日本でキャリアを築きたい外国籍エンジニアにとって、高度専門職ビザは最も注目すべき在留資格のひとつです。
外国籍エンジニアと働く日本人エンジニアや、採用を考えている企業の方にも知っておいてほしい制度です。
学歴・職歴・年収などをポイントで評価し、合計70点以上で取得できます。永住申請の期間短縮や配偶者のフルタイム就労など、通常の就労ビザにはない優遇措置が充実しています。
この記事では、制度の基本からポイント計算・7つの優遇措置・企業側の活用ポイント・J-Skipとの違い・転職時の注意点まで、エンジニア目線でわかりやすく解説します。
- 高度専門職ビザのポイント計算方法と70点・80点で変わる優遇内容について
- 通常の就労ビザにはない7つの優遇措置の具体的な内容について
- 転職時に必須の在留資格変更手続きと企業側に発生する法的義務について
1. 高度専門職ビザとは?制度の概要と通常の就労ビザとの違い

まず制度の基本と、よく比較される「技術・人文知識・国際業務」との違いを整理します。この2つの違いを知ることで、自分やチームメンバーがどちらに当てはまるかがすぐにわかります。
高度専門職ビザとは、高度な専門知識・技術・経験を持つ外国籍人材を受け入れるために日本政府が設けた在留資格です。正式名称は在留資格「高度専門職」で、出入国在留管理庁(法務省)が管轄しています。
2012年に「高度人材ポイント制」としてスタートし、2015年の入管法改正で現在の在留資格として独立しました。
出入国在留管理庁の統計によると、高度専門職の在留者数は2024年末には28,708人に達しており、近年急速に増加しています。
通常の就労ビザとの最大の違いはポイント制による評価です。学歴・職歴・年収・年齢・特別加算を数値化し、合計70点以上で申請できます。
高度専門職ビザと通常の就労ビザの主な違い
| 項目 | 高度専門職ビザ | 技術・人文知識・国際業務 |
|---|---|---|
| 評価方式 | ポイント制(70点以上) | 学歴・職歴・職務内容の審査 |
| 最長在留期間 | 5年(1号)/無期限(2号) | 5年 |
| 複合的な活動 | 認められる | 原則として認められない |
| 配偶者の就労 | フルタイム可能 | 週28時間以内 |
| 永住申請の短縮 | あり(最短1年) | なし(原則10年) |
| 親・家事使用人の帯同 | 条件付きで可能 | 原則として不可 |
2. 高度専門職ビザの種類:1号(イ・ロ・ハ)と2号の違い
高度専門職ビザは「1号」と「2号」に分かれ、1号はさらに活動内容によってイ・ロ・ハの3つに分類されます。
自分の職種がどれに当たるかを確認しましょう。
高度専門職1号(イ・ロ・ハ)
高度専門職1号イ(学術研究活動)
大学や研究機関での研究・研究指導・教育が対象です。大学教授や研究員のポジションが代表的です。
高度専門職1号ロ(専門・技術活動)
民間企業での専門的・技術的な業務が対象です。
ITエンジニア・システムアーキテクト・データサイエンティストなど、エンジニア職のほとんどがこの類型に当たります。
高度専門職1号ハ(経営・管理活動)
企業の経営や管理業務が対象です。CTO・VPoEなどのエンジニアリング系役員もこちらに分類されることがあります。
高度専門職2号
高度専門職1号で3年以上活動した人が移行できる資格です。
在留期間が無期限となり、就労制限もほぼなくなります。在留カードの更新が必要な点は永住権と異なります。
| 項目 | 高度専門職1号 | 高度専門職2号 |
|---|---|---|
| 在留期間 | 5年(一律) | 無期限 |
| 移行条件 | ポイント70点以上 | 1号で3年以上の活動実績 |
| 活動の制限 | 指定された活動範囲 | ほぼ制限なし |
| 所属機関の指定 | あり(転職時に変更申請が必要) | なし |
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高度専門職ビザを含む日本の就労ビザには、在留期間や更新手続きに関して押さえておくべきルールがあります。
取得後に「知らなかった」とならないよう、在留期間の仕組みと全手続きの流れをあらかじめ確認しておきましょう。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。
3. 高度専門職ビザのポイント計算方法と合格ライン

取得に必要な70点を自分で計算できます。出入国在留管理庁のポイント評価の仕組みをもとに、評価項目と配点を確認しましょう。
ポイント計算の主な評価項目(1号ロ:専門・技術活動の場合)
| カテゴリ | 評価項目 | ポイント |
|---|---|---|
| 学歴 | 博士号取得 | 30点 |
| 修士号または専門職学位取得 | 20点 | |
| 学士号取得 | 10点 | |
| 職歴 | 10年以上 | 20点 |
| 7年以上10年未満 | 15点 | |
| 5年以上7年未満 | 10点 | |
| 3年以上5年未満 | 5点 | |
| 1年以上3年未満 | 0点 | |
| 年収(見込み年収) | 1,000万円以上 | 40点 |
| 900万円以上1,000万円未満 | 35点 | |
| 800万円以上900万円未満 | 30点 | |
| 700万円以上800万円未満 | 25点 | |
| 600万円以上700万円未満 | 20点 | |
| 400万円以上600万円未満 | 10点 | |
| 年齢 | 29歳以下 | 15点 |
| 30歳以上34歳以下 | 10点 | |
| 35歳以上39歳以下 | 5点 | |
| 特別加算 | 日本の大学・大学院を卒業 | 10点 |
| 日本語能力試験N1合格(または相当資格) | 15点 | |
| 日本語能力試験N2合格(日本の大学卒業者を除く) | 10点 | |
| 政府認定のイノベーション拠点での勤務 | 10〜20点 | |
| 試験研究費等比率が一定以上の中小企業への勤務 | 10点 |
※代表的な項目のみ抜粋しています。完全な評価基準は出入国在留管理庁「ポイント評価の仕組み」でご確認ください。
合格ラインとポイントの目安
- 70点以上:高度専門職1号の申請が可能
- 80点以上:永住申請の要件が通常10年から最短1年に短縮
注意:年収300万円未満は申請できない
1号ロ・1号ハでは、ポイントが70点以上でも見込み年収が300万円未満の場合は申請できません。
「年収」は過去の給与ではなく、今後1年間の契約年収で計算します。雇用契約書や給与証明書など、客観的な書類で証明する必要があります。
ポイント計算シミュレーション(2パターン)
ケースA:修士号・職歴5年・年収600万円・28歳・JLPT N2合格
| 評価項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 学歴 | 修士号 | 20点 |
| 職歴 | 5年以上7年未満 | 10点 |
| 年収 | 600万円以上700万円未満 | 20点 |
| 年齢 | 29歳以下 | 15点 |
| 特別加算 | JLPT N2合格 | 10点 |
| 合計 | 75点 → 申請可能 | |
ケースB:学士号・職歴3年・年収500万円・32歳・日本語能力なし
| 評価項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 学歴 | 学士号 | 10点 |
| 職歴 | 3年以上5年未満 | 5点 |
| 年収 | 400万円以上600万円未満 | 10点 |
| 年齢 | 30歳以上34歳以下 | 10点 |
| 特別加算 | なし | 0点 |
| 合計 | 35点 → 申請不可 | |
ケースBは現状35点で不足しています。
JLPT N1取得(+15点)・年収600万円台への引き上げ(+10点)・イノベーション拠点勤務(+10〜20点)などを組み合わせると、70点に届きます。
■ 自分のポイントは何点?まず市場価値を確かめてみよう
高度専門職ビザの取得可否は、学歴・職歴・年収など複数の要素で決まります。
「自分は何点なのか」「どの条件を強化すればいいのか」を正確に把握することが、最初の一歩です。
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4. 高度専門職ビザで受けられる7つの優遇措置

高度専門職ビザの魅力は、通常の就労ビザにはない7つの優遇措置です。
外国籍エンジニア本人の生活・キャリアに直結するだけでなく、採用側にとっても人材を引きつける大きなアピールポイントになります。
以下、出入国在留管理庁が定める7項目を解説します。
① 複合的な在留活動
通常の就労ビザでは、許可された活動以外は原則できません。
高度専門職ビザでは、メインの業務に加えて関連する複数の活動が認められます。エンジニアとして勤務しながら、技術顧問や社外取締役を兼務するケースがその例です。
② 在留期間「5年」の一律付与
通常の就労ビザは更新状況によって在留期間が1年・3年・5年と変わりますが、高度専門職1号では最初から一律5年が付与されます。更新の手間が大幅に減ります。
③ 永住申請の要件緩和
通常は10年以上の在留が必要な永住許可申請が、大幅に短縮されます。
- ポイント70点以上:高度専門職1号として3年以上在留で申請可能
- ポイント80点以上:高度専門職1号として1年以上在留で申請可能
④ 配偶者のフルタイム就労
「家族滞在」資格では配偶者の就労は週28時間以内に制限されますが、高度専門職ビザでは専門的・技術的な分野であればフルタイムで働けます。
⑤ 親の帯同
通常は認められない親(本人または配偶者の親)の帯同が、以下の条件のいずれかを満たすと可能になります。
- 本人または配偶者が妊娠中・出産後
- 7歳未満の子どもを育てている
- 本人の年収が800万円以上
⑥ 家事使用人の帯同
一定の条件のもとで、海外から家事使用人(ハウスキーパーなど)を帯同できます。
共働き・子育て世帯には特に有益な措置です。
⑦ 入国・在留手続の優先処理
在留資格認定証明書の交付申請が優先的に処理されます。早期の入社が必要なケースで役立ちます。
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5. 高度専門職ビザを活用した外国籍エンジニアの採用:企業が知っておくべきポイント
外国籍エンジニアの採用を考えている企業や、外国籍のチームメンバーと働く日本人エンジニアにとっても、この制度の理解は実務上の重要な知識です。
企業側のメリットと法律上の義務を整理します。
企業にとっての採用メリット
- 柔軟な社内異動が可能:
複合的な活動が認められるため、通常の就労ビザより職種をまたいだ異動や兼務が組みやすくなります。 - 採用競争力が上がる:
永住申請の短縮・家族帯同など、求職者にとって魅力的な条件を採用時のアピールポイントとして使えます。 - 早期の入社が実現しやすい:
優先審査により、他の就労ビザより早く入社日を設定できる可能性があります。
企業側に必要な法的手続き
外国籍人材を雇用する際、企業には外国人雇用状況の届出義務があります。
採用時・退職時のいずれもハローワークへの届出が必要です(厚生労働省「高度外国人材について」)。届出を忘れると罰則の対象になるため注意してください。
また、高度専門職1号は所属機関(会社)が指定される仕組みのため、社員が転職する際には在留資格の変更申請が必要です。
退職時に本人と連携して対応しましょう。
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高度専門職1号は所属機関が指定されるため、転職時には在留資格の変更申請が必要です。
手続きの流れや注意点を事前に把握しておくと、転職活動をスムーズに進めることができます。
在留資格を維持しながら転職を成功させるポイントについて、詳しくはこちらの記事をどうぞ。
6. 高度専門職ビザとJ-Skip(特別高度人材制度)の違い

2022年に新設されたJ-Skipは、ポイント計算なしで高度専門職と同等以上の優遇が受けられる制度です。
年収・学歴が特に高い層向けの選択肢で、高度専門職ビザと混同されやすいため違いを整理します。
J-Skipとは
J-Skipは、一定以上の学歴または年収を持つ外国籍人材を対象に、ポイント計算なしで優遇措置を付与する制度です。主な基準は以下のとおりです。
- 修士号以上の学位を保有し、かつ年収2,000万円以上
- 年収2,000万円以上(学歴不問)
詳細な要件は出入国在留管理庁の公式ページでご確認ください。
高度専門職ビザとJ-Skipの比較
| 項目 | 高度専門職ビザ | J-Skip(特別高度人材) |
|---|---|---|
| 評価方式 | ポイント制(70点以上) | 学歴・年収の基準該当 |
| 主な対象 | 幅広い専門職・技術職 | 年収2,000万円以上の高年収層 |
| 在留期間 | 5年(1号) | 5年 |
| 永住申請短縮 | 最短1年(80点以上) | 1年以上の在留で申請可能 |
ほとんどのエンジニアには高度専門職ビザのポイント制が現実的な選択肢です。年収が2,000万円を超える場合はJ-Skipも選択肢に入ります。
7. 高度専門職ビザの申請に必要な書類と手続きの流れ
申請の流れは、すでに日本に在留しているかどうかで変わります。
主な書類と手続きを確認しましょう。書類の様式は出入国在留管理庁の公式案内からダウンロードできます。
海外から来日する場合(在留資格認定証明書交付申請)
受入れ企業が申請者に代わって出入国在留管理局へ在留資格認定証明書の交付申請を行います。
証明書を受け取ったら、申請者が海外の日本大使館・領事館でビザを申請し、来日します。
日本国内で変更する場合(在留資格変更許可申請)
すでに別の在留資格で日本に在留している場合は、在留資格変更許可申請を行います。在留期間内に申請できるよう、早めに動きましょう。
主な必要書類
- 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
- 高度人材ポイント計算表(出入国在留管理庁の様式)
- 学歴を証明する書類(学位証明書・卒業証明書など)
- 職歴を証明する書類(在職証明書・職務経歴書など)
- 年収を証明する書類(雇用契約書・給与明細・源泉徴収票など)
- パスポートのコピー・写真(縦4cm×横3cm)
- 受入れ企業の登記事項証明書・決算書など
ポイントの根拠となる全項目に証明書類が必要です。書類の不備は審査に時間がかかる原因になるため、不安な場合は行政書士に相談することをおすすめします。
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ビザの手続きと並行して、日本企業への就職活動そのものの進め方も確認しておきましょう。
外国籍エンジニアが日本で就職を成功させるための具体的なポイントについて、詳しくはこちらの記事をどうぞ。
8. 高度専門職ビザ取得後の転職時に必ず知っておくべきルール

転職を考えるエンジニアに特に注意してほしいのが、高度専門職ビザ特有のルールです。
知らずに転職すると不法就労になるリスクがあるため、事前に必ず確認してください。
転職時は在留資格の変更申請が必要
高度専門職1号は、受入れ企業名がパスポートに貼付される「指定書」に明記されています。
同じ職種への転職であっても、在留資格変更許可申請が必要です。申請せずに新しい会社で働くと、不法就労になる可能性があります。
転職先が決まったら、速やかに出入国在留管理局へ申請しましょう。
申請中は「特定活動(就労可)」に変更して就労を継続するケースもあります。手続きに不安がある場合は、行政書士や弁護士への相談をおすすめします。
更新時にポイントが70点を下回った場合
在留中は常に70点以上を維持する必要はありませんが、在留期間の更新申請の際には70点以上が必要です。
年収の変動や年齢による加点の変化があった場合は、更新前にポイントを再計算しておきましょう。
■ 転職と在留資格変更を同時に進めるなら、専門サポートを活用しよう
高度専門職ビザを持ちながら転職を検討している場合、在留資格の変更申請と転職活動を並行して進める必要があります。
手続きの見落としが不法就労リスクにつながることもあるため、早めの準備が重要です。
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よくある質問
高度専門職ビザと永住権はどちらが良いですか?
高度専門職2号は在留期間が無期限ですが、在留カードの更新は必要です。永住権は一度取得すれば就労先・活動内容の制限がなく、更新も不要です。
転職の自由度を最大化したい場合は永住権が有利ですが、高度専門職2号は親の帯同などの優遇措置が続く点で異なります。
目的に応じて選択することをおすすめします。
日本語能力がなくても高度専門職ビザを申請できますか?
日本語能力がなくても申請は可能です。
ただし、JLPT N1合格で15点・N2合格で10点が加算されます。ポイントが足りない場合は、N2レベルの習得が取得への近道になります。
フリーランスエンジニアは高度専門職ビザを取得できますか?
高度専門職1号ロは日本の企業・機関との雇用契約が前提です。
フリーランスの場合、所属機関を証明することが難しいため通常は取得が困難とされています。
個別の状況によって異なる場合もあるため、行政書士や弁護士にご相談ください。
採用候補者のポイントが70点に届いていない場合、企業にできることはありますか?
給与水準の引き上げ・自社がイノベーション拠点に該当するかの確認・試験研究費比率が一定以上の中小企業に該当するかの確認などが考えられます。
採用前に行政書士と確認しておくとスムーズです。なお、最新の情報は出入国在留管理庁の公式ページでご確認ください。
まとめ:高度専門職ビザはエンジニアキャリアを日本で築くための有力な選択肢

高度専門職ビザは、日本で長くキャリアを築きたい外国籍エンジニアにとって非常に有利な在留資格です。
透明性の高いポイント制・7つの優遇措置・永住申請の大幅な短縮など、通常の就労ビザにはない多くのメリットがあります。
外国籍エンジニアを採用・マネジメントする立場の方にとっても、知っておきたい重要な制度です。まずは出入国在留管理庁の公式ポイント計算表で自分の点数を確認してみてください。
ポイントが70点に届かない場合でも、年収の引き上げや日本語能力試験の取得などの方法でスコアを積み上げることができます。不明点は行政書士や弁護士への相談をおすすめします。
▼あわせて読みたい
高度専門職ビザのポイント計算では年収が重要な評価軸のひとつです。
日本のエンジニア市場における給与水準や年収アップの方法を把握しておくことで、ビザ取得とキャリアアップを同時に戦略的に考えることができます。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。
