日本で働くITエンジニアにとって、適切なビザの取得は最初の重要なステップです。
一般的な「技術・人文知識・国際業務ビザ」から、より優遇された「高度人材」向けの在留資格まで、状況に応じた選択肢があります。
本記事では必要な書類や申請手順、注意点を詳しく解説し、スムーズなビザ取得をサポートします。
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- エンジニアに適した就労ビザの種類と、要件や特徴について
- 企業カテゴリー別の必要書類と具体的な申請手順について
- 申請から取得までのタイムラインと、よくある不許可事例への対処法について
1.エンジニアが取得できる就労ビザの種類と要件

外国人エンジニアが日本でエンジニアとして働くために必要な就労ビザは、「技術・人文知識・国際業務ビザ」が最も一般的です。
学歴要件、年収要件、実務経験など一定の要件を満たしている理工系技術者やIT技術者等に与えられるビザです。
参考:外務省:就労ビザ
技術・人文知識・国際業務ビザの基礎知識
技術・人文知識・国際業務ビザは、下記のいずれかの業務に従事する外国人が対象のビザです。
- 技術分野(数理科学、物理科学、化学、情報学、機械工学など)
- 人文科学分野(語学、文学、教育学、経営学など)
- 外国文化に関連する分野(翻訳・通訳など)
具体的な職業
システムエンジニア、ITエンジニア、プログラマー、ウェブデベロッパー、機械工学技術者、経営コンサルタント、デザイナー、民間企業の語学教師などが該当する。
日本企業と上記職種の雇用契約を結び、学歴や実務経験が一定の基準を満たしている場合に取得可能です。
取得後には、5年、3年、1年もしくは3ヵ月の在留資格が認められます。
高度人材ポイント制の活用方法
高度人材ポイント制は、専門的な知識や能力を持つ高度人材の外国人採用を促進する制度です。高度専門職の在留資格を持つ外国籍の人材を「高度人材」と呼びます。
業務活動の内容が「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度・経営・管理活動」の3種類に分類。
それぞれの活動で「学歴」「職歴」「年収」などの評価項目に沿って合計70点以上のポイントを獲得した場合に高度人材と認定されます。
高度専門職の優遇措置について
高度専門職は、出入国在留管理上の優遇措置が受けられる在留資格です。
- 「高度専門職1号」
複数の在留活動の許容、5年の在留期間付与、永住許可要件の緩和、配偶者の就労が可能、一定の条件下で親や家事使用人の帯同が可能などの優遇措置が付与される。 - 「高度専門職2号」
配偶者の就労が可能などの1号と同じ優遇措置に加え、ほぼ全ての就労資格に関する活動が可能になり、在留期間は無期限になる。1号を取得後、3年以上活動すると2号への変更が可能となる。
2.確実に準備する!ビザ申請に必要な書類と取得方法

ビザ申請の際には、「在留資格認定証明書交付申請書」や就労する企業のカテゴリーに応じた書類を提出しなければなりません。
申請の際に用いられるカテゴリーは、企業の規模などによって4種類に分かれています。
主にカテゴリー1は上場企業、カテゴリー2は上場していない大企業、カテゴリー3は中小企業、カテゴリー4にはスタートアップ企業などが該当します。
【カテゴリー1】
1.日本の証券取引所に上場している企業
2.保険業を営業する相互会社
3.日本又は外国の国・地方公共団体
4.独立行政法人
5.特殊法人・認可法人
6.日本の国・地方公共団体が認可する公益法人
7.法人税法別表第1に規定される公共法人など
【カテゴリー2】
前年分の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」内で、「給与所得の源泉徴収票合計表」の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人など
【カテゴリー3】
前年分の職員の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を提出している団体・個人(カテゴリー2に該当した企業を除く)
【カテゴリー4】
カテゴリー1〜3に該当しない団体・個人
申請者本人が準備する書類
申請の際に準備するのは、必ず用意しなければならない共通書類と、カテゴリーごとに異なる各種書類です。
本人が準備するものは、主に申請人の活動内容などが明確になる書類です。
共通書類
・在留資格認定証明書交付申請書
・写真(縦4cm×横3cm)
・返信用封筒(宛先を明記し、簡易書留用の切手を貼付)
各種書類
【カテゴリー1・2】
・専門学校を卒業し専門士又は高度専門士の称号を持つ場合には、称号の保有を証明する書類(卒業証明書など)
【カテゴリー3・4】
・申請する職種について携わった経験などが明示された履歴書
・学歴および職歴等を証明する次の1から4のうちどれか1種類
1.卒業証明書
2.関連する業務に従事した期間がわかる在職証明書
3.IT技術者の場合は、法務大臣の定める「情報処理技術」に関する試験・資格の合格証書又は資格証書
4.国際的な業務などに従事する場合は、関連業務における3年以上の実務経験を証明する書類など
雇用企業側が準備する書類
上記の共通書類と本人が準備する書類に加えて、雇用企業側もさまざまな証明書類を用意しなければなりません。
【カテゴリー1】
・四季報(写し)もしくは日本における上場を証明する書類(写し)など
【カテゴリー2】
・前年における職員の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」(写し・受付印あり)など
【カテゴリー3】
・前年における職員の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」(写し・受付印あり)など
・登記事項証明書
・事業内容を明確にできる書類(沿革、組織、役員、事業の内容、主要な取引先、実績などがわかる会社案内書、案内書に準ずる書類など)
・直近の事業年度の決算書類(写し)
【カテゴリー4】
・職員の前年分「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」が提出不可能な理由を証明するいずれかの書類(源泉徴収が免除されている機関:免除証明書・その他書類)(免除機関以外:開設届出書の写し、直近3ヵ月分の「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」(写し)もしくは納期の特例の承認を証明できる書類)
■合わせて読みたい
以下の記事では、日本就労ビザの取得について、詳しく解説しています。
3.失敗しないビザ申請のためのタイムライン

ビザを申請する場合、事前の準備から申請を行い実際に就労の許可が下りるまでに、それぞれ時間がかかります。
申請前の準備期間の目安
ビザの申請前には、COE(在留資格認定証明書)を取得しなければなりません。会社との雇用契約を締結し、必要な書類をそろえてから「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
申請できるのは、本人もしくは採用する会社の担当者、ビザ申請代行業者などの代理人です。本人が海外にいる場合には、会社や代理人が日本の出入国在留管理庁に申請します。
審査が完了するまでには、約2~3ヵ月の時間がかかります。
COE申請から査証取得までの流れ
COEの交付申請ののち、審査を経て交付されたCOEは本人や日本国内の会社など代理人に届きます。本人が海外にいる場合には、会社に届いたCOEが本人に郵送されます。
ビザの申請は自分で行うため、本人が海外に在住している場合には、COEが手元に届いてからその国の在外日本公館でビザの申請手続きが可能です。ビザは、原則として申請から5業務日以内に発行されます。
COEには発行から3ヵ月の有効期限があるため、ビザ発行までの期間も考慮しつつ、有効期限を迎える前に手続きして日本に入国しなければなりません。
日本入国時には、パスポート、ビザを提示、COEを提出して在留カードを受け取ります。
4.よくある不許可事例と対策

申請した内容によっては、ビザの発行許可が下りないケースもあるため十分注意が必要です。
不許可になりやすい事例や対策方法を確認して、適切に申請を行うと不許可になるリスクを軽減できるでしょう。
書類関連の不備と対策
ビザの申請書類に不備・不足があった場合、ビザの発行許可が下りません。
ビザを申請する際には、「在留資格認定証明書交付申請書」や「卒業証明書」「在職証明書」など複数の書類を準備しなければならないため、カテゴリーや活動内容などに応じた書類をそろえた上で申請します。
学歴や実務経験、日本語能力試験や保有資格の証明書など、証明しなければならない項目に関連する書類の写しは漏れなく提出することが大切です。
実務経験・技術力関連の課題
技術・人文知識・国際業務ビザは、専門的な知識や能力を持つ外国人に発行するビザです。
本人の専攻科目と職務の関連性がない場合、専門とは関係ないとみなされてビザ申請が不許可になる場合があります。専攻科目と就労先の業種、職務の関連性を重視して申請しなければなりません。
実際に不許可になった例:経営学部を卒業した人材を、飲食チェーンの企業の本社で採用すると申請したケース
不許可の理由…採用後の数年間は専門知識を用いる業務ではなく接客や調理業務に従事するといった業務内容が、実務研修と認められなかったため。
一方、「経営学部を卒業した人材が会計事務所に就職する」「エンジニアがIT企業に就職する」などのケースでは、許可される可能性が高くなります。
5.ビザ取得後の次のステップ

申請が通りビザを取得できたら、日本での就労が可能になります。ビザ(一般的にパスポートに貼付)を持って来日してから、日本で働くための手続きや準備を進めます。
来日直後の必要手続き
ビザを取得して来日した際には、入国審査官にパスポート・ビザを提示し入国審査を受けます。
上陸許可が下りた場合、パスポートに認印が押されて、中長期在留者になった入国者には在留カードが交付されます。
生活基盤の確立に向けて
日本で暮らすために、まずは生活基盤となる住居地を決めます。東京や大阪、その他の地方都市など、勤務地を考慮して住む場所を決定しましょう。
また在留カード(申請後まだ手元に届いていない場合はパスポート)を持参した上で14日以内に住居地の市区町村窓口に届出を行う必要があります。
6.日本のビザの取り方をよく確認してIT人材として働く

日本での就労ビザ取得は、準備する書類も多く複雑に感じるかもしれません。
しかし、申請区分や必要書類を正しく理解し、計画的に準備を進めることで、確実に取得することができます。
特にITエンジニアは、専門性を活かした就労が可能な在留資格を取得しやすい立場にあります。
この記事を参考に、着実にビザ取得を進めていきましょう。