日本で就労ビザを持って働く外国籍エンジニアにとって、転職はキャリアアップの大きな機会です。
しかし、転職にはビザに関する手続きが複数あり、手順を正しく知っておくことが大切です。
手続きを忘れると20万円以下の罰金や次回のビザ更新への悪影響につながることがあります。
この記事では、日本でビザを持つ外国籍エンジニアが転職する際の手続きを、状況別・職種別にわかりやすく解説します。
- 就労ビザを持つ外国籍エンジニアが転職時に行うべき手続きの種類と流れについて
- ITエンジニア特有の職種変更(SES・EM・フリーランス転向など)がビザに与える影響について
- 退職後の在留資格リスクと、転職先企業が行うべき届出義務について
1. 就労ビザを持つ外国籍エンジニアが転職できる条件

転職を考える前に、まず自分のビザで転職できるかどうかを確認しましょう。ビザの種類によって、転職できるかどうかや条件が変わります。
ITエンジニアに多いのは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」です。このビザでは、大学・大学院での専攻と転職先の仕事内容が関連していることが条件になります。
(参考:出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」)
在留資格の種類ごとの転職可否
| 在留資格 | 転職の可否 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | ◯ 可能 | 転職先の仕事が専攻・ビザの範囲内であること |
| 特定技能(1号・2号) | ◯ 可能(同一分野のみ) | 同じ分野内での転職に限る |
| 高度専門職 | △ 要確認 | 在留資格の変更申請が必要な場合あり |
| 技能実習※ | ✕ 原則不可 | 受入れ先の倒産など特別な事情がある場合のみ可 |
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の場合、転職先の仕事がビザの範囲内であれば在留資格を変更せずに転職できます。ただし、後述の届出手続きは必ず必要です。
※2024年6月に施行された改正入管法により、「技能実習制度」は「育成就労制度」への移行が進んでいます(2027年完全移行予定)。最新の制度内容については、出入国在留管理庁「育成就労制度」をご確認ください。
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2. 転職時に発生するビザ手続き|4つの種類と概要

転職時のビザ手続きは大きく4種類あります。
全員に必要なものと、状況によって必要になるものがあるので、それぞれ確認しておきましょう。
① 所属(契約)機関に関する届出【全員必須・14日以内】
就労ビザを持つ方が転職した場合、退職日から14日以内と入社日から14日以内に、出入国在留管理庁への届出が必要です(入管法第19条の16)。
転職先の仕事内容やビザの残り期限に関係なく、全員に義務があります。
届出の方法
- オンライン:
出入国在留管理庁の電子届出システムを利用(参考:所属(契約)機関に関する届出|出入国在留管理庁) - 郵送:
東京出入国在留管理局(〒160-0004 東京都新宿区四谷一丁目6番1号 四谷タワー)宛 - 窓口:
最寄りの地方出入国在留管理局
届出書の様式(PDFおよびExcel)は上記の公式ページからダウンロードできます。
届出書の種類
- 様式A:退職と入社を同時に届出する場合
- 様式B:退職のみ届出する場合
- 様式C:新規就職のみ届出する場合
14日を過ぎると20万円以下の罰金の対象になります。
虚偽の届出は1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金となり、次回のビザ更新にも悪影響が出ます。
② 就労資格証明書交付申請【任意・強くおすすめ】
就労資格証明書とは、転職先の仕事が現在のビザの範囲内であることを出入国在留管理庁が証明する書類です(入管法第19条の2)。
取得しておくと次回のビザ更新が不許可になるリスクを大きく下げられます。
義務ではありませんが、特に仕事内容が変わる転職では取っておくのがおすすめです。
申請の基本情報
- 申請先:
出入国在留管理庁(参考:就労資格証明書交付申請|出入国在留管理庁) - 手数料:
窓口申請 2,000円 / オンライン申請 1,600円(収入印紙での納付) - 処理期間の目安:
転職による勤務先変更の場合は1〜3ヶ月程度
③ 在留資格変更許可申請【ビザの範囲外への転職時に必須】
転職先の仕事が現在のビザの範囲に当てはまらない場合は、在留資格変更許可申請が必要です(入管法第20条)。
処理期間の目安は1〜2ヶ月程度です。
(参考:在留資格変更許可申請|出入国在留管理庁)
④ 在留期間更新許可申請【ビザの期限が近い場合に必要】
ビザの期限が近い場合は更新申請が必要です。
転職後に初めて更新する場合、転職先の仕事内容を説明する書類が求められます。
事前に就労資格証明書を取っておくと、スムーズに審査が進みます。
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3. 状況別|ビザ転職手続きの判断フロー
必要な手続きは「仕事内容の変化」と「ビザの残り期限」の2つで決まります。自分のケースがどれに当てはまるか確認しましょう。
| パターン | 仕事内容 | ビザ残期間 | 必要な手続き |
|---|---|---|---|
| ① | 変わらない | 4ヶ月以上 | 所属機関届出(必須)/就労資格証明書(任意・推奨) |
| ② | 変わらない | 3ヶ月以内 | 所属機関届出(必須)/在留期間更新申請(必要)/就労資格証明書(推奨) |
| ③ | 変わる(同一ビザ範囲内) | 問わない | 所属機関届出(必須)/就労資格証明書(強く推奨) |
| ④ | 変わる(別ビザが必要) | 問わない | 所属機関届出(必須)/在留資格変更許可申請(必須) |
パターン①:仕事内容が変わらない + ビザの期限に余裕がある(4ヶ月以上)
届出のみで問題ありません。念のため就労資格証明書を取っておくとより安心です。
パターン②:仕事内容が変わらない + ビザの期限が3ヶ月以内
早めに更新申請を進めましょう。
審査では転職後の仕事内容について確認されるため、業務の説明資料や雇用理由書を準備しておくことが大切です。
パターン③:仕事内容が変わる(同じビザの範囲内)
ビザの変更申請は不要です。
しかし審査が厳しくなりやすいため、就労資格証明書で事前にビザの範囲内であることを確認しておくのが安心です。
パターン④:仕事内容が変わる(別のビザが必要)
転職先の仕事が現在のビザの範囲に当てはまらない場合は変更申請が必要です。
新しいビザが許可されるまでは、新しい会社での仕事を始めることはできません。
4. エンジニアの転職ケース別ビザ判断|職種変更・SES・フリーランス転向
エンジニアの転職では、どんな仕事に移るかによってビザへの影響が変わります。
代表的な5つのケースを確認しましょう。
| 転職ケース | ビザ変更の要否 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| バックエンド → フロントエンド | 不要 | 届出+就労資格証明書の取得 |
| SES → 自社開発 | 不要 | 届出+雇用契約書の整備 |
| エンジニア → EM・PM | グレーゾーン | 就労資格証明書で事前確認を強く推奨 |
| エンジニア → フリーランス | 要確認(変更必要な場合あり) | 行政書士または入管に事前相談 |
| エンジニア → 営業・ITと無関係の職種 | 必要な可能性が高い | 就労資格証明書の確認または変更申請 |
ケース①:バックエンドエンジニア → フロントエンドエンジニア
判断:ビザ変更不要。届出+就労資格証明書の取得をおすすめ。
どちらもシステム開発・プログラミングの仕事であり、「技術・人文知識・国際業務」のビザで問題ありません。
仕事内容の説明ができれば大丈夫ですが、ポジションが大きく変わる場合は就労資格証明書を取っておくと安心です。
ケース②:SES(客先常駐)→ 自社開発企業
判断:ビザ変更不要。仕事内容の書類整備が大切。
雇用形態が変わっても、仕事の内容(システム開発・設計など)が同じであればビザの変更は不要です。
SES企業では雇用主と実際の勤務先が異なるため、転職後は仕事内容が明確な雇用契約書を手元に持っておくと更新審査がスムーズです。
ケース③:エンジニア → エンジニアリングマネージャー(EM)・プロダクトマネージャー(PM)
判断:グレーゾーン。就労資格証明書の取得を強くおすすめ。
技術的な判断や意思決定を担うEMやPMは多くの場合ビザの範囲内ですが、マネジメントの割合が増えて技術業務が少なくなる場合は審査が厳しくなることがあります。
事前に就労資格証明書で確認しておくのが安全です。
ケース④:エンジニア → フリーランス(業務委託・個人事業主)
判断:ビザの変更や追加申請が必要になる場合あり。
会社員からフリーランスに転向する場合、「技術・人文知識・国際業務」のビザではカバーできないケースがあります。
複数の取引先から仕事を受ける形態では「経営・管理」ビザへの変更が必要になることもあるため、事前に出入国在留管理庁か行政書士に相談することをおすすめします。
ケース⑤:エンジニア → 営業・コンサルタント職(ITと無関係)
判断:ビザ変更申請が必要になる可能性が高い。
IT技術と関係のない仕事への転職は、現在のビザの範囲外になる可能性があります。
転職前に就労資格証明書で確認するか、在留資格変更許可申請を行いましょう。
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転職先の企業選びも重要なポイントです。
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5. 就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」の転職ルールと注意点

外国籍ITエンジニアの多くが持つこのビザには、転職時に知っておくべき審査のポイントがあります。
ビザ更新の不許可を防ぐために確認しておきましょう。
専攻と仕事内容の関連性が審査される
転職先の仕事が大学・大学院での専攻と関係していることが必要です(参考:出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」)。
情報工学専攻でソフトウェアエンジニアとして働いていた方が同じ職種に転職する場合は問題ありませんが、専攻と異なる仕事への転職では審査が厳しくなります。
高卒・専門学校卒の場合は実務経験が必要
大学を卒業していなくても、転職先の仕事と関連する分野での実務経験が10年以上(専修学校での修学期間を含む)あれば、ビザの範囲内と認められる場合があります。
転職後の初回ビザ更新で不許可になりやすいケース
- 転職先の仕事がビザの範囲に当てはまらない
- 転職先企業の経営が不安定(設立間もない・赤字続きなど)
- 大学の専攻と仕事内容のつながりを説明する資料が不十分
- 所属機関の届出をしていなかった
更新不許可を防ぐには、転職後なるべく早く就労資格証明書を取得しておくのが効果的です。
■ビザ更新の不許可リスクを減らしたい方へ
転職後の初回ビザ更新で不許可になるケースには、事前に防げるものが多くあります。
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6. 転職先企業が行うビザ関連の手続き|外国人雇用状況の届出
転職する本人だけでなく、受け入れる企業側にも届出義務があります。
採用担当者やチームリードが知っておくべきポイントをまとめます。
外国籍の方を雇用した場合、企業はハローワークへの外国人雇用状況の届出が必要です。
(参考:厚生労働省「外国人雇用状況の届出制度」)
届出期限と罰則
| 対象者 | 届出期限 | 違反時の罰則 |
|---|---|---|
| 雇用保険の被保険者 | 雇い入れ日の翌月10日まで | 30万円以下の罰金 |
| 雇用保険の被保険者でない | 雇い入れ日の翌月末日まで | |
| 不法就労と知りながら雇用 | — | 不法就労助長罪:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
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7. 転職・退職後の在留期間と「3ヶ月ルール」に注意

退職後に仕事をしない期間が長くなると、在留資格が取り消されるリスクがあります。転職活動が長引きそうな場合は特に注意が必要です。
入管法第22条の4第1項第6号では、正当な理由なく3ヶ月以上ビザに関係する仕事をしない場合は在留資格が取り消されると定められています。
転職活動期間中の注意点
- 退職から入社までの期間が3ヶ月を超えないよう計画する
- 転職活動が長引く場合は、出入国在留管理庁に相談する
- 空白期間中のアルバイト(資格外活動)は原則禁止。「資格外活動許可」を取得した場合は週28時間以内なら可能
- 退職後は失業保険(雇用保険の基本手当)を申請できる。詳しくは最寄りのハローワークへ
■転職活動の長期化が心配な方は早めにエージェントへ
退職後の空白期間が3ヶ月を超えると在留資格に影響するリスクがあります。
転職活動をスムーズに進めるためにも、早めに専門のエージェントへ相談することが重要です。
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8. 日本人エンジニアが知っておきたい外国籍チームメンバーのビザ基礎知識

外国籍のチームメンバーと一緒に働く日本人エンジニアにとっても、ビザの基本を知っておくことは役に立ちます。
採用時のミスマッチを防いだり、メンバーがスムーズに着任できるようサポートするうえで参考にしてください。
「このビザで働けますか?」を確認する正しい方法
採用候補者や新しいメンバーの在留カードをそのまま預かるのは、個人情報の扱いとして適切ではありません。
確認は本人に在留カードを見せてもらう形で行い、以下の3点をチェックします。
- 在留資格の種類:「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」など
- 在留期限:有効期限内かどうか
- 就労制限の有無:カード裏面に「就労不可」と書かれている場合は別途許可が必要
わからない点は、社内の労務・法務担当者や行政書士に確認するのが安心です。
在留資格変更申請中は就労開始できない
新しいメンバーが在留資格変更許可申請の審査中の場合、許可が下りるまでは新しい会社で働くことはできません。
入社日の調整が必要になることがあるため、採用スケジュールを組む際は審査期間(目安1〜2ヶ月)を考慮しましょう。
チームメンバーに伝えておくとよいこと
- 退職・入社のそれぞれから14日以内の届出が本人の義務であることを共有する
- 会社側(HR)がハローワークへの届出を行っているか確認を促す
- 転職後初回のビザ更新では仕事内容の説明書類が必要になるため、業務記録を残しておくよう伝える
9. 外国籍エンジニアの転職需要|公的データが示す現状
日本国内における外国籍エンジニアの転職需要は、公的な統計からも高い水準が確認されています。市場の実態を数字で見ておきましょう。
| 統計・出典 | 主な数値 |
|---|---|
| 厚生労働省「外国人雇用状況」届出(令和6年10月末時点) | 外国人労働者数:2,302,587人(前年比12.4%増・過去最多)/専門的・技術的分野:718,812人(前年比20.6%増) |
| 出入国在留管理庁「令和7年末在留外国人数」 | 在留外国人数:412万5,395人(前年末比9.5%増・初の400万人超)/技術・人文知識・国際業務:475,790人(前年比13.7%増) |
厚生労働省によると、日本国内の外国人労働者数は2,302,587人(前年比12.4%増)と過去最多を更新し、「専門的・技術的分野」の労働者数は718,812人(前年比20.6%増)に達しています。
(参考:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」)
出入国在留管理庁の発表では、日本の在留外国人数が412万5,395人(前年末比9.5%増)で過去最多となり、初めて400万人を超えました。
在留資格別では「技術・人文知識・国際業務」が475,790人(前年比13.7%増)で、専門職として就労するエンジニア・技術者の在留者が年々増加しています。
(参考:出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」)
「専門的・技術的分野」全体(718,812人)の中でも「技術・人文知識・国際業務」が475,790人を占めており、外国籍エンジニアの転職市場は規模・成長速度の両面で拡大し続けていることが数字から読み取れます。
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よくある質問
-
転職先が決まる前に退職した場合はどうすればいいですか?
-
退職日から14日以内に「所属機関に関する届出(退職)」を提出してください。
転職先が決まったら、入社日から14日以内に「所属機関に関する届出(入社)」も提出します。
仕事のない期間が3ヶ月を超えると在留資格が取り消されるリスクがあるため、転職活動はなるべく早く進めましょう。
-
在留期限が1ヶ月後に迫っています。すぐに申請できますか?
-
在留期間更新許可申請は、期限の3ヶ月前から申請できます。
期限内に申請すれば、審査中も日本に在留して働き続けることができます(特例期間の適用)。早めに準備を始めましょう。
-
届出の期限を過ぎてしまいました。どうすればいいですか?
-
気づいた時点でなるべく早く届出を行いましょう。
期限を過ぎた理由を書いた書類(理由書)を添えて届出します。在留期間更新の申請時にあわせて説明することも可能です。
不安な場合は行政書士に相談することをおすすめします。
-
担当する業務が少し変わるのですが、手続きは必要ですか?
-
現在のビザの範囲内であれば、在留資格の変更申請は不要です。
ただし、所属機関の届出(14日以内)は必ず必要です。
仕事内容の変化が大きい場合は、就労資格証明書を取得してビザの範囲内かどうかを確認しておくのが安心です。
-
フリーランスとして業務委託で働きたい場合はどうなりますか?
-
会社員からフリーランスに転向する場合、現在のビザではカバーできないケースがあります。
複数の取引先から仕事を受ける形態では「経営・管理」ビザへの変更が必要になることもあるため、事前に行政書士や出入国在留管理庁に相談しましょう。
最新の制度は公的機関の窓口でご確認ください。
まとめ|外国籍エンジニアがビザ転職手続きで押さえるべきポイント

日本でビザを持って転職する際は、状況によって必要な手続きが変わります。
退職・入社のそれぞれから14日以内に出入国在留管理庁への届出を行うことが全員に共通する必須事項です。
仕事内容が変わる場合は就労資格証明書の取得、ビザの範囲外への転職時は変更申請が必要になり、ビザの期限が近い場合は早めに更新申請を進めることが重要です。
退職後の空白期間は3ヶ月以内に収めるよう計画し、フリーランスへの転向を検討する場合はビザ種別の変更が必要になる可能性があることも覚えておきましょう。
手続きに不安がある場合は行政書士などに相談するのが確実です。