重要性、専門家の活用、そして自分の強みの効果的なアピールです。
転職は不安を伴いますが、計画的に進めることで、外国籍エンジニアでも日本でのキャリアアップを実現できることがわかります。
小規模なWeb制作会社から大手IT企業へ転職
リューさん（28歳・ベトナム出身・Web開発エンジニア）の例
小規模なWeb制作会社から大手IT企業へ転職し、年収を30%アップさせた。彼は転職の3ヶ月前から準備を始め、在留カードの期限確認や必要書類のリストアップを行い、転職エージェントのアドバイスを活用。
転職時に最も心配だったビザ手続きは、退職日の翌日から新しい会社で働けるよう調整し、14日以内の届出も忘れずにった。新環境では最初の3ヶ月は質問することを恐れず、日本人同僚のやり方をよく観察した結果、現在はチームリーダーとして活躍している。
在留期間が少なくなってからの転職パターン
マリアさん（32歳・フィリピン出身・QAエンジニア）の例
在留期限が残り4ヶ月という状況での転職に成功。より専門性の高いポジションを獲得した。
転職と在留期間更新の手続きを同時に進めるという課題に対して行政書士に相談したことが功を奏した。転職活動では自動化テストの経験など、QAとしての専門性をアピールしたことが評価され、前職より責任のあるポジションでのオファーを獲得。技術面接ではデモを交えた説明を心がけ、言語の壁を乗り越えている。
職種変更を伴う転職を成功させたケース
カルロスさん（35歳・ブラジル出身・インフラエンジニア）の例
インフラエンジニアからSREへの職種変更を伴う転職を成功。転職前に入国管理局の相談窓口で業務内容と自身のスキルセットについて確認し、新しい職務内容が従来のスキルの延長線上にあることを詳しく説明する資料を準備した。
転職活動では複数のエージェントを同時に利用して選択肢を広げ、面接ではインフラ管理だけでなく自動化やDevOpsの知識もアピール。結果として年収も上がり、よりグローバルなプロジェクトに携わる機会を得ている。
スタートアップから大手企業へ転職
ジンさん（30歳・中国出身・モバイルアプリ開発者）の例
スタートアップから大手企業への転職を実現し、ワークライフバランスの改善に成功。転職先選びには時間をかけ、エージェントに残業の少ない環境を希望として伝えた。
技術面ではGitHubでの個人プロジェクトや日本市場向けのアプリ開発経験が評価され、転職活動中も日本語学習を継続してN1取得を目指した。新環境では最初は文化の違いに戸惑いもあったが、徐々に適応し、現在は残業も少なく趣味の時間も取れる充実した生活を送っている。
9．日本での外国籍エンジニアの転職は事前準備が重要
外国籍エンジニアの転職は、事前の準備と計画が成功の鍵となります。
在留資格の維持に必要な手続きを期限内に確実に行い、転職先企業のカテゴリーや職種変更の有無に応じた適切な対応を心がけましょう。
また、技術力だけでなく、コミュニケーション能力や文化適応力もアピールすることで、日本での転職を成功に導き、キャリアアップと安定した在留資格の両立を実現できます。
