日本での就職を考える際、「英語だけで働けるのだろうか?」という疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
グローバル化が進む日本では、英語のみで働ける環境が着実に広がっています。ただし、そのためには一定の条件や準備が必要です。
本記事では、英語のみで働くための現実的な可能性と、そのために必要な準備についてくわしく解説します。
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- 日本で英語のみで働ける具体的な職種と、それぞれに求められる英語力について
- 英語のみで働く際の平均的な年収と、キャリアアップの具体的な道筋について
- 英語だけでなく日本語も習得することで広がる、より豊かなキャリアの可能性について
1.英語だけで働ける日本企業の現状

日本のビジネス環境は急速にグローバル化が進んでおり、英語のみで働ける環境が着実に広がっています。
特に外資系企業や国際的な事業を展開する日本企業では、英語を公用語として採用する動きが加速しています。
この流れは、日本企業の国際競争力強化とグローバル人材の育成という2つの観点から、今後もさらに拡大していくことが予想されます。
英語公用語化企業の実態と事例
日本企業の英語公用語化は、2010年代から本格的に始まりました。
その先駆けとなったのが楽天グループで、2010年に英語公用語化を宣言し、社内会議や文書作成を全て英語で実施する体制を整えました。
同社では昇進要件にTOEICスコアを設定し、社員の英語力向上を積極的に推進しています。
ファーストリテイリング(ユニクロ)も2012年から段階的に英語公用語化を推進し、グローバル人材の育成に注力した結果、海外展開の加速化に成功しています。
その他にもホンダ、シャープ、ブリヂストンなどの大手企業が、特に研究開発部門を中心に英語使用を標準化しており、グローバルコミュニケーションの基盤を構築しています。
参考:楽天グループ:カルチャー FAST RETAILING
日本における英語オンリーの職場環境
英語オンリーの職場環境では、会議やメールは基本的に全て英語で行われ、社内文書やプレゼン資料も英語が基本となっています。
ただし完全な英語オンリーではなく、日本語と英語のバイリンガル環境として機能している場合も多く見られます。
組織文化の特徴として、よりフラットな組織構造が採用され、多様な国籍の従業員が共存する環境が整備されています。
また、グローバルスタンダードの働き方が導入され、海外拠点との連携が日常的に行われ、グローバルプロジェクトへの参画機会も豊富に存在します。
英語力重視企業のメリット・デメリット
英語を公用語とする企業では、さまざまなメリットとデメリットが存在します。
メリット
ビジネス面でのメリット…グローバル市場への迅速なアクセスが可能となり、海外人材の採用が容易になることで国際競争力が向上する。
従業員のキャリア面…国際的なキャリア機会が増加し、英語力の継続的な向上やグローバルな視野の獲得が期待できる。
デメリット
組織運営上のデメリット…意思疎通の効率低下や導入初期の生産性低下、さらには社内の分断リスクなども指摘されている。
人材面…優秀な日本語話者の採用が制限される可能性や、英語研修コストの増加、従業員のストレス増加といった課題も存在する。
このような状況を踏まえ、多くの企業では段階的な英語導入や部門別の柔軟な言語政策を採用しており、完全な英語オンリー環境ではなく、日本語と英語のハイブリッドな環境を構築する傾向にあります。
2.英語だけで働ける職種と必要スキル

グローバル化が進む日本において、英語のみで働ける職種は着実に増加しています。
特に外資系企業やIT業界、研究開発部門、観光業界などでは、英語を主要言語として使用する環境が整備されています。
上記の職種で活躍するためには、高度な英語力に加えて、専門知識やビジネススキル、異文化理解力など、総合的な能力が求められています。
外資系企業での働き方と求められる英語力
外資系企業では、職位や役割に応じて異なるレベルの英語力が要求されます。
エントリーレベル…一般的にTOEIC750点以上が求められ、ビジネス英会話力やビジネス文書作成能力が必須となります。
マネジメントレベル…TOEIC900点以上が望ましく、高度なネゴシエーション能力やプレゼンテーションスキルも必要となります。
主な職種としては、コンサルタント、マーケティング担当、財務・経理専門職、人事部門スタッフなどが挙げられ、いずれも高度な英語コミュニケーション能力が求められています。
参考:TOEIC
IT・テクノロジー業界での英語活用事例
IT業界では、ソフトウェアエンジニアやプロジェクトマネージャーを中心に、英語のみの環境が整備されています。
ソフトウェアエンジニア | プロジェクトマネージャー |
プログラミングスキルやテクニカルライティング能力に加え、海外チームとの協働経験が重視される | アジャイル開発の知識やクロスカルチャーマネジメント、リモートチーム管理能力が必要とされ、グローバルな開発環境での経験が重要視されている |
教育・研究分野での英語使用状況
教育・研究分野では、大学教員やインターナショナルスクール教師、企業内英語講師、オンライン英語講師などの職種で英語のみの環境が存在します。
研究分野では、研究者(特に理系分野)、研究機関スタッフ、学術論文編集者、国際会議コーディネーターなどの職種があり、高度な専門知識と英語力の両方が求められています。
これらの職種では、研究成果の国際発信や国際共同研究のコーディネートなど、グローバルな活動が日常的に行われています。
観光・ホスピタリティ業界の実態
インバウンド需要の増加に伴い、観光業界では英語を主要言語として使用する機会が急増しています。
ホテルスタッフとしては、フロントデスク業務やコンシェルジュサービス、宿泊施設管理職などの職種があり、観光関連では、ツアーガイド、旅行コーディネーター、インバウンド営業担当などの職種が存在します。
これらの職種では接客業務の基本スキルに加えて、異文化理解能力、クレーム対応力、地域観光情報の知識が重要とされており、言語力と専門知識の両方が求められています。
3.英語オンリーの仕事に必要な条件

英語のみで働くためには単なる語学力だけでなく、総合的なビジネススキルと実践的な経験が必要とされます。
企業が求める条件は多岐にわたり、特に実務経験とコミュニケーション能力が重視される傾向にあります。条件を満たすことで、より多くのキャリア機会を得ることができます。
英語環境で働くために必要な実務スキル
技術面では一般的なプログラミングスキルに加えて、いくつかの能力が重視されます。まず英語でのコードレビューやドキュメンテーション能力が必須です。
GitHubなどでの英語によるコミュニケーションや、技術文書の作成・理解が日常的に求められます。
また、アジャイル開発における英語でのコミュニケーション能力も重要です。スクラムミーティングやスプリントレビューなどを英語で行う必要があります。
参考:GitHub
英語以外に必要なビジネススキル
英語力に加えて、プレゼンテーション能力や異文化理解力といったコミュニケーションスキルが重要です。
プレゼンテーションにおいて | 異文化理解力 |
論理的な構成力や説得力のある説明、視覚資料の効果的活用が求められる | 文化的背景への配慮や多様な価値観の受容、国際的なビジネスマナーも不可欠となる |
さらにデジタルリテラシー、プロジェクトマネジメント、データ分析能力、問題解決力といった専門的スキルも、職務遂行において重要な要素となっています。
技術面での必須経験・資格
技術面では、実践的な経験と認定資格の両方が重要視されます。特に注目されるのは、グローバルスタンダードな開発経験です。
高く評価される具体的な経験例
- クラウドコンピューティング環境での開発経験
- マイクロサービスアーキテクチャの実装経験
- CIツールを使用した開発フロー経験 など
特に重視されるクラウド関連資格
- AWS認定ソリューションアーキテクト
- Google Cloud認定プロフェッショナル
- Microsoft Azure認定資格 など
付加価値のあるセキュリティ関連資格
- CISSP
- CEH など
参考:AWS認定 Google Cloud認定 Azure認定 CISSP CEH
4.英語だけで働く際の年収と将来性

英語を主要言語として使用する職種では、一般的に平均以上の年収が期待できます。
またグローバル化の進展に伴い、これらの職種の需要は今後も増加すると予測されており、長期的なキャリア形成の観点からも魅力的な選択肢となっています。
特に専門性と英語力を組み合わせることで、より高い年収とキャリアの可能性が広がります。
職種別の平均年収データ
英語を主に使用する職種の年収は、経験年数や役職によって大きく異なります。
ハイレベルな職種では、外資系コンサルタントが800~1,200万円、投資銀行が700~1,000万円、ITアーキテクトが600~900万円程度の年収となっています。
ミドルレベルでは、プロジェクトマネージャーが500~800万円、通訳・翻訳が400~700万円、外資系営業職が450~650万円程度です。
エントリーレベルでは、英語教師が300~450万円、ホテルスタッフが280~400万円、カスタマーサービスが300~400万円程度となっています。
これらの年収は、一般的な日本企業の平均年収と比較して、やや高い水準にあります。
参考:厚生労働省:jobtag
キャリアアップの可能性
英語力を活かした職種では、マネジメント系と専門職系の2つの主要なキャリアパスが存在します。
マネジメント系では、チームリーダーからマネージャー、そしてディレクターへと昇進していく道があり、海外拠点責任者やグローバル人事への異動機会も提供されています。
専門職系では、スペシャリストからエキスパート、コンサルタントへと専門性を深めていく道があり、専門性と英語力を活かした独立や、グローバルプロジェクトのリード役としての活躍も期待できます。
グローバル企業でのキャリアパス
グローバル企業では、英語力を活かした多様なキャリア展開が可能です。
地理的な展開
海外駐在の機会や国際的な異動の可能性があり、リモートでのグローバルチーム参加なども増加している。
スキル面での展開
クロスカルチャーマネジメント能力の向上、グローバルビジネススキルの習得、国際的な人脈形成などが期待できる。
経験を積むことで、さらなる収入アップとキャリア発展につながり、特にデジタル化とグローバル化が進む現代では、英語力を活かせる職種の需要は今後も増加すると予測されています。
■合わせて読みたい
以下の記事では、日本で働くソフトウェアエンジニアの給与について、平均年収、市場動向を詳しく解説しています。
5.日本語を習得することも視野にいれる

英語のみで働くことは確かに可能ですが、日本でのより充実したキャリア形成を考える場合、日本語習得も重要な選択肢として考慮する必要があります。
日本語力を身につけることで、職務範囲が広がり、より多くのビジネス機会を得ることができます。また日本の企業文化をより深く理解し、効果的なコミュニケーションを図ることも可能になります。
効果的な日本語習得の方法
ビジネスパーソンとして効率的に日本語を習得するためには、さまざまな学習方法を組み合わせることが効果的です。
- オンライン学習
オンライン日本語スクールや語学学習アプリ、ビジネス日本語のeラーニングなどを活用する。 - 実践的なアプローチ
日本人同僚との会話練習や、ビジネス文書の読解訓練、業界専門用語の習得などが重要となる。
さらにビジネスマナーの学習や日本の企業文化の理解、日本特有のコミュニケーションスタイルの習得など、文化理解と組み合わせた学習を進めることで、より効果的な日本語習得が可能となります。
日本語能力検定を取得・活用する
日本語能力を客観的に示すための資格取得も重要です。日本語能力試験(JLPT)では、N2がビジネスレベルの基準とされ、N1は母語話者に近いレベルとして認識されています。
この試験は年2回実施されており、計画的な受験が可能です。また、BJTビジネス日本語能力テストは、ビジネス場面での実践力を測定する試験として、履歴書でのアピールポイントとなり、企業での評価も高くなっています。
■資格取得によるメリット
- キャリア面
昇進・昇給の機会増加や、職務範囲の拡大、転職時の選択肢拡大につながります。 - 業務面
日本人顧客との直接対応が可能になり、社内文書の理解やチーム内でのコミュニケーションが向上します。特に管理職を目指す場合、日本語力は重要な資産となり、より幅広いキャリア機会を得ることができます。
日本語習得は英語のみの環境に限定されない、より豊かなキャリア展開を可能にする重要な投資と言えます。
参考:日本語能力試験(JLPT) BJTビジネス日本語能力テスト
6.英語のみでも日本で仕事が可能!さらなるスキルアップを目指そう

英語のみで働くキャリアは、確かに現実的な選択肢として存在します。
しかし、より充実したキャリアを築くためには、高度な英語力に加えて、専門知識やビジネススキル、そして可能であれば日本語力も求められます。
グローバル化が進む現代だからこそ、複数の言語を操れることが、より大きなキャリアチャンスにつながるのです。自分の目指すキャリアに向けて、計画的なスキルアップを心がけましょう。