IT業界で働くなかで「転職回数が多いと選考で不利になるのでは」と気になる方は少なくありません。ですが大切なのは、回数そのものよりも「転職の理由」と「キャリアの一貫性」です。
この記事では公的データで実態を確認し、年代別の目安、企業が見るポイント、回数を強みに変える伝え方に加え、日本で働く外国籍エンジニア向けに在留資格の注意点まで整理します。
- IT業界の離職率は全産業平均より低く、転職で年収が上がる人が多い点について
- 選考で重視されるのは回数より「短期離職・キャリアの一貫性・転職理由」であることについて
- 外国籍エンジニアが押さえるべき在留資格の届出と空白期間の注意点について
1. IT業界の転職回数は本当に多い?公的データでみる実態

「IT業界は転職が多く、離職率も高い」というイメージは広く持たれています。ですが公的データを見ると、必ずしもそうとは言えません。
情報通信業(IT業界)の離職率は、令和6年(2024年)で10.2%と、全産業平均(14.2%)を下回っています。数字だけを見れば、IT業界はむしろ人が定着しやすい業界です。
さらに同じ調査では、情報通信業は入職率が11.2%と離職率を上回り、入職が離職を上回る「純増」の状態にあります。つまり、離職率の低さと人材の純増が同時に成立しており、「回数の多さ=業界が不安定」という通説への有力な反証といえます。
とはいえ、一人ひとりのキャリアを見ると、IT人材はスキルや待遇を上げるために転職することが多く、その結果として回数が重なりやすくなります。
「業界が不安定だから辞める」のではなく、「より良い環境や技術を求めて動く」前向きな転職が多いのが特徴です。
転職回数が多くても年収は上がりやすい
「回数が多いと年収が下がるのでは」と心配する方もいますが、データはむしろ逆です。
令和6年の転職者のうち、前職より賃金が「増加」した人は40.5%(前年より3.3ポイント上昇)で、「減少」した29.4%を大きく上回りました。
「増加」が「減少」を11.1ポイント上回っており、転職で待遇を上げている人が多いことがわかります。

特にIT・エンジニア職は人手が足りず需要が高いため、転職で年収を上げやすい職種です。回数の多さがそのまま年収低下につながるわけではありません。
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転職で年収が上がる人が多いとはいえ、実際にアップを勝ち取るには押さえるべきポイントがあります。
応募のタイミングや交渉の進め方など、年収アップを実現するための具体的なコツを知っておくと、重ねた転職回数を収入の伸びにつなげやすくなります。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。
2. IT業界で転職回数が増えやすい3つの理由

IT業界で転職回数が重なりやすいのには、業界ならではの理由があります。前提として、情報通信業は入職が離職を上回る純増産業であり、転職の活発さは業界の拡大と表裏一体です。
背景を知っておくと、自分の転職歴も説明しやすくなります。
理由1:多重下請け構造から上流を目指す
日本のIT業界は、SES・受託開発・自社開発といった取引の階層で成り立っています。
下の階層ではスキルアップや待遇改善に限界を感じやすく、より上流の開発に近いポジションを目指して転職する人が多くいます。前に進むための転職が、結果として回数に積み上がります。
理由2:人材不足による売り手市場
IT人材の不足は続いており、経験者にとっては求人が多い売り手市場です。応募先が多いぶん条件の良い会社へ移りやすく、転職のハードルも下がります。
理由3:技術の多様化とプロジェクト単位の働き方
扱う言語やクラウド、フレームワークは増え続けており、新しい技術を身につけるために職場を変えるのも一般的です。
プロジェクト単位で働くスタイルとも合い、2〜3年ごとの移動が受け入れられやすい環境があります。
3. IT業界の転職回数が選考に与える影響と企業が見るポイント
海外では、より良い条件やスキルを求めて転職を重ねること(ジョブホッピング)が前向きに評価される国も多くあります。
一方で日本の採用は、長く働いてもらうことや、採用・育成にかけた費用を回収することを重視する傾向が残っています。
この違いを知っておくと、日本企業が転職回数を気にする理由が見えてきます。企業が実際に見るのは、回数そのものより次の3点です。
ポイント1:在籍1年未満の短期離職を繰り返していないか
採用と教育にはお金と時間がかかるため、企業は「また早く辞めてしまうのでは」というリスクを最も気にします。在籍1年未満での離職が続くと、成果を出す前に辞めていると受け取られやすくなります。
ポイント2:キャリアの一貫性や専門性が見えるか
転職のたびに職種や技術が大きく変わり、軸が定まっていない印象だと、専門性が積み上がっているのか疑問を持たれます。逆に、回数が多くても一貫したテーマやスキルが見えれば、評価はプラスに変わります。
ポイント3:転職理由が前向きか、他責になっていないか
「人間関係が合わなかった」「待遇に不満があった」など、他人や環境のせいにする理由ばかりが並ぶと、「うちでも同じ理由で辞めるのでは」と思われます。理由の伝え方ひとつで印象は大きく変わります。
4. IT業界で「転職回数が多い」とされる年代別の目安
転職回数に、明確な公的基準はありません。次の表は転職支援サービスでよく語られる目安で、合否のラインではない点に注意してください。
大切なのは回数よりも、年齢に見合ったスキルと一貫性があるかどうかです。

20代:回数より定着性を見られる
20代は基礎スキルを身につける時期と見られるため、短期離職の繰り返しが定着性への不安につながりやすい年代です。3回程度までなら、理由が明確であれば問題視されにくい傾向です。
30代:スキルと一貫性があれば回数はカバーできる
30代は即戦力かどうかが問われます。5回程度の転職でも、技術の専門性とキャリアの一貫性を示せれば、幅広い経験として評価されます。
40代以降:回数より実績と目的意識
40代以降は、経験を積んだうえで、はっきりした目的を持って転職する人が増えます。回数そのものより、これまでの実績やマネジメント経験が判断の中心になります。
外国籍エンジニアの場合は、回数の目安よりも、在留資格が途切れず続いているかが実務では重視されます。詳しくは第6章で解説します。
■自分の転職回数、市場ではどう見られる?
年代や回数の目安だけで判断せず、あなたの経験が転職市場で実際どう評価されるかを客観的に知ることが、次の一歩の判断材料になります。
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5. IT業界で転職回数を強みに変える準備と伝え方

転職回数が多くても、見せ方と伝え方を工夫すれば「幅広い経験を持つ即戦力」として評価につなげられます。準備のポイントを整理します。
準備1:キャリアの軸を言葉にする
なぜ転職を重ねてきたのかを振り返り、共通する目的やテーマを言葉にします。「一貫してインフラ領域の専門性を高めてきた」のように軸を示せれば、回数はキャリアを築く過程として説明できます。
準備2:職務経歴書はプロジェクトごとにまとめる
会社名を時系列で並べると、転職回数の多さが見た目に目立ちます。会社ごとではなく、担当したプロジェクトや使った技術を軸にまとめると、経験の幅と専門性を前に出せます。
準備3:面接では理由を前向きに言い換える
転職理由は、不満をそのまま言うのではなく、課題解決やキャリアの目標に向けた前向きな言葉に言い換えます。事実は変えず、「逃げ」ではなく「挑戦」として伝えるのがポイントです。

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転職回数が多い人ほど、面接で「なぜ辞めたのか」を前向きに伝えられるかどうかが評価を左右します。
他責に聞こえない言い換え方や、採用担当者に響く伝え方を例文つきで知っておくと、面接での不安をぐっと減らせます。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。
準備4:外国籍エンジニアは在留資格の安心材料を先に示す
外国籍の場合、採用担当者は在留資格が有効か、更新に問題がないかを気にします。
書類や面接の段階で、いまの在留資格と在留期限、転職後も同じ資格で働ける見込みであることを先に伝えると、選考のハードルを一つ下げられます。
6. 外国籍エンジニアがIT業界で転職回数を重ねるときの在留資格の注意点

日本で働く外国籍エンジニアの場合、転職回数そのものより「手続き」と「空白期間」が在留資格に直結します。回数を重ねるほど、次の点を押さえておきましょう。
転職したら14日以内に入管へ届け出る(法律上の義務)
「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格で働く場合、転職したら14日以内に「所属(契約)機関に関する届出」を行うことが法律で義務づけられています(入管法第19条の16)。
オンラインでも提出でき、届出を忘れると、次の在留期間の更新や永住申請で不利になることがあります。手続きの詳細は入管の案内で確認してください。
(参考:出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」)
転職の「空白期間」に注意する(3か月ルール)
退職後、正当な理由なく3か月以上その在留資格に合う仕事をしないと、在留資格を取り消される対象になり得ます(入管法第22条の4)。
外国籍エンジニアにとっては、転職回数よりも「転職の合間に長い空白を作らないこと」の方が大切です。転職活動は在職中から進めておくと安心です。
転職先の仕事が在留資格に合うか事前に確認する
在留資格は「学歴・専門性」と「勤務先の仕事内容」の両方を見て許可されています。
回数が多い人ほど、転職のたびに仕事内容と資格がずれやすくなります。不安なときは「就労資格証明書」を申請すると、転職先の仕事が資格に合うかを事前に確認でき、更新時の不安を減らせます。
判断に迷う場合は、入管や行政書士などの専門家へ確認してください。
永住申請では「継続性」と「届出の履行」が見られる
永住許可では、原則10年以上の在留(うち就労資格で続けて5年以上)や、直近の仕事の安定性がまとめて見られます。
在留資格が途切れず続いていることや、届出などの公的義務をきちんと果たしていることが重視されるため、空白を作らず届出を守って転職を重ねることが、永住申請にもプラスになります。
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外国籍エンジニアの転職では、在留資格を途切れさせないことが何より大切です。
届出の手続きや空白期間への備え、転職先の仕事が資格に合うかの確認など、資格を維持しながら転職を成功させる流れをまとめて押さえておくと、安心して次の一歩を踏み出せます。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。
■在留資格を守りながら、次のキャリアへ
在留資格の届出や空白期間の管理は、転職のたびに気をつけたいポイントです。
BLOOMTECH Career for Globalは、日本在住で日本語N2以上の外国籍エンジニアを対象に、在留資格を維持しながらキャリアアップを目指す転職をサポートしています。
手続きの不安も含めてご相談いただけます。
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よくある質問
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IT業界の適切な転職スパンはどのくらいですか?
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ひとつの目安は2年前後です。1年未満での離職が続くと短期離職を心配されやすく、一方で技術を身につけて成果を出すにはある程度の在籍期間が必要です。
ただし適切なスパンは目的やポジションによって変わり、決まった正解があるわけではありません。
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SIer・SES・自社開発など、企業タイプで転職回数の見られ方は変わりますか?
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一般的に、長期の定着を重視する企業もあれば、プロジェクト単位の経験や成長意欲を重視する企業もあり、評価の軸は一様ではありません。
応募先がどちらの傾向かによって、回数の受け止め方は変わります。求人票や面談で、その企業がどんな働き方・キャリアを想定しているかを確認しておくと、伝え方を合わせやすくなります。
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「年収バグ」を狙って転職を繰り返すと、どんなリスクがありますか?
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売り手市場では、スキルの伸びが伴わないまま年収だけが上がる転職も起こり得ます。目先の年収増だけを追うと、技術の軸が定まらず、長期的には市場価値が頭打ちになる可能性があります。
年収の増減とあわせて、その転職でどんなスキルや経験が積み上がるかを判断基準にすると、後悔の少ない選択につながります。
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短期離職はどう説明すればよいですか?
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事実を隠すのではなく、そこから何を学び、次にどう活かしたかをあわせて話すことが有効です。
客観的に振り返り、同じことを繰り返さない理由を示せれば、採用側の不安は和らぎます。
まとめ:IT業界の転職回数は準備次第で強みになる

IT業界の離職率は全産業平均より低く、転職で年収が上がる人も多いことが公的データからわかります。選考で問われるのは回数そのものではなく、短期離職の有無・キャリアの一貫性・転職理由です。
外国籍エンジニアはさらに、転職時の届出と在留資格の継続を守ることが大切になります。
キャリアの軸を言葉にし、職務経歴書をプロジェクトごとにまとめ、理由を前向きに伝える準備をしておけば、重ねた転職回数は「幅広い経験を持つ即戦力」という強みに変えられます。