夜勤や障害対応の負担、単純作業の繰り返し、将来への不安など、インフラエンジニアを辞めたいと感じる理由は様々です。
しかし感情的に辞める前に、客観的なデータに基づいて現状を整理し、現職での改善か転職かを冷静に判断することが重要です。
この記事では、辞めたい理由の整理から具体的な対処法まで、後悔しない選択をするための判断基準を解説します。
- インフラエンジニアが辞めたいと感じる主な理由とデータに基づく実態について
- 辞める前に再確認すべきメリットと現職で改善する具体的な方法について
- 後悔しない転職を実現するための判断基準と具体的なステップについて
1. インフラエンジニアを辞めたいと感じる7つの理由
インフラエンジニアを辞めたい7つの理由
夜勤・休日・オンコール
障害対応プレッシャー
単純作業・ルーティン
終わらない学習
キャリア不安・陳腐化
業務の属人化・責任
見合わない給与
インフラエンジニアが「辞めたい」と感じる理由は多岐にわたりますが、その多くは職種特有の業務環境や責任の重さに起因しています。
ここでは、実際に多くのインフラエンジニアが直面している7つの代表的な理由を、データとともに解説します。
夜勤・休日出勤・オンコール対応の負担が大きい
インフラエンジニアの業務で最も負担が大きいとされるのが、24時間365日体制での運用保守業務です。
企業のシステムは止めることができないため、夜間や休日のメンテナンス作業、突発的な障害発生時のオンコール対応が求められます。
この勤務体制は生活リズムを大きく乱します。日勤と夜勤を繰り返すシフト制では、睡眠の質が低下し、慢性的な疲労感や健康への影響が懸念されます。
家族や友人との予定も合わせにくく、プライベートの時間を確保することが困難になります。
ITエンジニアの年間総労働時間は1,955時間、時間外労働は191時間となっており、業界全体として長時間労働の傾向が見られます。
障害対応のプレッシャーとストレスが重い
システム障害が発生すると、事業全体に影響を及ぼすため、インフラエンジニアには迅速かつ正確な対応が求められます。
障害の原因特定から復旧までの間、関係各所からの問い合わせ対応や報告業務も並行して行う必要があり、極度の緊張状態が続きます。
「ミスが許されない」という精神的プレッシャーは、日々の業務にも影響します。小さな設定ミスが大規模障害につながる可能性があるため、常に高い集中力を維持しなければなりません。
この緊張感が長期間続くことで、精神的な疲弊を感じるエンジニアは少なくありません。
単純作業や運用・保守業務ばかりでやりがいを感じられない
インフラエンジニアの業務は、大きく「設計・構築」という上流工程と、「運用・保守」という下流工程に分かれます。
しかし、特に経験の浅いエンジニアや中小企業で働くエンジニアの場合、下流工程に偏った業務配分となることが多く、定型的な監視作業やバックアップ作業の繰り返しに終始してしまいます。
マニュアル通りの作業や、日々同じルーティンワークを繰り返すだけでは、技術的な挑戦や創造性を発揮する機会が限られます。
このような状況が続くと「自分の成長が止まっているのではないか」という不安から、キャリアの停滞感を強く感じるようになります。
覚えることが多く継続的な学習についていけない
インフラ技術の範囲は非常に広く、サーバー、ネットワーク、クラウド、セキュリティ、データベースなど、習得すべき知識が多岐にわたります。
さらに、これらの技術は日々進化しており、AWS、Azure、GCPといったクラウドサービスの新機能や、コンテナ技術、IaC(Infrastructure as Code)などの新しい概念も次々と登場します。
業務時間内で新技術を学ぶ機会が限られる中、自己学習の時間を確保することが大きな負担となります。
現役インフラエンジニアの約3人に1人(35.6%)がキャリアアップに意欲を持っているものの、その阻害要因として「時間がないから」が52.2%と最多となっています。
出典:ブレイバンステクノロジーズ「現役インフラエンジニアの業務・キャリア志向レベル調査」
スキルアップが実感できず将来のキャリアに不安を感じる
特定の企業の独自システムや、特定ベンダーの製品にのみ習熟している場合、そのスキルが他社でも通用するのかという不安を抱えることになります。
また、クラウド化や自動化の波により、従来の運用業務の一部が不要になりつつあり、「このままでは自分の仕事がなくなるのではないか」という危機感を持つエンジニアも増えています。
キャリアパスが明確に見えず、「5年後、10年後も同じ業務を続けているのだろうか」という将来への不安が、辞めたいという気持ちを強めています。
業務の属人化と責任の重さに疲弊する
インフラ業務は専門性が高く、「このシステムについては自分にしかわからない」という状況が生まれやすい特徴があります。
ドキュメント整備が不十分な環境では、属人化が進み、特定のエンジニアに業務が集中します。
結果として、休暇を取りにくくなり、常にオンコール対応可能な状態を求められるなど、一人への負担が過度に集中します。
この責任の重さとプレッシャーから、心身ともに疲弊してしまうケースが少なくありません。
業務量や専門性に見合わない給与水準
夜勤手当や休日出勤手当が支給されても、基本給が低いままでは総合的な収入は期待ほど上がりません。
また、同じIT業界内でも、開発エンジニアと比較してインフラエンジニアの給与水準が低いと感じるケースもあります。
エンジニアが転職を決めた理由の第1位は「収入アップのため」で42.4%、転職先に求めることも「給与や待遇の向上」が64.7%と最多でした。
専門性の高い業務を担当し、大きな責任を負っているにも関わらず、それに見合った給与が得られないという不満は、転職を決意する大きな要因となっています。
【データで見る】インフラエンジニアの「辞めたい」は一般的な悩み
インフラエンジニアが抱える「辞めたい」という感情は、決して特殊なものではありません。
ITエンジニアの約3人に1人(32.5%)が1年以内での転職を検討または予定しており、辞めたいという感情は決して珍しいものではありません。
また、働き方に関する調査では、フルリモートワークが認められなくなった場合、約4割のエンジニアが「迷わず転職・案件変更を検討する」と回答しており、働き方も大きな要素となっています。
これらのデータは、多くのインフラエンジニアが同様の悩みを抱えていることを示しており、自分だけが特別に辛い状況にあるわけではないことを理解することが重要です。
出典:doda「ITエンジニアの関心事とキャリアに関する調査」
シレルバ「エンジニアが望む働き方調査」
2. 辞める前に再確認すべきインフラエンジニアの5つのメリット

「辞めたい」という気持ちが強いときほど、ネガティブな面ばかりが目につきます。
しかし、感情的に退職を決断する前に、インフラエンジニアという職種が持つメリットを客観的に再評価することが重要です。
ここでは、長期的なキャリア視点で見た際の5つの有効なメリットを解説します。
IT人材不足により将来的な需要は極めて高い
インフラエンジニアは、全てのシステムの基盤を支える必須職種です。
どの業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、ITインフラの設計・構築・運用を担えるエンジニアの需要は高まり続けています。
経済産業省の調査によれば、IT人材は2030年には最大で約45万人不足すると予測されており、インフラエンジニアの需要は今後も高い水準で推移すると見込まれます。
この需要の高さは、転職市場において大きなアドバンテージとなります。
仮に現在の職場を離れたとしても、スキルと経験があれば次の職場を見つけやすい状況が続くと考えられます。
経験を積めば高収入を目指せる職種
現時点で給与に不満を感じていたとしても、インフラエンジニアは経験とスキルに応じて収入を大きく伸ばせる職種です。
特に、クラウド技術やセキュリティといった専門領域のスキルを身につけることで、年収800万円以上も十分に目指せます。
職種別の年収水準
サーバーエンジニアの平均年収は約454万円、ネットワークエンジニアは約446万円となっています。
一方、クラウドエンジニアになると約550万円〜800万円、セキュリティエンジニアでは約600万円〜900万円と、専門性を高めることで大幅な年収アップが可能です。
さらに、上流工程(設計・構築)の経験を積み、プロジェクトマネジメントスキルを習得すれば、より高い報酬水準の案件に携わることも可能です。
フリーランスとして独立すれば、月単価80万円〜100万円以上の高単価案件も視野に入ります。
多様なキャリアパスと転職のしやすさ
インフラエンジニアの経験は、IT業界内で幅広く活かすことができます。同じインフラ領域内でのステップアップだけでなく、関連する他の職種への転向も比較的スムーズです。
クラウドエンジニアとしてオンプレミスからクラウドへの移行を支援する専門家になる道や、SRE(Site Reliability Engineer)として開発と運用を橋渡しし、システムの信頼性向上を担う道があります。
また、インフラの知識を活かしたセキュリティエンジニアや、技術的知見を活かした経営課題の解決を支援するITコンサルタントへの転身も可能です。
さらに、技術理解を基盤とした大規模プロジェクトの統括を行うプロジェクトマネージャー、自社システムの企画・開発・運用を一貫して担当する社内SE、インフラ知識を持つ希少価値の高いWebエンジニアなど、キャリアの選択肢は多岐にわたります。
このように、インフラエンジニアの経験は「つぶしが利く」スキルであり、キャリアの選択肢が広い点は大きなメリットです。
大規模プロジェクトに携わり社会貢献を実感できる
インフラエンジニアは、金融、医療、公共交通、電力など、社会を支える重要なシステムの基盤構築に携わる機会があります。
数千人、数万人が利用するシステムを支えることで、自分の仕事が社会に与える影響の大きさを実感できます。
大規模プロジェクトでは、他社のエンジニアやベンダーとも協力し、最新技術に触れながら技術力を高めることができます。
プロジェクトが無事に稼働した際の達成感は、インフラエンジニアならではのやりがいです。
また、幅広い業界・企業と関わることで、ビジネス視点やドメイン知識も自然と身につき、エンジニアとしての市場価値がさらに高まります。
技術の幅広さとポータビリティの高さ
インフラエンジニアが扱う技術領域は、サーバー、ネットワーク、クラウド、セキュリティ、データベースなど、IT基盤全般に及びます。
この横断的な知識は、どの業界・企業でも活かせる汎用性の高いスキルです。
特定のプログラミング言語やフレームワークに依存する開発エンジニアと比べ、インフラエンジニアのスキルは「技術のベース」となるため、時代や流行に左右されにくい特徴があります。
オンプレミス環境で培った知識は、クラウド環境でも応用が利き、新しい技術への適応力も高まります。
また、インフラ技術を深く理解していることで、開発エンジニアとのコミュニケーションが円滑になり、DevOpsやSREといった現代的な開発体制においても大きな役割を担うことができます。
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3. 辞めたい理由別の改善策|現職で状況を変える方法
「辞めたい」を解決する改善策
カードをタップして改善策を見る
【悩み】
夜勤・オンコールの負担
【改善策】
上流工程(設計・構築)
へのシフトを目指す
【悩み】
単純作業でやりがいがない
【改善策】
クラウド・IaC・自動化
スキルを習得する
【悩み】
学習時間が足りない
【改善策】
学習の優先順位をつけ
社内制度を活用する
【悩み】
将来のキャリアが不安
【改善策】
上司と1on1を実施し
キャリアプランを明確化
転職という選択肢を検討する前に、現在の職場環境で改善できる可能性を探ることも大切です。
ここでは、主な「辞めたい理由」に対して、現職のまま状況を変えるための具体的な方法を提示します。
夜勤・オンコールの負担を減らすには上流工程へのシフトを目指す
夜勤や緊急対応の負担は、主に運用・保守フェーズに従事している場合に集中します。この負担を根本的に軽減するには、設計・構築といった上流工程へのシフトが有効です。
上司との1on1で、設計・構築プロジェクトへの参画希望を明確に伝えることから始めましょう。
社内の部署異動制度や配置転換の可能性を人事部に確認することも重要です。プロジェクトマネジメントやアーキテクチャ設計のスキルを自己学習で習得し、アピール材料とすることで、異動の可能性が高まります。
小規模でも良いので、新規構築案件への参加機会を積極的に求めることで、実績を作ることができます。
上流工程にシフトすることで、夜間の緊急対応頻度が減り、よりプランニング型の業務に従事できるようになります。
やりがいを感じるためにクラウド・IaC・自動化スキルを習得する
単純作業の繰り返しに飽きを感じている場合、最新技術の習得によって業務内容そのものを変革することができます。
特に、クラウドやIaC(Infrastructure as Code)、自動化技術は、従来の手作業を効率化し、より創造的な業務へとシフトできるポイントとなります。
AWS、Azure、GCPなどのクラウド資格取得(AWS Certified Solutions Architect等)を目指し、TerraformやAnsibleなどの自動化ツールの学習を進めましょう。
社内での新技術導入プロジェクトへの参画を提案したり、現在の運用作業を自動化するスクリプトを作成して提案したりすることで、社内での評価を高めることができます。
これらのスキルを習得し、社内で実践することで、評価が高まり、より挑戦的な業務を任される可能性が高まります。
効率的なスキルアップには学習時間の確保と優先順位付けが重要
「時間がない」という課題に対しては、学習の質と効率を高めることで対応できます。
業務時間内での学習機会を交渉するとともに、学習する内容の優先順位を明確にすることがポイントです。
業務時間内での学習機会を上司に交渉し、社内勉強会やオンライン研修の受講を提案しましょう。「広く浅く」ではなく「狭く深く」の学習戦略を採用し、特定技術を集中的に習得することで、効率的にスキルアップできます。
Udemy、Coursera等のオンライン学習プラットフォームを活用し、資格取得を目標とすることで学習のマイルストーンを設定できます。
企業によっては資格取得支援制度や研修費用の補助制度があるため、これらを積極的に活用することで、費用負担を軽減しながらスキルアップが可能です。
キャリアの不安には上司との定期的な1on1とキャリアプランの明確化を
将来への不安は、キャリアの道筋が見えないことから生じます。
この不安を解消するには、3年後、5年後の具体的なキャリアゴールを明文化し、それを上司や先輩エンジニアと共有することが有効です。
キャリアプラン明確化の手順
まず、3年後、5年後に「どのような技術を持ち、どのポジションで働いていたいか」を具体的に書き出しましょう。
次に、上司や先輩エンジニアに定期的にキャリア相談を行い、社内でのロールモデルを見つけます。社内のキャリアパス制度や等級制度を確認し、昇進・昇格の条件を把握することも必要です。
そして、目標達成のために必要なスキルや経験を逆算し、行動計画を立てます。
定期的な1on1の場で、自分のキャリア希望を伝え、上司からのフィードバックを得ることで、社内での成長機会を見出せる可能性があります。
4. 大企業と中小企業のインフラエンジニア業務の違い

「辞めたい」と感じる理由の一部は、現在所属している企業の規模に起因している可能性があります。
大企業と中小企業では、インフラエンジニアの業務内容や働き方が大きく異なるため、自分の志向性に合った環境を選ぶことが重要です。
企業規模による業務内容・年収・働き方の比較
以下の表は、大企業と中小企業におけるインフラエンジニアの業務特性を比較したものです。
| 比較項目 | 大企業 | 中小企業 |
|---|---|---|
| プロジェクト規模 | 大規模(数百人〜数千人規模) | 小〜中規模(数人〜数十人規模) |
| 主な業務内容 | プロジェクト進行管理、ベンダー管理、要件調整 | 設計・構築・テスト・保守運用まで一貫して担当 |
| 業務範囲 | 限定的・分業体制(専門特化) | 幅広い・マルチタスク(複数領域を横断) |
| 年収・福利厚生 | 比較的高め、充実した福利厚生 | 企業により差が大きい |
| スキルアップ | 特定領域の専門性を深められる | 幅広い技術経験を積める |
| 夜勤・障害対応 | シフト制で分担、チーム体制 | 少人数のため負担が集中しやすい |
| 意思決定の速さ | 承認フローが長く、決定に時間がかかる | 意思決定が早く、柔軟な対応が可能 |
| 最新技術への対応 | 大規模予算で最新技術導入も可能だが、既存システムの制約も大きい | 予算は限られるが、新技術を積極的に試せる環境もある |
「辞めたい」理由が企業規模に起因しているケース
上記の比較から、以下のような状況では、企業規模を変えることで問題が解決する可能性があります。
大企業で「辞めたい」と感じている場合の特徴
大企業では、実際の設計・構築作業はベンダーに委託され、自分は進行管理や調整業務が中心となり、管理業務ばかりで技術に触れられないと感じることがあります。
また、新しい技術や改善提案が承認されるまでに時間がかかり、スピード感を持って働けないという不満も生じやすくなります。
さらに、特定の領域のみを担当し続け、他の技術領域に触れる機会がなく、専門特化しすぎて技術の幅が広がらないと悩むケースもあります。
このような場合、中小企業やベンチャー企業で、設計・構築から運用まで一貫して担当できる環境に移ることで、実務経験を積み、幅広いスキルを習得できる可能性があります。
中小企業で「辞めたい」と感じている場合の特徴
中小企業では、少人数体制のため、オンコール対応や緊急時の負担が特定の人に集中し、夜勤・障害対応の負担が重いと感じることが多くなります。
また、マルチタスクを求められ、深く学ぶ時間がなく、一人で何でもやらなければならず疲弊しているという状況に陥りやすくなります。
さらに、企業の規模や体力により、給与水準や福利厚生に限界があり、給与・福利厚生が不十分だと感じることもあります。
このような場合、大企業に転職することで、分業体制の恩恵を受け、シフト制での負担分散や充実した福利厚生を享受できる可能性があります。
また、大規模プロジェクトに参画することで、より広い視野を得ることもできます。
このように、「辞めたい」理由が企業規模に起因している場合、必ずしも「インフラエンジニアを辞める」必要はなく、「異なる規模の企業に転職する」ことで状況が改善されることもあります。
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5. インフラエンジニアからの転職先とキャリアパス
インフラエンジニアからの転職先とキャリアパス
クラウドエンジニア
AWS / Azure / GCP
IaC・自動化 / 移行支援
インフラエンジニアの経験は、IT業界内で幅広く活かすことができます。
ここでは、インフラエンジニアとしての知識やスキルを活かしながら、新たなキャリアを築ける代表的な転職先を5つ紹介します。
クラウドエンジニア|インフラ経験を活かし最先端技術に携わる
クラウドエンジニアは、AWS、Azure、GCPなどのクラウドプラットフォームを活用して、システムのインフラ設計・構築・運用を行う職種です。
オンプレミス環境で培ったインフラ知識は、クラウド環境でも十分に活かせます。
主な業務内容
- クラウドインフラの設計・構築
- オンプレミスからクラウドへの移行支援
- コスト最適化と性能チューニング
- IaC(Infrastructure as Code)を活用した自動化
必要なスキル
- AWS、Azure、GCPのいずれかのクラウド資格(AWS Certified Solutions Architect等)
- Terraform、CloudFormationなどのIaCツール
- Linux、ネットワーク、セキュリティの基礎知識
年収目安と市場価値
平均年収は550万円〜800万円です。クラウド人材は慢性的に不足しており、需要が非常に高い状況が続いています。特にマルチクラウド環境の構築経験があれば、さらに高い評価が得られます。
SRE(Site Reliability Engineer)|開発と運用の橋渡し役
SREは、システムの信頼性(Reliability)を向上させることを目的とした職種で、開発チームと運用チームの間に立ち、自動化や監視を推進します。
GoogleやAmazonなどの大手IT企業が採用している体制で、近年日本でも導入が進んでいます。
主な業務内容
- システムの監視・障害対応の自動化
- CI/CDパイプラインの構築・運用
- インシデント対応とポストモーテム(事後分析)
- SLI/SLO/SLAの設定と達成管理
必要なスキル
- プログラミングスキル(Python、Go、Shell等)
- CI/CDツール(Jenkins、GitLab CI、GitHub Actions等)
- 監視ツール(Prometheus、Grafana、Datadog等)
- DevOps文化への理解
年収目安と市場価値
平均年収は600万円〜900万円です。DevOps文化を推進する企業で需要が高く、特にスタートアップやWeb系企業で求人が多い傾向にあります。
セキュリティエンジニア|インフラ知識を活かした防御の専門家
セキュリティエンジニアは、システムやネットワークのセキュリティ対策を担当する職種です。
インフラエンジニアのネットワーク・サーバー知識は、セキュリティ対策を考える上で不可欠な基盤となります。
主な業務内容
- ネットワーク・サーバーのセキュリティ診断
- 脆弱性対策とセキュリティパッチ適用
- セキュリティ監視とインシデント対応
- セキュリティポリシーの策定と運用
必要なスキル
- セキュリティ資格(情報処理安全確保支援士、CISSP等)
- ファイアウォール、IDS/IPS、WAFなどのセキュリティ機器の知識
- 脆弱性診断ツール(Nmap、Metasploit等)の操作
- サイバー攻撃の手法と対策の理解
年収目安と市場価値
平均年収は600万円〜900万円です。サイバー攻撃の増加により、セキュリティ人材の需要は極めて高くなっています。専門性が高いため、高年収が期待できる職種です。
社内SE|ワークライフバランス重視の選択肢
社内SEは、自社のITシステム全般の企画・開発・運用を担当する職種です。外部顧客向けではなく、社内向けのシステムを扱うため、夜勤や緊急対応が比較的少なく、ワークライフバランスを重視したい人に適しています。
主な業務内容
- 社内システムの企画・要件定義
- ベンダー選定とプロジェクト管理
- 社内ネットワーク・サーバーの運用保守
- 社員向けITサポート・ヘルプデスク
必要なスキル
- 幅広いIT知識(インフラ、開発、セキュリティ)
- 事業理解とコミュニケーション能力
- プロジェクトマネジメントスキル
- ベンダーコントロール能力
年収目安と市場価値
平均年収は450万円〜650万円です。業界や企業規模により年収は大きく異なりますが、ワークライフバランスを重視できる点が魅力です。
事業会社のDX推進により、社内SEの需要は増加傾向にあります。
Webエンジニア|開発スキルを身につけキャリアチェンジ
Webエンジニアは、WebサイトやWebアプリケーションの開発を担当する職種です。
インフラエンジニアの経験を持つWebエンジニアは、インフラとアプリケーションの両方を理解できるため、希少価値が高く評価されます。
主な業務内容
- Webアプリケーションの設計・開発
- フロントエンド・バックエンドの実装
- データベース設計とAPI開発
- パフォーマンスチューニング
必要なスキル
- プログラミング言語(Ruby、Python、JavaScript、PHP等)
- Webフレームワーク(Ruby on Rails、Django、React、Vue.js等)
- データベース(MySQL、PostgreSQL、MongoDB等)
- Git、GitHub等のバージョン管理ツール
年収目安と市場価値
平均年収は500万円〜750万円です。未経験からの転向には学習期間(6ヶ月〜1年程度)が必要ですが、インフラ知識を持つWebエンジニアは、システム全体を見渡せるため高く評価されます。
これらの転職先は、いずれもインフラエンジニアの経験を活かしながら、新たなスキルを習得しキャリアを広げる選択肢となります。
自分の志向性や将来のキャリアビジョンに合わせて、最適な道を選びましょう。
6. 後悔しない転職を実現する5つの判断基準
後悔しない転職を実現する5つの判断基準
技術環境 (クラウド / IaC)
担当工程 (上流工程 / 裁量)
勤務体制 (夜勤 / オンコール実態)
働き方 (リモート / フレックス)
キャリアパス (評価制度 / 支援)
転職先を選ぶ際、給与や福利厚生だけに注目すると、入社後に「こんなはずではなかった」と後悔するリスクがあります。
特にインフラエンジニアの転職では、技術環境や業務内容を慎重に見極めることが、長期的なキャリア成功のために大切です。
給与・待遇だけでなく「技術環境」を最優先で確認する
給与が高くても、レガシーシステムの保守ばかりでスキルアップできない環境では、長期的なキャリアに悪影響を及ぼします。
転職先を選ぶ際は、以下の技術環境を必ず確認しましょう。
確認すべき技術環境のチェックポイント
- クラウド環境(AWS、Azure、GCP)に触れられるか、それともオンプレミス中心か
- IaC(Infrastructure as Code)を導入しているか(Terraform、Ansible等)
- CI/CD、自動化の取り組み状況はどうか
- レガシーシステムと最新技術の割合はどの程度か
- コンテナ技術(Docker、Kubernetes)を活用しているか
技術ブログや採用ページで使用技術スタックを公開している企業は、技術への投資意欲が高い傾向があります。
面接時には「現在の技術スタックと、今後導入予定の技術」を積極的に質問しましょう。
担当工程を確認|テスト・運用だけでなく要件定義・設計に関われるか
「インフラエンジニア募集」という求人でも、実際には運用・保守の下流工程のみを担当するケースと、要件定義から設計・構築まで一貫して関われるケースがあります。
要件定義・設計フェーズから参画できるか、プロジェクトの企画段階から関われるか、運用フェーズでの改善提案や新技術導入の裁量があるか、キャリアアップに伴い上流工程への移行機会があるかといった点を確認することが肝心です。
面接時には「入社後に担当する具体的なプロジェクト」や「1年後にどのような業務を期待されているか」を確認することで、実際の業務イメージを掴むことができます。
夜勤・オンコール体制とシフト管理の実態
「辞めたい」理由の上位である夜勤・オンコール対応については、転職先での実態を具体的に確認することが不可欠です。
確認すべき勤務体制のポイント
- 夜勤の頻度(月に何回か、シフトは固定か変動か)
- オンコール当番の有無と、手当の金額
- 障害対応時のサポート体制(一人で対応するのか、チーム制か)
- 休日出勤の頻度と、代休取得の実態
- 夜勤・オンコールを経験した後、日勤へ移行できる制度があるか
企業の口コミサイト(OpenWork、転職会議等)で、実際の社員の声を確認することも有効です。
面接時には「夜勤シフトの具体的な運用方法」を質問し、曖昧な回答しか得られない場合は注意が必要です。
働き方の柔軟性|リモートワーク・フレックスの可否
コロナ禍を経て、働き方の柔軟性は多くのエンジニアにとって大切な判断基準となっています。
フルリモートワークが認められなくなった場合、約4割のエンジニアが転職を検討すると回答しており、働き方の柔軟性は大きな判断基準となっています。
完全出社、ハイブリッド、フルリモートのいずれか、リモートワークの頻度(週何日出社が必要か)、フレックスタイム制度の有無とコアタイム、通勤時間とワークライフバランスへの影響といった点を確認しましょう。
特に地方在住者や、育児・介護との両立を考えている場合、リモートワークの可否は極めて重大な要素です。
キャリアパスと評価制度の透明性
入社後のキャリアの見通しが立たない企業では、再び「将来が不安」という状況に陥る可能性があります。
社内にどのようなキャリアパス事例があるか(インフラ→SRE、インフラ→PM等)、スキルアップ支援制度(資格取得補助、研修制度、書籍購入補助等)、評価基準の明確さ(何を達成すれば昇進・昇給するのか)、1on1や評価面談の頻度といった点を確認しましょう。
面接時には「御社で活躍しているインフラエンジニアのキャリア事例」を質問し、具体的な回答が得られるかを確認しましょう。
キャリアパスが明確な企業は、社員の成長を重視している傾向があります。
7. インフラエンジニアの転職を成功させる具体的ステップ

転職を決意したら、計画的かつ戦略的に進めることが成功のために欠かせません。
ここでは、後悔しない転職を実現するための5つのステップを解説します。
STEP1|目指す職種とキャリアゴールを明確にする
転職活動の最初のステップは、「何から逃げたいか」ではなく「何を実現したいか」を明確にすることです。
ネガティブな動機だけで転職すると、転職先でも同じ不満を抱える可能性があります。
3年後の理想の働き方をイメージし、どんな技術を使い、どんなポジションで働いているかを具体的に描きましょう。
技術環境、給与、ワークライフバランス、成長機会等の中から転職の軸を決め、すべてを満たす企業は存在しないため、何を最重視するかの優先順位を明確にします。
「逃げの転職」ではなく「攻めの転職」と捉えられるよう、前向きな目標を設定しましょう。
キャリアゴールが明確になれば、応募する企業の選定や面接での志望動機も一貫性を持って伝えられます。
STEP2|現在のスキルの棚卸しと不足スキルの特定
自分が持っているスキルと経験を客観的に整理し、目指す職種に必要なスキルとのギャップを把握します。
スキル棚卸しの手順
- 職務経歴書の下書きを作成する
- これまでのプロジェクトで使用した技術を全てリストアップする
- プロジェクト規模(ユーザー数、サーバー台数等)と自分の役割を整理する
- 目指す職種の求人票を複数確認し、求められるスキルを把握する
- 自分のスキルと求められるスキルのギャップを洗い出す
ギャップが大きい場合は、転職前にオンライン学習や資格取得でスキルを補強することも検討しましょう。
STEP3|転職市場の情報収集と求人のリサーチ
転職市場の動向を把握し、自分の市場価値を知ることが必要です。
IT特化型転職サイトへの登録(レバテックキャリア、Green、doda、paiza等)を行い、企業の技術ブログや採用ページを確認して技術スタックや開発文化を理解しましょう。
口コミサイト(OpenWork、転職会議)で企業の実態や社員の評価を確認し、興味のある企業の勉強会やイベントに参加して社員と直接話す機会を作ることも効果的です。
複数の転職サイトに登録することで、幅広い求人情報にアクセスでき、自分の市場価値も把握しやすくなります。
STEP4|IT専門の転職エージェントへの相談
転職エージェントを活用することで、非公開求人へのアクセスや、年収交渉のサポートを受けられます。
エージェント活用のメリット
- 非公開求人の紹介(求人サイトには掲載されていない優良案件)
- 企業の内部情報の提供(実際の働き方、チーム構成、技術スタック等)
- 職務経歴書の添削と面接対策のサポート
- 年収交渉の代行
IT・エンジニア専門のエージェントを選び(レバテックキャリア、マイナビITエージェント等)、複数のエージェントに登録して相性の良い担当者を見つけましょう。
ただし、エージェントに依存しすぎず、自分でも情報収集を続けることが肝心です。
企業が面接で重視するポイントとして、コミュニケーション能力(37.0%)、業務内容(31.2%)、転職理由(29.4%)が上位となっており、転職理由の整理は必須です。
STEP5|応募書類の作成と面接対策の徹底
選考を突破するためには、応募書類の質と面接での受け答えが大切です。
職務経歴書作成のポイント
- 定量的な実績を記載する(管理したサーバー台数、ユーザー数、プロジェクト期間等)
- 技術スタックを明確に記載する(OS、ミドルウェア、クラウドサービス、ツール等)
- 課題と解決策を具体的に記述する(どんな問題があり、どう解決したか)
- 自己PRでは、応募企業でどう貢献できるかを明確に示す
面接対策のポイント
- 「なぜ辞めたいか」ではなく「なぜこの会社を選んだか」を説明できるようにする
- 志望動機は、企業の技術スタックや事業内容への理解を示す内容にする
- 技術面接では、これまでのプロジェクトで直面した技術的課題と解決方法を説明できるようにする
- 逆質問では、技術環境やキャリアパスについて積極的に質問する
面接は、企業が候補者を評価する場であると同時に、候補者が企業を評価する場でもあります。遠慮せずに、自分が知りたい情報を質問しましょう。
8. 円満退職のための準備と伝え方

転職先が決まったら、現職を円満に退職することが重要です。トラブルを避け、良好な関係を維持したまま退職するためのポイントを解説します。
退職意思を伝えるタイミングは2〜3ヶ月前が理想
法律上は退職の2週間前に申し出れば退職できますが、円満退職を実現するには、十分な引き継ぎ期間を確保する必要があります。
理想は2〜3ヶ月前、最低でも1ヶ月前には申し出ることをおすすめします。
繁忙期やプロジェクトの真っ只中は避け、転職先の入社日と調整しながら引き継ぎに十分な時間を確保しましょう。
就業規則で退職の申し出期限が定められている場合は、それに従う必要があります。
退職を申し出る前に、転職先から正式な内定(労働条件通知書)を受け取っておきましょう。
上司への伝え方|引き止められても意思を貫く準備
退職を伝える際は、直属の上司に最初に伝えることが基本です。
同僚に先に話してしまうと、上司の耳に噂として入り、信頼関係が損なわれる可能性があります。
上司への伝え方のポイント
- 退職の意思は明確かつ丁寧に伝える
- 退職理由は前向きに説明する(「新しい技術への挑戦」「キャリアアップ」等)
- ネガティブな理由(給与への不満、人間関係等)は避ける
- 「相談」ではなく「報告」として伝える(迷っている姿勢を見せない)
給与アップや異動の提案をされても、一度決めた退職の意思は変えないことが肝心です。「考え直してほしい」と言われても丁重に断り、感情的にならず、冷静に自分のキャリアプランを説明しましょう。
引き止めに応じて残留しても、根本的な問題が解決されていなければ、再び同じ不満を抱える可能性があります。
引き継ぎ資料の作成と後任者へのサポート
インフラエンジニアの業務は専門性が高く、属人化しやすいため、丁寧な引き継ぎが不可欠です。
引き継ぎ資料の作成内容
- システム構成図(ネットワーク構成、サーバー構成)
- 運用手順書(日次・週次・月次の作業内容)
- 障害対応マニュアル(過去の障害事例と対処法)
- 各種アカウント・パスワードのリスト(適切な管理方法で引き継ぐ)
- ベンダーや関係部署の連絡先リスト
後任者が決まらない場合でも、引き継ぎ資料を詳細に作成し、誰でも理解できるようにしておきます。
上司に後任者の選定を早急に依頼し、どうしても後任が決まらない場合でも、法的に定められた期間が過ぎれば退職できることを理解しておきましょう。
引き継ぎは誠実に行うべきですが、後任者が見つからないことを理由に退職を引き延ばされることは避けるべきです。
退職代行サービスの活用も選択肢の一つ
直接退職を伝えることが困難な状況(ハラスメント、精神的に追い詰められている等)では、退職代行サービスの利用も選択肢となります。
退職代行サービスは、退職の意思を本人に代わって会社に伝えてくれるサービスです。弁護士監修のサービスを選ぶことで、法的なトラブルを避けられ、費用相場は2万円〜5万円程度となっています。
ただし、弁護士または弁護士監修のサービスを選ぶことが大切です(非弁行為を行う業者は避けましょう)。
また、円満退職は難しくなる可能性があり、引き継ぎが不十分になるリスクがあることも理解しておく必要があります。
退職代行は最終手段として考え、可能な限り自分で退職の意思を伝えることが望ましいですが、心身の健康を最優先に考えることも考えておくべきです。
9. インフラエンジニアを辞めたい時の対処法まとめ
インフラエンジニアを辞めたいと感じる理由は、夜勤や障害対応の負担、単純作業への不満、将来への不安など多岐にわたります。
しかし感情的に辞める前に、メリットの再確認や現職での改善可能性を検討することが大切です。
転職を選ぶ場合は、給与だけでなく技術環境や担当工程を重視し、IT専門の転職エージェントを活用することで後悔しないキャリア選択が実現できます。
まずは客観的なデータに基づいて、自分に最適な道を見極めましょう。