インフラエンジニアとして働く中で、「次のキャリアステップはどこへ向かうべきか」「年収を上げるにはどうすればいいのか」といった悩みを抱えるケースは少なくありません。
技術の変化が激しいIT業界では、計画的なキャリア設計が市場価値を大きく左右します。
この記事では、インフラエンジニアのキャリアパスを未経験者・経験者別に網羅的に解説します。
- 未経験からインフラエンジニアになるための段階的なキャリアロードマップについて
- 経験者が選ぶべき3つの主要キャリアパスと、SREなど最新の選択肢について
- キャリアステップごとの具体的な年収目安と、市場価値を高めるために必要なスキル・資格について
1.インフラエンジニアのキャリアパスとは?

インフラエンジニアのキャリアパスを考える前に、まずは職種の役割と重要性を正しく理解することが重要です。
このセクションでは、インフラエンジニアの一般的な定義から、なぜ今キャリアプランを考えるべきなのか、その具体的な理由を解説します。
インフラエンジニアの役割と重要性
インフラエンジニアは、企業のITシステムを支える「縁の下の力持ち」として、ビジネスの安定稼働に欠かせない存在です。 サーバー、ネットワーク、データベースといったITインフラの設計・構築・運用を担当し、システム全体の基盤を支えています。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によれば、基盤システムエンジニアは「情報システムの基盤となるサーバやネットワークなどの設計・構築・運用・保守を行う」と定義されています。
近年では、クラウド技術の普及に伴い、AWS・Azure・GCPなどのクラウドインフラの構築・運用も重要な業務となっています。
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、インフラエンジニアの需要は年々高まっています。
経済産業省の調査では、2030年までにIT人材が最大79万人不足すると予測されており、インフラエンジニアは今後も安定した需要が見込める職種です。
参考:厚生労働省「jobtag」システムエンジニア
参考:経済産業省:IT分野について
インフラエンジニアがキャリアパスを考えるべき理由
インフラエンジニアがキャリアパスを明確にすべき理由は大きく3つあります。
理由1:計画的なスキル習得で市場価値を高められる
技術トレンドの変化が激しいIT業界では、場当たり的な学習ではなく、目指すキャリアから逆算した戦略的なスキル習得が重要です。例えば、クラウドエンジニアを目指すなら、AWS認定資格の取得やIaC(Infrastructure as Code)の習得を優先すべきです。
理由2:年収アップの具体的な道筋が見える
キャリアパスを明確にすることで、各段階での年収目安が分かり、転職や昇進のタイミングを計画的に設定できます。一般的に、運用から設計、そしてクラウドやSREへとステップアップすることで、年収を大幅に向上させることが可能です。
理由3:技術トレンドの変化に対応できる
オンプレミスからクラウドへ、手作業から自動化へと、インフラ技術は大きく変化しています。キャリアビジョンがあれば、新技術の登場にも柔軟に対応し、常に市場で求められるエンジニアでいられます。
2.未経験者向けインフラエンジニアのキャリアロードマップ
年収 ~400万
年収 ~500万
年収 ~650万
年収 ~800万+
年収 1000万~
未経験からインフラエンジニアを目指す方にとって、重要なのは段階的な成長プランを描くことです。
このセクションでは、入社1年目の運用・監視業務から始まり、構築、設計、クラウド技術の習得、そして専門性の確立まで、5つのステップで具体的なキャリアロードマップを解説します。
ステップ1:運用・監視業務で基礎を固める(入社1年目)
未経験からインフラエンジニアのキャリアをスタートする場合、まずは運用・監視業務から始めるのが一般的です。
この段階では、サーバーやネットワーク機器の稼働状況の監視、システム障害発生時の一次対応と報告、定期的なバックアップ作業の実施、各種ログの確認と異常値の検知といった業務を担当します。
24時間365日の安定稼働を支える責任感と、迅速な対応力が身につく重要な時期です。
Linuxの基本コマンド操作、ネットワークの基礎知識(TCP/IP、DNS、DHCPなど)、障害発生時のエスカレーション手順、運用ドキュメントの読み方と記録の取り方を実務で学びます。
一般的な相場として、未経験からのスタートでは年収300万円~400万円程度が目安となります。
ステップ2:構築業務で技術力を高める(2~3年目)
運用業務で基礎を固めた後は、サーバーやネットワークの構築業務にステップアップします。
設計書に基づくサーバーのセットアップ、ネットワーク機器の設定と構成、ミドルウェア(Webサーバー、DBなど)のインストールと設定、構築手順書の作成と更新が主な業務内容です。
この段階では、設計書に基づいてインフラを実際に構築するスキルを身につけます。一般的な相場として、構築業務を担当できるレベルでは年収400万円~500万円程度が目安です。
この時期に取得を推奨する資格
- CCNA (Cisco Certified Network Associate): ネットワークの基礎を体系的に学べる
- LinuCレベル1:Linuxサーバーの基本操作と管理スキルを証明
- ITパスポート:IT全般の基礎知識(未取得の場合)
参考:IPA「試験情報」
ステップ3:設計・要件定義で上流工程を経験(4~5年目)
構築経験を積んだ後は、システムの設計や要件定義といった上流工程に携わるようになります。
クライアントへのヒアリングと要件整理、システム全体のアーキテクチャ設計、構成図や設計書の作成、コスト試算と提案資料の作成を担当します。
この段階では、技術力に加えてビジネス視点も求められるようになります。
顧客折衝力、提案力、プロジェクト管理の基礎といったビジネススキルと、より深い専門知識と複数技術領域の理解が必要です。一般的な相場として、上流工程を担当できるレベルでは年収500万円~650万円程度が目安となります。
ステップ4:クラウド技術で市場価値を高める(5年目以降)
近年のインフラエンジニアにとって、クラウド技術の習得は市場価値を大きく左右する重要な要素となっています。多くの企業が、コスト削減、柔軟性、スケーラビリティの観点からクラウドへの移行を進めており、クラウド案件は高単価であることが多く、年収アップにも直結します。
AWS、Azure、GCPといったクラウドプラットフォームの知識、IaC (Infrastructure as Code)、自動化スキルが求められます。一般的な相場として、クラウドスキルを持つエンジニアは年収600万円~800万円、専門性が高い場合は800万円以上も可能です。
推奨されるクラウド資格
- AWS認定ソリューションアーキテクト-アソシエイト:最も人気のあるクラウド資格
- Microsoft Azure Fundamentals: Azureの基礎を証明
- Google Cloud Associate Cloud Engineer: GCPの実務スキルを証明
ステップ5:専門性とマネジメントで年収アップを実現(7年目以降)
7年目以降になると、キャリアの重要な分岐点を迎えます。
ここで「技術を極めるスペシャリスト」か「チームを率いるマネジメント」か「経営視点のコンサルタント」かの選択が必要になります。
一般的な相場として、高度な専門性を持つスペシャリストや、大規模プロジェクトを統括するマネージャー、戦略的な提案ができるコンサルタントは、年収1000万円以上を目指すことが可能です。
次のセクションでは、これらの選択肢について詳しく解説します。
3.経験者向けインフラエンジニアの3つのキャリアパスと選び方
スペシャリスト
主な活動: 技術的課題解決
適性: 技術への探究心
年収レンジ: 600万~1,200万
マネージャー
主な活動: チーム・進捗管理
適性: リーダーシップ
年収レンジ: 650万~1,200万
コンサルタント
主な活動: 戦略立案・提案
適性: 戦略的思考
年収レンジ: 700万~1,500万
ある程度の経験を積んだインフラエンジニアが直面する最も重要な選択が、「どのキャリアパスを歩むか」です。技術を深めるスペシャリスト、チームを率いるプロジェクトマネージャー、経営視点で提案するITコンサルタントという3つの主要な道があります。
このセクションでは、それぞれの役割、年収、適性を詳しく比較解説します。
ITスペシャリスト:技術を極めるプロフェッショナルの道
ITスペシャリストは、特定の技術領域において高度な専門知識とスキルを持ち、技術的な課題解決のエキスパートとして活躍するキャリアパスです。
複雑な技術課題の解決、最新技術の導入検討、技術標準の策定などを担当し、組織内の「技術的な最終判断者」として重要なアーキテクチャ決定に関与します。
専門分野の例
- ネットワークスペシャリスト:大規模ネットワークの設計・最適化
- セキュリティスペシャリスト:セキュリティ対策の企画・実装
- データベーススペシャリスト:データベースの設計・チューニング
- クラウドアーキテクト:クラウドインフラの全体設計
一般的な相場として、ITスペシャリストの年収は600万円~1,200万円程度です。
特に高度な専門性を持つエンジニアや、希少性の高い技術領域のスペシャリストは、1,000万円以上も可能です。
向いている人の特徴
技術的な深掘りが好きで、常に最新技術を追い続けられる人、特定領域でのNo.1を目指したい人、人を管理するより技術で貢献したい人に向いています。
専門分野における深い技術知識、問題解決能力と論理的思考力、技術トレンドのキャッチアップ能力が必要です。
推奨資格
- ネットワークスペシャリスト
- 情報処理安全確保支援士
- AWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナル
プロジェクトマネージャー:チームを率いるリーダーの道
プロジェクトマネージャー(PM)は、プロジェクト全体の計画・実行・管理を担当し、チームを率いてビジネス目標を達成するキャリアパスです。
プロジェクトの予算管理、スケジュール管理、品質管理、リスク管理を担当し、クライアントとの折衝、チームメンバーのマネジメント、ステークホルダーとの調整など、技術以外のスキルも重要になります。
具体的な業務内容
プロジェクト計画の策定とWBSの作成、チームメンバーのアサインと進捗管理、予算管理とコスト最適化、クライアントへの報告と課題解決、リスク管理と品質保証などがあります。
一般的な相場として、プロジェクトマネージャーの年収は650万円~1,200万円程度です。大規模プロジェクトを統括するシニアPMやプログラムマネージャーは、1,000万円以上も可能です。
向いている人の特徴
人と関わることが好きで、チームをまとめるのが得意な人、全体最適を考えた判断ができる人、責任を持ってプロジェクトを完遂したい人、マルチタスクが得意で調整力がある人に向いています。
必要なスキルと推奨資格
プロジェクト管理スキル(PMBOK、アジャイル)、コミュニケーション能力と交渉力、リーダーシップとファシリテーションが必要です。
推奨資格は、プロジェクトマネージャー試験(PM)、PMPです。
ITコンサルタント:経営視点で価値を提供する戦略家の道
ITコンサルタントは、企業の経営課題をIT視点で分析し、最適なソリューションを提案・導入支援するキャリアパスです。
クライアント企業の現状分析、課題の特定、IT戦略の立案、ソリューションの提案を行い、技術的な知識に加えて、ビジネス知識と経営視点が求められます。
具体的な業務内容
クライアントの経営課題のヒアリングと分析、現行システムの評価と課題抽出、IT戦略の立案とロードマップ作成、ソリューションの提案とRFP作成支援、システム導入プロジェクトのPMO支援などです。
一般的な相場として、ITコンサルタントの年収は700万円~1,500万円程度です。大手コンサルティングファームのシニアコンサルタントやマネージャークラスでは、1,200万円以上も可能です。
向いている人の特徴
ビジネスや経営に興味があり、戦略的思考ができる人、論理的な提案資料の作成が得意な人、クライアントの課題を解決することに喜びを感じる人、幅広い業界・技術に対する好奇心がある人に向いています。
必要なスキルと推奨資格
IT技術の幅広い知識(深さより広さ)、ビジネス知識と経営視点、論理的思考力とプレゼンテーション能力、課題発見力と問題解決力が必要です。
推奨資格は、ITストラテジスト、中小企業診断士、MBAです。
3つのキャリアパスの比較
| 項目 | ITスペシャリスト | プロジェクトマネージャー | ITコンサルタント |
|---|---|---|---|
| 重視するもの | 技術の深さ | プロジェクト成功 | ビジネス価値 |
| 主な活動 | 技術的課題解決 | チーム・進捗管理 | 戦略立案・提案 |
| 必要な適性 | 技術への探究心 | リーダーシップ | 戦略的思考 |
| 年収レンジ | 600万~1,200万円 | 650万~1,200万円 | 700万~1,500万円 |
4.注目のキャリアパス:クラウド・SREへの転向

近年、インフラエンジニアの中で最も注目を集めているのが、クラウドエンジニアとSRE(サイトリライアビリティエンジニア)への転向です。
企業のクラウドシフトが加速する中、これらのスキルを持つエンジニアは市場で高く評価されています。このセクションでは、これら先進的な職種への具体的なステップと必要なスキルを解説します。
クラウドエンジニアになるための具体的ステップ
クラウドエンジニアは、近年最も需要が高まっているインフラエンジニアのキャリアパスの1つです。
企業のDX推進に伴い、オンプレミス環境からクラウド環境への移行が加速しており、クラウドインフラを設計・構築・運用できるエンジニアの需要が急増しています。
必要なスキルセット
- クラウドプラットフォーム:AWS、Azure、GCPのいずれか(複数だとなお良い)
- IaC (Infrastructure as Code): Terraform、CloudFormation、ARM Templates
- コンテナ技術:Docker、Kubernetes
- CI/CDパイプライン:Jenkins、GitLab CI、GitHub Actions
- 自動化・スクリプティング:Python、Bash、PowerShell
学習ロードマップ
- クラウドの基礎概念を理解(コンピューティング、ストレージ、ネットワーク)
- 一つのクラウドプラットフォームを選んで集中的に学習
- 実際にアカウントを作成し、ハンズオン演習を繰り返す
- 認定資格の取得を目指して体系的に学ぶ
- 実務プロジェクトでの経験を積む
SRE(サイトリライアビリティエンジニア)という選択肢
SREは、Googleが提唱した比較的新しい職種で、インフラエンジニアの進化形ともいえるキャリアパスです。
「ソフトウェアエンジニアリングの手法を用いてシステムの信頼性を高める」ことをミッションとし、従来の運用業務を自動化し、サービスの可用性・レイテンシ・パフォーマンスを継続的に改善します。
インフラエンジニアとの親和性
インフラエンジニアは、システムの運用・障害対応の経験があるため、SREへの転向は自然な流れといえます。
既存のインフラ知識を活かしながら、より高度な自動化とエンジニアリングスキルを身につけることで、SREとして活躍できます。
求められるスキル
- 運用自動化:Ansible、Chef、Puppetなどの構成管理ツール
- モニタリング・可観測性:Prometheus、Grafana、Datadog、New Relic
- インシデント対応:オンコール体制、ポストモーテム文化
- プログラミング:Python、Go、Java
- SLI/SLO/SLA:サービスレベル目標の設定と管理
2024年のFindy調査によれば、インフラエンジニアの約40%がSREへの転向に関心を示しており、業界全体でSREの重要性が認識されています。
クラウド・SREで年収1000万円を超える方法
クラウドエンジニアやSREとして高年収を実現するには、以下の要素が重要です。
高年収を実現する4つの要素
- 高度な専門性:マルチクラウド対応、大規模システムの設計経験
- 希少性の高いスキル:Kubernetes、サービスメッシュ、セキュリティ
- ビジネスインパクト:コスト削減やパフォーマンス改善の実績
- リーダーシップ:チームを率いて技術戦略を推進
キャリア選択:大手企業vsスタートアップ
大手企業では安定した高収入、充実した福利厚生、大規模システムの経験が得られます。一方、スタートアップではストックオプション、裁量権、最新技術への挑戦機会があります。
また、高いスキルを持つクラウドエンジニアやSREは、フリーランスとして活動することで年収1,500万円以上も可能ですが、案件獲得や営業活動も自分で行う必要があります。
継続的なスキルアップの重要性
クラウド技術は日々進化しています。新しいサービスや機能のキャッチアップ、資格の更新、コミュニティ活動を通じた情報交換など、継続的な学習が市場価値を維持する鍵となります。
5.経験年数別インフラエンジニアの年収プランとキャリア戦略
300~500万
基礎技術, 障害対応
CCNA, LinuC Lv1
500~700万
専門性確立, クラウド
AWS SAA, 応用情報
650万~1200万+
マネジメント, 高度専門性
AWS SAP, PM試験
インフラエンジニアの年収は、経験年数とスキルセットに大きく左右されます。
キャリアの各段階で重点的に身につけるべきスキルと年収目標は異なります。
このセクションでは、経験年数別の年収レンジ、優先すべきスキル、推奨資格、そして各段階での具体的なキャリア戦略を解説します。
1~3年目の年収プランと身につけるべきスキル
キャリア初期の1~3年目は、インフラエンジニアとしての基礎を固める重要な時期です。一般的な相場として、1~3年目の年収は300万円~500万円程度が目安となります。
未経験からスタートした場合は300万円台前半からスタートし、3年目には450万円~500万円程度に到達するのが標準的なキャリアです。
優先すべきスキル
この時期は、広く浅く基礎を固めることが重要です。
Linux/Windowsサーバーの基本操作、TCP/IP、DNS、DHCP、ルーティングの理解といったネットワーク基礎、ログ解析やトラブルシューティング手順といった障害対応力、作業手順書の作成や報告書の書き方といったドキュメンテーションを優先的に習得します。
推奨資格
- ITパスポート(未取得の場合)
- CCNA (Cisco Certified Network Associate)
- LinuCレベル1 または LPIC-1
キャリア戦略:基礎固めに集中
この時期は、年収よりもスキル習得を優先すべきです。様々な業務を経験し、インフラの全体像を理解することが、将来の高年収につながります。
4~6年目の年収プランとキャリアの分岐点
4~6年目は、キャリアの方向性を決める重要な分岐点となります。一般的な相場として、4~6年目の年収は500万円~700万円程度が目安です。
スペシャリスト志向で特定技術を深めた場合や、クラウド技術を習得した場合は、650万円~750万円程度も可能です。
専門性の選択が必要になる時期
この時期から、自分の強みとなる専門分野を意識的に選択する必要があります。すべての技術を平均的にこなすよりも、一つの領域で深い知識を持つほうが市場価値は高まります。
特に、この時期にクラウド技術(AWS、Azure、GCP)を習得しているかどうかで、その後のキャリアと年収に大きな差が生まれます。
推奨資格
- 応用情報技術者試験
- AWS認定ソリューションアーキテクト – アソシエイト
- ネットワークスペシャリスト(ネットワーク志向の場合)
- LinuCレベル2
キャリア戦略:自分の強みを明確化
自分が得意な分野、興味がある分野を見極め、専門性を深めるか、マネジメントに進むかを検討し始める時期です。社内外の勉強会やコミュニティに参加し、人脈を広げ、転職市場での自分の価値を定期的に確認することが重要です。
7年目以降の年収プランと市場価値最大化の戦略
7年目以降は、専門性とマネジメントスキルを組み合わせて市場価値を最大化する時期です。
一般的な相場として、7年目以降の年収は650万円~1,200万円以上と幅が広くなります。
スキルセット、専門性の深さ、マネジメント経験、担当プロジェクトの規模によって大きく変わります。
転職によるキャリアアップの検討
この時期には、転職を通じたキャリアアップを検討する価値があります。同じ会社に長く勤めるよりも、転職によってポジションと年収を上げるほうが効率的な場合も多いです。
特にクラウドスキルやSRE経験があれば、大幅な年収アップが期待できます。
複数スキルの組み合わせ(T型人材)
一つの専門分野で深い知識を持ちながら(Tの縦棒)、関連する複数の技術領域でも基礎知識を持つ(Tの横棒)T型人材は、市場で高く評価されます。
推奨資格
- AWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナル
- プロジェクトマネージャー試験(PM志向の場合)
- 情報処理安全確保支援士(セキュリティ志向の場合)
- ITストラテジスト(コンサル志向の場合)
キャリア戦略:市場価値を意識した行動
定期的に転職エージェントと面談し市場価値を把握する、GitHubでの技術発信やブログ執筆、登壇などでプレゼンスを高める、英語力を磨きグローバル企業も選択肢に入れる、副業やフリーランスとしての可能性も検討するといった、市場価値を意識した行動が重要です。
年収推移の目安表
| 経験年数 | 想定年収レンジ | 主な業務レベル | 重点スキル |
|---|---|---|---|
| 1~3年目 | 300万~500万円 | 運用・監視、基本的な構築 | 基礎技術の習得 |
| 4~6年目 | 500万~700万円 | 設計、構築、上流工程 | 専門性の確立、クラウド |
| 7~10年目 | 650万~1,000万円 | アーキテクト、PM、リーダー | マネジメント、高度な専門性 |
| 10年目以降 | 800万~1,500万円 | 技術責任者、シニアコンサル | 戦略立案、組織マネジメント |
※一般的な相場としての目安です。企業規模、地域、スキルセットによって変動します。
6.インフラエンジニアのキャリアアップに必須のスキルと資格

インフラエンジニアとして市場価値を高めるには、適切なスキルと資格の習得が不可欠です。
このセクションでは、どのキャリアパスにも共通する3つの必須スキル、未経験者が最初に取得すべき資格、そして経験者のキャリアアップを加速させる資格を具体的に解説します。
全キャリアパスに共通する3つの必須スキル
どのキャリアパスを選択する場合でも、技術スキル、コミュニケーションスキル、問題解決スキルの3つは必須です。
スキル1:技術スキル(インフラの基礎知識)
サーバー、ネットワーク、ストレージ、データベースといったITインフラの基礎が、すべてのキャリアパスの土台となります。特に近年では、オンプレミスの知識に加えて、クラウド技術(AWS、Azure、GCP)の理解が不可欠です。
また、自動化やIaC (Infrastructure as Code)のスキルも重要性を増しており、Terraform、Ansible、CloudFormationなどのツールに習熟することが求められます。
スキル2:コミュニケーションスキル(チームとの協働)
インフラエンジニアは、開発チーム、ユーザー、ベンダーなど、多様なステークホルダーと連携します。
技術的な内容を非技術者にも分かりやすく説明する力、相手の要望を正確に理解する傾聴力、チーム内での円滑な情報共有など、コミュニケーション能力は業務の成否を左右します。
スキル3:問題解決スキル(障害対応と改善提案)
システム障害が発生した際に、冷静にログを分析し、原因を特定し、迅速に復旧する能力がインフラエンジニアの核心的なスキルです。
さらに、単に障害を復旧するだけでなく、再発防止策を提案し、システム全体の信頼性を向上させる改善提案力も重要です。
未経験者が取得すべき資格3選
未経験からインフラエンジニアを目指す場合、以下の3つの資格取得をおすすめします。
資格1:ITパスポート
ITパスポートは、ITに関する基礎的な知識を幅広く証明する国家資格です。
- 難易度:初級
- 学習期間:1~2ヶ月
- 取得メリット:IT業界への転職時の基礎知識の証明
資格2:CCNA
CCNA (Cisco Certified Network Associate)は、ネットワークの基礎知識を証明する世界的に認知された資格です。
- 難易度:初級~中級
- 学習期間:2~4ヶ月
- 取得メリット:ネットワークエンジニアとしての基礎スキルの証明、求人応募時の有利さ
資格3:LinuCレベル1
LinuCは、Linuxサーバーの構築・運用スキルを証明する国内資格です。
- 難易度:初級
- 学習期間:2~3ヶ月
- 取得メリット:Linuxサーバー管理スキルの証明、実務で即活用できる知識
経験者のキャリアアップを加速させる資格5選
経験を積んだエンジニアが、さらにキャリアアップするためには、以下の資格が有効です。
資格1:AWS認定ソリューションアーキテクト
AWS認定ソリューションアーキテクト(アソシエイトまたはプロフェッショナル)は、AWSクラウドの設計・構築スキルを証明する資格です。
- 取得の価値:クラウドエンジニアとしての専門性証明、高単価案件へのアクセス
- 年収への影響:取得により50万~100万円の年収アップも期待できる
- 学習方法:公式トレーニング、Udemy、ハンズオン演習
資格2:応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は、ITエンジニアとしての幅広い知識を証明する国家資格です。
- 取得の価値:IT全般の知識の証明、上流工程への足がかり
- 年収への影響:企業によっては資格手当の対象
- 学習方法:過去問演習、参考書、オンライン講座
資格3:ネットワークスペシャリスト
ネットワークスペシャリストは、ネットワークの設計・構築・運用における高度な知識を証明する国家資格です。
- 取得の価値:ネットワーク分野の専門家としての地位確立
- 年収への影響:スペシャリストとしての市場価値向上
- 学習方法:実務経験を前提とした過去問演習
資格4:情報処理安全確保支援士
情報処理安全確保支援士(旧セキュリティスペシャリスト)は、サイバーセキュリティに関する高度な知識を証明する国家資格です。
- 取得の価値:セキュリティ分野の専門家としての証明
- 年収への影響:セキュリティエンジニアとして高単価案件へアクセス可能
- 学習方法:セキュリティの実務経験、過去問演習
資格5:プロジェクトマネージャー試験
プロジェクトマネージャー試験は、プロジェクトの計画・実行・管理における高度なスキルを証明する国家資格です。
- 取得の価値:PMとしての専門性証明、マネジメント職への道
- 年収への影響:PM職での年収向上、大規模プロジェクトへの参画
- 学習方法:プロジェクト管理の実務経験、論文対策
7.インフラエンジニアのキャリアプランの考え方と面接での伝え方
明確なキャリアプランを持つことは成功の鍵ですが、「自分に合ったパスが分からない」「面接で上手く答えられない」といった悩みを持つ方も多いでしょう。
このセクションでは、自分に最適なキャリアパスを見つけるための自己分析の質問から、面接で評価される具体的な回答例文まで、実践的なアドバイスを提供します。
自分に合ったキャリアパスを見つける4つの質問
自分に最適なキャリアパスを選ぶには、以下の4つの質問に答えてみましょう。
質問1:技術を深めたい?それとも人を動かしたい?
技術的な課題を解決することに喜びを感じるなら、スペシャリスト路線が向いています。
一方、チームをまとめてプロジェクトを成功に導くことにやりがいを感じるなら、マネジメント路線を検討しましょう。
質問2:専門特化型?それとも幅広く?
一つの技術領域を極めたいタイプか、複数の領域を横断的に扱いたいタイプかを考えましょう。
専門特化型はスペシャリストやアーキテクト、幅広く扱いたいタイプはゼネラリストやコンサルタントに向いています。
質問3:大企業志向?スタートアップ志向?
大企業では大規模システムの経験、安定した雇用、充実した研修制度が得られます。スタートアップでは裁量権、最新技術への挑戦、急成長の経験が得られます。
質問4:年収重視?やりがい重視?
年収を最優先するなら、クラウド技術やSREなど市場価値の高いスキルを習得し、外資系企業やコンサルティングファームを目指すのが近道です。やりがいを重視するなら、自分が興味を持てる技術領域や業界を選び、技術的挑戦ができる環境を探しましょう。
面接で評価されるキャリアプランの答え方【例文付き】
面接官がキャリアプランを聞くのは、自己分析ができているかを確認したい、会社の方向性と合致しているかを判断したい、長期的に活躍してくれる人材かを見極めたいという3つの理由からです。
良い答え方の3つのポイント
- 具体的であること:「成長したい」だけでなく、どの分野で、どのようなスキルを身につけたいかを明確に
- 企業とのマッチング:応募企業で実現可能なキャリアプランであること
- 段階的であること:短期・中期・長期で分けて説明
例文1:スペシャリスト志向の場合
「私は、クラウドインフラのスペシャリストを目指しています。短期的には、AWSの構築・運用経験を積み、AWS認定ソリューションアーキテクト – アソシエイトを取得したいと考えています。中期的には、マルチクラウド環境の設計ができるレベルまでスキルを高め、プロフェッショナルレベルの資格取得を目指します。御社では大規模なクラウド移行プロジェクトに携われると伺っており、実践的な経験を積める環境だと感じています。長期的には、クラウドアーキテクトとして、技術選定や全体設計を担当できる立場を目指したいと考えています。」
例文2:マネジメント志向の場合
「私は、技術的な知識を持ちながらチームをマネジメントできるエンジニアを目指しています。短期的には、インフラエンジニアとして設計・構築の経験を積み、プロジェクト全体の流れを理解したいです。中期的には、小規模プロジェクトのリーダーを経験し、チームマネジメントとプロジェクト管理のスキルを磨きたいと考えています。御社では若手にもリーダー機会を与えてくださると伺い、成長できる環境だと感じました。長期的には、プロジェクトマネージャーとして、大規模プロジェクトを統括し、ビジネス目標の達成に貢献したいと考えています。」
NGな答え方の例
- 「特に考えていません」→ 自己分析不足と判断される
- 「御社で学ばせていただきたい」→ 受け身すぎる印象
- 「5年後に独立したい」→ 長期的な貢献が期待できない
- 「幹部候補として活躍したい」→ 具体性がなく、根拠不明
8.インフラエンジニアの将来性と需要動向

「AIや自動化で仕事はなくなるのでは?」という不安とは裏腹に、インフラエンジニアの需要は今後も堅調に推移すると予測されています。
経済産業省のデータが示すIT人材の深刻な不足や、企業のDX推進がその背景にあります。このセクションでは、公的データに基づいてインフラエンジニアの将来性を客観的に分析します。
IT人材不足が生み出すチャンス
日本のIT業界では、深刻な人材不足が続いています。特にインフラエンジニアの需要は高く、今後さらに拡大すると予測されています。
経済産業省が2016年に公表した調査によれば、日本のIT人材は2030年には最大で約79万人不足すると推計されています。
この人材不足は、インフラエンジニアにとって大きなチャンスといえます。需要が供給を上回る状況が続くため、スキルを持つエンジニアは高い市場価値を維持できます。
インフラエンジニアが特に求められている理由
- システムの複雑化:クラウド、オンプレミス、ハイブリッドといった多様な環境を管理できる人材が必要
- セキュリティの重要性:サイバー攻撃の増加により、セキュアなインフラ構築が必須
- 24時間365日の安定稼働:ビジネスのデジタル化により、システムダウンが許されない状況
- レガシーシステムの保守:古いシステムを理解し、保守できるエンジニアの不足
DX推進による追い風
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進は、インフラエンジニアの需要をさらに高めています。
業務のデジタル化、クラウド移行、データ活用基盤の構築など、多くのプロジェクトでインフラエンジニアの専門知識が必要とされています。
2030年までの需要予測とインフラエンジニアの役割変化
経済産業省のデータによれば、IT人材の不足は今後さらに深刻化します。2030年時点で、最大約79万人のIT人材が不足すると予測されており、インフラエンジニアもこの需給ギャップの影響を受けるでしょう。
クラウド化による役割の変化
ただし、インフラエンジニアの役割は変化しています。従来のオンプレミス環境の構築・運用だけでなく、クラウドインフラの設計・構築、自動化、IaC (Infrastructure as Code)、コンテナ技術など、新しいスキルが求められています。
この変化に対応できるエンジニアは、今後も安定した需要と高い年収を期待できます。逆に、従来のスキルのみに固執すると、市場価値が低下するリスクがあります。
将来も安定したキャリアである根拠
- システムの基盤は常に必要:どれだけ技術が進化しても、システムを支えるインフラは不可欠
- 専門性の高さ:インフラの知識は専門的で、簡単には代替できない
- 継続的な需要:新規システム構築だけでなく、既存システムの保守・運用も必要
- 自動化の限界:完全な自動化は難しく、人間の判断と対応が必要な場面は残る
ただし、継続的な学習とスキルアップは必須です。技術トレンドをキャッチアップし、新しいスキルを習得し続けることで、長期的なキャリアの安定性を確保できます。
9.インフラエンジニアのキャリアパスに関するよくある質問
インフラエンジニアのキャリアパスについて、多くの方が共通して抱える疑問があります。
「未経験からでもなれる?」「スペシャリストとマネジメントはどちらが稼げる?」「クラウドは必須?」といった具体的な質問に、市場データに基づいて具体的に解説します。
未経験からでも本当にインフラエンジニアになれますか?
結論:可能です。ただし、計画的な準備と努力は必要です。
インフラエンジニアは、未経験者でも目指せる職種です。
多くの企業が、未経験者向けのポジションを用意しており、研修制度を通じて基礎から学べる環境があります。 IT業界全体で人材不足が深刻化しており、企業は未経験者を採用して育成する方針を取るケースが増えています。
必要な準備
- 基礎的なIT知識の習得(ITパスポート程度)
- LinuxやWindowsサーバーの基本操作を独学
- CCNAやLinuCレベル1などの資格取得
- 実機を使ったハンズオン演習(仮想環境でOK)
成功のためのポイント
学習意欲と成長志向を面接でアピールし、独学での学習実績を具体的に示し、最初は年収よりもスキル習得を優先する覚悟が必要です。
スペシャリストとマネジメント、どちらが年収が高いですか?
結論:どちらも高年収は可能です。年収以外の要素で判断すべきです。
一般的な相場として、高度な専門性を持つITスペシャリストも、大規模プロジェクトを統括するプロジェクトマネージャーも、年収1,000万円以上を目指すことが可能です。
それぞれの年収レンジ
- ITスペシャリスト:600万円~1,200万円(希少技術や高度な専門性があればさらに上)
- プロジェクトマネージャー:650万円~1,200万円(大規模PJの統括者はさらに上)
年収以外の判断基準
年収だけで選ぶのではなく、技術を深めることに喜びを感じるか人を動かすことに喜びを感じるか、自分のペースで働きたいかチームで協力して働きたいか、技術トレンドを追い続けられるかマネジメントスキルを磨きたいかといった点も考慮しましょう。
自分の適性と価値観に合った選択をすることが、長期的なキャリア満足度につながります。
クラウド技術は必須ですか?
結論:必須ではありませんが、強く推奨します。
従来のオンプレミス環境の知識だけでもインフラエンジニアとして働くことは可能です。しかし、市場価値を高め、キャリアの選択肢を広げるためには、クラウド技術の習得を強く推奨します。
クラウド化の流れ
多くの企業が、コスト削減、柔軟性、スケーラビリティの観点からクラウドへの移行を進めています。
新規システムはクラウドファーストで構築されるケースが増えており、クラウドスキルを持たないエンジニアは、携われるプロジェクトが限定されるリスクがあります。
学習の優先度
既にインフラエンジニアとして働いている場合は次のスキルアップとしてクラウドを学習、未経験からスタートする場合は基礎(サーバー・ネットワーク) → クラウドの順で学習することをおすすめします。
クラウドスキルがあれば、年収アップや転職時の選択肢拡大につながります。
転職でキャリアアップするタイミングはいつが良いですか?
結論:3~5年目が一般的なタイミングですが、個人の状況によります。
インフラエンジニアが転職を検討する最も一般的なタイミングは、経験3~5年目です。この時期には、基礎的なスキルが身についており、次のステップを明確に描けるようになっています。
タイミングの見極め方
- 現在の職場で新しいスキルが身につかなくなった
- やりたい技術(クラウド、SREなど)に携われる機会がない
- 年収が市場相場と比べて大きく低い
- キャリアパスが明確に見えない
転職時の注意点
1~2年での早期退職は次の転職で不利になる可能性がある、転職理由は前向きに(スキルアップ、新技術への挑戦など)、複数のエージェントに登録し市場価値を客観的に把握する、退職前に転職活動を始め次の職場を決めてから退職する、といった点を意識しましょう。
10.インフラエンジニアのキャリアパスまとめ

インフラエンジニアのキャリアパスは、未経験から経験者まで多様な選択肢があります。
この記事では、未経験者向けの段階的ロードマップ、経験者向けの3つの主要な選択肢(スペシャリスト、PM、コンサル)、年収プラン、必要なスキルと資格を網羅的に解説しました。
クラウド技術やSREといった先進スキルが、市場価値を高め年収をアップさせる鍵となります。