ITエンジニアとして日本で働き続けるためには、在留期間の適切な更新が不可欠です。
特に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つエンジニアは、更新時期や必要書類、職務内容の証明など、特有の注意点があります。
この記事では在留手続き更新に必要な書類から申請方法、トラブル対策まで、実務的な視点で解説していきます。
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- 在留期間更新に必要な書類と、ITエンジニアならではの準備ポイントについて
- 申請のタイミングや手続きの流れ、スムーズな更新について
- トラブルが発生した際の具体的な対処方法と事前の予防策について
1.在留手続き更新の基本知識

外国人エンジニアとして日本で働き続けるためには、在留手続きの更新が不可欠です。この手続きを適切に行うことで、継続的な就労が可能となります。
以下では、在留手続き更新に関する重要な基礎知識について説明していきます。
在留期間の更新とは何か
在留期間の更新とは、外国人が日本での滞在期間を延長するための手続きです。在留カードに記載された在留期限が切れる前に、継続して日本に滞在するために必要不可欠な手続きとなります。
ITエンジニアの多くが保有している「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、最長5年間の在留期間が認められていますが、この期間を超えて日本での就労を継続する場合には、必ず更新手続きを行う必要があります。
更新申請が可能な期間
在留期間の更新申請は、現在の在留期限が切れる3ヶ月前から申請が可能となります。申請は原則として本人が行う必要があり、在留期限切れ後の申請は認められず、不法滞在となるリスクがあります。
審査には通常2週間~1ヶ月程度の時間を要します。更新申請中の場合、在留期限を過ぎても2ヶ月間の特例期間が認められます。
このためできるだけ早め、具体的には3ヶ月前からの申請をおすすめします。特に繁忙期は審査に時間がかかる場合があるため、余裕を持った申請が重要です。
更新手続きの流れ
更新手続きは大きく3つの段階で進められます。
- 在留期間更新許可申請書やパスポート、在留カード、その他必要書類などの準備を行う
- 管轄の入国管理局への申請と申請手数料の納付を行い、2週間から1ヶ月程度の審査期間に入る
- 許可通知はがきを受け取り、入国管理局で新しい在留カードを受け取る
近年ではオンラインでの申請も可能となっており、マイナンバーカードを所持している場合は、出入国在留管理庁の電子申請システムを利用することで、窓口での待ち時間を削減できます。
ただし、オンライン申請の場合でも、最終的な在留カードの受け取りは入国管理局の窓口で行う必要があります。
2.在留手続き更新に必要な書類一覧

在留手続きの更新を円滑に進めるためには、必要な書類を漏れなく準備することが重要です。ここでは、ITエンジニアが在留期間を更新する際に必要となる書類について、くわしく解説していきます。
パスポートと在留カード
在留期間更新申請の際には、有効期限内のパスポートと現在の在留カードが必須となります。
パスポート | 在留カード |
必ず有効期限を確認し、期限切れが近い場合は更新を検討する必要がある | 必ず原本を持参する必要がある。記載内容に変更がある場合には、変更後の情報を証明する書類も併せて提出する。 |
在留期間更新許可申請書
在留期間更新許可申請書は入国管理局のウェブサイトからダウンロードできます。
申請書には所定の規格に従った写真の貼付が必要で、写真は縦4cm×横3cm、撮影後3ヶ月以内のものを使用します。
また所属機関等作成用の書類については、勤務先に記入を依頼する必要があります。申請書の記入には正確性が求められるため、記入例を参考に丁寧に作成することが重要です。
写真(規格・注意点)
申請に使用する写真には厳格な規格が定められています。
- サイズは縦4cm×横3cm
- 背景は無地の白色
- 撮影月6カ月以内のものを使用
- 正面を向いて無帽で撮影されたものである必要がある
- 影がなく鮮明な画質であること など
これらの要件を満たさない写真は受け付けられない可能性があるため、専門の写真店での撮影も視野にいれましょう。
在職証明書の準備
在職証明書は現在の就労状況を証明する重要な書類です。
雇用形態、勤務地などを明確に記載する必要があります。証明書入国管理局のウェブサイトからダウンロードが可能であり、会社名や住所、人事責任者の署名・捺印などが必要です。
特にITエンジニアの場合、従事している業務内容が技術・人文知識・国際業務の在留資格に合致していることを明確に示すことが重要となります。
給与明細と源泉徴収票
経済的な安定性を示す書類として、給与明細と源泉徴収票の提出が求められます。直近3ヶ月分の給与明細書のコピーと、前年分の源泉徴収票のコピーを準備します。
また賞与がある場合は、賞与明細書も添付することで、より安定した収入があることを示すことができます。これらの書類は、申請者が安定した生活基盤を有していることを証明する重要な資料となります。
住民税の納付証明書
納税状況を証明する書類として、直近1年分の住民税納付証明書が必要です。この証明書は居住地の市区町村役所で取得可能です。特に、未納がないことを証明することが重要となります。
適切な納税履歴は、社会的責任を果たしている証明となるため、在留期間更新の審査において重要な要素となります。
雇用契約書のコピー
現在の雇用条件を証明する書類として、雇用契約書のコピーが必要です。正社員の場合は雇用契約書の写し、契約社員の場合は現在有効な契約書の写しを提出します。
契約書には職務内容、給与、勤務地などが明確に記載されている必要があります。特にITエンジニアの場合、従事する業務が専門的な技術業務であることを示す記載が重要となります。
会社の登記簿謄本
勤務先企業の正式な登記情報を示す書類として、会社の登記簿謄本が必要です。この書類は発行後3ヶ月以内のものを使用し、会社の実在性と事業内容を証明します。
法務局で取得可能で、会社の基本情報や事業目的、役員構成などが確認できる重要な書類となります。
会社の決算報告書
企業の経営状態を示す書類として、直近期の決算報告書のコピーが必要です。この書類には売上高、利益等の経営状況が記載されており、会社の規模や安定性を証明する重要な資料となります。
特にIT企業の場合、安定した事業基盤があることを示すことで、雇用の継続性を証明することができます。
手数料納付用の収入印紙
申請時には4,000円分の収入印紙が必要となります。収入印紙は郵便局や売捌所で購入可能で、申請書に貼付する必要があります。
手数料の納付は申請の受理に必須となるため、事前に準備しておくことが重要です。
3.ITエンジニアが注意すべきポイント

ITエンジニアの在留手続き更新には、一般的な更新手続きとは異なる特有の注意点があります。ここでは、特に技術者として気をつけるべき重要なポイントについて詳しく解説していきます。
技術・人文知識・国際業務の在留資格における注意点
技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つITエンジニアは、職務内容の一致性について特に注意が必要です。
在留資格で認められた活動内容と実際の業務内容の整合性が重要となり、システム開発、プログラミング、IT技術サポートなどの業務が該当することを明確に示す必要があります。
学歴・職歴要件の継続的な確認も重要で、専攻分野と現在の職務の関連性を示す資料を準備する必要があります。
実務経験による資格取得の場合は、経験年数の証明書類が重要となり、新しい資格や技術スキルの証明書があれば、それらの添付も推奨されます。
フリーランス・副業の場合の追加書類
フリーランスや副業を行っているITエンジニアの場合、通常の更新手続きよりも多くの書類が必要となります。
・契約関係の証明
すべての取引先との業務委託契約書のコピー、発注書や注文書など仕事の実態を示す書類、報酬額や支払い条件が明記された書類が必要。
・収入証明
確定申告書の写し、所得税納付証明書、取引先からの支払い明細書などを準備する。また、事業実態の証明として、事業計画書や実績報告書、主要クライアントからの推薦状、業務内容詳細書なども求められる。
上記の書類は、安定した収入と正当な事業活動を行っていることを示す重要な証拠となります。
転職予定がある場合の対応
転職を検討している場合や予定がある場合、特別な配慮が必要となります。
在留期間更新のタイミングと転職時期の整合性を確認し、可能な限り更新手続き完了後の転職を推奨します。やむを得ない場合は入管への事前相談を検討します。
新雇用先との調整も重要で、内定先からの採用証明書や雇用条件通知書の取得、新しい職務内容が在留資格の範囲内であることの確認が必要です。
また給与条件や勤務地などの変更点を明確に説明できる資料も準備します。
書類準備の際は、現在の会社と新会社両方の資料が必要になる可能性があり、転職理由書の準備やキャリアプランに沿った転職であることの説明資料も重要となります。
4.スムーズな更新のためのチェックリスト

在留期間の更新をスムーズに進めるためには、系統的な準備と確認が重要です。ここでは、申請前の準備から申請後の注意点まで、段階的に確認すべき事項についてくわしく解説していきます。
申請前の準備チェックリスト
申請前の準備段階では、書類の準備状況を総合的に確認することが重要です。
- 在留カードの有効期限とパスポートの残存有効期間を確認し、申請書の記入内容や証明写真の規格が適切であるかを確認する。
- 就労関係書類については、在職証明書の取得、直近3ヶ月分の給与明細書の準備、源泉徴収票のコピー、雇用契約書のコピーなど、すべての必要書類が揃っているかを確認する。
- 納税関係書類として住民税の納付状況を確認し、納税証明書や所得証明書を適切に準備する。
申請時の確認事項
申請当日は、提出書類の最終確認を慎重に行う必要があります。
■細かくチェックしたいポイント例
- すべての必要書類が揃っているか
- 書類の有効期限は適切か
- 原本とコピーの区別は明確か
- 署名・捺印に漏れはないか
- 手数料として必要な収入印紙4,000円の準備
- 申請書への適切な貼付位置の確認 など
当日の持ち物として、申請書一式、在留カード、パスポートに加え、追加提出を求められる可能性のある書類も念のため用意しておくことが賢明です。
これらの準備を万全にすることで、スムーズな申請手続きが可能となります。
申請後の注意点
申請後は、審査状況の適切な管理が重要となります。
- 審査期間について
通常2週間から1ヶ月程度かかることを把握し、通知カードを大切に保管するとともに、追加書類の要請にも即座に対応できるよう準備しておく必要がある。 - 就労継続に関して
期限切れ前の申請を確実に行い、審査中の就労可能期間を正確に把握しておく。また会社に対しても適宜状況を報告し、スムーズな就労継続ができるよう調整する。 - 結果受け取り時
パスポート、在留カード、通知はがきなどの必要書類を準備し、受け取り可能時間を確認した上で、手数料が必要な場合はそれも用意しておきます。
5.トラブル対策と解決方法

在留手続きの更新において、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。ここでは想定されるトラブルとその具体的な対応策について解説します。
適切な対処により、多くの問題を回避または解決することが可能です。
必要書類が間に合わない場合の対処法
書類の準備が間に合わない状況に陥った場合は、まず入国管理局への事前相談を行うことが重要です。
遅延理由を明確に説明し、書類取得までの具体的なスケジュールを提示することで、対応の可能性が広がります。
また提出できる類似書類がないか検討し、補足説明書を準備することで、暫定的な対応が認められる場合もあります。
やむを得ない事情がある場合は、一部書類の事後提出について相談し、提出可能時期を明確に示した確約書を提出することも検討します。
特に重要な書類については、取得に時間がかかることを見越して早めに準備を始めることが望ましいでしょう。
在留期限切れが迫っている場合の対応
在留期限切れが迫っている状況では、即座に対応を開始する必要があります。
まず入国管理局への緊急相談を行い、最低限必要な書類を優先的に準備します。受付窓口では、切迫している状況について丁寧に説明することが重要です。
また特例申請の可能性についても検討し、やむを得ない事情を説明する資料や、緊急性を証明する書類を準備します。
同時に、今後の改善計画も提示できるよう準備しておくことが望ましいです。
会社側との協力体制も重要で、人事部門への緊急連絡を行い、必要書類の即時発行を依頼するとともに、担当者からの助言も積極的に求めていく必要があります。
申請が不許可になりそうな場合の対策
不許可のリスクが想定される場合は、事前に対策を講じることが重要です。
まず、想定される不許可理由を確認し、それに対する追加説明資料を準備します。必要に応じて行政書士などの専門家に相談することも検討します。
不許可を避けるための具体的な改善策
- 職務内容の詳細な説明
- 将来のキャリアプランを提示する
- 技術スキルの証明書や実績資料を充実させる
- 必要に応じて推薦状などを取得する
不許可を回避するためには、特に収入基準や職務内容の適格性について十分な証明を行うことが重要です。
また会社の状況についても詳細な説明を準備し、安定した就労環境があることを示す必要があります。
万が一不許可となった場合に備えて、再申請に向けた準備も並行して進めておくことも考えておきましょう。
6.日本の在留手続きをスムーズに更新するためにも必要書類は確実に

在留期間の更新は、日本でのITエンジニアとしてのキャリアを継続する上で極めて重要な手続きです。
必要書類の準備から申請手続き、そして想定されるトラブルへの対策まで、計画的に進めることが成功の鍵となります。
特に技術職としての職務内容の証明や、フリーランス・副業の場合の追加書類など、エンジニア特有の要件にも注意を払い、余裕を持って更新手続きに臨みましょう。
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