外国人エンジニアが日本で仕事の面接を受けるときは、プログラミングのスキルだけでなく、いろいろなことが大切です。たとえば、日本の面接のルールやマナー、それから在留資格についての知識も必要です。
この記事では、面接の基本から、内定をもらった後に必要な手続きまで、仕事がうまく決まるための大事なポイントをわかりやすく説明します。
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- 日本の面接形式(個人・集団・グループディスカッション・プレゼン)の特徴と対策方法について
- 外国人ITエンジニアに必要な技術面接での回答例と在留資格申請の具体的な流れについて
- 日本特有の企業文化(チームワーク、ホウレンソウ、時間厳守)への適応方法について
1.日本の就職面接の基本知識

日本の就職面接は、ほかの国の面接と違うところがあります。でも、日本の面接について基本的な知識を知って、しっかり準備をすれば、安心して面接を受けることができます。
面接の種類と特徴
日本の面接は、次の4種類があります。
- 個人面接
- 集団面接(グループ面接)
- グループディスカッション
- プレゼンテーション型面接
会社によって、個人面接だけを行う場合、4種類すべて行う場合などさまざまです。
個人面接
1人の応募者に対して、1人または何人かの面接官が面接を行います。
面接は、はじめに自己紹介をして、そのあとにいろいろな質問があります。質問を通して、あなたの性格や、仕事に向いているかどうか、やる気などを見られます。
この面接では、あなただけが受けるので、志望動機や自己PRを、少し長めに話すことができるのが特徴です。
集団面接(グループ面接)
応募者も面接官も、どちらも何人かで行う面接です。1人だけで受ける面接よりも、自分が話せる時間は少なくなります。だから、短い時間で自分の良いところをアピールすることが大切です。
また、ほかの人が話しているときの聞き方や態度も見られています。しっかり聞くようにしましょう。
グループディスカッション
応募者も面接官も何人かいますが、これは集団面接とはちがいます。グループであるテーマについて話し合いをするスタイルです。その中で、面接官は次のようなポイントを見ています。
- 相手の話を理解できるか
- 自分の意見を言えるか
- 集団の中で役割を持てるか
- 他の人と協力できるか
プレゼンテーション型面接
応募者は1人で、面接官は何人かいます。面接では、あらかじめ決められたテーマについて、自分の考えをプレゼンテーションします。
時間が限られている中で、自分の意見やアイディアを、わかりやすく、筋道を立てて話せるかどうかを見られます。
選考プロセスの流れ
選考は、以下のプロセスで進みます。
書類審査
応募したい会社に書類(履歴書、職務経歴書)を送ります。履歴書や職務経歴書には、書く内容が決まっています。
- 履歴書
主に記載する内容…名前・生年月日・顔写真・国籍・住所・電話番号・メールアドレス・学歴・職歴・特技など
- 職務経歴書
主に記載する内容…職歴・働いた企業の情報・仕事の内容・スキル・資格・自己PRなど
上記の書類は、手書きでもPCで作成してもかまいません。手書きの場合は自分で書き、間違ったら書き直します。
■合わせて読みたい
以下のコンテンツでは、日本企業の面接で役立つ、履歴書の作成や、職務経歴書の作成ノウハウについてご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
面接
書類の審査に合格すると、次は面接があります。面接の回数は会社によって違います。1回で終わることもありますが、2回目や3回目まである会社もあります。最後の面接を「最終面接」と言います。
日本特有の面接文化
日本の面接は、海外の面接と少し目的が違います。国によって違いますが、海外の面接はスキルをチェックすることが中心で、短い時間で終わることが多いです。
日本の面接ではスキルのほかに人柄もチェックするため、30分~1時間ほど時間がかかる場合があります。日本の面接でチェックされるのは、主に以下の内容です。
- 会社との相性
- 経歴やスキル
- ストレス耐性
- コミュニケーション能力
- この会社で働く意思
- ビジネスパーソンとしての能力
- わかりやすく論理的に話す能力
2.技術面接への対策

IT技術者には、技術面接もあります。技術面接とは、エンジニアとしてのスキルレベルを確かめる面接です。
技術面でのスキルを整理しておく
これまでの仕事内容やスキル、実績、担当した仕事などを、あらかじめまとめておきましょう。自分の経験を話すときは、プロジェクトの人数やユーザーの数など、数字を使ってわかりやすく説明することが大切です。
また、技術の面接では、プログラミングの課題が出されたり、ある状況を出されて「どうやって問題を解決しますか?」と聞かれたりすることがあります。
ポートフォリオの提出をお願いする会社もあります。どんなことを聞かれてもこたえられるように、事前にしっかり準備しておくことが大切です。
一般的な質問と模範解答
IT技術者の面接では、面接官がさまざまな質問をします。その中で、よくある質問と模範解答を3つご紹介します。
能力や経験を確認する質問
自社で行っている業務と合っている人物かを確認するため、どんな能力や経験があるかを確認します。
質問:「担当した業務について教えてください」
模範回答
「〇〇というサービスの開発にかかわりました。チームではリーダーとして、メンバーの適性を考え効率的に進むようタスクを配慮し、納期を〇カ月早めることに成功しました」
トラブルに対する解決能力を確認する質問
IT技術者に必要とされる、業務上でのトラブルについての解決能力を確認する質問です。
質問:「トラブルにどう対応しましたか?」
模範回答
「以前、複数のプロジェクトを同時に進行していたため、納期内に公開できるかわからなくなったことがあります。それからは、チームでタスクの優先事項を定期的に再確認しながらプロジェクト管理を行い、どのプロジェクトも納期を厳守できています」
チームの一員として働けるかを確認する質問
日本ではホウレンソウ(報告・連絡・相談)が大切です。問題解決能力や、上司などにホウレンソウができるか、チームで働ける人物かを確認する質問です。
質問:「判断できないときは、どうしていましたか?」
模範解答
「自分の判断だけで進めず、状況を確認してすぐ上司に報告します。また、原因を検証しながら上司や同僚などにも相談しながら解決方法を探ります」
3.面接で自己をアピールする

面接官が「会社に必要な人材である」と思えるように、自己アピールをすることも大切です。
自己PRの作成方法
わかりやすく話すためには、結論から話すことを意識しましょう。たとえば、はじめに「私の強みは、何事にも冷静に取り組めることです」と伝えてから、その強みを使った具体的な経験を話すと、相手にも伝わりやすくなります。
自己PRでは、これまでの実績もアピールしましょう。たとえば、担当したプロジェクトの内容、クライアントとの話し合いでトラブルを防いだ経験、チームで開発した経験、リーダーとして働いた経験などは、自分の実績としてPRできます。
また、ITエンジニアには、いつも新しい知識やスキルを学びつづけることが大切です。勉強会やコミュニティに参加した経験があれば、それもアピールしましょう。
志望動機もしっかりと
志望動機とは、「なぜこの会社で働きたいのか」という理由のことです。前の仕事で身につけたスキルや知識が、この会社でどう活かせるのか、また、入社したら自分がどのように会社の役に立てるかを伝えると、よい印象を持ってもらえます。
また、「この人は、他の会社の方が合っているかもしれない」と思われないようにすることも大切です。そのためには、「なぜ日本で働きたいのか」という気持ちと、「なぜこの会社に入りたいのか」という理由(たとえば、製品やサービスにひかれたこと)をつなげて話すと、わかりやすくなります。
チームワーク観の伝え方
日本では、「チームやグループで仕事をすることが大切」と考える人が多いです。みんなで協力することを大事にする文化があります。そのため、仕事ではチームワークがとても重視されます。1人で勝手に行動するより、まわりと助け合いながら仕事を進めることが大切です。
面接では、日本のこうした考え方をよく知っていることや、自分がチームの中でどうやって役に立てるかをアピールしましょう。
4.外国人特有の面接への準備

面接では、外国人を採用するにあたって会社が確認しておきたい内容も聞かれます。
ビザ関連の質問への対応
日本でIT技術者として働くためには、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格が必要です。
この在留資格をもらうためには、たとえば、大学や専門学校で専門的な技術や知識を学んでいること、10年以上の仕事の経験があること、「情報処理技術」の試験に合格していること、などが求められます。
面接では、この在留資格をもらえる条件を自分が満たしていることや、合格した試験について話せるように準備しておきましょう。
参考:出入国在留管理庁:在留資格「技術・人文知識・国際業務」 出入国在留管理庁:「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について
日本語能力のアピール方法を把握しておく
面接では、日本語のやり取りを通して、仕事に必要な日本語力があるかどうかを見られます。
IT技術者として働くためには、日本語能力試験(JLPT)のN1かN2レベルの日本語力があるとよいです。N1かN2に合格している人は、かならず面接で伝えましょう。
また、ITの仕事では、日本語で技術的な文章を書けることもアピールになります。
さらに、日本のIT会社でよく使われるカタカナの言葉(たとえば「デプロイ」や「SIer」など)を上手に使うと、日本語がよくわかっていると伝わりやすくなります。
文化の違いへの対処法
日本と海外では文化が違うため、日常生活でもとまどうことがあるかもしれません。面接では、文化の違いを理解し、日本の会社で働けることをアピールすることが大切です。
日本では、年上の人や上司など、立場が上の人を大事にする文化があります。上下関係にもきびしいところがあるため、上司への話し方や職場でのマナーについて知っておくとよいでしょう。
また、日本では時間にとてもきびしいです。国によっては、時間ちょうどに出勤するのが普通ですが、日本では5分から10分前に出勤して、すでに仕事の準備ができているのがふつうです。
面接で「日本の会社で働くことに問題はありませんか」と聞かれることもあります。日本の働き方やマナーについて、あらかじめ知っておくことが大切です。
5.日本のビジネスマナーを知る

日本の面接では、服装や持ち物にもビジネスマナーがあります。最近は、オンラインで面接をすることも多くなっていますが、オンラインでもマナーを守ることが大切です。
服装と持ち物を確認しておく
面接のときの服装は、ふつうはスーツです。ただし、会社によっては「私服でOK」や「服装は自由」と言われることもあります。
そのようなときでも、きちんとした服を選びましょう。たとえば、ジャケットやシャツ、革靴などを使った「オフィスカジュアル」とよばれる服装がおすすめです。
女性の場合は、ヒールのあるくつは高すぎないようにしましょう。5センチくらいがちょうどよいです。また、カバンはA4サイズの書類が入る、ビジネス用のものを使うとよいです。
以下の3つは、どの会社の面接でも持って行く必要があります。
- 履歴書や職務経歴書(会社に提出していない場合)
- 日本語能力試験の結果がわかるもの
- メモ帳と筆記用具
その他の持ち物は、会社から指定される場合が一般的です。パスポートなどを求められる場合があります。
オンライン面接の注意点
オンライン面接のときも、気をつけることがいくつかあります。
まず、面接を受ける場所は、自分の家の部屋など、しずかで安心できるところにしましょう。うしろの背景は、白っぽいかべやカーテンなど、見た目がすっきりしている方がよいです。カフェなど外で受けるのは、マナーとしてよくありません。
面接の時間の5分から10分前には、オンラインにログインして待っておきましょう。オンラインでも、服装には気をつけてください。私服ではなく、スーツやジャケットなど、きちんとした服を着て受けるようにしましょう。
6.内定後の手続き

内定をもらったあとは、会社と本人の両方でいろいろな手続きをします。特に外国人の場合は、ビザをとるための手続きなどが多いので、あらかじめ何が必要かを知っておくと安心です。
ビザ申請の流れ
日本で働くには、就労ビザを取る必要があります。まず、会社が地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書」の申請をします。
「在留資格認定証明書」が発行されたら、会社が本人に紙やメールで送ります。
その書類が届いたら、日本大使館に「在留資格認定証明書」を出して、就労ビザの申請をしてください。
参考:出入国在留管理庁:在留資格認定証明書交付申請 外務省:就労や長期滞在を目的とする場合
各種書類の準備
就労ビザを申請するためには、いくつかの書類を用意しなければなりません。国によっては、さらに書類が必要になることもあります。自分にとって何が必要か、事前によく確認しておきましょう。
- 在留資格認定証明書
- 就労ビザ申請書
- 顔写真(縦4cm×横3cm)
- パスポート
- 卒業証明書または職務経歴書
入社までのスケジュール
給料や勤務時間などの条件を会社と話し合い、おたがいに合意したら内定が出ます。そのあと、会社が「在留資格認定証明書」を申請しますが、発行されるまでに1~3カ月かかることがあります。
「在留資格認定証明書」が届いたら、本人が就労ビザを申請します。書類に問題がなければ、1週間ほどでビザが出ます。ただし、申請が多い時期は、もっと時間がかかることがあるので注意しましょう。
また、内定をもらったら、会社と入社日について話し合います。そして、日本で住む家(住居)も決める必要があります。
住む場所と入社日が決まり、就労ビザが出たら、「在留資格認定証明書」を持って日本に来てください。空港でこの書類を出すと、在留カードと交換できます。入社日までに、日本での生活の準備をしておきましょう。
7.ポイントをおさえて日本での就職面接を成功させる

日本での就職面接では、技術のスキルだけでなく、日本の文化を理解し、それに合わせる力も見られます。
この記事で紹介した面接のポイントをしっかりおさえ、日本のビジネス文化をよく知ることで、面接に合格するチャンスが高くなります。
面接の準備から内定後の手続きまで、1つずつしっかり進めていけば、日本での新しい仕事のスタートにつながります。