「受託開発と自社開発、どちらのキャリアを選ぶべきか」
この問いは、多くのITエンジニアが転職やキャリア形成において直面する重要な選択です。同じ「開発」という仕事でも、両者は働き方、スキル形成、キャリアパス、報酬体系において大きく異なります。
この記事では、両者の違いを客観的に比較し、経験年数に応じたキャリア選択についてご紹介していきます。
- 受託開発と自社開発の10項目での具体的な違い(働き方、スキル形成、報酬など)について
- キャリアステージ別の最適な選択肢(未経験・若手・中堅・ベテラン)について
- 公的データに基づく市場動向と年収の実態(IPA、IDC Japan等の信頼できる情報源)について
1. 受託開発・自社開発・SESとは?基本の定義を正確に理解する
ITエンジニアのキャリアを考える上で、まず「受託開発」「自社開発」「SES」という3つの働き方の正確な定義を理解することが不可欠です。
これらは表面的には似ていますが、契約形態、業務内容、エンジニアの役割において明確な違いがあります。
受託開発(Contract Development)の定義とビジネスモデル
受託開発とは、クライアント企業からの依頼に基づき、システムやソフトウェアを開発する業務形態です。
契約形態は「請負契約」が基本であり、開発会社は定められた仕様のシステムを期日までに完成させ、成果物として納品する責任を負います。
ビジネスモデルの特徴
クライアント企業が抱える課題を解決するためのシステムを構築することが主目的となります。
例えば、企業の基幹業務システム、ECサイト、業務効率化ツールなどが典型的な受託開発案件です。開発会社は案件ごとに収益を得るため、継続的な案件獲得が事業の安定性を左右します。
エンジニアの視点
多様な業界やクライアントのプロジェクトに関わることで、幅広い技術や業務知識を習得できる点が特徴です。
自社開発は2種類ある|社内向けと社外向けの重要な違い
自社開発は一般に「自社でサービスや製品を企画から開発、販売まで行う形態」と定義されますが、実際には大きく2つのモデルに分類されます。
社内向けシステム開発
自社の業務効率化やコスト削減を目的としたシステム開発です。例えば、独自の顧客管理システム(CRM)、在庫管理システム、社内業務フローを支援するツールなどが該当します。
これらは社外に販売されることはなく、開発の成功は「業務効率の向上」や「コスト削減額」といった内部指標で評価されます。
社外向けサービス・製品開発
一般消費者や他社をユーザーとして、市場にサービスやソフトウェアを提供するモデルです。
SaaS(Software as a Service)、Webサービス、スマートフォンアプリなどが代表例です。
このモデルでは、プロダクトの市場での受容度や売上が直接的な評価指標となり、エンジニアはプロダクトの成長に直結する責任を担います。
この2つのモデルは、関わるステークホルダー、開発のプレッシャー、求められるスキルセットが大きく異なります。社外向け開発の方が、市場競争にさらされるため、よりスピード感と柔軟性が求められる傾向にあります。
SES(System Engineering Service)と受託開発の明確な違い
SESは「技術者派遣」に近い業務形態であり、契約形態は「準委任契約」が一般的です。受託開発との最大の違いは、成果物の納品責任の有無と、指揮命令権の所在にあります。
受託開発では、開発会社が成果物(システム)の完成と納品に対して責任を負います。
一方、SESでは、エンジニアの技術力や労働時間そのものを提供することが契約の主眼であり、成果物の完成責任は原則として負いません。
また、受託開発ではエンジニアは自社(開発会社)の指揮命令下で働きますが、SESではクライアント企業(派遣先)の指揮命令下で業務を行います。
このため、SESは実質的に「派遣」に近い働き方となり、エンジニアはクライアント企業のプロジェクトチームの一員として業務を遂行します。
SESの特徴として、案件ごとに異なる企業に派遣されるため、多様な開発環境や技術に触れる機会がある反面、プロジェクトへのオーナーシップは限定的です。
SIer(System Integrator)との関係性
SIerは「企業形態」を指す言葉であり、受託開発は「業務形態」を指す言葉です。この2つは異なる概念ですが、実務上は密接に関連しています。
SIerとは、システムインテグレーション(複数のシステムやソフトウェアを組み合わせて統合的なITシステムを構築すること)を主業務とする企業を指します。
多くのSIer企業は、クライアントからシステム開発を請け負う「受託開発」を主要な事業としています。
つまり、SIer企業に所属するエンジニアの多くは、受託開発という業務形態で働いているケースが一般的です。
ただし、すべての受託開発企業がSIerというわけではなく、Web制作会社やアプリ開発会社なども受託開発を行っています。
2. 【10項目で比較】受託開発と自社開発の違い一覧
受託開発と自社開発の違いを、エンジニアのキャリアに影響を与える10の重要な項目で比較します。
まず全体像を把握できる比較表を確認しましょう。また特に重要な5項目についてくわしく解説します。
| 比較項目 | 自社開発 | 受託開発 | SES |
|---|---|---|---|
| 主要な目的 | 自社プロダクトの成長と収益化 | クライアントの要求仕様を満たすシステムの納品 | エンジニアの技術力(労働時間)の提供 |
| 主要なステークホルダー | 自社のユーザー、経営陣 | クライアント企業 | 派遣先企業の担当者、自社の営業 |
| 仕事のペース | 市場やユーザーの反応に応じた継続的な改善 | クライアントの定める厳格な納期 | 派遣先のプロジェクトスケジュールに準拠 |
| スキルの幅(多様性) | 狭い(特定技術に特化) | 広い(多様な業界・技術) | 非常に広い(案件ごとに変化) |
| スキルの深さ(専門性) | 深い(特定プロダクトの専門家になる) | 中程度(広く浅くなる傾向) | 浅い(短期案件が多い場合) |
| プロジェクトへのオーナーシップ | 非常に高い(企画から関与) | 低い(要件はクライアントが決定) | ほぼ無い(指揮命令は派遣先) |
| 技術的な意思決定権 | 高い(自社チームで決定) | 低い(クライアントの意向が優先) | ほぼ無い(派遣先のルールに従う) |
| 収益モデル | プロダクトの売上(SaaSなど) | プロジェクト単位の請負契約 | エンジニアの時間単価×労働時間 |
| キャリアの安定性 | プロダクトの成否に依存(不安定) | 比較的安定(継続的な案件受注が前提) | 比較的安定(待機期間のリスクあり) |
| 高い報酬の可能性 | 高い(ストックオプション等) | 限定的(契約金額内) | 低い(多重下請け構造による) |
働き方とスケジュール管理の違い
自社開発
市場やユーザーの反応を見ながら継続的にプロダクトを改善していくため、スケジュールに柔軟性があります。
開発の優先順位も社内で決定できるため、エンジニアの裁量が比較的大きいです。リリース後も機能追加や改善が続くため、長期的な視点でプロダクトと向き合えます。
受託開発
クライアントとの契約で定められた納期が絶対的な制約となります。
クライアントの都合による仕様変更や急な要求にも対応する必要があり、スケジュールは厳格に管理されます。
プロジェクトには明確な終わりがあり、納品後は次の案件に移行するため、短期集中型の働き方となります。
IPA「IT人材白書2024」によれば、IT企業の約7割が「顧客の要求による仕様変更や追加開発が頻繁に発生する」と回答しており、特に受託開発では柔軟な対応力が求められることが示されています。
参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「IT人材白書2024」
スキル形成の方向性|ジェネラリストvsスペシャリスト
受託開発
多様な業界やクライアントのプロジェクトに関わることで、広範な知識と経験を積める点にあります。
金融、医療、製造、小売など、業界ごとに異なる業務フローや要件を理解する必要があり、結果としてジェネラリスト的なスキルセットが形成されます。
技術面でも、クライアントの既存システムに合わせて様々な言語やフレームワークを使用する機会があります。
自社開発
特定のプロダクトやサービスに深くコミットするため、その領域における高度な専門性を身につけることができます。
同じコードベースで長期間開発を続けるため、アーキテクチャの深い理解や、技術的負債の解消、パフォーマンスチューニングといった専門的なスキルが磨かれます。
一方で、使用する技術スタックが固定されるため、技術の幅は限定される可能性があります。
IPA「DX白書2023」では、DX推進において「特定技術の深い専門性」と「幅広い技術知識」の両方が求められると指摘されており、キャリアステージに応じた戦略的なスキル形成が重要とされています。
参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書2023」
プロジェクトへのオーナーシップと裁量権の違い
自社開発
エンジニアはプロダクトの「創造者」としての役割を担います。
企画やアイデア出しの段階から参加できることが多く、「このプロダクトを自分たちで作り上げている」という強い当事者意識を持ちやすいです。
技術選定、アーキテクチャ設計、機能の優先順位決定においても、エンジニアの意見が重視される傾向にあります。
受託開発
要件定義はクライアントが主導し、エンジニアは定められた仕様を「実行」する役割が中心となります。
技術的な提案は可能ですが、最終的な意思決定権はクライアント側にあります。プロジェクトへの関与は実装フェーズが主となり、企画段階からの参加は限定的です。
IPA「IT人材白書2024」によれば、エンジニアの満足度において「仕事の裁量権」が重要な要因であり、自社開発と受託開発では裁量権の大きさが働きがいに直結すると報告されています。
収益モデルと報酬の仕組みの違い
自社開発企業の収益
プロダクトの売上に直結します。プロダクトが市場で成功すれば、会社の業績が向上し、それがエンジニアの昇給、賞与、ストックオプションといった形で還元される可能性があります。
特にスタートアップやベンチャー企業では、IPO(株式上場)時に大きなリターンを得られるケースもあります。一方で、プロダクトが失敗すれば会社の存続自体が危ぶまれるリスクも内包しています。
受託開発企業の収益
プロジェクト単位の請負契約金額で決まります。
クライアントの製品が市場で成功しても、開発会社への追加的な利益還元は通常発生しません。報酬は契約金額の範囲内で安定していますが、大きな上昇は期待しにくいです。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」によれば、システムエンジニアの平均年収は約569万円、プログラマーは約426万円となっています。ただし、企業規模や経験年数、専門分野によって大きく変動します。
キャリアの安定性とリスク特性の違い
受託開発企業
継続的に案件を獲得できれば、比較的安定した経営が可能です。
大手SIerやシステム開発会社は、長年の取引関係を持つクライアントから継続的に案件を受注しており、事業の安定性は高いです。
エンジニアにとっても、プロジェクトが終了しても次の案件があるため、雇用の安定性は確保されやすいです。
自社開発企業
特に社外向けサービスを展開する企業は、プロダクトの市場での成否に事業が完全に依存します。プロダクトが受け入れられなければ、会社の存続が危うくなるハイリスクな面があります。
一方で、プロダクトが成功すれば、急成長とそれに伴う高いリターンを期待できる、ハイリスク・ハイリターンな環境です。
3. エンジニアのキャリアステージ別|受託開発と自社開発の最適な選び方
キャリアステージによって、受託開発と自社開発のどちらが最適かは変わります。経験年数に応じた戦略的な選択を提示します。
若手・未経験(0~3年目)には受託開発が有利な3つの理由
キャリアの初期段階では、受託開発が有利に働くケースが多いです。その理由は以下の3点です。
第一に、多様なプロジェクト経験を通じて基礎スキルを幅広く構築できる点です。
若手エンジニアにとって、様々な業界、技術、開発手法に触れることは、自身の適性や興味を発見する貴重な機会となります。
第二に、自社開発企業、特に人気のあるWeb系自社開発企業は、即戦力となる経験者を求める傾向が強く、未経験者や経験の浅いエンジニアにとっては採用ハードルが高いです。
一方、受託開発企業やSES企業は、研修制度を整備し、未経験者を積極的に採用するケースが多いです。
第三に、受託開発での経験は、その後のキャリアにおいて強力な基盤となります。
3年程度の受託開発経験を積んだ後に自社開発企業へ転職するというキャリアパスは、ITエンジニアの「王道」ルートの1つとして認識されています。
中堅(3~10年目)の転職タイミング|自社開発への王道キャリアチェンジ
3年から10年目のエンジニアは、キャリアの方向性を決定する重要な転換期を迎えます。
受託開発で確固たる基礎を築いた後、専門性を深め、プロダクト開発の経験を積み、より大きな裁量を求めて自社開発企業へ転職するのは、1つの「王道」キャリアパスです。
この時期の選択は、将来的にマネジメント職を目指すのか、技術のスペシャリストとしての道を歩むのかという個人の目標に大きく依存します。
マネジメント志向の場合
自社開発ではプロダクトマネージャーやエンジニアリングマネージャーとして、プロダクトの戦略立案やチームマネジメントに関わる機会が増えます。
受託開発では、プロジェクトマネージャーとして、クライアントとの折衝や大規模案件の管理スキルを磨くことができます。
スペシャリスト志向の場合
自社開発では特定技術領域のテックリードやアーキテクトとして、技術的な深さを追求できます。
受託開発では、幅広い技術知識を持つ技術コンサルタントとして、クライアントの技術課題を解決する専門家を目指すことができます。
ベテラン(10年目~)それぞれのキャリアパスと価値発揮
10年以上の経験を持つベテランエンジニアは、どちらのモデルでも高い価値を発揮できますが、その役割は大きく異なります。
自社開発
テクニカルリードやアーキテクトとして、プロダクトの技術的な方向性を決定する中心的な役割を担います。
エンジニアリングマネージャーやVPoE(Vice President of Engineering)として、組織全体の技術戦略を策定し、エンジニアリングチームを率いる立場に就くことも可能です。
受託開発
大規模なクライアント案件を統括するプロジェクトマネージャーや、クライアントの経営課題を技術で解決する技術コンサルタント、新規案件を獲得するためのセールスエンジニアといった立場で、その豊富な経験と広範な知識を活かすことができます。
4. 公的データで見る受託開発と自社開発の市場動向

客観的なデータに基づき、IT業界全体の動向を把握することで、より確実なキャリア判断が可能になります。
国内ITサービス市場の規模と成長性
IDC Japanの調査によれば、2023年の国内ITサービス市場規模は6兆4,608億円に達し、今後も継続的な成長が予測されています。
この市場には、受託開発、システム運用保守、ITコンサルティングなどが含まれます。
特に、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に伴い、既存システムの刷新や新規システムの構築需要が高まっており、受託開発市場は堅調に推移しています。
また、SaaS型ビジネスモデルの普及により、自社開発企業、特に社外向けサービスを展開する企業の成長も著しいです。
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査(令和5年)」によれば、情報サービス業の売上高は前年比で継続的に増加しており、IT業界全体の成長が続いていることが確認されています。
この市場規模の大きさは、ITエンジニアの雇用機会が豊富であり、キャリアの選択肢が広いことを示しています。
参考:
IDC Japan「国内ITサービス市場予測、2023年~2028年」
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査(令和5年)」
IT人材の需給動向と求められるスキル
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発行する「IT人材白書2024」によれば、国内ではIT人材の不足が深刻化しており、経済産業省の試算では2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されています。
特に不足しているのは、以下の分野の人材です。
<先端技術分野>
- AI・機械学習
- クラウド
- セキュリティ
- データ分析
<DX推進人材>
- ビジネス理解力と技術力を併せ持つ人材
- プロジェクトマネジメント能力
- コミュニケーション能力
IPA「DX白書2023」では、DX推進における最大の課題として「適切なスキルを持つ人材の不足」が挙げられており、特に「ビジネスと技術の両方を理解できる人材」の需要が急増していると報告されています。
この人材不足は、エンジニアにとっては売り手市場であることを意味し、スキルを磨くことで高い市場価値を維持できる環境にあります。
参考:
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書2023」
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「IT人材白書2024」
エンジニアの働き方とリモートワークの実態
新型コロナウイルス感染症の影響を契機に、IT業界ではリモートワークが急速に普及しました。現在では、多くの企業がハイブリッドワーク(出社とリモートの組み合わせ)を導入しています。
総務省「情報通信白書(令和5年版)」によれば、情報通信業におけるテレワーク実施率は約70%と、全産業平均の約40%を大きく上回っており、IT業界が最もテレワークが浸透している業界の1つであることが示されています。
一般的に、自社開発企業の方がリモートワークの導入率が高い傾向にあります。
これは、社内でのコミュニケーションが中心であり、クライアントとの対面での打ち合わせが必須ではないためです。
一方、受託開発企業でも、クライアントの方針次第ではありますが、リモートワークを導入している企業は増加しています。
5. 自分に合った選択肢の見極め方と転職成功のポイント
- プロダクトへの深い関与
- 「何を作るか」の企画から参加したい
- 一つの技術領域を深く追求したい
- リスクを取り大きなリターンを狙いたい
- 継続的な改善プロセスが好き
- 多様な業界・技術に触れたい
- 汎用的な問題解決スキルを磨きたい
- 安定した雇用環境を重視する
- 短期集中型のプロジェクトが好き
- クライアントの課題解決に喜びを感じる
自社開発と受託開発、どちらが自分に合っているかを判断するための具体的な基準と、転職を成功させるためのポイントを提示します。
自社開発が向いているエンジニアの5つの特徴
以下の特徴に当てはまるエンジニアは、自社開発が適している可能性が高いです。
<プロダクトへの深い関与>
- 自分が作ったものが市場でどう評価されるかを直接見たい
- ユーザーの反応を肌で感じたいという欲求が強い
<企画段階からの参加>
- 「何を作るか」という意思決定に関与したい
- 自分のアイデアをプロダクトに反映させたい
<専門性の追求>
- 一つの技術領域を深く極めたい
- その分野のスペシャリストとして認められたい
<リスクテイクの許容>
- プロダクトの成否によってキャリアが大きく変動するリスクを受け入れられる
- 成功時の大きなリターンに魅力を感じる
<継続的改善の楽しみ>
- 一度リリースしたら終わりではない
- ユーザーのフィードバックを受けて継続的にプロダクトを改善していくプロセスにやりがいを感じる
受託開発が向いているエンジニアの5つの特徴
以下の特徴に当てはまるエンジニアは、受託開発が適している可能性が高いです。
<多様な経験の追求>
- 一つのプロダクトに留まらない
- 様々な業界のクライアント、多様な技術スタックに触れたい
<汎用的スキルの構築>
- 特定領域の専門性よりも、どんな課題にも対応できる汎用的な問題解決スキルを磨きたい
<安定性の重視>
- プロダクトの成否に左右されるリスクを避けたい
- 継続的な案件受注による安定した雇用環境を重視する
<短期集中型の働き方>
- 一つのプロジェクトが終われば次のプロジェクトに移る
- 短期集中型の働き方に適性がある
<クライアントワークのやりがい>
- クライアントの課題を解決することに喜びを見出せる
- 感謝されることにやりがいを感じる
転職時に見極めるべき優良企業の共通点
自社開発企業、受託開発企業を問わず、優良企業には共通する特徴があります。転職時には以下の点を確認すべきです。
開発環境の整備
- 使用している技術スタック
- 開発ツール
- コードレビューの文化
- テスト自動化の導入状況
技術的負債を放置せず、継続的に改善する姿勢がある企業は、エンジニアの成長環境として優れています。
開発体制の明確性
- チームの構成
- 役割分担
- 意思決定のプロセスが明確であるか
- エンジニアの意見が尊重される文化があるか
公正な評価制度
- 年功序列ではなく、スキルや成果に基づいた公正な評価制度
- キャリアパスが明確に示されているか
技術投資への姿勢
- 学習機会の提供(勉強会、カンファレンス参加支援など)
- 働き方の柔軟性(リモートワーク、フレックスタイム制など)
これらの情報は、企業の採用ページ、技術ブログ、社員のSNS発信、口コミサイトなどから収集できます。面接時にも積極的に質問することが重要です。
6. よくある質問|受託開発と自社開発に関する疑問を解消
エンジニアから頻繁に寄せられる質問とその回答を提示します。
Q:未経験から自社開発企業に転職できますか?
結論から言えば、難易度は高いですが不可能ではありません。
特に、社外向けサービスを展開する人気の自社開発企業は、即戦力を求める傾向が強く、実務経験のないエンジニアの採用ハードルは非常に高いです。
ただし、以下の戦略を取ることで、可能性を高めることができます。
■ポートフォリオの充実
- 個人開発やOSS活動を通じて、実際に動くプロダクトを作成する
- GitHubなどで公開する
- コードの品質、設計思想、技術選定の理由を明確に説明できるようにする
■技術スタックの一致
- 志望する企業が使用している技術を学習する
- その技術を使ったポートフォリオを作成する
■スタートアップを狙う
- 大手企業よりも、立ち上げ期のスタートアップの方が、ポテンシャル採用を行う可能性が高い
■王道ルート
- 最も現実的な戦略は、受託開発企業で2~3年の実務経験を積んだ後に、自社開発企業へ転職すること
Q:受託開発は本当に「きつい」のですか?
「受託開発はきつい」という言説には、一定の根拠があります。
クライアントの都合による仕様変更、厳格な納期、度重なる修正依頼など、クライアントワークならではの厳しさは存在します。
ただし、「きつさ」は企業や案件によって大きく異なります。優良な受託開発企業は、過度な長時間労働を避け、エンジニアの働きやすさを重視しています。
また、大手クライアントとの長期的な信頼関係を築いている企業では、無理な要求を断ることも可能です。
厚生労働省「毎月勤労統計調査(令和5年)」によれば、情報通信業の月間平均残業時間は約14時間と、全産業平均の約13時間とほぼ同水準であり、業界全体として特別に労働時間が長いわけではありません。
ただし、企業や時期によって大きく変動するため、個別の企業の労働環境を確認することが重要です。
逆に、自社開発企業でも、プロダクトのローンチ前や重大なバグ対応時には、激務となるケースがあります。
「受託開発=きつい、自社開発=楽」という単純な図式は成立しません。重要なのは、企業選びです。
Q:自社開発と受託開発、どちらが技術的に成長できますか?
この質問に対する答えは、「成長」をどう定義するかによって異なります。
スキルの幅(多様性) を重視するなら
受託開発が有利です。多様な業界、クライアント、技術スタックに触れることで、広範な知識と経験を積むことができます。
スキルの深さ(専門性) を重視するなら
自社開発が有利です。特定のプロダクト、技術領域に深くコミットすることで、その分野における高度な専門性を獲得できます。
また、成長の最適なタイミングもキャリアステージによって異なります。若手のうちは受託開発で幅広い基礎を築き、中堅以降は自社開発で専門性を深めるという戦略が、多くのエンジニアにとって有効です。
Q:受託開発から自社開発への転職は有利ですか?
受託開発での実務経験は、自社開発企業への転職において十分なアドバンテージとなります。
特に、以下のスキルや経験は高く評価されます。
■多様なプロジェクト経験
- 様々な業界や技術に触れた経験は、新しい環境への適応力の高さを示す
■問題解決能力
- クライアントの複雑な要件を実現してきた経験は、プロダクト開発における課題解決にも活かせる
■コミュニケーション能力
- クライアントとの折衝経験は、社内の他部門やユーザーとのコミュニケーションにおいて強みとなる
転職のベストタイミングは、一般的に3~5年の実務経験を積んだ後です。
この段階で、明確なキャリアビジョンと、志望企業で活かせる具体的なスキルをアピールできれば、転職成功の可能性は高いです。
7. 受託開発と自社開発の違いを理解して最適なキャリアを選択しよう

受託開発と自社開発に絶対的な優劣はありません。重要なのは、自分のキャリア目標、現在のステージ、価値観との適合性です。
若手は受託開発で幅広い経験を積み、中堅以降は自社開発で専門性を深めるのが王道パターンですが、最終的には「どんなエンジニアになりたいか」というビジョンに基づいて判断すべきです。本記事で紹介した比較表や選び方を参考に、データと事実に基づいた冷静な判断で、理想のキャリアを実現してください。