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日本語能力試験(JLPT)とは?N1-N5レベルの特徴を紹介

日本語能力試験(JLPT)は外国籍ITエンジニアのキャリアに大きな影響を与えるもので、ビザ取得、年収アップ、職域の拡大にまで関わるものとなります。

本記事では、日本語能力試験(JLPT)のN1~N5の各レベルの特徴から、IT業界での評価、実践的な学習法まで、エンジニアが知るべきJLPT活用法を網羅してご紹介します。

この記事を読んでわかること
  • IT職種別に必要なJLPTレベルと合格による年収・キャリアへの具体的影響について
  • エンジニアのプログラミングスキルを活かした効率的なJLPT学習方法について
  • 試験合格後に直面する実務日本語とのギャップを埋める実践的テクニックについて

1.日本語能力試験(JLPT)の基本情報

日本語能力試験(JLPT)の基本情報

外国籍ITエンジニアにとって、日本語能力試験(JLPT)は単なる語学試験以上の価値があります。

転職、昇進、ビザ取得などさまざまな場面でアドバンテージをもたらすこの資格について、基本情報から実践的な活用法まで解説します。

JLPTとは?外国籍ITエンジニアが知るべき目的と概要

日本語能力試験(JLPT)は、日本語を母国語としない人を対象とした、世界最大規模の日本語能力測定・認定試験です。

国際交流基金と日本国際教育支援協会の共催で、年2回(7月と12月)実施されています。1984年の開始当初は7,000人程度だった受験者数も、2022年12月時点では43万人以上に伸びています。

外国籍ITエンジニアにとって重要な理由は、就職や転職、キャリアアップ、在留資格取得において有利に働く点です。

N1~N5の5段階(N1が最高難度)で評価され、「言語知識」「読解」「聴解」の3科目で構成されています。

IT業界では一般的にN2以上が求められることが多いのですが、英語でのコミュニケーションが可能な職場では必ずしも高いレベルが必須ではないケースもあります。

JLPTの国際的な認知度とIT業界での評価

JLPTは国際的に最も認知された日本語能力証明試験であり、2025年からはCEFRレベル表示も追加予定です。

IT業界での評価は企業や職種によって異なります。外資系IT企業では日本語能力より技術力が重視される傾向がある一方、日系IT企業では特に顧客対応が必要な場合にN2以上が求められることが多いです。

IT分野別でも求められるレベルは異なる

  • コミュニケーションがあまり重要でない役割ではN3レベルでも十分な場合がある
  • コンサルティング関連では高い日本語能力が必要(特に管理職やマーケティング、セールス職ではN1レベルが求められるケースが多い)
  • チームでリーダーシップを発揮するポジションでは高度な日本語コミュニケーション能力が重要視される

試験の実施機関と最新情報の入手方法

日本語能力試験は、国際交流基金と日本国際教育支援協会が共催で実施しています。試験は年2回(7月と12月の第一日曜日)開催されます。

最新情報は公式ウェブサイト(日本語英語版)や公式ガイドブック、「My JLPT」から入手可能です。

ITエンジニア向けには、テック系求人サイトのブログやIT系の日本語学習コミュニティも有用な情報源となります。オンライン学習リソースの活用も効果的、かつ効率的な学習に役立ちます。

2.日本語能力試験(JLPT)の5つのレベルとITエンジニアに必要なレベル

日本語能力試験(JLPT)の5つのレベルとITエンジニアに必要なレベル

日本語能力試験(JLPT)のN1からN5までの各レベルは、IT業界での役割や職種によって求められる日本語能力のレベルが異なります。

ここでは各レベルの特徴とIT業界での活用シーンを解説します。

N1:技術ドキュメントや会議も理解できる上級レベル

N1は最も難易度の高いレベルで、幅広い場面で使われる日本語を理解することができます。

抽象的な概念を含む文章や論理的に複雑な内容、ビジネス日本語や敬語表現も十分に理解できるレベルです。

約2,000字の漢字と10,000語以上の語彙力が必要となります。

ITエンジニアとしての<N1>

技術仕様書やAPIドキュメントの読解・作成、チーム内での技術ディスカッション、クライアント対応、プロジェクトマネージャーやテックリードとしての活躍、技術プレゼンテーションなどの場面で活用できます。

N1レベルに達すると日本企業でのキャリアアップに大きなアドバンテージとなりますが、日本人でも満点を取るのが難しいレベルですので、完璧でなくても技術力と組み合わせれば十分評価されます。

N2:チーム内コミュニケーションに必要な準上級レベル

N2は「ビジネスレベル」と呼ばれることが多く、日常会話だけでなくビジネスシーンでも一定程度のコミュニケーションが可能なレベルです。

やや複雑な文章や抽象的内容も理解でき、約1,000字の漢字と6,000語程度の語彙力が必要です。

N1とN2の間には大きな差があり、N3からのステップアップには相当の学習が必要です。

ITエンジニアとしての<N2>

基本的な技術ミーティングへの参加、コードレビューやプルリクエストの対応、英語と日本語が混在する開発環境での業務、顧客対応などの場面で活用できます。

多くの日本企業ではN2レベルが「ビジネスで使える日本語力」の基準とされ、高度人材ポイント制においてもN2取得は10点が加点されるため、在留資格取得に有利に働きます。

N3:基本的な業務指示が理解できる中級レベル

N3は中級レベルで、日常的な会話でよく使われる日本語をある程度理解できるレベルです。

ややゆっくりとした会話であれば理解でき、約650字の漢字と3,750語程度の語彙を習得します。

N4からN3へのステップアップでは語彙数と漢字数がほぼ倍増するため、大きな努力が必要です。

ITエンジニアとしての<N3>

基本的な業務指示の理解、簡単な技術ミーティングへの参加、日本語と英語のハイブリッド環境での開発作業などが可能です。

特にコミュニケーションがあまり重要でない技術職(製品エンジニアリング、組込みシステムなど)では十分な場合もあります。

近年ではN3レベルでも採用するIT企業が増えており、特に技術力が高ければ英語環境での採用可能性も十分あります。

N4:日常会話と基本的なIT用語が理解できるレベル

N4は初級の後半レベルで、基本的な日本語を理解することができます。

ゆっくりとした会話であれば日常的な内容を理解でき、約300字の漢字と1,500語程度の語彙を習得します。

ITエンジニアとしての<N4>

英語が主要言語の職場での補助的なコミュニケーション、簡単な挨拶や日常会話、基本的なIT用語(多くはカタカナ語で理解しやすい)の理解などが可能です。

日本語のみの環境での業務は難しいですが、英語環境や国際的なチームがある企業では、技術力次第で採用される可能性があります。

また、在留資格「特定技能」取得には、N4以上の認定が必要条件の1つとなっています。

N5:初歩的な挨拶と基本的な単語が理解できるレベル

N5は最も基礎的なレベルで、ゆっくり話されれば日常生活の基本的な表現を理解できます。

約100字の漢字と800語程度の語彙を習得し、ひらがな、カタカナ、基本的な漢字の読み書きができます。

ITエンジニアとしての<N5>

日本語環境での勤務は困難ですが、学習意欲の証明になります。英語が公用語の国際的な企業での補助的な役割や、主に英語でのコミュニケーションが前提となる職場では活動可能です。

長期的なキャリア形成を考える場合は、少なくともN3、できればN2レベルまで日本語能力を高めることが推奨されます。

3.日本語能力試験(JLPT)の構成とITエンジニア向け対策方法

日本語能力試験(JLPT)の構成とITエンジニア向け対策方法

日本語能力試験(JLPT)の試験は「言語知識」「読解」「聴解」の3科目から構成されています。

IT業界の特性を活かした効率的な試験対策方法を理解することで、合格への近道となります。

言語知識(文字・語彙・文法):IT専門用語も含めた対策

言語知識のセクションで問われること

  1. 漢字の読み方
  2. 語彙の意味・用法
  3. 文脈に合った適切な単語の選択
  4. 文法形式 など
ITエンジニア向けの対策

プログラミング言語や技術用語の日本語表現を整理したIT関連の専門用語集の作成が効果的です。

Ankiなどのフラッシュカードアプリを使ったIT用語の単語帳作成や、プログラミングスキルを活かした学習管理プログラムの作成も有効です。

IT業界特有の用語は多くがカタカナ英語として使われるため比較的理解しやすい利点がありますが、開発プロセスや業務連絡で使われる表現(「仕様書」「納期」「改修」など)は別途学習が必要です。

自分の専門分野に関連する単語から優先的に覚えることで効率的に学習を進められます。

読解:技術文書の読解力を高める方法

読解セクションでは、さまざまな文章を読んで内容を理解する能力が試されます。

ITエンジニア向けの対策

Wikiの日本語版、オープンソースプロジェクトのドキュメントなど、技術関連の日本語文書を読む習慣をつけることが効果的です。

IT業界のニュースサイトを定期的にチェックし、時間を決めて読む練習や、日本語で書かれたコードコメントの理解など、実務に近い形での読解練習が効果的です。

毎日少しずつでも日本語の技術文書に触れる習慣をつけることが大切です。自分の専門分野の文書であれば内容の予測がしやすく理解が進みやすいというメリットもあります。

試験では限られた時間内に多くの文章を読む必要があるため、素早く重要なポイントを見つける練習も重要です。

聴解:オンライン会議や技術プレゼンの理解力を磨く

聴解セクションでは、日本語の会話や説明を聞いて内容を理解する能力が試されます。

特にリモートワークが増加した現代のIT業界では、オンライン会議やビデオ通話での日本語コミュニケーション能力が重要になっています。

効果的な対策

YouTubeの日本語プログラミング講座や技術カンファレンスの日本語セッション、テック系ポッドキャストを活用した練習が有効です。

また、オンライン勉強会への参加や日本人エンジニアとのペアプログラミング、開発ミーティングを想定した会話練習なども実践的です。

実際のIT業務で使われる表現(「デプロイが完了しました」「このPRをレビューお願いします」など)に慣れておくことが大切です。

また、日本人特有の曖昧な表現(「ちょっと難しいかもしれません」=「それは無理です」など)についても理解しておくと実務でのコミュニケーションがスムーズになります。

エンジニア向けJLPT学習と並行できるコーディング練習法

ITエンジニアの強みは、プログラミングスキルを日本語学習にも活用できる点です。

日本語学習アプリの自作開発、日本語の変数名・関数名を持つコードの解読、技術ブログの翻訳プロジェクト、日本語UIの開発など、実務に近い形で日本語を使うことで記憶の定着率が高まります。

通勤時間に聴解練習、休憩時間に単語学習アプリの使用、夜にはプログラミング課題を日本語で解くなど、時間を効率的に活用することが可能です。

学習の成果をGitHubなどで公開することで、日本企業へのアピールにもなります。日本語で書かれた技術ブログなどは、日本語能力と技術力を同時に示す強力なポートフォリオとなるでしょう。

4.日本のIT業界で働く外国籍エンジニアと日本語能力試験(JLPT)

日本のIT業界で働く外国籍エンジニアと日本語能力試験(JLPT)

日本のIT業界は外国籍エンジニアの需要が高まっていますが、職種や企業タイプによって求められる日本語レベルは異なります。

効果的なキャリア戦略を立てるためには、この違いを理解することが重要です。

各職種(開発・インフラ・AI/ML等)に求められる日本語レベル

IT業界の職種ごとに求められる日本語レベルは異なります。

バックエンド開発者

N3~N2レベルで、技術仕様書の読解や開発チームとのコミュニケーション、コードレビューなどに日本語が必要ですが、技術力が高ければN3レベルでも採用されることが多いです。

フロントエンド開発者

バックエンド開発者と同様にN3~N2レベルが求められますが、UI/UXに関わる仕事では日本語理解がより重要になります。

インフラエンジニア

N2~N1レベルが求められ、システム障害時の緊急対応や他部署とのコミュニケーションで高い日本語能力が必要です。

AI/MLエンジニア

N3~N2レベルで、データ解釈や分析結果の説明などに日本語を使いますが、研究開発領域では英語環境が整っていることも多いです。

QAエンジニア

N2~N1レベルで、詳細なバグレポート作成やユーザーシナリオの検証に高い日本語能力が求められます。

プロジェクトマネージャー

N1レベルが基本で、ステークホルダーとの折衝やチームマネジメントなど多岐にわたるコミュニケーションが必要です。

日系IT企業vs外資系IT企業:求められる日本語能力の違い

日系IT企業と外資系IT企業では、文化や業務環境の違いから求められる日本語能力も異なります。

日系IT企業

社内公用語が主に日本語で、一般的にN2以上のレベルが求められます。日常的な業務コミュニケーション、会議、社内文書、顧客対応などで日本語が必要です。メリットとしては日本語環境で言語力が向上し、日本のビジネス文化を深く学べる点ですが、言語の壁が昇進に影響したり、細かいニュアンスの理解が求められる点は考慮が必要です。

外資系IT企業

社内公用語が英語またはバイリンガル環境であることが多く、N3程度でも可能なケースが多いです。日本人クライアントとの対応や日本市場向けのプロダクト開発などで日本語が必要になります。英語環境でも活躍でき、グローバルなキャリアパスが描きやすい利点がありますが、日本語力向上のチャンスが限られる場合もあります。

最近は日系IT企業でも国際化に伴い英語環境を整備する企業が増え、「英語OK」の求人も増加傾向にあります。

企業選びでは公用語だけでなく、実際の業務でどの程度日本語が必要かを見極めることが大切です。

リモートワーク時代に必要な日本語コミュニケーションスキル

リモートワークの一般化に伴い、コミュニケーションのあり方も変化しています。

画面越しのやり取りでは、より明確な日本語コミュニケーション能力が求められます。

チャットやメールでの簡潔かつ正確な表現、オンライン会議での聴解・発話能力、議事録や報告書などの非同期コミュニケーションスキルが重要です。

効果的な対策としては、会議前に議題や関連用語を事前に確認する、専門用語の日英対訳リストを作成しておく、スクリーンショットや図解を活用するなどの工夫が有効です。

リモート環境では「空気を読む」ことが難しく、明示的なコミュニケーションがより重要になります。

JLPTの勉強で培われる「読解力」「聴解力」はリモートワーク環境でのコミュニケーションにも直接役立ちます。

特にN2以上のレベルではニュアンスの理解や敬語表現なども学べるため、オンラインでの円滑なコミュニケーションに大きく貢献します。

テックリードやマネージャーを目指す際に必要な日本語レベル

上位ポジションを目指す場合、より高度な日本語能力が求められます。

テックリード

N2~N1レベルが推奨され、技術的な議論をリードする能力、コードレビューでの建設的なフィードバック、アーキテクチャ設計の説明などの場面で高い日本語能力が必要です。

特に技術選定の意思決定プロセスやチーム間の調整場面で重要となります。

マネージャー

N1レベルが推奨され、プロジェクト全体の指揮、チームメンバーの評価、経営層への報告などの場面で高度な日本語コミュニケーション能力が必須です。

人事評価面談や予算交渉、危機管理対応などの場面で特に重要となります。

キャリアアップのために

技術用語だけでなくマネジメント用語も学び、企画書や提案書の作成スキルを高め、交渉・説得のスキルを磨く必要があります。

単に日本語を話せるだけでなく、文化的背景を含めた深い理解が重要です。

5.日本語能力試験(JLPT)取得による外国籍ITエンジニアのキャリアメリット

日本語能力試験(JLPT)取得による外国籍ITエンジニアのキャリアメリット

JLPTの資格取得は外国籍ITエンジニアのキャリア形成に多くのメリットをもたらします。

ビザ取得から給与アップまで、具体的なメリットを理解しましょう。

就労ビザと高度専門職ビザ取得におけるJLPTの影響力

JLPTの資格は在留資格取得において重要な役割を果たします。

「技術・人文知識・国際業務」ビザでは必須ではないものの、面接時の日本語能力審査の補助となり、特に学歴が専攻と異なる場合や小規模企業への就職では、N2以上があると審査が通りやすくなります。

「特定技能」ビザでは、N4以上または日本語基礎テスト(JFT)の合格が必要条件となります。

「高度専門職」ビザでは、最短で永住権を取得できる高度人材ポイント制においてJLPTスコアが加点対象となり、日本社会への適応能力として評価されます。

IT業界では技術力が高ければ日本語能力が低くても採用されるケースもありますが、長期的なキャリア形成を視野に入れる場合、JLPTの資格取得は大きなアドバンテージとなります。

参考:外務省:ビザ

高度人材ポイント制度でJLPT資格が与えるポイント

「高度専門職」の在留資格は「高度人材ポイント制」によって評価され、合計70点以上で取得可能です。

JLPTによるポイント加算はN1取得で15ポイント、N2取得で10ポイント、N3以下はポイント加算されません。

ITエンジニアは学歴、職歴、年収などで多くのポイントを獲得できますが、例えば学士(10ポイント)、職歴5年(10ポイント)、年収500万円(15ポイント)、30歳未満(15ポイント)の場合、N1の15ポイントがなければ合格ラインの70点に届きません。

このように、JLPTの資格は「あると便利」というレベルを超えて、ビザ取得の決定的な要素となりうるのです。

参考:法務省:高度人材ポイント制の加点対象

JLPTスコア別の平均年収比較:N1/N2取得の経済的メリット

日本語能力はITエンジニアの給与にも大きな影響を与えます。

経験年数おおよその平均年収例
プログラミング経験3-5年の中堅エンジニアN1取得者 600~800万円
N2取得者 500~650万円
N3取得者 400~550万円
N4/N5取得者 350~450万円
日本語能力なし 300~400万円

N1またはN2レベルがあると、職種選択の幅が広がりより高給なポジションにアクセス可能になるほか、マネジメントポジションへの昇進チャンスが増加し、顧客折衝が必要な高収入のコンサルティングポジションにも応募できます。

また、日系大手企業での正社員採用の可能性が高まり、年次昇給のペースも速くなる傾向があります。

特に注目すべきは、N1レベルによる「キャリアの天井の突破」です。

日本語能力の不足がキャリアの壁となっている多くの外国籍エンジニアも、N1レベルに達することでマネジメントや上級ポジションへの道が開け、年収の上限も大きく引き上げられる可能性があります。

成功事例:JLPTがキャリアチェンジを助けた外国籍エンジニア

実際にJLPT取得がキャリアアップにつながった事例を見てみましょう。

下記の事例に共通するのは、日本語能力の向上が単なるコミュニケーションツールの獲得ではなく、新たなキャリアの可能性を開く鍵となったという点です。

技術力という武器に高い日本語能力が加わることで、その価値が相乗的に高まっています。

インド人バックエンド開発者の例

N3からN1への向上により、IT派遣会社からの転職、チームリーダーへの昇進を経て、プロジェクトマネージャーとして日本人チームを統括するポジションに就き、年収が450万円から820万円(約1.8倍)に上昇しました。

中国人フロントエンド開発者の例

N2からN1に向上することで、外資系IT企業の日本支社で日本市場向け製品の開発リードに抜擢され、最終的にはグローバルプロダクトマネージャーに昇進し、年収が550万円から750万円(約1.4倍)に増加しました。

フランス人セキュリティエンジニアの例

N2取得後に日本企業向けセキュリティコンサルタントとして独立し、日本語での講演やセミナー、技術記事執筆などを通じて年収を600万円から1,000万円以上(約1.7倍)に増やしています。

6.日本と海外からの日本語能力試験(JLPT)受験手続き

日本と海外からの日本語能力試験(JLPT)受験手続き

JLPTを受験するためには、適切な時期に正しい手続きを行う必要があります。

日本国内と海外での申込方法の違いや、オンライン申込の具体的な手順を理解しましょう。

2025年度の試験スケジュールと申込期間

2025年度のJLPT実施スケジュール

第1回試験は7月6日(日)に実施され、日本国内の申込期間は3月上旬~4月中旬頃、結果通知は8月下旬頃。

第2回試験は12月7日(日)に実施され、申込期間は8月下旬~9月下旬頃、結果通知は2026年1月下旬頃。

海外での申込期間は各国・地域の実施機関によって異なりますので、事前に確認が必要です。

申込時に選択したレベルは変更できず、同時に複数のレベルを受験することもできません。自分の実力に合ったレベルを選択することが重要ですが、前回不合格でも次回はより上位のレベルを選択することは可能です。

ITエンジニアの場合、業務で必要な日本語レベルを考慮して選択することをお勧めします。現在N3レベルであっても、転職やキャリアアップを視野に入れている場合はN2に挑戦する価値があります。

海外在住者と日本在住者の申込方法の違い

日本在住者の申込方法
  1. 日本語能力試験公式サイトでMY JLPTのアカウントを作成
  2. 個人情報と顔写真をアップロードする
  3. インターネットまたは郵便局窓口での申込方法を選択し、受験料(N1~N3は6,500円、N4~N5は5,500円)を支払う
  4. 試験の約2週間前に受験票が郵送で届く
海外在住者の申し込み方法
  1. 公式サイトで居住国の実施機関を確認し、各機関の指示に従って申込を行う
  2. 申込方法は国によって異なり、受験料も国によって違いがある
  3. 多くの場合、試験日の1~2週間前に受験票が発行される

海外在住のITエンジニアがリモートワークをしながら日本での就職を目指す場合は、計画的な受験準備が必要です。特に試験会場が限られている国では、早めの申込と交通手段の確保が重要です。

オンライン申込の詳細手順と支払い方法

日本国内からのオンライン申込の具体的な手順

まず公式サイトからMY JLPTアカウントを作成し、個人情報(氏名、生年月日、国籍、住所など)を登録します。次に顔写真(縦4cm×横3cm、JPEG形式、4MB以内、3か月以内に撮影)をアップロードし、試験レベルと受験希望地域を選択します。

支払い方法

クレジットカード決済(VISA、MasterCardなど)またはコンビニエンスストア払いから選べます。コンビニ払いの場合は支払い番号を発行し、指定期間内に店頭で支払う必要があります。支払い完了後、申込完了メールが届き、MY JLPTマイページで申込状況が確認できます。

受験後の結果確認と証明書の国際的な活用法

JLPT受験後の結果確認方法と、証明書の活用法について解説します。

結果通知

日本国内では試験から約1.5~2ヶ月後に郵送され、海外では各国の実施機関によって異なりますが、2~3ヶ月後が一般的です。日本国内ではMY JLPTから試験約1.5ヶ月後にオンラインでも確認可能です。

合格証明書には氏名、認定レベル、得点区分別の得点と基準点などが記載され、有効期限はありません。

この証明書の活用法としては、レジュメやCVへの記載、LinkedIn等のプロフィール追加、就労ビザや高度人材ポイント制度の申請資料、社内異動の希望時など様々な場面があります。

IT業界特有の活用シーン

プロダクトローカライゼーションプロジェクトへの参加、日本市場向けソフトウェア開発チームへの配属、日本企業とのオフショア開発プロジェクトのブリッジSEなどがあります。

JLPTは「読む」「聞く」能力のみを測定し「話す」「書く」能力は直接測定しないため、面接などで実際のコミュニケーション能力も評価されることを理解しておくことが大切です。

7.ITエンジニアのための日本語能力試験(JLPT)合格のポイント

ITエンジニアのためのJLPT合格戦略

ITエンジニアは論理的思考力や問題解決能力など、日本語学習にも活かせる強みを持っています。

これらの強みを活かした効率的な学習方法で、JLPT合格を目指しましょう。

プログラミングと並行して学べる効率的な学習プラン

プログラミングと日本語学習には、構文規則やパターン認識など共通する要素が多くあります。

これを活かした学習アプローチとして、文法や語彙をモジュール(関数)としてとらえたり、文法パターンをプログラミング言語の構造と同様に理解する方法があります。

また、スペースド・リピティションのようなプログラミング的概念を学習に応用することも効果的です。

レベル別の学習プラン

初級者(N5・N4)なら週5日・1日30分を基本に、平日は通勤時間に単語学習、寝る前に文法学習、週末は読解練習と模擬テストといった配分が効果的です。

中級者(N3)なら平日60分、上級者(N2・N1)なら平日90分を基本に、読解や聴解の時間を増やし、技術記事の翻訳や模擬試験にも時間を割くとよいでしょう。

日本語とプログラミングを併行するには、コードのコメントを日本語で書く、日本語インターフェースを実装する、日本語のプログラミングチュートリアルを見るなどの工夫が有効です。

エンジニア向けアプリ開発者が推薦する学習アプリとツール

効率的な学習のためには、適切なツール選びが重要です。

語彙・漢字学習ツール・オープンソースのフラッシュカードアプリ
Anki
・漢字学習特化型「WaniKani
・AI活用型「iKnow!」 など
文法・読解学習・「Bunpo
・「Todaii」など
聴解・会話学習・「Nihongo con Teppei」などのポッドキャスト
・言語交換アプリ「HelloTalk
・オンライン家庭教師プラットフォーム「italki」など

特にITエンジニア向けには「Qiita」のような技術情報共有サイト、プログラミング学習プラットフォーム「Progate」の日本語版、GitHub上の日本語リポジトリなどが実践的な学習リソースとなります。

技術英語から日本語への橋渡し:IT用語の対応表と覚え方

ITエンジニアが日本語を学ぶ際の強みは、すでに知っている英語の技術用語を活かせる点です。

多くの技術用語はカタカナ英語として使われるため理解しやすく、「サーバー」「データベース」「インターフェース」などの基本用語はすぐに習得できます。

一方で注意が必要なのは、「アプリ」「デジカメ」などの和製英語や、「繰り返し」(loop)、「条件分岐」(conditional branch)など日本語由来のIT用語です。

効率的な学習法としては、Web開発、プログラミング基礎、データベース、インフラ、開発プロセスなどカテゴリ別に用語をグループ化し、実際に使用されるコンテキストの中で覚えていくことが有効です。

また、自分の専門分野から優先的に覚え、Ankiなどを使って自作の対訳辞書を作成すると効率的です。技術知識という既存の強みを活かすことで、効率よくIT用語を習得することができるでしょう。

8.日本語能力試験(JLPT)と技術スキルの両立:先輩エンジニアのアドバイス

8.JLPTと技術スキルの両立:先輩エンジニアのアドバイス

実際にJLPT試験に合格し日本のIT業界で活躍している先輩エンジニアたちの体験から、技術と言語スキルの両立について学びましょう。

N2合格者の体験談:学習時間と実践的活用法

N2は多くの日本企業で「ビジネスレベル」と認識され、キャリア形成の重要な節目となります。

アメリカ出身のWebエンジニア、アレックスさんの例

N3取得後N2合格まで約10ヶ月、週16時間程度の学習で達成。

効果的だった学習法として、朝の通勤時間を聴解練習に、昼休みを日本人同僚との会話に、帰宅後の1時間を文法と読解に充てるという時間配分が挙げられています。

実践的活用法としては、Slackでの日本語読解、日本語での会議参加、技術ドキュメントの読解など、業務に直結する形で日本語を使っています。アレックスさんは「試験合格だけでなく実際の業務で使える日本語力を意識した」ことが成功の鍵だと語っています。

N1合格への道:技術ブログ執筆で磨く日本語能力

N1は最高レベルの日本語能力試験で、高度な読解力と語彙力が求められます。

また以下の例から、技術ブログ執筆は日本語学習だけでなくキャリア形成にも役立つ一石二鳥の取り組みであることがわかります。

自分の専門知識をアウトプットすることで技術的な信頼性を示しつつ、日本語能力も向上させることができるのです。

中国出身のシステムアーキテクト、チェンさんの例

N2取得後、N1合格まで約1年半かけ、技術ブログの執筆を通じて日本語能力を高めました。月1回のペースで技術ブログを日本語で書き、日本人エンジニアに添削してもらうことで、教科書では学べない「自然な日本語」の感覚を養いました。

アメリカ出身のセキュリティエンジニア、サラさんの例

英語と日本語のバイリンガルブログを運営し、最初は英語で書いたものを自分で日本語に翻訳する方式で始め、徐々に日本語で直接思考・執筆するトレーニングへと発展させました。専門分野に絞ったブログを書くことで必要な語彙を効率的に習得し、読者とのやり取りも学びになったと語っています。

日本語でのコードレビューとドキュメント作成のコツ

日本のIT企業ではコードレビューやドキュメント作成を日本語で行うことが多いです。

いくつかのコツやパターンを理解し、実際の業務で繰り返し使うことで徐々に自然な日本語でのコミュニケーションが可能になります。

特に初めはテンプレートを活用し、徐々に自分の表現を増やしていくアプローチが効果的です。

コードレビューでのポイント

「この部分はパフォーマンスの観点から改善の余地があります」「命名規則を統一したほうが良いと思います」といった定型表現を覚えておくと便利です。

指摘する際は直接的な表現を避け、「〜ではないでしょうか」「〜していただけますか」などの婉曲表現や敬語を活用します。

日本のコードレビュー文化では技術面だけでなくチームの和も重視され、「サンドイッチ方式」(褒める→改善点を指摘→褒める)が一般的です。

公開の場での強い批判は避け、レビューコメントへの返信も丁寧に行うのがマナーです。

技術ドキュメント作成

「はじめに」「目的」「前提条件」「手順」「注意点」といった構成が一般的で、文末は「です・ます調」で統一します。

受動態や謙譲表現が多用され、「したがって」「しかし」「なお」「例えば」といった接続表現も使いこなせると文書の質が向上します。

9.外国籍ITエンジニアからよく寄せられる日本語能力試験(JLPT)関連の質問

9.外国籍ITエンジニアからよく寄せられるJLPT関連の質問

JLPT試験に関する外国籍ITエンジニアの疑問に答え、より効果的な学習とキャリア形成の参考にしましょう。

JLPTなしでも日本のIT企業に就職できる?

「JLPTの資格がなくても就職できるか」

基本的には資格がなくても就職は可能ですが、選択肢は限定的となります。

英語が公用語の外資系IT企業や国際的なスタートアップが主な選択肢となり、技術力が極めて高い場合は日本語能力が低くても採用されるケースもあります。

企業タイプ別

外資系IT企業は技術力重視の傾向があり、大手日系IT企業は基本的にN2以上が求められることが多く、スタートアップは創業者や社風により柔軟性があり、SIerは顧客対応が多いため高い日本語能力(N2~N1)が求められることが多いです。

職種別

バックエンドエンジニアは比較的日本語要件が緩く、フロントエンドエンジニアはUIに関わるため日本語理解が重要、インフラエンジニアは緊急対応があるためN2以上が基本、プロジェクトマネージャーは高度な日本語力が必須です。

資格なしで就職するためには

専門性の高い技術スタックの習得やGitHubでのコントリビューションなど技術力のアピール強化、英語環境の企業をターゲットにする、外国籍エンジニア向けコミュニティ参加などのネットワーキングが効果的です。長期的なキャリア形成を考えれば、少なくともN3、できればN2レベルの取得を目指すことが推奨されます。

試験対策と実務日本語のギャップをどう埋めるか?

JLPTに合格しても実際の職場での日本語とのギャップに悩むことは少なくありません。

主に感じられるギャップの例
  • 試験では基本形が中心だが実務では複雑な敬語表現が多用される
  • IT関連の専門用語や業界特有の略語の多さ、
  • 実際の会話のスピード感や方言の違い
  • 「検討します」などの曖昧表現
  • 実務文書作成スキルの必要性 など

IT業界特有の課題としては、デグレ(regression)、アサイン(assign)などの和製英語、チャットツールでの独特の表現、開発現場特有のコミュニケーションスタイルなどが挙げられます。

ギャップを埋めるためには

技術カンファレンスの動画を活用したシャドーイング、オープンソースプロジェクトの日本語ドキュメント読解、日本語ペアプログラミングセッション参加、日本人エンジニアとの言語交換などの方法が効果的です。

特に重要なのは実際の業務に近い環境で日本語を使う機会を意識的に作ることで、たとえ文法的に完璧でなくても積極的に日本語で発信する姿勢が大切です。

10.日本語能力試験(JLPT)を攻略して外国籍エンジニアとして活躍する

10.日本語能力試験(JLPT)を攻略して外国籍エンジニアとして活躍する

日本語能力試験(JLPT)はITエンジニアのキャリア形成において強力な武器となります。

各レベルに応じた職域の拡大や年収アップが期待できるだけでなく、高度人材ポイント制でのビザ取得にも有利に働きます。

技術力と日本語能力を両立させることで、バイリンガルエンジニアとしての市場価値は大きく高まるでしょう。

日本でのIT人材需要が高まる中、JLPT資格はグローバル人材としての強みを示す重要な指標となります。

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