インド人ITエンジニアの日本での就労ニーズが高まっています。
2024年の調査ではインドの工科系学生の9割以上が日本での就労に関心を示しており、日本企業側もインド人IT人材の採用に積極的です。
本記事ではインド人エンジニアが日本で働くために必要な就労ビザの取得から、実際の就労開始までの具体的なプロセスを解説します。
※下記の記事のは英語版になります。(Read this article in English, please click bottom↓)
- インド人ITエンジニアに適した就労ビザの種類と、取得に必要な要件について
- 在留資格認定証明書(COE)の申請から就労ビザ取得までの手順と準備すべき書類について
- 日本での就労開始に向けた実務的な準備事項(住居、社会保険、税金など)について
1.インド人エンジニアが日本のIT業界で働くメリット

日本のIT業界は高度な技術力を持つインド人エンジニアにとって、魅力的なキャリアの場を提供しています。
特に近年では日本企業のデジタルトランスフォーメーション推進に伴い、グローバル人材の需要が急速に高まっています。
日本のIT企業が求める人材スキル
日本のIT企業が求める技術スキルは、システム設計・開発の実務経験を基本としつつ、特にJavaやPythonなどのプログラミング言語の専門知識が重視されています。
またデータベース設計・管理能力やクラウドサービスの実装経験も重要な要素となっています。
技術スキルと同様に重要視されているのが、チーム開発におけるコミュニケーション能力です。日本の開発現場ではチームワークとプロジェクトマネジメントスキルが非常に重要とされ、技術トレンドへの対応力も求められています。
また基本的な日本語でのコミュニケーション能力があれば、より円滑な業務遂行が可能となります。
インド人エンジニアの平均給与と待遇
日本企業での就労においては、法律により日本人エンジニアと同等以上の待遇が保証されています。
新卒エンジニアの場合、一般的に年収300~400万円からキャリアをスタートし、実務経験3年以上で400~600万円、上級エンジニアになると600~800万円以上の年収も十分に可能です。
待遇面では、充実した福利厚生制度が整っています。健康保険や厚生年金などの社会保険が完備されているほか、多くの企業で住宅手当や赴任手当が支給されます。
さらに年次有給休暇の法定付与に加え、スキルアップを支援する資格取得支援制度なども一般的に導入されています。
参考:厚生労働省:jobtag
インドIT人材の日本での活躍事例
日本では、タタ・コンサルタント・サービシズやWiproなどの大手IT企業で多くのインド人エンジニアが活躍しています。
彼らはスタートアップ企業でリードエンジニアとして、また大手企業でグローバルプロジェクトのブリッジSE役として、重要な役割を担っています。
最新の調査によると、インド・ベンガルールの工科系大学生の91.8%が日本での就労に興味を示しており、特筆すべきは地方都市での就労にも高い関心があることです。
実際、「都市・地方にこだわらない」が50.3%、「地方で働きたい」が9.2%という結果が出ています。
キャリア発展の可能性も豊富で、多くのインド人エンジニアがグローバルプロジェクトでリーダーシップポジションに就いています。
特に日本・インド間のビジネス展開において重要な役割を果たし、技術イノベーションの推進役としても期待されています。
2.日本の就労ビザの種類と選び方

日本で働くためのビザ取得において、ITエンジニアには複数の選択肢があります。
それぞれのビザタイプには特徴があり、自身のキャリアプランや条件に合わせて最適なものを選択することが重要です。
技術・人文知識・国際業務ビザの特徴
技術・人文知識・国際業務ビザ(通称:技人国ビザ)は、ITエンジニアにとって最も一般的な就労ビザとなっています。
日本企業で雇用される大卒者の約9割がこのビザを取得しており、システムエンジニアやプログラマーなどの職種に最適です。
在留期間は最長5年まで認められ、システム開発・設計業務、データベース構築・管理、ネットワークエンジニアリング、IT関連のコンサルティング業務など、幅広い業務に対応しています。
高度専門職ビザの取得条件とメリット
高度専門職ビザは、より優遇された条件での就労を可能にする特別なカテゴリーです。
高度専門職ビザの取得…学歴、職歴、年収などによるポイント制が採用されている。70点以上で取得資格が得られる。研究実績・保有する資格なども加点対象となっている。
高度専門職ビザの主なメリット
- 最長5年の在留期間が認められる
- 複数の事業・活動が可能になる
- 永住許可申請の要件が緩和される
- 配偶者の就労制限が緩和される など
上記の特典により、より安定した長期的な日本での就労が可能となります。
ビザの有効期間と更新について
就労ビザの期間と更新について理解することは、長期的なキャリアプランを立てる上で重要です。
初回の在留期間…通常1年または3年が付与される
更新時…最長5年まで延長が可能となる。ただし、高度専門職ビザの場合は異なる基準が適用される。
■更新手続きについて
期限の3ヶ月前から申請可能で、在職証明書などの更新用書類が必要となります。
更新時の審査では、就労実績や給与支払いの証明が重要な評価要素となります。一般的に更新時の審査は新規申請より緩やかですが、就労実績と契約条件の遵守、納税・社会保険への加入状況、日本語能力の向上、キャリアの発展状況などが総合的に評価されます。
■合わせて読みたい
以下の記事では、日本就労ビザの取得について、詳しく解説しています。
3.就労ビザ取得の必須要件

就労ビザを取得するためには、複数の重要な要件を満たす必要があります。
これらの要件は、申請者の資格や能力を証明するとともに、日本での安定した就労活動を保証するためのものです。
以下では、主要な要件についてくわしく説明します。
必要な学歴・職歴の条件
就労ビザ取得のための学歴要件
・インドもしくは海外の大学を卒業し、日本の学士相当以上の学位を取得していること | ・専門分野と予定される職務内容との間に明確な関連性があること |
申請時には成績証明書と卒業証書の提出が必須となり、場合によってはシラバスやカリキュラムの提出を求められることもあります。
学歴要件を満たさない場合
職歴要件による申請も可能です。
- 実務経験として10年以上(業務によっては3年以上)が必要。
- 実務経験は従事予定の業務に直接関連する専門的なものでなければならない。
職歴の証明には在職証明書が必須となり、具体的な職務内容の記載が重要視されます。
給与基準と雇用条件の要件
日本での就労にあたっては、日本人と同等以上の待遇が法的に求められています。
給与基準については基本給のみで判断され、各種手当は含まれません。この給与水準は同じ職務に従事する日本人従業員の給与や、地域の一般的な賃金水準との整合性が重視されます。
雇用条件については、雇用契約書に必要事項が明確に記載されていることが重要です。
具体的には、労働時間、休日、給与支払方法などの基本的な労働条件に加え、社会保険への加入状況や残業手当の支払い体制なども確認の対象となります。
日本語能力に関する要件
日本語能力については、従事する業務内容に応じて要求されるレベルが異なります。
IT技術職の場合、基本的なコミュニケーションレベルが求められますがプロジェクトリーダーとして活動する場合は、より高度なビジネスレベルの日本語力が必要となります。
特に顧客との折衝が必要な場合は、さらに高度な日本語能力が求められます。
日本語能力の証明方法としては、日本語能力試験(JLPT)の証明書が一般的です。また、日本での留学や就労経験がある場合は、それらの経験も評価の対象となります。
ただし社内の公用語が英語である場合や、国際プロジェクトに特化した業務の場合は、日本語要件が緩和されることもあります。
特に、通訳・翻訳サポートが常時利用可能な環境や、グローバルチームでの業務に従事する場合は、より柔軟な対応が認められています。
4.ビザ申請の手順と必要書類

ビザ申請プロセスは、複数の段階を経て進められる重要な手続きです。
特に在留資格認定証明書(COE)の取得から始まり、各種書類の準備と提出、そして最終的なビザ発給まで、慎重な対応が求められます。
以下では、各段階における具体的な手順と注意点を説明します。
在留資格認定証明書(COE)の取得方法
COEの取得は就労ビザ申請における最初の重要なステップです。申請は日本の入国管理局に対して行われ、通常は採用企業側が申請者となります。
申請は受入企業の所在地を管轄する入国管理局で行う必要があり、採用内定を受けた後に手続きを開始します。
近年では、オンライン申請システムの利用が推奨されており、手続きの効率化が図られています。しかし申請書類の作成と提出には細心の注意が必要です。
特に記載内容の正確性と一貫性が重要で、些細な不備も審査の遅延や不許可につながる可能性があります。
必要書類の準備リスト
申請に必要な書類は、申請者本人に関する書類と企業側が準備する書類に大別されます。
申請者本人が準備する基本的な書類
- パスポートのコピー
- 証明写真
- 履歴書
- 学位証明書、成績証明書
- 職歴がある場合は、その証明書
企業側からは、雇用契約書または内定通知書、会社の登記簿謄本、直近の決算報告書、事業内容を説明する資料、給与支払証明書などの提出が求められます。
新設企業の場合は事業計画書が必要となり、また職務内容説明書や組織図の提出を求められることもあります。
必要となる書類は日本語または英語で作成される必要があり、その他の言語の場合は翻訳文の添付が必要です。特に重要な書類については、公証機関による認証が求められる場合もあります。
申請から取得までの所要期間
COE取得までの標準的な処理期間は1〜3ヶ月程度です。
ただし、申請時期が繁忙期と重なる場合や、提出書類に不備がある場合は、さらに時間を要することがあります。
一部の企業は優先処理制度を利用できる場合もありますが、これは一定の条件を満たす必要があります。
COE取得後は、在インド日本大使館でのビザ申請手続きに移ります。この過程には通常5日から2週間程度かかります。重要な点として、COEの有効期間は発行から3ヶ月間と定められています。
この期間内にビザ申請と取得を完了する必要があるため、速やかな手続きが推奨されます。
5.日本での就労開始までの準備

ビザを取得し、いよいよ日本での就労を開始する段階ではさまざまな実務的な準備が必要となります。
スムーズな就労開始と生活基盤の確立のために、雇用契約の確認から生活環境の整備、各種手続きまで、計画的に進めることが重要です。
雇用契約書の重要チェックポイント
雇用契約書は就労の基本となる重要文書です。
■確認すべき必須記載事項
雇用期間(期間の定めの有無)、就業場所と従事する業務内容、勤務時間・休憩・休日の規定、給与額と支払方法、そして昇給・賞与に関する事項が挙げられる。これらは労働基準法で定められた必須項目であり、明確な記載が必要となる。
■特に注意が必要な確認ポイント
ビザ取得に関する停止条件をよく確認すること。多くの契約では、有効な就労ビザの取得を契約発効の条件としており、この条項の有無と内容を確認することが重要となる。
また試用期間がある場合はその条件、残業手当の計算方法、退職に関する規定、機密保持条項なども、慎重に確認する必要がある。
来日後の住居と生活セットアップ
日本での生活を始めるにあたり、最も優先度が高いのは住居の確保です。多くの企業では住宅支援制度を設けており、社宅の提供や住宅手当の支給、住宅探しのサポートなどを行っています。
日本の賃貸契約では保証人が必要となることが多く、会社が機関保証を手配するケースも一般的です。
住居が決まったら、電気・ガス・水道などのライフラインの開通手続きを行います。
これらは通常、不動産会社や管理会社がサポートしてくれますが、手続きの詳細や料金体系については事前に確認しておくことが賢明です。
来日後最初に行うべき行政手続きとして、市区町村役所での住民登録があります。
住民登録は来日から14日以内に必要で、これを基にマイナンバーカードの取得手続きも行えます。
また、銀行口座の開設も優先度の高い手続きの1つです。多くの企業は、これらの手続きを人事部門などでサポートする体制を整えています。
日本の社会保険と税金の基礎知識
日本で就労する場合、社会保険への加入は法的な義務となります。保険料は原則として会社と従業員で折半して負担します。
- 健康保険 医療費の自己負担が3割に抑えられる
- 厚生年金 将来の年金受給権が確保される
- 雇用保険 失業時の所得保障を提供する
- 労災保険 業務上の傷病に対する補償を提供する
税金に関しては、給与から所得税が源泉徴収される仕組みとなっています。住民税は前年の所得に基づいて翌年度から課税されます。
年末には年末調整という手続きがあり、一年間の税金の過不足を精算します。インドと日本の間の国際租税条約の適用については、自身の状況に応じて確認が必要です。
社会保険料や税金には様々な控除制度が設けられています。社会保険料控除は全額が対象となり、配偶者がいる場合は配偶者控除も適用される可能性があります。
また、住宅ローンを組む場合は住宅ローン控除、医療費が一定額を超えた場合は医療費控除など、状況に応じて利用できる控除制度があります。
これらの制度を理解し、適切に活用することで、税負担を適正に管理することができます。
参考:厚生労働省:日本の社会保障の仕組み 財務省:国際租税条約
6.ビザ取得はインド人エンジニアの需要が高まる日本での第一歩

日本での就労を目指すインド人ITエンジニアにとって、ビザ取得は重要な第一歩となります。
本記事で解説した要件や手続きを十分に理解し、計画的に準備を進めることで、スムーズな就労開始が可能となります。
日本企業側のニーズも高まっている今、充実したキャリアの構築に向けてぜひこの情報を活用してください。