「シンガポールのエンジニア年収は日本の2倍」という話を耳にしたことがある方は多いでしょう。しかし、税金・生活費・ビザの条件まで含めると、実態はずいぶん異なります。
本記事では、公的データをもとに日本とシンガポールのITエンジニア年収をさまざまな角度から比較します。
シンガポール転職を考えている方はもちろん、日本での自分の年収水準を客観的に知りたいエンジニアにも役立つ内容です。
- 日本・シンガポールのITエンジニア年収を数字で比較について
- 税金・生活費・為替の影響も含めた「実質手取り」の違いについて
- シンガポールで働くために必要なビザの条件と求められるスキルについて
1.日本とシンガポールのITエンジニア年収を公的データで比較

まず、日本とシンガポールの平均年収とITエンジニア職の年収水準を、公的データで見ていきます。
日本のITエンジニア平均年収
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、日本のシステムエンジニア(SE)の平均年収は約540万円とされています。
国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」での給与所得者全体の平均は約460万円で、ITエンジニアはこれを上回っています。
ヒューマンリソシア「データで見る世界のITエンジニアレポート vol.6」のアジア・オセアニア編では、日本はアジア主要20カ国のうち4位(約42,464 USD)と、国際的には上位ながら、シンガポールやオーストラリアを下回る水準です。
シンガポールのITエンジニア平均年収
シンガポール統計局(Department of Statistics Singapore)によると、全職種の月給中央値は約5,197 SGD(年収換算 約686万円、1SGD≒110円)です。
ITエンジニアは役職・職種によってさらに高い水準となります。
| 役職・職種 | 月給相場(SGD) | 年収換算(円)※1SGD=110円 |
|---|---|---|
| スタッフ(初級〜中級) | 4,500〜6,000 | 約594万〜792万円 |
| シニアエンジニア | 8,000〜15,000 | 約1,056万〜1,980万円 |
| マネージャークラス | 6,000〜13,000 | 約792万〜1,716万円 |
| AI・データサイエンス系 | 10,000〜20,000 | 約1,320万〜2,640万円 |
出典:JAC Recruitment Singapore「シンガポール現地採用の給与相場と転職市場レポート」
アジア主要国のITエンジニア年収ランキング
JETRO「海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」およびヒューマンリソシアのデータをもとに、アジア各国のITエンジニア年収を比較します。
| アジア内順位 | 国・地域 | ITエンジニア平均年収(目安) |
|---|---|---|
| 1位 | シンガポール | 約686万〜1,431万円 |
| 2位 | 香港 | 約610万円 |
| 3位 | 日本 | 約492万〜603万円 |
| 4位 | 中国 | 約464万円 |
| 5位 | タイ | 約253万円 |
出典:ヒューマンリソシア「データで見る世界のITエンジニアレポート vol.6」
額面だけを見るとシンガポールは日本の1.5〜2倍以上の水準です。ただし、この数字だけで判断するのはもったいない見方です。
次のセクションで税金・生活費・為替の影響を含めた「実質」を比べます。
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日本のITエンジニアの年収水準は、職種・経験年数・企業規模によって大きく異なります。
厚生労働省データをもとに平均年収の実態と年収アップの具体的な方法を詳しく解説しています。
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2.日本・シンガポールの実質年収を比較|税金・生活費・為替の影響まで踏まえると?

年収比較で見落とされがちなのが、税負担・生活費・為替変動という3つの要素です。
これらを合わせて見ることで、どちらの国が実際に手元に残るお金が多いかが見えてきます。
税金の違い:シンガポールは住民税ゼロ・所得税も低め
日本とシンガポールでは、税の仕組みが大きく異なります。
| 項目 | 日本 | シンガポール |
|---|---|---|
| 所得税(最高税率) | 45%(累進課税) | 24%(累進課税) |
| 住民税 | 一律10% | なし(ゼロ) |
| 社会保険料(目安) | 約15% | CPF(中央積立基金)約20% ※本人の積立資産として将来受け取れる |
同じ額面年収でも、手取りはシンガポールのほうが多くなりやすいのが特徴です。
生活費の現実:シンガポールは東京より生活費が高い
マーサー(Mercer)「2024年世界生計費調査(Cost of Living Survey)」では、シンガポールは世界2位の高コスト都市です。
東京も生活費の高い都市に含まれますが、シンガポールとの差は特に家賃で顕著です。
| 項目 | 東京(都心部) | シンガポール(都心部) |
|---|---|---|
| 1BR家賃(月額) | 約10万〜15万円 | 約40万〜55万円 |
| シェア・HDB家賃(月額) | ― | 約8万〜30万円 |
| 食費(外食・中食) | 月5万〜8万円 | 月7万〜12万円(ホーカーセンター利用で抑えられる) |
出典:Mercer「2024年世界生計費調査」、JAC Recruitment Singapore「シンガポール現地採用の給与相場」
手取りをシミュレーションで比べると
年収1,200万円(シニアエンジニア相当)のケースで比べると、こんな差が出ます。
| 項目 | 日本(東京) | シンガポール |
|---|---|---|
| 額面年収 | 1,200万円 | 1,200万円 |
| 税・社会保険料(概算) | ▲約380万円 | ▲約220万円 |
| 手取り年収(概算) | 約820万円 | 約980万円 |
| 年間家賃(都心1BR) | ▲約144万〜180万円 | ▲約480万〜660万円 |
| 家賃を引いた残額(概算) | 約640万〜676万円 | 約320万〜500万円 |
※概算です。実際の手取りは各種控除・個人状況により異なります。
額面が同じなら、家賃を引いた手元に残るお金は日本のほうが多くなるケースも十分あります。
シンガポールで日本を上回る手元のお金を得るには、シニア以上のポジションで高い額面年収を確保することが前提です。
忘れてはいけない為替の影響
シンガポールでの年収はSGD建てのため、円換算額は為替レートによって大きく変わります。
円高の局面(1SGD=80円台)では、同じ月給でも円換算が大幅に目減りします。
| 為替レート | 月給10,000 SGDの円換算額 | 年収換算 |
|---|---|---|
| 1SGD=110円(現在水準) | 110万円/月 | 約1,320万円 |
| 1SGD=95円 | 95万円/月 | 約1,140万円 |
| 1SGD=80円 | 80万円/月 | 約960万円 |
家族への送金や将来的な帰国を考えている場合は、為替の動きも必ずチェックしておきましょう。
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シンガポールだけでなく、アジア諸国全体での年収ランキングも気になる方は多いでしょう。
日本と韓国・インド・中国など主要国のITエンジニア年収を外国籍エンジニア視点で比較しています。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。
3.シンガポールで働くために必要なビザの条件|EPビザ・COMPASS制度を解説

シンガポールで働くには就労ビザ(EP:Employment Pass)の取得が必要です。
近年審査が厳しくなっており、「年収が高いから転職できる」と単純には言えません。
EPビザの最低給与基準とCOMPASS制度
2023年9月にCOMPASS(Complementarity Assessment Framework)という仕組みが導入され、EPビザの審査がポイント制になりました。
あわせて最低給与の基準も引き上げられています。
| 対象職種 | 最低月給基準(2024年時点) | 日本円換算(目安) |
|---|---|---|
| 一般的な職種(EP申請) | 5,600 SGD 以上 | 約61万円以上/月 |
| 金融業種 | 6,200 SGD 以上 | 約68万円以上/月 |
ここで注目したいのが、日本の給与水準との関係です。国税庁のデータによると日本の給与所得者の平均年収は約460万円(令和5年)です。
一方、EPビザ取得に必要な最低月給は5,600 SGD(年換算で約739万円)。この2つを重ねると、日本の平均的な収入水準ではEPビザの申請資格そのものを満たせないことがわかります。
シンガポール転職は、スキルと実績で日本の平均を大きく上回っているエンジニアに限定された選択肢です。転職前にまず自分の市場価値を正確に把握することが重要です。
現地採用と駐在員の待遇の違い
シンガポールで働く外国籍エンジニアには「現地採用」と「駐在員」の2つのパターンがあり、待遇面が大きく異なります。
| 項目 | 現地採用 | 駐在員 |
|---|---|---|
| 給与水準 | シンガポール市場の相場に準拠 | 日本の給与+海外赴任手当 |
| 住宅補助 | 基本なし(自己負担) | 会社負担または補助あり |
| 帰国時のリスク | 自分で再就職活動が必要 | 日本への帰任が保証される |
| キャリアの自由度 | 高い | 会社の意向に左右される |
求められる英語力・専門スキル・英文レジュメ
シンガポールでは業務・面接・書類選考がすべて英語で行われます。
採用されるには、以下の3点が必要です。
- 英語力
:ビジネスレベルの英語(読み書き・会話)が必須。 - 専門スキル
:バックエンド・クラウド(AWS/GCP)・AI・データサイエンス分野の実務経験が特に評価されます。 - 英文レジュメ
:成果を数字で示した英文履歴書が必須。「〇〇のシステムを改善し、処理速度を30%向上させた」など具体的な数字を使った表現が大切です。
■ ビザ要件を踏まえた上で、自分の市場価値を確認したい方へ
EPビザの取得には高い年収水準が求められます。「自分は基準を満たせるのか」を知るには、まず日本での自分の市場価値を正確に把握することが重要です。
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4.職種・役職別に見る日本とシンガポールのエンジニア年収差|自分はどちらが向いているか

日本とシンガポールの年収差は、職種・役職によって大きく変わります。
主な職種ごとのデータを確認しながら、自分に合う国の選び方も見ていきます。
バックエンド・ソフトウェアエンジニア
| 国 | ジュニア | ミドル | シニア |
|---|---|---|---|
| 日本 | 350万〜450万円 | 500万〜700万円 | 700万〜1,200万円 |
| シンガポール | 600万〜800万円 | 900万〜1,300万円 | 1,400万〜2,000万円 |
EPビザの最低月給基準(5,600 SGD)を考えると、ジュニアレベルでのシンガポール現地採用は実際にはハードルが高く、ミドル〜シニアのポジションが現実的な対象です。
データサイエンティスト・AIエンジニア
シンガポール政府の「スマート国家構想(Smart Nation)」のもと、GAFAMなど大手テック企業がアジア太平洋本部を設置しており、AI・データサイエンス分野の求人需要がとても高い状況です。
| 国 | AI・データサイエンス系 年収目安 |
|---|---|
| 日本 | 600万〜1,000万円 |
| シンガポール | 1,200万〜2,600万円以上 |
日本国内でもAI関連職は年収1,000万円超のポジションが増えており、経済産業省の試算では2030年にIT人材が最大約79万人不足すると予測されています。
プロジェクトマネージャー・ITマネジメント職
| 国 | PM・マネジメント職 年収目安 |
|---|---|
| 日本 | 600万〜1,000万円 |
| シンガポール | 900万〜1,700万円 |
マネジメント職でもシンガポールが上回りますが、日本でも外国籍エンジニアのマネジメント昇進は増えており、長い目で見ると十分に魅力的な選択肢です。
シンガポールと日本、どちらが自分に向いているか
以下のチェックリストで、自分に合う国を確認してみてください。
| チェック項目 | 当てはまる場合 |
|---|---|
| 英語でビジネス会話ができる | → シンガポール有利 |
| EPビザ基準(月給5,600 SGD以上)を満たせる実績がある | → シンガポール有利 |
| AI・クラウド・データサイエンスなど需要の高い専門分野がある | → シンガポール有利 |
| 日本語力(JLPT N2以上)がある、または取得を目指している | → 日本有利 |
| 生活費を抑えて手元に残るお金を増やしたい | → 日本有利 |
| 医療・交通・治安など生活の安心を大切にしたい | → 日本有利 |
| 高度専門職ビザを使って、最短1年での永住権取得を目指す | → 日本有利 |
| 家族への送金や将来的な帰国の可能性がある | → 日本有利(為替の影響あり) |
「シンガポール有利」が多ければシンガポール転職を、「日本有利」が多ければ日本でのキャリアアップを優先するのがおすすめです。
また、日本国内では2030年に最大約79万人のIT人材が不足すると試算されている一方、シンガポールでも2027年1月以降はEPビザの最低月給基準が6,000 SGDに引き上げられる予定です。
この2つを重ねると、高いスキルを持つエンジニアは日本でもシンガポールでも希少な存在になる半面、シンガポール転職の入場条件はさらに厳しくなることを意味します。
どちらの国で活躍するかを考える前に、まず自分の市場価値を高めることが、両国でのキャリア選択肢を広げる共通の前提と言えます。
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AI・機械学習分野は日本でもシンガポールでも需要が急拡大しています。
日本国内のAIエンジニアの年収相場と、年収アップに向けた具体的なキャリアプランをデータで解説しています。
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5.日本でITエンジニアの年収を上げる現実的なルート|外国籍エンジニアのキャリアプラン
シンガポール転職だけが年収アップの手段ではありません。日本でも正しいプランで動けば、大幅な年収アップは十分に可能です。
外資系・高収入IT企業への転職
外資系IT企業やメガベンチャーでは、日本国内でも年収600万〜1,200万円超のポジションがあります。日本語・英語の両方を使える外国籍エンジニアは、グローバルなポジションで強みになります。
- GAFAMの日本法人・アジア太平洋拠点
- 国内メガベンチャー(コンサルティング・フィンテック・SaaS)
- 外資系SIer・グローバルIT企業の日本支社
日本語力(JLPT)を上げると年収も上がる
日本語能力試験(JLPT)のレベルに応じて、以下のような年収差が生まれます。
| JLPTレベル | 年収への影響(目安) | 主な効果 |
|---|---|---|
| N1(ネイティブに近いレベル) | 基本給の15〜30%増 | マネジメント・上流工程へのステップアップが開ける |
| N2(ビジネスレベル) | 基本給の5〜15%増 | 日系企業での仕事の幅が広がる |
| N3以下 | ほとんど変化なし | 外資系・英語環境に限られる傾向 |
高度専門職ビザとポイント制の活用
日本の「高度専門職」在留資格は、年収・学歴・職歴・資格などをポイント制で審査するビザです。
取得すると以下のメリットがあり、最短1年での永住権申請も可能です。
- 複数の仕事ができ、転職もしやすい
- 配偶者も働きやすくなる
- 永住権取得が通常(10年)から大幅に早まる
需要の高いスキルを身につけて年収アップを狙う
以下の分野は国内需要が急増しており、年収アップにつながりやすい分野です。
- クラウド(AWS/GCP/Azure)
:DX推進の中心スキルとして需要が急増 - AI・機械学習・LLM活用
:専門職のポジションが急増中 - セキュリティエンジニア
:人材が慢性的に不足しており、年収が高めに設定されやすい - テックリード・アーキテクト
:技術とマネジメントをつなぐ役割として重宝される
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日本で年収1,000万円を実現しているエンジニアは、どの職種・どんな転職プランを選んでいるのでしょうか。
外資系・自社開発・マネジメント職など、年収1,000万円に到達するための具体的なルートを解説しています。詳しくはこちらの記事をどうぞ。
よくある質問
-
シンガポールのIT企業への転職はどうやって進めればいいですか?
-
主な方法は3つあります。
①LinkedInなど英語の求人プラットフォームで直接応募する、②JAC RecruitmentやRobert Halfなどシンガポール専門のエージェントを活用する、③GAFAMや大手グローバル企業の採用ページから直接応募する、の3つです。
いずれの場合も英文レジュメの準備が必須です。また、EPビザの要件を事前に確認し、自分がビザ基準を満たせるかをチェックしてから応募することをおすすめします。
-
シンガポールのEPビザは申請から取得までどのくらいかかりますか?
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一般的に、申請から結果通知まで3〜8週間かかる場合が多いとされています。
ただし、提出書類の不備や追加確認が入る場合はさらに長くかかることがあります。
採用が内定してから転職を急ぎたい場合は、早めに書類を整えておくことが大切です。最新の審査期間はシンガポール人材開発省(MOM)の公式サイトでご確認ください。
-
英語があまり得意でなくてもシンガポールで働けますか?
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シンガポールでは業務・面接・書類選考がすべて英語で行われるため、少なくともビジネスレベルの英語力(メールのやり取りや会議への参加が問題なくできるレベル)が必要です。
流暢である必要はありませんが、専門的なやり取りを英語でこなせることが採用の前提となります。
まず日本の外資系企業で英語を使う環境に慣れることがシンガポール転職への現実的なステップです。
まとめ:日本・シンガポール、自分に合うキャリア選択を

額面年収はシンガポールが日本の1.5〜2倍以上ですが、生活費はシンガポールのほうが高く、家賃を引くと手元に残るお金は日本が上回るケースも珍しくありません。
税金面ではシンガポールが有利である一方、SGD建ての収入は為替の変動リスクがある点も忘れてはいけません。
シンガポールで働くにはEPビザ(最低月給5,600 SGD以上、2027年1月以降は6,000 SGD以上)の取得が必要で、英語力と専門スキルがどちらも求められます。
一方、日本でも外資系転職・日本語力の向上・高度専門職ビザの活用といったプランで、年収1,000万円超は十分に狙えます。
どちらの国が自分に向いているかは、税金・生活費・為替・ビザの条件をまとめて考えることが大切です。あなたのキャリアプランにとって最適な選択を、まずは現状の市場価値を知るところから始めてみてください。
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