日本での就職活動において、外国人エンジニアが直面する課題は少なくありません。言語の壁や文化的な違い、面接スタイルの違いなど、乗り越えるべきハードルが存在します。
しかし、適切な準備と戦略があれば、それらの課題を克服し、日本企業での活躍のチャンスを掴むことができます。
本記事では、外国人エンジニアが日本の面接で成功するための具体的なポイントをご紹介します。
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- 外国人エンジニアが日本の面接で直面する課題とその対処法について
- 技術面接を成功させるための具体的な準備方法と質問対応テクニックについて
- 面接から内定獲得までの具体的な準備スケジュールと当日の注意点について
1.日本の面接で外国人エンジニアが直面する課題

日本の面接には、海外の面接とは異なる特徴があります。外国人エンジニアの方は、特に次の3つの課題に直面する場合が多いでしょう。
言語とコミュニケーションの壁
外国人が日本で面接を受ける場合において、コミュニケーショントラブルは付き物です。
特に日本語が得意ではない場合、伝えたいことがうまく伝わらない懸念もあります。また、たとえ日本語が話せたとしても、日本語特有の曖昧な表現を理解するのは簡単ではありません。
例えば「いいです」という表現は、「良い」という意味だけでなく断る意味でも使われ、イエス・ノーがはっきりした言語を使う外国人の方には理解が難しい場合もあります。
他にも日本語は、主語・述語・目的語などを省略することがあります。
例えば「明日の予定は?」といった、主語と述語を省いた問いかけなどです。日本語特有の表現の理解は、多くの外国人の方にとって面接の課題となります。
文化的なギャップ
文化的なギャップに苦戦する外国人の方も多いようです。違いをみていきましょう。
日本…ハイコンテクスト文化(空気を読む・意図を察することが求められる)
お互いに認識や知識、文化的背景などを共有していることを前提としてコミュニケーションを取ります。以心伝心に頼る場合も多く、省略されている部分を相手の声色や表情などから読み取らなければなりません。
欧米など…ローコンテクスト文化(全て言語化する)
ローコンテクスト文化では、伝えたいことを全て言葉にして相手に伝えます。そのため、お互いに共通する要素があまりない場合でもコミュニケーションが可能で、誤解が生じる可能性も少ないのが特徴です。
面接スタイルの違い
日本企業と海外企業では、面接で重視するポイントが異なります。日本企業の面接スタイルに不慣れな場合は苦戦しがちです。
【面接スタイルの違いを比較】
日本企業 | 海外企業 | |
能力以外に人間性やビジネスマナー、コミュニケーションスキルなどを重視 | ⇔ | 能力を重視する |
面接での質問事項は比較的多い | ⇔ | 面接での質問はほとんどスキルや経歴に関するもの |
30分〜1時間程度かかる場合もある | ⇔ | 短時間で終了する |
日本企業では、スキルや経歴がなくても将来性を見込まれて採用される可能性がある点はメリットでしょう。海外企業と比較すると複雑に思われがちですが、ポイントをつかむことが大切です。
2. 技術面接を成功させる

外国人エンジニアの方が日本の面接に合格するには、技術面接を成功させることが重要です。そのためには、次の3つの項目に注目しましょう。
技術力を整理し正確に伝える
技術面接は、応募者の技術レベルを把握するために実施します。そこで、まずは自分の技術力を整理することが必要です。
エンジニアとしての経験年数や使用可能な言語、保有している資格、取り組んできた業務などを洗い出しましょう。また技術力を正確に伝えられるように準備しておきます。
技術面接は質問に回答する形式が多いため、質問を想定しそれに対して論理立てて説明できるようにするのがポイントです。
技術力とこれまでの経験をアピールする
技術面接では、技術力とこれまでの経験をアピールする力も求められます。
質問に対してエンジニアとしての経験年数や使用可能な言語、保有スキル、経験した業界などを具体的に入れ込んで回答することが重要です。
応募先の企業が求めているスキルを保有している場合、それを特にアピールできるようにしましょう。アピールしたいスキルに関しては、具体的なエピソードを交えて説明するのがポイントです。
質問対応のテクニック
技術面接を成功させるためには、質問対応テクニックを身につけておく必要もあります。
以下の5つについての想定質問に対応できるようにしておくのが、技術面接成功の決め手です。
- 自己PR…技術力とこれまでの経験をメインに回答する。1〜2分で簡潔にまとめる。
- 志望動機…応募先企業に対して魅力を感じた点や貢献したい点などを伝える。
- 転職理由…ネガティブな表現は避ける。キャリアアップのためなどポジティブに伝える。
- 経験・スキル・実績…担当プロジェクトでの成果や、失敗点の改善方法などを用意しておく。
- 逆質問…企業への貢献意欲や、現場で活躍できる点を示せる質問をする。
3. 外国人エンジニアの強みを活かした自己アピール方法

日本の面接で、外国人エンジニアならではの強みを伝えたいと考える方もいるはずです。その具体的な方法を解説していきます。
グローバルな視点の活用
外国人エンジニアを採用すれば、グローバルな視点を企業に取り入れられる点をアピールするのは効果的です。日本人だけでは持てなかった視点から、新しいアイデアを生み出せることを示すと良いでしょう。
母国の言語や文化などに造詣が深く、新たな市場への進出に役立つことをアピールするのもおすすめです。
多様性がもたらす価値の説明
異なる文化的背景を有する外国人エンジニアを採用すれば、企業に多様性がもたらされます。そういった点にどれだけ価値があるのか説明するのも自己アピールのひとつです。
自己アピールの際は、まず外国人エンジニアが職場にいれば、日常的にさまざまな視点や考え方に触れることで、従業員が自然に多様性を意識できるようになることを伝えます。
また多様性の視点から柔軟に物事を考えられるようになれば、意思決定や市場開拓などにおいて優秀な成果を上げられる可能性がある点をアピールするとよいでしょう。
技術力と適応力の証明
外国人エンジニアは、技術力と適応力も証明しなければなりません。
技術力に関しては、母国の教育などで得た日本にはない知識やスキルをアピールしてみましょう。また日本の企業は、外国人エンジニアに対して異文化への適応力も求めています。過去に他の国での就労経験や作業経験があればアピールしましょう。
グループディスカッションなどで適応力を評価する場合もあります。その際には、日本人チームに適応し、仕事を進められる能力があることを証明できるような準備も必要です。
4.面接官の心をつかむ:日本企業が求める4つの要素

面接官の心をつかむために、企業が求める次の4つの要素は押さえておくべきです。
チームワークと協調性
チームワークにおいて協調性は必要不可欠です。面接では、例えば仕事をするうえで重要視していることは何か質問された際に、チームメンバーの意見や考え・立場などを尊重する旨をアピールすると好印象になります。
前職でチームメンバーのサポートに回り、プロジェクトを成功させたなどのエピソードを説明するのも効果的です。
長期的なコミットメント
日本の企業は、長期的なコミットメントの意志があるかどうかを重視します。
- 志望動機を聞かれた際…将来的にその企業で実現したいことや努力を惜しまないことなどを交えて説明する。
- スキルや経験の活かし方を質問された際…仕事内容に合わせたキャリアプランについて答えるのが最適。
※注意点:今後どのくらい日本にいるつもりか聞かれた際に、長期的なコミットメントが求められているからといって、予定を偽って長い期間を答えるのは避けましょう。
技術力と学習意欲
面接官の心をつかむために、技術力と学習意欲もアピールする必要があります。
実績や成功体験を聞かれた場合は具体的な売上や受賞歴などを伝えるのがおすすめです。また企業は学習意欲があるか確認するために、身につけたいスキルを質問する場合があります。
回答する際は、そのスキルを身につけると業務にどのように活かせるのか交えて話すと、相手の心をつかみやすいでしょう。
今後の課題を聞かれた際は
課題を克服するための具体的なプランとセットで説明することも学習意欲のアピールとなります。プランを説明する際は、1年後・5年後・10年後の3段階で伝えると効果的です。
コミュニケーション能力
日本の企業は、外国人エンジニアに対して高いコミュニケーション能力を求めています。
面接の際に求められること | |||
明瞭な受け答え | 丁寧な言葉遣い | 積極的な態度 | スムーズなやり取り |
また相手の考えを理解でき、自分の意見を正確に伝えられる程度に日本語スキルを習得しておくことは必須です。
顧客や上司と円滑にコミュニケーションが取れるように、ビジネスマナーも身につける必要があります。IT関連の専門用語や、日本のビジネスシーンでよく使う単語なども覚えておきましょう。
5. 面接成功に向けた準備計画

日本の面接で合格するには、入念な準備も必要です。準備は4週間ほど前から段階を踏んで行います。
面接前の準備(2-4週間前)
4週間前までには、面接で必要となる書類の確認を済ませておきます。万が一紛失していた場合、再発行に時間がかかるため、なるべく早めに必要書類をそろえておくことが重要です。
必要となる書類は企業によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。
必要書類の例
外国人登録証明書
就労資格証明書
在留カード
パスポート
日本語能力試験の結果などの資格証明書など
面接の2週間前になったら…
自己分析や長所・短所の整理などを行い、自己PRをまとめておきましょう。同タイミングで企業研究も済ませておくのがベストです。
また志望動機などの想定質問に対する回答も考えておきましょう。
面接直前の準備(1週間前)
1週間前には、職務経歴書と履歴書を準備します。職務経歴書には、以下の項目を記載します。
職務経歴の欄は、在籍した企業ごとに在籍期間や事業内容、携わったプロジェクト内容などを記入してください。スキルに関しては、どのくらい実務経験があるのか具体的に記入しておくのがポイントです。
- 氏名
- 提出年月日
- 職務要約
- 職務経歴の概要
- 活かせる経験・知識
- 資格・スキル
- 自己PR など
履歴書には、主に以下の項目を記載します。特技・自己PRの欄に、ギャンブルなどマイナスなイメージのことを記入するのは避けてください。本人希望は、希望する仕事内容や勤務地、給与などを記入できる欄ですが、「貴社規定に従います」と記入するのが一般的です。
- 氏名・現住所などの基本情報
- 学歴・職歴
- 免許・資格
- 特技・自己PR
- 本人希望事項
■合わせて読みたい
以下のコンテンツでは、日本企業の面接で役立つ、履歴書の作成や、職務経歴書の作成ノウハウについてご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
面接当日の注意点
面接は第一印象も重要となります。
服装 | 持ち物 | 時間について |
・清潔感のある服装を心がける ・黒や紺、グレーがなどの落ち着いた色のスーツが望ましい | ・必要書類と筆記用具、ハンカチ、ティッシュ、腕時計、スマートフォンなど | ・時間厳守で向かい、指定時間の5〜10分前には到着するようにする |
面接が始まる際
- 3回ノックして返事を聞いてから入室し、ドアを閉めたら挨拶と一礼をする
- 「どうぞ」と言われてから「失礼いたします」と伝えて着席する
面接中
アイコンタクトや適切な声量、明瞭な受け答えなどを心がける
面接の終了時
一礼後ドアへ向かい「失礼いたします」と挨拶してから退室する
6.計画的な準備で日本での面接に合格する

日本の面接に合格するためには技術力だけでなく、文化的な理解と適切なコミュニケーション能力が求められます。
外国人エンジニアならではの強みを活かしつつ、日本企業が重視する要素を理解し計画的な準備を行うことが成功への近道です。
グローバル化が進む今日、あなたの経験とスキルは日本企業にとって大きな価値となるはずです。