イギリス人エンジニアが日本で働くには就労ビザが必要ですが、他国出身者と比べて有利な条件が揃っています。
この記事では90日間のビザ免除措置を活用した効率的な就職活動から、技術・人文知識・国際業務ビザの申請、更新まで全手続きを解説します。
- イギリス人エンジニアが日本の就労ビザを取得する具体的な手続きと必要書類について
- 技人国ビザの申請条件から更新・長期ビザ取得までの完全な流れについて
- よくある失敗例と対策、実際の成功事例に基づく実践的なコツについて
1.イギリス人エンジニアが日本で働くために|必要なビザの基本情報

イギリス人エンジニアが日本で働くためには就労ビザが必要です。
しかしイギリス人エンジニアは他の国の外国籍人材と比べて有利な条件が揃っています。
まずは基本的な情報を理解して、効率的なビザ取得プランを立てましょう。
イギリス人エンジニアと日本のビザ制度の特別な関係
イギリス人エンジニアが日本で働く時、他の国の人と比べて3つの大きなメリットがあります。
このポイントを知ることで、ビザ取得への不安が減り、効率的に準備を進められるでしょう。
<イギリス人が日本で働く際の3つの主要メリット>
- 90日間のビザなし滞在:面接や会社見学を気軽に行える
- 英語力のアドバンテージ:国際的な仕事での需要が高く、外資系企業での採用チャンスが多い
- 技術力への高い評価:イギリスのIT教育レベルが評価され、技術系ビザで有利
特にエンジニアの仕事は、日本のIT人材不足により外国籍エンジニアへの需要が急増しています。
また、イギリス人の合理的で建設的な考え方と、仕事とプライベートのバランスを大切にする働き方は、最近の日本企業でも評価される傾向があります。
日本の就労ビザの種類とエンジニアに最適な選択肢
日本には19種類の就労ビザがありますが、ITエンジニアが取るべきビザははっきり決まっています。
間違った選択をすると申請が複雑になったり、許可されないリスクが高まる場合があるので注意しましょう。
<エンジニアに関連する主要な就労ビザ>
- 技術・人文知識・国際業務ビザ:IT企業での開発・設計業務(エンジニアにとって最も一般的)
- 技能ビザ:特殊な技能を要する業務
- 高度専門職ビザ:高度な技術・知識を持つ人材(ポイント制)
エンジニアの多くが取得している 技術・人文知識・国際業務ビザ
大学卒業のイギリス人エンジニアの多くが「技術・人文知識・国際業務」ビザ(通称:技人国ビザ)を取得しています。
このビザがベストな理由は、プログラミング、システム設計、データベース構築などのIT業務との相性が良く、申請の条件が他のビザより明確だからです。
技人国ビザでは、システムエンジニア、プログラマー、データサイエンティスト、ITコンサルタントなど、幅広いエンジニア職種での就労が可能です。
また、日本企業だけでなく、外資系IT企業や日本法人での勤務も対象となるため、キャリア選択の自由度も高く保てます。
参考:出入国在留管理庁:技術・人文知識・国際業務 :在留資格「技能」:「高度専門職」
2.イギリス人特有のビザ取得メリットと活用方法

イギリス人だけが持つ特別なメリットを最大限に活用することで、ビザ取得をスムーズに進めることができます。
特に90日間のビザ免除措置は大きな武器になります。
90日間ビザ免除措置の効果的な活用法
イギリスは日本の査証免除国のため、観光目的なら90日以内の滞在にビザは不要です。この制度をうまく使うことで、就労ビザ申請を有利に進められます。
90日間ビザ免除期間の上手な使い方例
- 会社での面接実施:オンライン面接では伝わらない人柄や技術力を直接アピール
- 職場環境の確認:実際のオフィスや働く環境を事前に見学して不安を解消
- 内定後の準備:COE申請に必要な書類の準備や住む場所の下見を実施
重要ポイント
重要なのは、短期滞在中に複数の会社と面接を行い、最適な雇用条件を見つけることです。
日本企業は対面での面接を重視する傾向があります。実際に来日して面接を受けることで内定率が約30%向上するデータもあります。
注意点
注意点として、90日間の短期滞在中は報酬をもらう活動は一切禁止されています。
面接や会社見学は問題ありませんが、試用的な業務やインターンシップは違反行為となり、将来のビザ申請に悪影響を与える可能性があります。
また、就労ビザ申請中に再び短期滞在で来日することも可能ですが、COE(在留資格認定証明書)の審査期間は1-3ヶ月程度かかるため、滞在期間との調整が必要になります。
計画的なスケジュール作りを心がけましょう。
3.技術・人文知識・国際業務ビザの解説

技人国ビザはイギリス人エンジニアにとって最も適したビザです。
その理由と具体的な業務範囲をくわしく理解することで、申請の成功率を高めることができます。
技人国ビザがエンジニアに最適な理由
「技術・人文知識・国際業務」ビザ(技人国ビザ)は、大学で体系的に学んだ専門知識を活かした知的労働に就く外国籍人材向けのビザです。
技人国ビザがエンジニアに最適な4つの理由
- 業務との高い相性:プログラミング、システム設計、データ分析などIT業務を幅広くカバー
- 学歴条件の明確性:イギリスの大学学位(Bachelor’s Degree以上)で条件を満たしやすい
- 更新・昇格の柔軟性:1年→3年→5年と段階的に長期ビザへ移行可能
- 転職時の継続性:同じビザカテゴリ内での転職なら手続きが簡単
エンジニア職が取得するメリット
特にエンジニア職種の場合、大学で学んだコンピューターサイエンス、情報工学、数学、物理学などの知識と、実際の職務内容の関連性を証明しやすいのが大きなメリットです。
これは技能ビザのような特殊技能の実証や、経営管理ビザのような投資条件と比較して、はるかにハードルが低くなっています。
また、技人国ビザは日本で最も多く発給されている就労ビザのため、出入国在留管理局での審査ノウハウが蓄積されています。審査期間も比較的安定している点も魅力的です。
技人国ビザで働ける仕事の範囲と制限
技人国ビザで働ける業務は法令で明確に決められています。許可された範囲外の活動を行うと違反行為となり、ビザ更新時に問題となる可能性があります。
エンジニアが知っておくべき業務範囲をくわしく説明します。
「技術」分野で許可される主要業務
- システム開発:Webアプリケーション、モバイルアプリ、業務システムの設計・開発
- インフラ構築:サーバー設計、ネットワーク構築、クラウド環境の構築・運用
- データ分析:ビッグデータ解析、機械学習モデルの開発、AIシステムの構築
- 品質管理:テスト設計、システム監査、セキュリティ分析
「人文知識・国際業務」分野で許可される業務
- ITコンサルティング:会社のDX推進支援、システム導入コンサルティング
- プロジェクト管理:開発プロジェクトの企画・管理、チームリーダー業務
- 海外展開支援:英語圏向けサービスの企画・マーケティング、海外拠点との連携業務
ビザの有効期間
初回は1年が一般的ですが、安定した雇用実績と良好な生活態度が認められれば、更新時に3年、さらには5年の長期ビザを取得することも可能です。
長期ビザの取得は永住権申請にも有利に働くため、計画的なキャリア形成が重要になります
4.ビザ取得のための条件1:学歴・職歴の条件をクリアする

技人国ビザで最も重要な条件の1つが学歴・職歴です。
イギリスの教育システムの特徴を理解し、適切に証明することで審査を有利に進めることができます。
イギリスの大学卒業資格が日本のビザで認められる条件
技人国ビザの学歴条件は「日本の短期大学士相当以上の学位」ですが、イギリスの教育システムは日本と異なるため、正確な理解が必要です。
日本のビザで認められるイギリスの学位
- Bachelor’s Degree(学士号):3年制・4年制問わず日本の学士相当として認定
- Master’s Degree(修士号):当然ながら日本の修士相当として認定
- PhD(博士号):最高位の学位として認定
重要なのは、イギリスの3年制Bachelor’s Degreeも日本の4年制大学卒業と同等とみなされることです。
これは文部科学省が定める学位の同等性判定基準に基づいており、出入国在留管理局でも同様の基準が適用されています。
認定が困難になる可能性があるケース
ただし、以下の場合は注意が必要です:
- Foundation Course修了のみ:大学進学準備コースのため学位として認められない
- Higher National Diploma(HND):職業訓練系の資格のため個別審査が必要
- 通信制・オンライン学位:一部の機関の学位は認定されない場合がある
申請時には、卒業証明書(Degree Certificate)と成績証明書(Academic Transcript)の両方が必要です。
これらの書類は英語で発行されているため翻訳は不要ですが、原本またはアポスティーユ認証を受けたコピーを準備する必要があります。
参考:出入国在留管理庁:技術・人文知識・国際業務 外務省:公印確認・アポスティーユとは
エンジニア向け学歴条件の特別ルール
技人国ビザには、エンジニア職種に特化した学歴免除の特別ルールがあります。このルールを活用すれば、大学を卒業していなくても就労ビザを取得することが可能です。
情報処理技術者試験による学歴免除
法務大臣が定めた情報処理技術に関する資格を取得していれば、学歴や職歴に関係なく技人国ビザを申請できます。対象となる主要資格は以下の通りです:
- 基本情報技術者試験:ITエンジニアの登竜門的資格
- 応用情報技術者試験:より高度な技術力を証明
- 情報処理安全確保支援士試験:セキュリティ分野の専門資格
- システムアーキテクト試験:システム設計の高度資格
- プロジェクトマネージャ試験:プロジェクト管理の専門資格
上記の試験は日本語で実施されるため、イギリス人にとってはハードルが高いですが、一度取得すれば学歴条件を完全に代替できる強力な武器となります。
特にITエンジニアとしての専門性を客観的に証明できるため、雇用企業側からの評価も高くなります。
10年の実務経験による代替ルート
学歴がない場合の代替手段として、IT関連業務での10年以上の実務経験でも申請可能です。ただし、この経験には厳しい条件があります:
- 専門的・技術的知識を必要とする業務であること
- 日本での予定業務と関連性があること
- 在職証明書など客観的な証明資料があること
実務経験による申請は、過去の雇用企業からの詳細な在職証明書が必要で、企業が倒産していたり連絡が取れない場合は証明が困難になります。
大学の専攻とエンジニアの仕事の関連性を証明するコツ
技人国ビザで最も重要なのが、大学での専攻科目と予定される職務内容の「関連性」です。
Computer Scienceを専攻していればクリアは簡単ですが、他の専攻でも関連性を証明する方法があります。
関連性の証明が簡単な専攻
- Computer Science/情報工学:全てのIT業務との関連性あり
- Mathematics/数学:アルゴリズム設計、データ分析業務との関連性
- Physics/物理学:システム開発、エンジニアリング業務との関連性
- Electronics/電子工学:ハードウェア・インフラ業務との関連性
関連性の証明にコツが必要な専攻
- Business/経営学:ITコンサルティング、プロジェクト管理業務との関連性
- Economics/経済学:フィンテック、データ分析業務との関連性
- Psychology/心理学:UI/UX設計、人間工学的システム設計との関連性
関連性を証明するための具体的な方法:
効果的な関連性証明の方法
- 履修科目の詳細説明:Programming、Statistics、Database等の科目履修歴をアピール
- 卒業論文・プロジェクトの活用:IT関連のテーマを扱った研究実績を提示
- 追加学習の証明:独学でのプログラミング学習、オンラインコース修了証明
- ポートフォリオの作成:実際に開発したアプリケーションやWebサイトを提示
特に重要なのは、単に「関連がある」と主張するだけでなく、具体的な科目名、学習内容、そして実際の職務でどう活用するかを明確に説明することです。
審査官は専門的な内容を理解しているため、曖昧な説明では通用しません。
5.ビザ取得のための条件2:給料・雇用条件を適正にする

適正な給料設定と雇用契約書の作成は、ビザ審査で重要なポイントです。
日本人と同等以上の待遇を証明し、法的にも問題のない契約を結ぶ必要があります。
日本人と同じかそれ以上の給料設定
技人国ビザの重要な条件の1つが「日本人と同等以上の報酬」です。
これは外国籍人材だからといって不当に低い給与で雇用することを防ぐためのルールです。
しかし、具体的な金額基準は法定されておらず、企業の規模や業界、地域によって判断されます。
地域差については、東京都心部は上記金額の110-120%、大阪・名古屋は95-105%、地方都市は80-90%程度が目安となります。
ただし、これらは一般的な相場であり、実際の審査では同じ企業内での日本人社員との比較が重視されます。
報酬に含まれるもの・含まれないもの
含まれる報酬: | ・基本給、各種手当(技術手当、職務手当等) ・ボーナス(就業規則で支給条件が明記されている場合) ・残業代(基本給に含まれる場合) |
含まれない報酬: | ・通勤手当、住宅手当(実費補填的なもの) ・扶養手当(家族構成による審査格差防止のため) ・福利厚生費(食費補助、制服代等) |
重要なのは、面接時に提示された年収が実際の労働条件と一致していることです。
審査では雇用契約書の記載内容が詳細にチェックされるため、口約束での条件提示は避けるべきです。
雇用契約書を作る時のビザ申請を意識したポイント
雇用契約書は技人国ビザ申請のコアとなる書類の1つです。
ビザ審査を念頭に置いた適切な契約書作成のポイントを説明します。
職務内容の記載をチェックする項目
- 具体性の確認:「IT業務全般」のような曖昧な表現でなく「Webアプリケーション開発」など具体的に記載されているか
- 技術スタックの明記:使用予定の言語・フレームワーク(Java、React、AWS等)が明記されているか
- 業務割合の明示:開発60%、設計20%、管理業務20%など業務比率が明確になっているか
もし曖昧な記載があれば、企業の人事担当者に具体的な修正を依頼しましょう。審査で問題となる可能性があります。
停止条件の有無を確認
ビザ申請が不許可となった場合に備えて、多くの企業で「停止条件」を設定します。
- 「本契約は、甲(従業員)が日本国の有効な就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)を取得し、日本での就労が法的に認められた時点で効力を発生するものとする。」
この条項があることで、ビザ取得前に契約を締結しても、取得できなかった場合は契約が無効となり、双方のリスクを軽減できます。
この条項がない場合は、追加を提案しましょう。
契約期間とビザ期間の整合性チェック
初回の技人国ビザは通常1年間で発給されるため、以下の点を確認してください。
- 契約開始日:ビザ発給日(在留カード取得日)と一致するよう調整されているか
- 更新条件:ビザ更新と連動した契約更新条項があるか
- 試用期間:3-6ヶ月程度が設定されており、ビザ期間内に収まっているか
契約期間がビザ期間を上回っていても問題ありませんが、ビザ更新ができなかった場合の対応が契約書に明記されているかを確認することが重要です。
6.ビザ取得のための条件3:会社が外国籍人材を雇える条件か

企業側の受け入れ体制も重要な審査ポイントです。
会社の規模や過去の実績によって審査の厳しさが変わるため、事前に確認が必要です。
会社の規模別(カテゴリ1-4)の審査基準の違い
出入国在留管理局では、受入企業を4つのカテゴリに分類し、それぞれ異なる審査基準と必要書類を設定しています。
企業規模によってビザ取得の難易度が大きく変わるため、事前の確認が重要です。
企業カテゴリ分類と特徴
カテゴリ1企業(最も審査が緩い)
- 上場企業、国・地方公共団体
- 独立行政法人、認可法人、公益法人
- 法人税法別表第一に掲げる公共法人
カテゴリ2企業
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上
- 従業員数おおむね100名以上の大企業
カテゴリ3企業
- 前年分の源泉徴収税額が500万円以上1,000万円未満
- 従業員数50-100名程度の中企業
カテゴリ4企業(最も審査が厳しい)
- 上記以外の企業(新設会社、小規模企業等)
- 前年分の源泉徴収税額が500万円未満
カテゴリ別の審査難易度の違い
- カテゴリ1-2:企業の安定性は審査されず、申請者本人の要件のみがチェック対象
- カテゴリ3:企業の財務状況も軽度にチェックされるが、基本的には許可されやすい
- カテゴリ4:企業の経営状況、事業計画、外国籍人材雇用の必要性まで厳格に審査
実際の許可率データでは、カテゴリ1-2企業での申請は約95%、カテゴリ3企業は約85%、カテゴリ4企業は約70%となっており、企業規模の影響は無視できません。
注意したいポイント
特にスタートアップやIT系ベンチャー企業の多くはカテゴリ4に該当するため、綿密な事業計画書の準備や、外国籍人材雇用の必要性を論理的に説明する資料が必要になります。
過去の外国籍人材の雇用実績が審査に与える影響
企業の外国籍人材雇用履歴は、新たなビザ申請の審査に大きな影響を与えます。
良好な実績は審査にプラスに働きますが、過去に問題があった企業では審査が厳格化されます。
審査にプラスに働く企業実績
- 過去に外国籍人材を継続的に雇用し、適切な在留管理を実施
- 外国籍社員のビザ更新率が高い(90%以上)
- 労働基準法等の関連法令を遵守した雇用実績
- 外国籍人材向けの研修制度や生活サポート体制の整備
審査が厳格化される企業の問題例
- 過去に雇用した外国籍人材が失踪・行方不明になった事例
- 資格外活動(許可された業務以外の仕事)をさせた履歴
- 不法就労助長罪で摘発された経験
- 技能実習計画の認定取消しを受けた履歴
7.COE(在留資格認定証明書)申請の手続き

COE申請は就労ビザ取得の要となる重要な手続きです。
必要書類の準備から審査期間中の対応まで、スムーズに進めるためのポイントを理解しましょう。
申請に必要な書類の準備と入手方法
COE申請では、イギリスで取得する書類と日本で企業が準備する書類の両方が必要です。書類準備の遅れが審査期間の延長につながるため、早めの準備開始が重要です。
イギリスで本人が取得する主要書類
学位関連書類
- 卒業証明書(Degree Certificate):大学から発行される学位証明書の原本またはコピー
- 成績証明書(Academic Transcript):全履修科目と成績が記載された公式成績証明書
- 学校発行レター:日本での職務内容と専攻科目の関連性を説明する大学からの推薦状(任意)
身元関係書類
- 犯罪経歴証明書(DBS Certificate):過去の犯罪歴がないことを証明する書類
- パスポートのコピー:顔写真ページと過去の出入国記録ページ
- 証明写真:4cm×3cm、3ヶ月以内に撮影、背景白色
職歴関係書類(該当者のみ)
- 在職証明書(Employment Certificate):過去の勤務先からの詳細な職歴証明
- 給与証明書(Salary Certificate):年収や職務内容を証明する書類
申請書類作成のコツ
COE申請書類の中でも、特に重要なのが「在留資格認定証明書交付申請書」と「理由書」です。
これらの書類の質が審査結果に直結するため、作成時のポイントを理解しておく必要があります。
申請書記載時の重要ポイント
基本情報の正確性
- 氏名の表記:パスポートと完全に一致させる(ミドルネーム含む)
- 生年月日:西暦表記で統一し、他書類との整合性を確認
- 現住所:イギリスでの現在の住所を正確に記載
職歴・学歴欄の詳細記載
- 在学期間:月単位まで正確に記載(例:2019年9月~2022年6月)
- 専攻科目:具体的な学科名を英語・日本語併記
- 職歴詳細:会社名、部署名、具体的な職務内容を簡潔に記載
理由書作成の効果的な構成
- 来日目的の明確化
私は○○大学でコンピューターサイエンスを専攻し、特にWeb開発とデータベース設計に関する深い知識を身につけました。日本の先進的なIT技術と働き方を学び、将来的には両国の技術交流に貢献したいと考え、この度△△株式会社への就職を希望いたします。 - 学歴と職務の関連性説明
具体的な履修科目名と予定職務の関連性を論理的に説明します。 - 企業選択の理由
なぜその企業を選んだのか、企業の事業内容と自身のスキルの適合性を説明します。 - 将来計画
日本での中長期的なキャリアプランを簡潔に記載します。
審査期間中の過ごし方と結果通知後の手続き
COE申請の標準審査期間は1-3ヶ月ですが、書類に不備があったり追加書類の提出が求められた場合はさらに延長される可能性があります。この期間中の適切な対応が重要です。
審査期間中の注意事項
追加書類提出への迅速対応
出入国在留管理局からの追加書類要求は通常、申請から2-4週間後に来ます:
- 提出期限:通常、通知から2週間以内
- 対応方針:要求された書類は速やかに準備し、説明が必要な場合は補足資料も添付
- 連絡方法:郵送が基本だが、緊急の場合は直接持参も可能
COE交付後の手続きスケジュール
COEの有効期限切れは再申請が必要になるため、取得後は速やかに査証申請を進めることが重要です。
COE取得直後(1週間以内)
- COEの記載内容確認(氏名、生年月日、職務内容等にミスがないか)
- イギリスの申請者本人への郵送手配
- 在英国日本大使館での査証申請予約
査証申請期間(2-3週間)
- 必要書類の準備(COE、パスポート、申請書、写真等)
- 大使館での面接・書類提出
- 査証発給待ち(通常5営業日-2週間)
査証取得後(1週間以内)
- 日本への渡航手配
- COE有効期限(交付日から3ヶ月)内での入国
8.VISA申請と入国手続き

COE取得後は、イギリスの日本大使館でのVISA申請と日本入国時の手続きが待っています。スムーズな入国のために、事前に流れを把握しておきましょう。
イギリスの日本大使館でのVISA申請手続き
COE取得後は、イギリスにある日本大使館または総領事館で査証(VISA)申請を行います。
申請先は居住地によって決まるため、事前に管轄を確認することが重要です。
手続きの場所と必要書類・ポイント
申請先となる日本の在外公館
- 在英国日本国大使館(ロンドン):イングランド、ウェールズ、北アイルランド居住者
- 在エディンバラ日本国総領事館:スコットランド居住者
- 申請方法:原則として本人が直接出頭(代理申請は原則不可)
VISA申請に必要な書類
- 査証申請書:大使館HPからダウンロード、または窓口で入手
- パスポート原本:申請時から6ヶ月以上の有効期限が必要
- COE原本:日本で取得した在留資格認定証明書
- 証明写真:4.5cm×4.5cm、6ヶ月以内撮影、背景白色
- 申請料:無料(COE申請に基づく場合)
オンライン申請システムについて
2024年から導入されたJAPAN eVISAシステムにより、一部の手続きがオンライン化されています。ただし、最終的な書類提出とパスポートへの査証貼付のため、少なくとも1回は大使館への出頭が必要です。
注意しておきたいポイント
査証申請中はパスポートを大使館に預けることになるため、その期間中の海外渡航はできません。申請タイミングを慎重に検討しましょう。
日本入国時の手続きと在留カード取得
査証を取得して日本に到着したら、空港で入国審査と在留カード取得を行います。手続きは30分-1時間程度で完了します。
空港での入国審査(3ステップ)
- 入国審査カウンター
- 生体認証
- 在留カード受取
記載ミスがあった場合:14日以内に出入国在留管理局で訂正手続きが必要です。
9.特別なケース別ビザ対応

転職、フリーランス、家族の呼び寄せなど、特別な状況でのビザ手続きには注意が必要です。事前に適切な手続きを理解して、トラブルを避けましょう。
転職時のビザ手続きと注意点
日本で働くイギリス人エンジニアにとって、転職は珍しいことではありません。
しかし、就労ビザでの転職には特別な手続きと注意点があり、適切に対応しないとビザの効力に影響する可能性があります。
就労資格証明書申請の必要性
転職先での業務が現在のビザで認められているかを事前に確認するための重要な手続きです:
申請が推奨されるケース
- 業務内容の大幅変更:開発職から管理職、システム開発からデータ分析への転職
- 業界の変更:金融ITから製造業IT、Webサービスから組み込み系への転職
- 企業規模の大幅変更:大企業からスタートアップ、またはその逆の転職
- 雇用形態の変更:正社員から業務委託、派遣から正社員への変更
所属機関変更届出の義務
転職が決定したら、法律で定められた届出を必ず実施する必要があります。
届出を怠った場合のリスク
- ビザ更新への影響:次回更新時に厳格な審査
- 罰則の可能性:最悪の場合、在留資格取消しのリスク
- 永住権申請への悪影響:生活態度不良とみなされる可能性
転職活動中のビザ維持
転職活動期間中もビザの有効性を維持する必要があります。
退職後の猶予期間
- 3ヶ月ルール:退職後3ヶ月以内に新しい就職先を見つける必要
- 活動継続の条件:転職活動を積極的に行っていることの証明
- 延長不可:3ヶ月を超える無職期間は在留資格取消しの対象
参考:出入国在留管理庁:就労資格証明書申請 :所属(契約)機関に関する届出
フリーランス・業務委託での仕事制限
技人国ビザでのフリーランス・業務委託は可能ですが、雇用契約とは異なる制限と注意点があります。働き方の多様化に伴い、これらの形態を検討するエンジニアが増えています。
雇用契約以外の働き方の制約
技人国ビザでは雇用契約以外の働き方も認められていますが、条件があります:
認められる契約形態
- 業務委託契約:特定の成果物を納期内に完成させる契約
- 派遣契約:派遣会社と雇用契約を結び、客先企業で勤務
- 顧問契約:専門知識を活かした助言・指導業務
資格外活動許可が必要なケース
以下の場合は事前に資格外活動許可を取得する必要があります:
許可が必要な活動
- 複数社との同時契約:メインの勤務先以外との業務委託
- 副業・サイドビジネス:本業以外での収入を得る活動
- 技術顧問業務:複数企業での非常勤顧問
複数企業での兼業時の手続き
エンジニアの専門性を活かした複数企業での兼業も可能ですが、適切な手続きが必要です:
届出・許可の使い分け
- メインとサブの区別:主たる勤務先と副次的な業務を明確に区分
- 所属機関変更届出:メイン勤務先の変更時のみ必要
- 資格外活動許可:サブ業務については事前許可取得
家族滞在ビザ(配偶者・子ども)の手続き
安定した日本生活が確立されると、家族の呼び寄せを検討するエンジニアも多くなります。
家族滞在ビザには独特の条件と手続きがあります。
対象となる家族
- 配偶者:法的に婚姻関係にある夫婦(同性婚は対象外)
- 子ども:20歳未満で未婚の実子・養子
- 対象外:両親、兄弟姉妹、成人した子ども
基本的な申請条件
- 安定した雇用:1年以上の継続勤務実績
- 十分な収入:家族を扶養できる経済力
- 適切な住居:家族が生活できる居住環境
10.よくある失敗例と対策・成功のコツ

ビザ申請での失敗パターンを理解し、事前に対策を講じることで成功率を大幅に向上させることができます。
実際の成功事例からも学びましょう。
ビザ申請で落ちる5つの主な原因と対策
技人国ビザの申請で不許可となるケースには共通するパターンがあります。
事前に失敗要因を理解し、適切な対策を講じることで成功率を大幅に向上させることができます。
失敗原因1:学歴と職務内容の関連性不足
最も多い不許可理由の1つが、大学での専攻と予定される職務の関連性を適切に証明できていないケースです。
よくある失敗パターン
- 文系学部卒業者:Economics専攻でシステム開発業務を希望
- 曖昧な説明:「大学でコンピューターも学んだ」程度の薄い関連性
- 職務内容の不明確さ:「IT業務全般」といった抽象的な業務説明
効果的な対策
- 履修科目の詳細説明:Statistics、Database、Programming等の具体的科目名を明記
- 卒業論文の活用:IT関連テーマの研究実績をアピール材料として活用
- 追加学習の証明:独学でのプログラミング学習、オンラインコース修了証明書の提出
- ポートフォリオ作成:実際に開発したアプリケーションやWebサイトを証拠として提示
失敗原因2:企業の受入体制不備
特にカテゴリ4企業(中小企業・スタートアップ)で多い失敗パターンです。
問題となるケース
- 財務状況の悪化:直近決算での大幅赤字や債務超過
- 外国籍人材雇用の説明不足:なぜ日本人ではなく外国籍の人材を雇用する必要があるかの論理的説明の欠如
- 事業計画の不備:新設会社での事業継続性に対する疑問
改善策
- 詳細な事業計画書:3-5年の具体的な事業展開と売上予測を含む計画書の作成
- 外国籍人材雇用の必要性説明:グローバル展開、技術力向上等の明確な理由を文書化
- 財務改善計画:赤字企業の場合は具体的な黒字化計画を提示
失敗原因3:書類の不備・不正確な記載
意外に多いのが、基本的な書類不備による審査遅延や不許可です。
ミス防止策
- 複数回のチェック:申請前に最低3回は全書類の記載内容を確認
- 原本との照合:コピー書類は必ず原本と照合して正確性を確認
- 専門家によるレビュー:重要な申請の場合は行政書士等によるチェックを依頼
失敗原因4:給与水準の不適切な設定
日本人同等以上の報酬という条件を満たしていないケースです。
適正化の方法
- 市場調査の実施:同業界・同職種の給与相場を詳細に調査
- 報酬構成の明確化:基本給、各種手当、ボーナスの内訳を明確に分類
- 昇給計画の提示:将来的な給与上昇計画を雇用契約に明記
失敗原因5:面接・審査対応の不備
書類は完璧でも、面接や追加説明で失敗するケースがあります。
面接での失敗例
- 志望動機の不明確さ:なぜ日本で働きたいかの説明が曖昧
- 将来計画の欠如:日本での中長期的なキャリアプランが未整理
- 日本語能力の過小評価:基本的なコミュニケーションができない
面接成功のコツ
- 明確な志望理由:日本の技術、文化、働き方への具体的な興味を説明
- 現実的な将来計画:5年後、10年後の具体的なキャリアビジョンを準備
- 基本的な日本語学習:簡単な挨拶や自己紹介ができるレベルまで習得
エンジニア特有のビザ申請の落とし穴
ITエンジニアの職種特性により発生する特別な注意点があります。これらを理解していないと、他職種では問題にならないことが不許可原因となる可能性があります。
技術の急速な変化とビザ条件のギャップ
IT業界の技術革新スピードと、ビザ制度の更新スピードにはタイムラグがあります。
新技術への対応問題 | ・新しいプログラミング言語:大学で学んでいない最新言語での業務 ・クラウド技術:従来のオンプレミス開発との大きな違い ・AI・機械学習:従来のシステム開発とは異なる専門性 |
対応策
- 継続学習の証明:新技術習得のための自主学習実績を文書化
- 基礎技術の関連性:新技術と大学で学んだ基礎理論の関連性を説明
- 業界動向の説明:技術進歩がエンジニアに求められる当然の要素であることを主張
オープンソース開発と職務内容の説明
現代のソフトウェア開発では避けて通れないオープンソースの取り扱いです。
説明が困難なケース | ・無償での貢献活動:GitHub等での無償のコード貢献をどう位置づけるか ・コミュニティ活動:技術勉強会、カンファレンス参加の業務関連性 ・個人プロジェクト:趣味的な開発と業務スキル向上の境界 |
適切な説明方法
- スキル向上の一環:技術力向上のための自主的な取り組みとして位置づけ
- 業務への還元:オープンソース活動で得た知識の業務活用例を具体的に説明
- 業界標準の慣行:IT業界では一般的な職業能力開発活動であることを強調
リモートワークと就労場所の制限
COVID-19以降に一般化したリモートワークには、ビザ上の注意点があります。
リモートワーク特有の問題 | ・勤務場所の特定:自宅、コワーキングスペース、海外での勤務 ・労働時間の管理:フレックスタイム制での働き方 ・成果物の評価:時間ではなく成果で評価される働き方 |
ビザ申請での対応
- 主たる勤務場所の明確化:原則的な勤務場所(オフィスまたは自宅)を契約書に明記
- 労働条件の詳細化:リモートワーク時の労働時間、コミュニケーション方法を具体的に説明
- 成果管理システム:適切な労務管理が行われることを証明する体制の説明
実際に成功したイギリス人エンジニアの体験談
実際にビザを取得して日本で働いているイギリス人エンジニアの成功事例から、実践的なアドバイスを紹介します。
ケース1:Computer Science専攻・新卒での成功例
背景:ロンドン大学Computer Science卒、日本のWeb系スタートアップに新卒入社
成功要因
- 専攻との完全一致:Computer Scienceの専攻で開発業務への関連性が明確
- 日本語学習の継続:大学時代から3年間の日本語学習履歴
- インターンシップ経験:短期滞在での2週間のインターンシップで企業理解を深化
アドバイス
「最初は書類の準備が大変でしたが、大学のキャリアセンターが日本就職をサポートしてくれました。特に成績証明書の取得には時間がかかったので、早めの準備が重要です。日本語は完璧でなくても、学習する意欲を見せることが大切だと感じました。」
ケース2:文系学部からの転向成功例
背景:Economics専攻、独学でプログラミングを学習、データサイエンティストとして採用
成功要因
- 統計学の活用:Economics専攻での統計・経済分析スキルをデータ分析業務に関連付け
- ポートフォリオの充実:GitHubでの個人プロジェクト、Kaggleコンペティション参加実績
- 追加学習の証明:オンラインコース修了証明書、技術書の読書記録
アドバイス
「文系出身なので技術力の証明が重要でした。GitHubのコントリビューション履歴や、実際に作ったWebアプリケーションを面接で見せることで、実務能力をアピールできました。大学で学んだ統計学とプログラミングを組み合わせることで、データサイエンスという新しい分野での差別化に成功しました。」
ケース3:転職での複雑な手続き成功例
背景:日本での勤務2年目、より良い条件を求めて転職、ビザ更新と転職手続きを同時実行
成功要因
- 就労資格証明書の事前取得:転職前に新しい職務内容でのビザ適合性を確認
- 丁寧な書類準備:前職での実績証明と新職場での成長計画を詳細に説明
- タイミングの調整:ビザ更新申請と転職タイミングを計画的に調整
アドバイス
「転職とビザ更新が重なると手続きが複雑になりますが、事前準備で乗り切れます。特に就労資格証明書を取得してから転職することで、リスクを大幅に軽減できました。行政書士さんに相談したのも良かったです。」
11.イギリス人エンジニアとして日本でビザを取得し活躍する

イギリス人エンジニアの日本就労ビザ取得は、適切な準備と手続きにより十分実現可能です。
90日間のビザ免除措置を活用した効率的な就職活動、学歴と職務の関連性証明、企業との適切な契約締結が成功の鍵となります。
困った時は専門家に相談し、長期的なキャリアプランを見据えて取り組みましょう。この記事を参考にしてぜひ日本でのキャリアを充実させてください。